草摩藉真(フルーツバスケット)の徹底解説・考察まとめ

草摩藉真(そうま かずま)とは、高屋奈月の漫画作品『フルーツバスケット』の主要人物の1人・草摩夾の養父であり、武術の師匠である。幼い頃、十二支に入れなかった猫の物の怪に取り憑かれた祖父を残酷な言葉で拒絶。祖父の死後、新たに生まれた猫憑きの草摩夾を見て、その環境の理不尽さを思い知る。母を失い、父からも拒絶された夾を引き取ったのは贖罪の為だったが、次第に父性が芽生えていった。祖父のように幽閉される未来から夾を救おうとした。

草摩藉真の概要

草摩藉真(そうま かずま)とは、高屋奈月の漫画『フルーツバスケット』の登場人物。主要人物の1人・草摩夾(そうま きょう)の養父であり、武術の師匠でもある。武術の道場を開いており、門弟を多く抱える。
穏やかな性格を体現したような、優しく落ち着いた風貌。
草摩家に時折生まれる十二支の猫の物の怪に取り憑かれた「猫憑き」の孫で、幼い頃1度だけ会った祖父を拒絶した。祖父の死後、夾を取り巻く環境を第三者の目で見て、自身が祖父にした行為の残酷さを思い知る。
実母の自殺、実父の拒絶、一族中からの批難に晒された夾を庇い、幼かった彼を引き取った。初めは祖父への償いだったが、次第に夾に対し愛おしさが芽生え、実の父のように彼に接するようになる。
隔離され、寂しく死んでいった祖父のようになってほしくはないとの気持ちから、夾の「真の姿」を封じる数珠を、主人公の本田透(ほんだ とおる)の目の前で外した。これは、夾の心を癒した透に猫憑き本来の醜い姿を見せ、それでも彼女が受け入れてくれれば夾も前向きに生きられるとの賭けであった。透が夾を救ってくれたため、それまで彼の幸福のためにと願掛けの意味で伸ばしていた髪を短く切った。
先代猫憑きの孫である為十二支のことは知っているが、呪いの詳細や解き方までは知らない。

草摩藉真のプロフィール・人物像

髪を切る前の草摩藉真。

CV:井上倫宏(旧アニメ版)、町井美紀(旧アニメ版幼少期)、森川智之(新アニメ版)、七瀬彩夏(新アニメ版幼少期)

温厚な人格者。母によって軟禁に近い生活を送っていた草摩夾(そうま きょう)に色々なことを教え、彼の為に自らが汚名を被ることも厭わないなど、父親のように接する。息子を幽閉したい夾の実父に対し、あくまで彼を守る姿勢を見せた。
武術の道場を経営しており、夾の他、子(鼠)憑きの草摩由希(そうま ゆき)、丑(牛)憑きの草摩潑春(そうま はつはる)、亥(猪)の草摩楽羅(そうま かぐら)も藉真下で武術を学んだ。夾からは「師匠」、由希たちからは「師範」、戌(犬)憑きの草摩紫呉(そうま しぐれ)からは「藉真殿」と呼ばれる。
懐深さや強い胆力を持つ一方天然ボケでもあり、読書をしながら料理をする、淹れ方も分からないのに茶を淹れようとするといった描写がある。夾の反応からするに、料理はしょっちゅう焦がす模様。また、夾への情愛に関しては親馬鹿のような一面も見せる。

草摩藉真の能力

武術

夾(左)の拳を受け止める藉真(右)。

藉真は武術の達人で、道場を経営している。ほぼ無意識でも、夾が仕掛けてきた攻撃をいなすことが可能。夾はそんな藉真の強さを誇りに思っている。

草摩藉真の来歴・活躍

猫憑きの孫

幼い藉真は、祖父を拒絶した。

幼い頃、草摩藉真(そうま かずま)は1度だけ祖父が幽閉されている離れに行ったことがある。藉真の祖父は、十二支の仲間になれなかった猫の物の怪に取り憑かれた「猫憑き」だった。草摩家では、度々十二支と同じ動物に取り憑かれた「物の怪憑き」が生まれる。物の怪憑きたちは彼らを宴に招いたた神と同じく尊ばれるが、猫憑きだけは例外で、一族中から疎外される。それは宴に出られなかった仲間外れの存在であり、特殊な数珠をしていないと「真の姿」と呼ばれる、腐敗臭を放つ異形へ変身するためでもあった。
藉真の祖父もまた歴代の猫憑きと同じく蔑まれ、離れに幽閉されていた。祖父は幼かった藉真に饅頭を与えようとしたが、藉真は数珠をつけた手に怯え、「呪われるからいらない」と言う。残酷な言葉を吐いた孫を、祖父は笑って許した。
やがて祖父は亡くなるが、草摩の墓に入れられることはなかった。藉真の祖母は、一族中から蔑まれていた夫の死に水を取る。後に、藉真は何故猫憑きにそこまでできたのかと祖母に尋ねる。祖母は、「あまりに可哀想でしょう?」と返した。

夾の誕生・共同生活

藉真が成長し、草摩家には次々と物の怪憑きが生まれた。本来物の怪憑きは極端に年が離れていることが多く、欠員も珍しくなかった。ところが、今回は宴を開いた神も誕生した。程なく、新たな猫憑きが生まれる。草摩夾(そうま きょう)と名付けられたその子は、祖父と同じくオレンジ色の髪と目をしていた。母親は夾を可能な限り家から出さず、最終的には猫憑きを産んだことに耐えきれずに自殺。葬儀の席で父親は息子を責め、一族中が夾を化け物となじった。幼くして母を失った子供にかけるには、あまりに残酷な言葉ばかりであった。
第三者の目で猫憑きの処遇を見た藉真は、かつて自身が祖父にしたことがどれほど彼を傷つけたかを思い知る。藉真は「俺のせいじゃない」と叫ぶ夾を庇い、彼の気持ちに寄り添った。父親と一緒にはしておけず、藉真は夾を自身の経営する道場に引き取った。一族の中には、若くして猫憑きを背負い込んだ藉真を憐れみ、彼をおかしいという者もいた。
それでも、夾に一般常識や武術を教え、帽子を買い与えるなどできうる限りの教育や愛情を施す。初めこそ祖父への贖罪だったが、次第に藉真の心に父性が芽生えていった。やがて夾も藉真に懐いていく。
夾と同年代の物の怪憑きに、十二支の中で特に尊ばれる子(鼠)憑きの草摩由希(そうま ゆき)がいた。藉真には懐いた夾は、由希のことは嫌っていた。猫が宴に参加できなかったのは鼠に騙されたからで、自分とは違い恵まれている由希を、夾は敵対視していたのだ。
そんな折、夾は藉真以外で初めて自分に優しくしてくれた人物と出会ったと言う。夾が自分以外の人に心を開いたことを嬉しく思った藉真は、いずれその人物にお礼を言いたいと言った。しかし、ほどなく夾はその人物の話をしなくなる。

夾とのすれ違い

夾の成長に伴い、藉真は彼の学校から呼び出しを受けることが増えた。生来負けん気の強い夾が他の生徒と喧嘩することが多々あったのだ。ある日、学校に行くと夾が「師匠は俺の親父なんかじゃねえ!2度と俺と師匠を親子扱いするな!」と怒鳴っているところに出くわした。
藉真は、自分のしていたことが自己満足でしかなかったもかもしれないと思うようになる。それでも、夾を見捨てることはなかった。中学校を卒業してからしばらくしたある日、夾はいつも以上に憔悴して帰ってきた。尋常ではない夾の様子を見た藉真は、彼を山へと連れ出す。夾の真の姿を封じる数珠は、高名な僧侶の骨から作られていると伝えられている。他人の命の犠牲の上に成り立つ自分の存在を、夾は受け入れられないようだった。
夾が落胆している理由は、少年時代に出会った女性・本田今日子(ほんだ きょうこ)の死が原因だった。今日子は早くに夫を失い、女手一つで娘の本田透(ほんだ とおる)を育てていた。夾は次第に今日子や透を守るとの意思が芽生える。ある朝、透が行方不明になった。夾は自分が透を探すから家で待っていろと今日子に言う。しかし、透を見つけて母の下へと誘導したのは由希だった。夾は今日子の前で由希は嫌な奴だと言い、そのまま一方的に彼女に会わなくなった。
今日子を街で見かけたのは数年が経過した頃で、暴走した車が向かってくるのが見えた。今日子を抱き留めれば助けられたかもしれないが、それをすれば猫に変身し、正体がバレてしまう。自身の保身を取った夾の目の前で、今日子は車に跳ね飛ばされ命を落としてしまった。
自分の境遇や不幸は、全て由希のせいだと結論付けた夾は、それまでの憔悴が嘘のように元気を取り戻した。由希は戌(犬)憑きの草摩紫呉(そうま しぐれ)の家にいる。夾はその足で紫呉の家に向かい、そのまま彼の家に同居することになった。当主であり、十二支の神に当たる草摩慊人(そうま あきと)がそう命令した為だった。紫呉の家には透も住んでおり、十二支に関する記憶も消されずにいた。藉真はしばらく道場を留守にし、自身の修行の旅に出た。

猫憑きの試練

猫になった夾を抱えて帰る透。

旅から戻った藉真は、紫呉の家に挨拶に向かう。そこに夾、亥(猪)憑きの草摩楽羅(そうま かぐら)が現れた。その場ににいた透に挨拶をした藉真は、逃げるように自室に入った夾の下へと向かう。夾は、由希の前で藉真に会えた喜びを見せたくなかったのだ。その気持ちを知っている藉真は夾と再会を喜び合う。夾は一緒に道場に帰れると思っていたが、藉真は紫呉の家に残るように言った。この家で、透と共に暮らすのが夾にとっていいからだと藉真は説明する。しかし、夾は紫呉の家はぬるま湯のようで嫌だと返した。
実際のところ、夾は透との暮らしで癒しを覚えていた。それでも道場に帰りたいという言うのは、透に真の姿を見られたくないからだった。そのことを見抜いた藉真は、その日紫呉の家に泊まることにした。それは、透の目の前で数珠を外し、彼女に夾の真の姿を見せる為だった。街中で夾と透を見た藉真は、彼女なら夾の全てを受け入れてくれると踏んだのだ。しかし、確証があるわけではない。透が受け入れても、夾が拒絶する可能性もある。完全に心を壊し、藉真を憎むことさえ想定できる。それでも賭けてみたいと藉真は願い、紫呉にのみこのことを打ち明けた。
夜。夾を庭に呼び出した藉真は、そろそろ本当の姿のこともきちんと受け止めなくては前に進めないと諭した。夾はもうとっくに受け止めていると返す。自分の人生は猫憑きとして生まれた時点で終わっている代物であり、全ては子憑きである由希のせいだとも言った。
藉真は、幼い頃のように全てを憎み、不幸を由希のせいにすることでしか自分を保てない夾の腕を取り、数珠を外した。その場に、藉真に呼び出された透が現れる。透の目の前で異形化した夾は、その場から逃げ出した。その場に立ち尽くす透に、藉真は猫憑きの真の姿のことを話す。駆け出した透を見送る藉真は、祈るしかできなかった。
夜が明ける頃、猫の姿になった夾を抱いた透が戻ってきた。微笑んでいる透の表情から、夾が彼女と共に猫憑きの試練を乗り越えたことを悟り、藉真は安堵する。

藉真と夾のしばしの別離

翌朝、藉真は夾が眠っている間に紫呉の家を後にしようとした。透から夾に挨拶していかないのかと言われた藉真は、自分のしてきたことは夾にとって重荷だったのかもしれないと言う。そこに夾が現れた。夾は、逃げるように去ろうとした藉真に技を掛ける。反射的にその技を交わした藉真に、夾は心配ばかりかけてきたことを謝り、これからは師匠が自分の父親だと胸を張って言えるような奴になりたいと言った。夾は藉真を慕っていたが、それでも彼との親子関係を否定したのは、自分のせいで藉真まで悪く見られるのは嫌だとの気持ちからであった。
その言葉を受け、藉真は「まだまだお前は手のかかる息子だよ」と言って微笑む。

藉真と夾の父

後日、夾と透が藉真の家に昼食を食べに来ることとなった。張り切って料理をする藉真だが、小説家である紫呉の新刊を読みながら作っていたこともあり食事を焦がしてしまう。透がカレーを作ると言い、藉真も手伝おうとしたが夾が自分が手伝うと言い、藉真は居間で待つように言われた。
藉真が長かった髪を切り揃えていることを、夾が指摘する。髪を伸ばしていたのは夾の未来を案じての願掛けだった。しかし、透が現れた今、それも必要ないから切ったと藉真は言った。
台所を出ると、藉真の秘書でもある弟子の友田邦光(ともだ くにみつ)が「夾の父が来ている」と報告に来た。
対面をした夾の父は、「妻を殺した化け物」である息子の幽閉の相談に来ていた。妻の死も含めた自身の不幸は、全て猫憑きである夾のせい。それなのに、夾が幽閉もされず幸福でいるのが、父には我慢できないのだった。
藉真は、そんな父にかつての夾を重ね、自分が彼に協力する気はないと断言する。夾の父は、物の怪憑きを育てる者には多額の養育費が支払われるのを引き合いに出し、藉真が金目当てであると指摘。しかし、それは全くの的外れであった。藉真は、当主の慊人に反対されようとも夾を守るつもりだと夾の父に言い放つ。

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