ブッダ(手塚治虫)のネタバレ解説・考察まとめ

『ブッダ』とは、漫画家・手塚治虫が手がけた、仏教を生み出した釈迦こと「ブッダ」の物語についての漫画作品である。少年漫画雑誌『希望の友』(潮出版社)にて、1972年〜1982年まで連載された。後のブッダである主人公「ゴータマ・シッダルタ」が苦悩しつつ仏教をどのように悟ったのかを描き出している。実在の人物と手塚治虫自身の創作の人物が入り混じっているも、2000万部を超える売り上げを記録し、非常に評価されている作品である。

シャカ族で構成される小国。
国力は小さく、隣にあるコーサラ国に常に脅かされている。

マガダ国

当時のインドで1、2を争う強国の1つ。
南方に位置している。
もう1つの強国であるコーサラ国とは緊張関係にあり、領土問題などが絶えないが、大きな戦争には発展していない。
玉座が高い位置にあることが特徴で、ブッダに「人を遠ざけてしまう」と指摘されてそれからは玉座の位置は下がったと思われる。
比較的争いを好まない国で、ビンビサーラ王をはじめとして冷静な決断を下せる人間が多い。

コーサラ国

マガダ国と並ぶ強国の1つ。
パセーナディやビドーダバなど、王が乱暴な性格をしているゆえか、残虐で侵略を好む。
軍力は群を抜いており、カピラヴァストウ程度ならば一晩で征服してしまえるほどである。
一方で強国のマガダ国には慎重に政治的交渉を行っている。

鹿野苑(ろくやおん)

ミガダーヤとも読む。
ブッダが悟りを開いた後に最初に説教を行った土地。
鹿が多く住んでいる。
五比丘を弟子にしたのもこの土地である。

沙羅双樹(さらそうじゅ)

復活・再生・蘇りの象徴。
ブッダが亡くなった時、その場所に生えていた木。
ブッダが亡くなる直前に白い花を咲かせ、死去した後にあっという間に花は散った。

竹林精舎

マガダ王国の王都の近くに建てられた寺院。
ビンビサーラ王がブッダのために建てた。
仏教で初めて建てられた寺院である。
祇園精舎に比べると質素に作られている。

祇園精舎

コーサラ国に建てられた寺院。
ジェータ王子が建設に関わったことから、ジェータ王子の文字、「祇」の字が入っている。
「祇園精舎」とは略称で、「祇樹給孤独園精舎」が正式名称である。
「給孤独」とは、ブッダのために全財産を使い果たした長者スダッタのことである。

『ブッダ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

シッダルタ「死をおそれない秘訣ってあるのかい?」アッサジ「なーんにも考えないことだニャ」

死が怖いシッダルタにとって、死の運命が間近に迫っているにも関わらず平気な顔をしているアッサジが不思議でならなかった。
そこでシッダルタが死を恐れなくなる秘訣をアッサジに問うと、「バカになること」だと言われた。
人間以外の生物たちは死の直前まで自分が死ぬとは思わず、故に死を恐れることもない。
アッサジは死について何も考えずにいることで死を恐れなかったのだった。
シッダルタにも「バカ」になるように言ったが、シッダルタはそう簡単に頭を空っぽにすることができなかった。

ブッダ「百人殺すのはよくない。だがな、ひとり生きながらえさせるのはとうとい百万人になるからな」

地割れの間に落ち込み、もう死を待つのみとなってしまったアヒンサーに向けたブッダの言葉。
アヒンサーは多くの人を殺してきたが、1人だけ赤ん坊を見逃したことがあった。
ブッダはそのことを取り上げ、その見逃した1人が子孫を増やし、百万人に増えるのだと説いた。
アヒンサーが見逃した1人が、いずれ百万人になり、アヒンサーは百万人を救ったことになるのだとブッダはアヒンサーに告げた。
アヒンサーも心の中で人殺しの十字架を背負っており、その言葉を聞いて気が楽になった。
ブッダを憎んでいたアヒンサーだったが、死ぬ直前にはブッダに弟子にしてほしいと頼んだほどだった。

ビドーダバ「ごみためから白いゾウなど生まれるものかッ!!」ブッダ「しかしその白いゾウはあなたを生んだ!!」

ビドーダバが「自分の苦しみはスードラの腹から生まれたことから始まっている」と主張するのに対してブッダが放った言葉。
しかし、ビドーダバの苦しみはそこから生まれたものではなく、「実の母親に悲しい死に方をさせてしまった」という後悔からくるものだった。
それを認めたがらないビドーダバに、ブッダは「貴族の庭園で生まれたどす黒いゾウ」と「ごみためから生まれた白いゾウ」のどちらを敬うか、とビドーダバに尋ね、ビドーダバは答えられずにやけくそになって上の言葉を口走った。
それに対して、ブッダは「白いゾウ」をビドーダバの母親と重ね合わせ、たとえゴミ溜めから生まれようともビドーダバにとっては彼の母親は「白いゾウ」、敬うべき人なのだと告げた。
その言葉を受けたビドーダバは言葉を失い、反論することができなかった。
カースト制と体裁を重んじるが故、ビドーダバはスードラの母親を素直に敬うことができなかったのだ。
しかし、ブッダはカースト制など関係なく、人間は同じ人間であるとビドーダバに説いた。

アナンダ「このアナンダはあなたの教えによって生まれ変わったのです!私という極悪人の人殺しが救われたんですよ!」

弟子のタッタがコーサラ国に戦を仕掛けて死に、シャカ族が滅亡したことを知ってショックを受けたブッダに対して、アナンダが励ましの言葉を投げかけた。
ブッダは自分が今までの人生で教えてきた「因果」が誰にも全く伝わっていなかったのではないか、と自分の人生さえも悲観していた。
しかし、アナンダは元人殺しからブッダの弟子になったことで、人殺しの罪悪感から救われていた。
アナンダはそのことをブッダに伝え、ブッダの教えはしっかりと人を救っているということを告げた。
それを聞いたブッダは元気を取り戻した。

ブッダ「あの微笑みは…まるで……神のようだった」

アジャセの額が腫れ、その腫れを引かせるためにブッダは3年間もアジャセの元へ通い詰めた。
初めは言葉を喋ることさえままならなかったアジャセだったが、やがて言葉も話せるようになり、初めてブッダに笑いかけた。
その笑顔を見てブッダはその笑顔を「神のようだ」と感じた。
そこからブッダは「誰でも人間の心の中に神が宿っているのだ」と悟った。
誰でも神になることができると知ったブッダは、その教えをこれから教えようと心に誓った。

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