草摩依鈴(フルーツバスケット)の徹底解説・考察まとめ

草摩依鈴(そうま いすず)とは、高屋奈月の漫画『フルーツバスケット』に登場する、午(馬)の物の怪に取り憑かれた人物である。他者に手厳しい態度を取るが、その実は恋人の草摩潑春を呪いから解放し、主人公本田透を傷つけまいとする優しい性格。1人ですべてをしょい込む傾向にある。その一方、軽率で詰めの甘い一面もある。当初はロングヘアだったが、十二支の神に当たる草摩慊人に髪を切られてからはショートヘアになった。

草摩依鈴の概要

草摩依鈴とは、高屋奈月の漫画『フルーツバスケット』に登場する、十二支の午(馬)の物の怪に取り憑かれた人物である。通称は「リン」。膝裏まで届く長い黒髪が特徴の、妖艶な美少女。
幼い頃は幸福に暮らしていたが、両親は無理をして幸せな家族を演じていただけであり、依鈴自身の「本当に幸せなの?」との言葉が元で演技をやめ、虐待し始める。路上で倒れ入院したのがきっかけで両親から捨てられてしまう。
この時庇ってくれた丑(牛)憑きの草摩潑春(そうま はつはる)と交流を始め、いつしか互いに恋愛感情を抱くようになり交際を開始。しかし、十二支の神で草摩家当主の草摩慊人(そうま あきと)の怒りを買い2階から突き落とされた。その後は潑春を慊人から守るために彼を拒絶。同時に、潑春を完全に慊人から自由にするために呪いを解く方法を探り出す。その中で、同じく呪いを解こうとしている主人公の本田透(ほんだ とおる)と手を組んだ。
慊人が大切にしていた箱を持ち出そうとしたため、猫憑き用の離れに監禁されてしまう。酉(鳥)憑きの草摩紅野(そうま くれの)に救出された後、搬送先の病院から抜け出すも、依鈴を探しに来た潑春によって発見、保護される。
登場時からロングヘアだったが、慊人に監禁され、髪を切られてからはショートヘアになった。背中には、慊人に突き落とされた時の傷が残っている。

草摩依鈴のプロフィール・人物像

CV:豊崎愛生(新アニメ版)

クールで、人を寄せ付けない印象。他者を拒絶するような言動も多いが、相手を危険に巻き込まないよう配慮するなど、本来は優しい性格。何でも1人で背負い込もうとする傾向にある一方、他者の言うことを鵜呑みにして軽率な行動に出ることも多い。丑(牛)憑きの草摩潑春(そうま はつはる)とは恋仲で、彼を十二支の神に当たる草摩慊人(そうま あきと)から守るべく一方的に別れを告げた。
眠ることが嫌いで、眠りたいとの欲求もない。食べ物にも好き嫌いが多く、主人公の本田透(ほんだ とおる)に好物を聞かれて「ゼリー」と答えた。
登場時は膝裏まで届くロングヘアだったが、当主の草摩慊人(そうま あきと)に髪を切られてからはショートヘアに切りそろえている。この時、透には「鬱陶しいから切った」と言った。

草摩依鈴の能力

午憑き

馬の姿になった依鈴。

依鈴には、十二支の午(馬)の物の怪が取り憑いている。異性と抱き合う、極端に体力が落ちるなどすると馬の姿に変身してしまう。しばらくすると元に戻るが、変身の際服が脱げてしまう為、全裸の状態で戻ることになる。作中では馬の姿で透を蹴ろうとし、子(鼠)憑きの草摩由希(そうま ゆき)に注意されている。
描写こそないが、馬と意思の疎通ができる。また、潑春が言うには俊足らしい。

イラスト

作中において、依鈴がイラストを描く場面がある。自信があるわけではないようで、透に見られた時はすぐに隠し、「こんなものただの落書き」だと言った。しかし、透からは褒められている。

草摩依鈴の来歴・活躍

幸せな家族という芝居

幼い依鈴(中央)は、両親に愛されていると思っていた。

草摩依鈴(そうま いすず)は幸福な家庭に育った。依鈴の生まれた草摩家には、「物の怪憑き」と呼ばれる存在が生まれることがあった。十二支と同じ動物、そして猫の物の怪に取り憑かれた人物のことで、異性と抱き合ったり、体力が落ちたりするとその動物に変身する。物の怪憑きのことは草摩家でもごく限られた者しか知らないトップシークレットで、崇められると同時に呪われた存在との認識もあった。十二支を集めて宴を開いた神には逆らえず、物の怪憑きたちは自分以外の自我の声に苦しめられていた。
それでも依鈴は幸せだった。他の物の怪憑きは、親との折り合いが良くないことが多い。それに対し、依鈴の両親はいつも笑っていた。ある時、依鈴は「パパとママは本当に幸せなの?」と聞いた。何気ない疑問だったが、突如母が豹変する。両親が自分を重荷に思っていたこと、ずっとそれを隠して無理をしていたことを依鈴は知る。以降、両親は演技をやめ、依鈴に辛く当たるようになった。
依鈴は両親の顔色を窺い、従順にしていればまた幸せな家族になれると思っていた。しかしそれはなされず、学校の帰り道で体調を崩した依鈴は倒れ込んでしまう。

草摩潑春との出会い

依鈴を発見したのは、丑(牛)憑きの草摩潑春(そうま はつはる)だった。幼い潑春には依鈴を自力で運ぶことはできず、大人の手を借りることとなった。入院した依鈴の下に両親が現れる。両親は、「もうどう愛したらいいか分からないから、帰ってこなくていい」と言った。依鈴は「ごめんなさい」と繰り返し、いい子になるから捨てないでほしいと追いすがる。それでも聞く耳を持たずに去ろうとする両親に、潑春が抗議した。依鈴は自分が悪いと謝っているのに、何故逃げるのか。親に拒絶されたら子供はどこに行けばいいのか。そうした潑春の言葉は依鈴の両親に届かず、彼らは2度と病院には来なかった。
その後依鈴は亥(猪)憑きの草摩楽羅(そうま かぐら)の家に引き取られる。楽羅と両親の仲は良好で、彼女の家での生活は依鈴には辛いものでしかなかった。
依鈴は何がいけなかったのかを考えるようになる。しかし、いくら考えても答えは出ず、袋小路に迷い込んだ気になってしまう。そんなころになると、いつも潑春が現れて依鈴と軽食を食べたり、どこかに出かけたりするようになった。

潑春との交際と破局

助けてくれた潑春(左)と、依鈴(右)は恋仲となった。

共に成長を重ねるうち、依鈴は潑春に対し異性として好意を抱く。潑春もまた、依鈴を求めてきた。十二支には、神に対する本能的な思慕の情がある。物の怪憑きは「神を裏切るな」と声を上げており、依鈴の内にいる午の物の怪も潑春と愛し合うことへの警告を発する。それでも、依鈴は潑春を求めずにはいられなかった。若い2人は隠れて交際を続ける。
そんな折、辰(龍)憑きの草摩はとり(そうま はとり)が左目に怪我をしたとの知らせを聞いた。婚約者の草摩佳菜(そうま かな)との結婚を慊人に認められず、慊人によって傷つけられたという。その後、慊人は依鈴を呼び出した。潑春と依鈴の交際は慊人にばれていた。慊人は、どちらが先に誑かしたのか、どちらが自分の不興を買うのかと尋ねてくる。
神の言葉は十二支にとって何よりも重要なものであった。潑春の目を傷つけると暗に仄めかした慊人に、依鈴は「自分から誘った」と言う。慊人は「どうして僕のものに手を出すんだ」と依鈴を責める。怯える依鈴を見て、慊人は彼女をただの人数合わせ、いらない存在だと言い、2階の窓から突き落とした。落下しながら、依鈴は潑春が無事ならそれでいいと目を閉じる。
病院に搬送された依鈴は、慊人から潑春を解放しようと考える。潑春が慊人から余計な不興を買わないよう、見舞いに来た彼を拒絶した。同時に、依鈴は同じ物の怪憑きである潑春を慊人から解放するため、呪いを解く方法を探り出す。

本田透との出会い

ようやく退院した依鈴だが、精神から来る体調不良に悩まされてもいた。それでも、呪いを解くため誰にも頼らずに行動する。依鈴の目的を遂げるには、戌(犬)憑きの草摩紫呉(そうま しぐれ)を探るしかないように思えた。紫呉は慊人に信頼されており、呪いのことも知っていると踏んだのだ。紫呉の家に行き、自分の体を差し出すとまで言った依鈴だが、彼は「呪いのことは何も知らないし、慊人に信頼もされていない」「僕という男を買いかぶらないことだ」と返された。
同時期、依鈴は潑春から本田透(ほんだ とおる)という少女のことを聞く。十二支のことは草摩家最大の秘密であり、一族でも知る者は少ない。秘密を知った者は、記憶の隠蔽を施されるのが当たり前だった。しかし、慊人は特例で透の記憶を消さず、紫呉の家に住むことを許した。
多くの物の怪憑きが透と接触し、彼女と親しくなった。潑春もまた透と出会い、彼女のことを依鈴に話したことがある。紫呉の家には子(鼠)憑きの草摩由希(そうま ゆき)と猫憑きの草摩夾(そうま きょう)が同居している。同年代ながら、由希と夾は物の怪憑きとしては全く真逆の待遇を受けていた。子憑きは神に等しい存在とされており、由希は幼い頃から慊人の遊び相手だった。とはいえ、実質的には軟禁され虐待を受けている状態であり、潑春は幼い頃からそんな由希を心配し、周りの目を盗んでは彼の部屋に赴いた。依鈴は潑春に同行し、慊人か誰か大人が来ると「もうヤダ、帰る」と言って潑春を連れて帰る。そうやって潑春を庇っていた。
猫憑きは鼠に騙されて宴に参加できなかった仲間外れの存在と見なされており、十二支とは違って蔑まれ幽閉されるのが常だった。夾は自身と違い恵まれている由希を逆恨みし、両者の間には互いを拒絶するオーラがあった。
しかし、高校に入学した由希と夾からは以前のようなオーラがないと潑春は言う。それは、透のお陰だろうと潑春は結論付けた。そんなに凄い少女なのかと依鈴は驚くが、潑春は「凄く普通の子。優しいよ」と返した。潑春は、透を「可哀想」と感じる。潑春のように優しい人物である透は、彼のように誰かの犠牲になっていると感じたのだ。
その夏、単独で草摩家の避暑地周辺に来ていた依鈴は、体力が落ちて馬に変身してしまう。その場に、由希らとともに避暑に来ていた透が現れた。依鈴は人の姿に戻ると、「誰にも(自分が来たことを)言うな」と釘を刺して去った。

透と手を組む依鈴

夏が終わっても、依鈴は単身で呪いを解く方法を探し続ける。ある時、調子の悪い体に鞭打ちながら紫呉の家を訪れた依鈴は、帰宅した透と出会う。体調が弱っていたこともあり、依鈴は両親に虐待されていた時のことを思い出し錯乱。透は依鈴を抱きしめた。
気が付くと、依鈴は透の部屋に寝かされていた。目が覚める直前、優しかった頃の母の夢を見ていたが、実際その場にいて看病をしていたのは透だった。依鈴はその場を逃げ出そうとしたが、はとりに止められる。紫呉から「他人に構われたくないなら、体調管理蔵自分でできるようになったら?」と言われたこともあり、依鈴は醜態をさらし続ける自分が嫌になり座り込む。その日は紫呉の家に泊まることになった。
夜、様子を見に来た由希に「春に連絡したら許さない」と釘を刺す。そんな依鈴に、由希は「春は今もリンのことが好きだよ」と言った。その後部屋に入ってきた透に、依鈴は呪いを解こうとするのはやめろと強い口調で言う。優しい人間が傷つく様を見たくはなく、そのような言い方しかできない為であった。
透は、依鈴も呪いを解こうとしているのかと尋ねる。出しゃばるなと返した依鈴だが、透は頑固にも出しゃばると言った。透を呪いから遠ざけようとした依鈴だが、初めて彼女を見かけた時のことを思い出していた。遠巻きに見ただけの透は、母親のように全てを受け入れてくれる存在に思えた。しかし、そのように縋られる透が可哀想だとも感じる。自分のような者に縋られるなど、透に悪いとの気持ちがあったのだ。透は、自分から逃げるように駆け出した依鈴を抱きしめる。「ひとりは怖いです」と依鈴の心中を読み取るように透は言う。
透との出会いによって他者を頼ることへの抵抗をなくした依鈴は、ひとまず病院に入院。見舞いに来た透は、好き嫌いの多い依鈴の為にゼリーを作ってくれた。少しずつだが、依鈴も透に心を開いていく。

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