草摩綾女(フルーツバスケット)の徹底解説・考察まとめ

草摩綾女(そうま あやめ)とは、高屋奈月の漫画作品『フルーツバスケット』に登場する巳(蛇)の物の怪憑きで、主要人物の1人の草摩由希の兄である。女性と見まがうロングヘアと美貌、詩的かつ大仰な口調と振る舞いが特徴。学生時代、己の自由と引き換えに由希を無視していたことを後悔しており、関係改善に努める。同級生の草摩紫呉と草摩はとりとは「真のマブダチトリオ」を自称する。洋裁店を営んでおり、店員の倉前美音とは恋仲でもある。

草摩綾女の概要

草摩綾女(そうま あやめ)とは、高屋奈月の漫画『フルーツバスケット』に登場する十二支の巳(蛇)の物の怪に取り憑かれた人物で、主要人物の1人草摩由希(そうま ゆき)の兄でもある。
腰まで届くプラチナブロンドのロングヘアと、女性と見まがう美貌を持つ。戌(犬)憑きの草摩紫呉(そうま しぐれ)、辰(龍)憑きの草摩はとり(そうま はとり)とは同い年で、「真のマブダチトリオ」を自称する。
由希とは10歳年が離れている上、彼が当主の草摩慊人(そうま あきと)と共に過ごす時間が多かったこともあって弟がいるとの実感すらあまりなかった。接点があまりない弟よりも自身の自由を優先し、無自覚とはいえ由希の心を踏みにじっていたことを大人になって後悔。度々弟の前に現れては、関係改善を試みる。初めは反発されていたが、兄らしく由希を諭すこともあってそれなりに彼との心理的な距離が縮まっていった。
「あやめ」という洋裁店を営んでおり、度々裁縫の手腕を発揮する。店員の倉前美音(くらまえ みね)とは恋仲でもある。

草摩綾女のプロフィール・人物像

CV:宮本充(旧アニメ版)、櫻井孝宏(新アニメ版)、藤原夏海(新アニメ版幼少期)

通称は「あーや」、「アヤ」など。腰まで届くプラチナブロンド、女性と見まがう美貌が特徴。高校時代の容姿は弟の草摩由希(そうま ゆき)と似ているが、性格は真逆。「王」を自称するほどの自信家で、詩的かつ大仰な口調で周囲を自分のペースに巻き込む。良くも悪くも破天荒な行動が多く、常識的な人物はまず綾女の言動についていけない。
傍若無人な印象を与えるが、自己を顧みることができないわけではなく、過去の行いを反省。無視していた由希との関係改善に努めている。ただし、性格が違い過ぎることもあって空回りすることが多い。また、自分にはない長所を持った草摩はとり(そうま はとり)を尊敬しており、彼の言うことだけは素直に聞く。
職業は服飾店の店主。「誰にも言えない秘密の花園」と称し、女装用の衣装も扱っており自ら採寸、着付けも行う。

草摩綾女の能力

巳憑き

綾女には巳(蛇)の物の怪が憑いており、異性に抱き着かれるか体力が落ちるかすると蛇に変身する。放っておけば元に戻るが、戻るまでの時間はまばら。取り憑いている物の怪が変温動物である為暑さや寒さに弱く、登場時は寒さ故に蛇の姿になった状態で現れた。その為、外出時は日傘を携帯している。高校時代は常に車で登校していたとのこと。

洋裁

綾女の手掛けた衣装。

綾女は洋裁が得意で、「あやめ」という名前の服飾店を経営する。本人曰く「リリカルな」この仕事を選んだ理由は、自信を失った時に「何かを作ってみたくなった」ため。「自分なしでは存在しないものを生み出したかったから」と弟の由希に語った。
ちなみに「人には誰しも、他人に言えない秘密の花園を持っている」とのことで、店は女装用の衣装も扱っている。由希が初めて店を訪れた時、綾女は男性客が着るウェディングドレスの採寸を行っており、ドレス姿で弟の前に現れることとなった。
由希のクラスが文化祭で行った演劇の衣装は、綾女が手掛けたものである。

草摩綾女の来歴・活躍

神の誕生

草摩綾女(そうま あやめ)は異性に抱き着かれる、もしくは極端に体力が落ちると蛇に変身してしまう体質を持っていた。これは綾女に十二支の巳(蛇)の物の怪が憑いている為で、草摩家には度々こうした「物の怪憑き」が生まれることがあった。物の怪憑き同士は、目に見えない絆で結ばれていると使用人たちは語る。
あまりに特異な体質、性質を持つものの、同年代に辰(龍)憑きの草摩はとり(そうま はとり)、戌(犬)憑きの草摩紫呉(そうま しぐれ)がいることもあり、綾女は取り立てて寂しさは感じていなかった。2歳下には酉(鳥)憑きの草摩紅野(そうま くれの)、さらに下に申(猿)憑きの草摩利津(そうま りつ)がいる。あまり年を隔てずに物の怪憑きが生まれることは、珍しかった。
そんな中、十二支たちを招いて宴を開いた神様が綾女たちの夢に現れる。「もうすぐ会える」との神の言葉に、綾女たちは泣きながら目を覚ました。神は物の怪憑きたちをまとめる絆の根源であり、十二支は本能的に神を求め慕う。
綾女たちは、神を求める物の怪の声に突き動かされて草摩家の当主の妻である草摩楝(そうま れん)の下へ向かった。神は楝の娘・草摩慊人(そうま あきと)として生を受ける。しかし、楝は娘を男として育てさせると宣言した。
表向きは「跡継ぎが女では問題がある」とのことだが、紫呉は、楝が夫である草摩晶(そうま あきら)が慊人に奪われたから憎んでいると言った。もう1つの理由は妬みだと紫呉は言う。綾女たちには、紫呉の話は少し難しかった。
やがて、綾女に10歳違いの弟が生まれる。草摩由希(そうま ゆき)と名付けられたその子は、待望の子(鼠)憑きであった。

弟の由希

由希(右)を拒絶する綾女(左)。

由希は、神である慊人の遊び相手として彼女と一緒にいる時間が増えていった。元より10歳違いの弟に対し、あまり実感の湧かなかった綾女は、時たま母に折檻を受ける彼を見ても特に何も感じなかった。毎年正月に行われる神と十二支だけの宴で、由希と顔を合わせることはあっても会話はない。高校生になった綾女は、その容姿と強い個性から生徒たちの支持を得て生徒会長になる。教員たちの度肝を抜くような言動も多々あったが、綾女は自分で正しいと思い行動をしていた。
ある時、綾女は他校の女子生徒からデートに誘われる。しかし、綾女は同じ生徒会長として一緒に仕事をした彼女を覚えていなかった。はとり、紫呉の前で綾女は彼女を「印象のない人物」だと指摘する。綾女には何の悪気もなかったが、女子生徒は泣きながら去ってしまう。はとりは「そういう人間だっているんだ」と綾女の無神経さを窘めた。
やがて、綾女は自分の自由のために多くの人の気持ちを無視していたことに気付く。由希が差し伸べた手を振り払ったこともあった。この時、由希は慊人からの精神的虐待を受けていた。綾女には、由希が兄である自分に助けを求めてきたなど思いもよらなかったのだ。
やがて、成人した綾女は得意の洋裁の腕を活かし、服飾店を開く。図らずも女性店員の倉前美音(くらまえ みね)に呪いのことがバレてしまうが、彼女は綾女の下を離れることはないと言った。
由希は、高校入学を機に紫呉の家で生活を始めた。

本田透との会話

紫呉の家に、草摩家と関りのない本田透(ほんだ とおる)という少女が住むことになった。十二支の秘密は草摩家でも一部の者しか知らないトップシークレットであり、本来なら「記憶の隠蔽」と呼ばれる催眠術で記憶を消されるはずであった。ところが、慊人は透の記憶を消すことなく同居まで許したという。既にはとりは一部の物の怪憑きも透に会ったと聞き、綾女も彼女に会う為紫呉の家へと向かった。しかし、その日は寒く、綾女は蛇に変身してしまう。温もりを求めた綾女は透の服に潜り込んでしまった。
元の姿に戻った綾女は透に詫びるが、一緒にいた由希から猛抗議を受ける。綾女は次いで茶を淹れてほしいと言い、昼食も要求した為、まるで小間使いに命じているようだと指摘された。
綾女は仕方なく透を連れ出し、2人での外食を選ぶ。店に着くと、透は由希に兄がいたとは知らなかったと言った。綾女は、自分と由希の関係を話す。10歳という年齢差や、幼い頃から病気がちで隔離されていたような由希の境遇もあり、綾女に取って弟は「いたっけか」程度の認識で、気が付けば兄弟の間には溝ができていた。
2年生に進級した時、慊人が由希たちの学校に訪れた。由希は過去のトラウマから、他の十二支以上に慊人を怖れている。綾女が紫呉の家に来た本当の理由は、由希の様子を見る為だった。意外にも元気そうな由希に拍子抜けをしたという。
年を重ねるにつれて、綾女は由希との間に溝を作ったことを後悔するようになった。どちらかといえばその気持ちは懺悔に近いもので、無知な頃の自分をなかったことにしたいのかもしれないと綾女は語る。
透は、自身の母が言った「親になって初めて自分の親の気持ちが理解できた」、「本当に理解しなくてはいけないのは、忘れてはいけないのは自分の子供の頃の気持ち」という言葉を口にする。自分が子供の頃に感じた気持ちを覚えていれば、100%は無理でも歩み寄ることはできると透の母は言った。その上で、透は由希も綾女もこれから歩み寄るのだと語る。綾女は、由希が元気な理由が分かった。「これからも、由希と仲良くやってくれたまえ」と綾女は言う。自覚はなかったが、その時の表情は兄らしいものであった。

はとりの幸福を願う綾女

ゴールデンウィークのある日、綾女ははとりを訪ねるために本家に赴いた。しかし、はとりは紫呉たちと共に別荘に行ったという。自分にはない他者の気持ちを思いやる心を持ったはとりを、綾女は昔から尊敬していた。はとりへの用事とは、昔彼が交際していた草摩佳菜(そうま かな)の結婚写真を届ける事であった。綾女はこの写真を佳菜の友人で、かつての紫呉の恋人・白木繭子(しらき まゆこ)からもらったという。
はとりと佳菜は真剣に愛し合っていたが、他者に物の怪憑きを奪われたくない慊人が激昂したことで2人の関係は終わってしまった。慊人が暴れたことではとりの左目が傷つき、佳菜は自分のせいだと己を責めて心を病んでしまう。はとりは佳菜から自分に関する記憶を消し、彼女の精神を救った。その後、佳菜ははとりに対しては「憧れていた上司」程度の認識を持ち、別の男性と結婚に至った。
はとりは今更佳菜と会うつもりも、まして復縁を願う気もないと言う。綾女は、佳菜だけが幸福となり、はとりが全てを背負わされ置き去りにされているのが不満だと口にした。「そうでもない」と語るはとりに、綾女は優しすぎると指摘。佳菜とやり直せとは言わないが、せめて彼女の2000倍は幸せになってほしいと綾女は言った。その強気な態度を、由希にも示してはどうかとはとりは言う。
そこに、湖を見に行っていた由希、猫憑きの草摩夾(そうま きょう)、透が戻ってきた。はとりの助言通り由希に強気に接しようとした綾女だが、「兄であるこの僕に服従したまえ!」と間違った強気を見せてしまうのだった。

由希の来店

由希(右)の来店に喜ぶ綾女(左)。

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