草摩楽羅(フルーツバスケット)の徹底解説・考察まとめ

草摩楽羅(そうま かぐら)とは、高屋奈月の漫画『フルーツバスケット』に登場する、亥(猪)の物の怪に取り憑かれた人物である。猫憑きである草摩夾の妻になると公言し、可憐な美少女ながら、猪さながらの猛アプローチを繰り返す。夾を追いかけ始めた本当の理由は、彼の「真の姿」に怯えて逃げた過去をなかったことにする為だった。辻褄合わせで始まった恋だが、いつしか本当に夾を愛するようになっていた。夾の気持ちが主人公の本田透に向いていることもあり、最終的に身を引く。

草摩楽羅の概要

草摩楽羅(そうま かぐら)とは、高屋奈月の漫画『フルーツバスケット』に登場する、亥(猪)の物の怪に取り憑かれた人物である。登場時は高校3年生。基本的には淑やかな美少女で、人当たりもいい。十二支の一員になれなかった猫憑きの草摩夾(そうま きょう)の妻になると公言。猪特有の突っ走る性質もあって暴走することが多い。夾への想いは、「猫憑き本来の姿」と呼ばれる異形に怯えて逃げ出した過去を消す為の辻褄合わせとして始まった。長年夾を追う内に本気の恋になったものの、夾には本田透(ほんだ とおる)という想い合う相手がいたため身を引いた。

草摩楽羅のプロフィール・人物像

CV:三石琴乃(旧アニメ版)、釘宮理恵(新アニメ版)

猫憑きの草摩夾(そうま きょう)の妻になると公言し、事あるごとに彼にアプローチをする。おとなし気な美少女という容姿に対し、そのアプローチの仕方はまさに猪突猛進型。勢いあまって家の扉や壁を破壊することも多々ある。それでも傍若無人な非常識な人物ではなく、自身の行いを顧みる一面も持つ。猫憑きの夾を見下す気持ちがあり、そんな自分を醜いと感じる清濁入り混じった心情に蓋をするように、夾にアプローチをしていた。

草摩楽羅の能力

亥憑き

楽羅には十二支の亥の物の怪が憑いており、異性に抱き着く、もしくは体力が落ちると猪に変身する。作中では紫呉の家から飛び出した際、新聞配達の青年にぶつかってしまい変身。この時は由希のフォローで事なきを得た。
猪と意思の疎通ができ、何もしなくても猪が寄ってくる。夾は、かつて楽羅と山道を歩いていた折に大量の猪に囲まれたことがあると言った。

怪力

壁を破壊する楽羅(左)。

線の細い少女ながら、楽羅は度々紫呉の家の玄関や壁を破壊している。母が言うには、自宅の扉も破壊した模様。

草摩楽羅の来歴・活躍

夾との出会い

草摩楽羅(そうま かぐら)は、ある時2歳下の親類である草摩夾(そうま きょう)を見かけた。夾は他者と話すことを母親に禁じられており、1人で地面に目玉焼きを描いて遊んでいた。楽羅は夾に、一緒に遊ぼうと声をかける。夾は嬉しそうに顔を上げた。
楽羅、夾には共通点があった。草摩家は、数百年前から十二支と同じ動物、もしくは猫の物の怪にとりつかれた子「物の怪憑き」が生まれる家系だった。楽羅には猪、夾には猫が憑いていた。異性と抱き合う、もしくは体力が極端に落ちるとその動物に変身し、各々の動物と意思が通じる。そのほか特殊な能力はないが、物の怪憑きはかつて動物たちを招いて宴を開いた神を本能的に慕い、互いに見えない絆で強く結ばれていた。神もまた、人の姿で草摩家に生まれることがある。楽羅たちの代では草摩慊人(そうま あきと)が神として誕生し、物の怪憑きたちは神に等しい存在として草摩家の中で尊ばれていた。
しかし、猫である夾は例外だった。猫は鼠に騙されて宴に参加できなかった仲間外れの存在で、特殊な数珠を身に着けていないと怪物のような姿に変身してしまう。その為、歴代の猫憑きは蔑まれ、幽閉されるのが常だった。
夾の母が息子を誰にも接触させないのも、同じ理由に思われた。それでも楽羅が夾を誘ったのは、ある種の優越感からだった。尊ばれているとはいえ、動物に変身する我が子を受け入れられない物の怪憑きの親は多い。楽羅の親は娘を受け入れていたが、それでも両親は娘のことで喧嘩をすることがあった。幼いながらもそんな自身の境遇を哀しく思っていた楽羅だが、猫憑きの夾に比べれば自分は幸せだと感じられたのだ。
夾と仲良くなったある日、楽羅は嫌がる夾の数珠を強引に外してしまう。楽羅の目の前で、夾は腐敗臭を放つ異形の存在に変身。楽羅はその姿に怯え、悲鳴を上げて逃げ出した。

本田透と夾

真の姿を見た後でも、楽羅は夾との交流をやめなかった。むしろ、夾の妻になると公言し、彼に付きまとい始める。それに対し、夾はそっけない態度を取るようになった。成長する中で夾の母親が自殺をし、道場を経営する親類の草摩藉真(そうま かずま)が夾を引き取るとの変化があった。その道場には子(鼠)憑きの草摩由希(そうま ゆき)、丑(牛)憑きの草摩潑春(そうま はつはる)も通っており、楽羅も藉真の道場で武術を習い始める。中学校を卒業した後、夾は突如姿を消した。その後、夾が戌(犬)憑きの草摩紫呉(そうま しぐれ)の家に住んでいることを知った楽羅は早速紫呉宅に足を運ぶ。紫呉の家には、由希のクラスメイトである本田透(ほんだ とおる)という少女が同居していた。赤の他人ながら十二支の秘密を知った透だが、秘密厳守を条件に紫呉の家での生活が許されたという。
夾に会えた嬉しさと、彼が女性と同居している事実に楽羅は暴走してしまう。透から「そんなに人を好きになれるのは素晴らしい」と言われたこともあり、楽羅は透と仲良くなって一旦別れた。
夏が終わるころ、楽羅は修行の旅から帰ってきた藉真とともに再び紫呉の家を訪れ、一泊することになる。藉真は夾に猫憑きとしての試練と向き合わせるつもりだった。透との生活に居心地の良さを感じ、それが壊される前に紫呉の家を出ようとする夾は、自分の運命から逃げているのも同じだった。
透の目の前で数珠を外され、異形化した夾はその場から逃げ出す。透はしばし呆然とした後、夾の後を追って駆け出した。楽羅は透が本気で夾を想っていることを悟る。それでも、自身が身を引くことはなかった。

依鈴からの指摘

楽羅の家には、もう1人物の怪憑きがいた。午(馬)憑きの草摩依鈴(そうま いすず)である。依鈴は楽羅の姉妹ではなく、自身の両親に捨てられたため楽羅の家で引き取ることになったのだ。
依鈴は人を拒絶するような態度を取ることが多かった。夏のある日、どこかに出かけようとする依鈴に、楽羅は声をかける。夾たちが草摩家の別荘に泊まりに行っているから、自分たちも行こうかと言ったが、依鈴はそんな楽羅の言葉を遮った。「つじつま合わせの恋はもうやめたら。見ててイタい」と言い、依鈴は去っていく。
楽羅は自身の気持ちに向き合い、別荘から帰った夾を呼び出す。

楽羅の懺悔

楽羅の呼び出しを受けた夾は、自分も話があると待ち合わせの場所にやってきた。楽羅は、夾を見晴らしの良い場所へと案内する。そこは草摩の土地であり、かつて楽羅が夾の真の姿を見た場所でもあった。
楽羅は、少しずつ自身の懺悔を話し始める。夾に話しかけた本当の理由、今まで夾を追いかけていたのは、真の姿に怯えた自分をなかったことにする為だったこと。そのことで夾を傷つけていたが、その点には目を向けなかったことを、楽羅は告げた。
話を聞き終えた夾は、理由はどうあれ遊んでくれたことは嬉しかったと言い、自分を責めるなと楽羅に告げた。次いで、夾は「俺はお前を好きにはならない」と言った。その言葉は一見すると冷たいものだが、透を選んだ夾の決意だけではなく、楽羅の罪悪感を和らげる意味もあった。
楽羅は「すっきりした」と言いつつ、辻褄合わせで始まったはずの恋が、いつからか本気のものになっていたことに気づく。涙と共にその想いを吐き出した楽羅を、夾は黙って受け止めた。楽羅は誰の同情も同調も欲してはいなかった。泣くだけ泣いた楽羅は、泣き止むまで傍にいてくれた夾を想いながら、長年の恋にけりを付けた。

透の想い

透が夾に惹かれていると、楽羅は感じる。自分のように同情心からではない、本当の恋愛感情だということも分かるが、透は中々夾に想いを告げなかった。もどかしいと感じる楽羅だが、失恋したてでまだ立ち直っておらず、"負けた”と認識したくない気持ちもあって踏み込めなかった。
そんな中、透が藉真の家を訪れる。わけあって依鈴が藉真の家で暮らすことになり、挨拶に来たのだ。依鈴との会話の中、透は泣きながら自身の気持ちについて語り出す。透は十二支の呪いを解こうとしていた。それは皆を救いたいからと言うより、何より大切な夾を奪われたくないからであった。
そんな自分の気持ちを誤魔化していたという透の言葉を聞き、楽羅は思わず透を殴りつける。「そういうことは、ちゃんと本人に言いなさい!」 透の想いは同情からではなく、本物であった。
その後、透が崖下に転落するというアクシデントがあったが、夾と透は互いの想いを伝えあい、交際することになった。

解放の日

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