上を下へのジレッタ（手塚治虫）のネタバレ解説・考察まとめ

門前市郎と契約結婚していた元妻。テレビ局との契約を首になって仕事を干された門前から一方的に「契約破棄」の形で離婚されるが、門前との関係や仕事の手伝いをずるずると続けてしまう。大学を出ており、美貌と才覚を兼ね備えた女性だが、横暴な門前にいつも折れてしまう。
後に門前に絶縁を宣言し、繊維のバイヤーをしている男性と再婚してフランスへ向かう。

木座神明（きざがみ あきら）

国をまたいで活動しているプロモーター。エリザベス・テイラーを日本に呼んだ実績で知られている。世界的なミュージカルスターのジミー・アンドリュウスを日本に呼ぼうと画策していたところ、門前市郎に頼まれて「小百合チエ」の写真をジミーに送ることになる。

熊坂丁半（くまさか ちょうはん）

万朝日報の記者。門前市郎がデビューさせた「小百合チエ」が竹中プロにいた晴美なぎさなのではないかと疑い、身辺を嗅ぎまわっている。独占スクープを門前に断られたことを根に持ち、なんとかして門前の弱みを握ろうとあれこれ画策する。

竹中郁子（たけなか いくこ）

芸能事務所「竹中プロダクション」の社長。かつて番組の演出を担当した門前市郎を「無能」と罵ったことがあり、門前から恨みを持たれている。晴美なぎさを覆面歌手として売り出していたが、なぎさが勝手に覆面歌手をやめようとして公演を台無しにしたため首にした。

ジミー・アンドリュウス

世界中にファンがいるミュージカルスターで、稀代のプレイボーイでもある。木座神明に渡された小百合チエの写真をひと目見て彼女を気に入り、チエに会うためだけに強引に来日した。
実は美声とは程遠い声をしており、喉の奥に隠したマイクで歌っているという秘密を抱えている。

有木足（ありき たり）

40以上の肩書を持つ実業家。代表的な肩書は日本天然肥料製造株式会社代表取締役。門前市郎から「ジレッタ」を大勢の人の脳に放送する計画への出資を持ちかけられ、富士メトロポリスの裾野公園にジレッタ館を設立した。

御用金兵衛（ごよう きんべえ）

政界の大物。「ジレッタ」で大成功を収めている有木足に「政府にジレッタを使わせて欲しい」と持ち掛ける。「ジレッタ」で人を殺してしまった山辺音彦を、利益のために無罪にした。首相の塩釜を動かして「ジレッタ」の全国放送を実現した。

柳下土丈（やなか どじょう）

間リエの再婚相手。門前市郎がドイツで借りたライン川のほとりの城の対岸の家で、リエと共に暮らしている。繊維関係のバイヤーとして、主に海外に住む日本人相手に商売をしている。「日本人はバカで金を持っているから他国の人間に売るより楽」と考えている。
門前市郎のことは「空想を他人に見せるだけの商売をしている」と馬鹿にしている。リエのこともあって対抗心を燃やした門前は、最後のジレッタの大放送に執念を燃やすことになる。

『上を下へのジレッタ』の用語

ジレッタ

山辺音彦が建設途中のビルの地下に閉じ込められたことで発現した妄想世界。東京じゅうの音を1本の鉄柱が吸収、山辺の脳に共鳴したことで、彼の思考をもとにした空想世界を作り出す。この音波を機械で再現することで、特定の場所にいなくてもジレッタを作り出し、他人の脳にバーチャルリアリティーとして見せることができる。

『上を下へのジレッタ』の名言・名セリフ／名シーン・名場面

究極の妄想世界ジレッタ

山辺音彦の空想の世界ジレッタは、彼の漫画家ならではのイマジネーションが炸裂した無限かつ無秩序なビジュアルが繰り広げられる。日本にいながら世界中を旅することも、ふわふわと空を飛ぶこともできる。しかし山辺の考える「美女」が君子のビジュアルをしているため、登場する女といえばなんとも言えない容姿の者ばかりなのだ。また山辺がカレーを食べている最中のジレッタにカレーが登場したり、よかれと思って演出したドラマが人の命を奪う結果に繋がったりと、山辺の思うままとはいかないところがジレッタの魅力だ。