そして父になる(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『そして父になる』とは、”赤ちゃん取り違え事件”を扱った、2013年制作の日本映画。TVドキュメンタリー出身の是枝裕和が監督・脚本・編集を担当し、主演の福山雅治が初の父親役を演じた。第66回カンヌ国際映画祭では見事に審査委員賞を受賞し大きな話題となった。ある日、突然6年間育てた息子が病院で取り違えられた他人の子どもだったと知らされた対照的な2組の夫婦が、過酷な決断を迫られ、それぞれに葛藤を繰り返す中で本当に大切なものを学んでいく姿を描く。

野々宮夫妻に、慶多が生まれた群馬県の前橋中央総合病院から突然の呼び出しがあった。病院の担当者と弁護士から話を聞く良多とみどり。そこで良多が病院側の二人に対し驚きの表情で聞き返した言葉。

「取り違え」と言うワードによって事件の発覚を気付かせる重要なセリフである。この言葉に対し弁護士は「ほとんどの事故が昭和40年代に起きてます。」と答え、病院の担当者は「赤ちゃんの足の裏にマジックで名前を書くのは昭和44年から廃止してます。」と説明した。このシーンの前、野々宮家の自宅で「病院から話したいことがあると電話があった」とみどりから伝言を受けた良多が「面倒な事じゃなきゃ良いけど…」とちょっぴり不安な表情を見せる場面がある。それが見事に的中し、しかもあり得ない話をいきなり聞かされた良多にとっては、その不安は計り知れない。そんな良多と終始俯いているみどりの表情が印象的だ。

「やっぱりそういう事か…」

慶多の生まれた病院で、出生時に当時の看護師による子どもの取り違えが起きていたことが判り、病院側の希望で良多・みどり・慶多はDNA鑑定を受けることになった。数日後。良多とみどりで病院に結果を聴きに行くと、良多・みどりと慶多のDNAが一致しなかった事が判明する。自宅へ帰る車の中で、放心状態の良多がウインドガラスを叩いて独り言のように呟いた言葉。その姿をみどりは無言で見つめた。

みどりは「やっぱり」という意味が気に掛かりずっと覚えていた。この言葉はやがて中盤の子供の交換が決まった事に納得のいかないみどりが、良多に向かって不満をぶちまけるシーンで伏線となって復活する。良多はこの言葉を呟いた事を覚えていなかったのだが、「やっぱりってどういう意味?慶多があなたほど優秀じゃないのが最初から信じられなかったんでしょ!」と、慶多を見て思っていたことをみどりにズバリと言われてしまい、返す言葉がなかった。
何気なく呟いた言葉のように思えるが、実は重要な意味があったという見事な伏線を張った名セリフである。

「負けたことない奴ってのは本当に人の気持ちが分からないんだな」

慶多の入学式を終え、野々宮、斎木双方の家族は再びショッピングモールにて会った。雄大から、認知症の父親もいて家は大変だという事情を聞いた良多は、雄大に「だったら慶多と琉晴の両方を引き取りましょう」と提案する。あまりに突飛で身勝手な提案に唖然とした雄大は「本気で言ってる?」と聞くと、「ええ、だめですか?」と真面目な顔で答える良多。雄大は思わず良多の頭を小突く。「私たちの子供じゃ不幸だというの?」と言うゆかりに「お金なら用意できます」と言う良多。その言葉に「子供を金で買うのか?」と堪忍袋の緒が切れた雄大が、その修羅場の最後に発した言葉。

このシーンの初めに、良多と雄大のやりとりがある。双方の子供との接し方の違いで段々と口論のようになり、雄大が「子供に大事なのは一緒に居る時間だ」と言うと、「僕にしかできないできない仕事があるんですよ」と強い口調で返す。カチンときた雄大が「父親かて取り換えのきかない仕事やろ」と良多を諭すような声で言う。同じ父親でありながら2人の正反対の生活環境と性格の違いを紹介するシーンともなっており、雄大を通して庶民の気持ちを代弁したような名セリフとなっている。

「もうミッションなんか終わりだ」

連休を取った良多は、みどりと琉晴を連れて群馬の斎木家に行った。だが雄大と一緒に居た慶多は、良多の顔を見るなり一人で外へ飛び出した。追いかける良多を無視するようにどんどん歩いて行く慶多は「パパなんかパパじゃない!」と感情を露わにする。慶多がこっそりと写真を撮ってくれていたこと感謝し、「できそこないだったけど、これでもパパだったんだよ。」とやさしい言葉を掛けながら徐々に近付いて行く良多が、最後に慶多に言った言葉。

自分の子供にしようと必死に努力した琉晴から「パパとママのところへ帰りたい」と本心を言われた良多は、この時もう限界を悟っていたに違いない。そして、内気な慶多が、良多やみどりと離れたくないという気持ちを密かに良多のカメラに残していたことに、良多はこれまで一緒に過ごしてきた6年間を思い出し涙した。ミッションを終わらせようと決意して斎木家に行ったが、慶多の思いがけない行動からこの名セリフが生まれ、感動のクライマックスシーンとなった。

子供と別れる前日の記念写真

子供との別れの前日、河原を訪れた野々宮と斎木の両家族。子供たちは凧揚げをし、父親同士、母親同士はこれからの過ごし方などをお互い確認し合った。そして、良多と雄大のそれぞれのカメラをセルフタイマーにして、全員一緒の記念写真を撮影した。

6年間一緒に過ごした子供との最後の時間になるかもしれない。両家族は、別れる辛さやこれからの不安を少しでも紛らわせるため、自然と触れ合った。そして全員で精一杯の笑顔で撮った写真は、新たな生活をスタートさせる区切りとなった。本作中最も感動を呼ぶシーンであり、本作の宣伝資料用のスチールとしても使用されている。

『そして父になる』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

タッグを組む是枝裕和監督と福山雅治との出会い

福山雅治に演出中の是枝監督(右)

本作の企画のスタートは、福山雅治が是枝裕和監督へ「一緒に何かをやる前提ではなく、良い空気が生まれたらその後のことを考えるという気楽な感じでお会いしませんか」と提案したことがきっかけだったという。福山はもともと是枝監督の製作スタイルに、自身の音楽活動に通じるものを感じていて、 「これは是枝さんでなければ成立しない、1人の人間が最初から最後まで目を通して作らないと完成しないんじゃないかと、すべての作品から感じた。自由な表現を現場で撮影して、最終的にご自身で編集して構築していく。それは、自分もレコーディングで気をつけていることでもある。監督のそういう製作の現場をのぞいてみたい、そういう作品に出演してみたいという思いがどんどん強くなっていった。」のだそうだ。その後、福山は知人を介して是枝監督との対面が実現。2度目の会合で打診されたのが子どもの取り違えをテーマにした、後に『そして父になる』になるプロットだったという。
是枝監督は、当時自身に3歳の子供がいたがなかなか一緒にいる時間がなく、そんな父親と子どもが、どうつながっていくんだということに日々悩んでいたらしい。「とにかく小さくて等身大の話を振ってみようかなと思った。ホームドラマで父親役はやったことがない福山さんに悩んでもらおうと思った。」と言う是枝監督に対し、福山にしてみれば初めての父親役だけに懸念があった。そこで「とにかく父親に見えないと思うので、大丈夫ですかね?」と是枝監督に打診したところ、「父性を獲得するというテーマなので、むしろ最初からそんなにすごくいいお父さんに見えていない方がいいと思うので、全然、大丈夫。」という回答があり、出演を決めたという。

子役の演技はすべてアドリブだった

本作で主役と言っても過言ではないほど重要な役柄である慶多と琉晴。
良多とみどりの元で6年間育てられ、おっとりした優しい性格の慶多を演じるのは、ヒラタビーンズ所属の二宮慶多くん(2006年8月生)。映画出演は本作が2本目となり、以降、映画やドラマに多数出演している。本作の前には、福山雅治の「家族になろうよ」PVにも出演していた。
慶多と対照的に、雄大とゆかりの間で育てられた伸び伸びとした性格の琉晴を演じるのは、エーライツ所属の黄升炫(ファン・ショウゲン)くん(2005年6月生)。中国系の名前だが滋賀県出身とのこと。
ドキュメンタリー出身の是枝監督は、子供たちには台本を渡さず現場で口頭によりセリフを伝えて演技をしてもらうという演出方針なのだそうで、あるインタビューで「子供たちそれぞれの個性に合う方法を見つけるのがノウハウと言えばノウハウだと思う。活発な子には自由に、おとなしい子にはそれなりの方法で接しながら少しずつ演技のトーンを作っていく。子供たちが演技する時には途中で切らず、自由に演技しなさいと解き放つスタイルで、無理やり演技を教えようとしない。」と語っている。本作でも子どもたちに台本は用意されず、シーンごとに気持ちを説明されただけであとはアドリブだったそうなのだが、2人の子役はしっかりとした大人顔負けの演技を披露しているのが印象的だ。

アメリカでリメイクが決定

スティーヴン・スピルバーグ(左)と是枝監督

本作が出品された、カンヌ国際映画祭で審査員を務めていたのが、『ジョーズ』や『インディ・ジョーンズ』シリーズなど数々の名作を世に打ち出してきた巨匠スティーヴン・スピルバーグ。今回、授賞式で初めて自分の名前が呼ばれ、しかも、スピルバーグが名前を呼んだことで素直に少年のように感動してしまったと言う是枝監督。
後の2013年9月28日、本作を見て惚れ込んだというスティーヴン・スピルバーグが是枝監督とロサンゼルスで対談した。その結果、アメリカの映画会社ドリームワークスで今作をリメイクする事が決定した。この日は東京・新宿の映画館で本作の公開初日舞台挨拶が行われており、監督不在で福山雅治ら主要キャストが出席していたが、その会場へ是枝監督が国際電話でリメイク決定を報告したという。その後の2014年に、『アバウト・ア・ボーイ』の監督としても知られるポール・ワイツとクリス・ワイツ兄弟がリメイク版の脚本家として雇われたと、Varietyが報じた。キャスティングも含め、アメリカ版ではどのような作品にリメイクされるのか、気になるところである。

『そして父になる』の受賞歴

chisong6494
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@chisong6494

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余命10年(小説・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

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『余命10年』とは、小説を実写化し2022年に公開された映画だ。生と死、希望と絶望といった深いテーマを背景に、登場人物たちの内面の葛藤や変化がリアルに描かれている。坂口健太郎と小松菜奈がダブル主演を務めるということでも注目を集めた。物語は、難病を患った女性と生きる希望を失った男性が出会い、お互いに惹かれていく二人を中心に展開する。彼らは自身の過去や不安と向き合い、新たな未来への一歩を踏み出していく。

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バクマン。に登場する物語・作中作・劇中劇・連載まとめ

バクマン。に登場する物語・作中作・劇中劇・連載まとめ

『バクマン。』とは、原作・大場つぐみと作画・小畑健による少年漫画作品。2010年にNHK教育テレビにてアニメ化された。 絵の才能を持つサイコーこと真城最高(ましろ もりたか)と、文章に長けた秀才のシュージンこと高木秋人(たかぎ あきと)がコンビを組み、『週刊少年ジャンプ』で売れっ子の漫画家になるべく研鑽するサクセスストーリーだ。 作中では主人公たちが描く漫画の他に、多くのライバル、仲間たちが作り出す多種多様な漫画が登場する。

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バクマン。の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

バクマン。の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『バクマン。(Bakuman.)』は週刊少年ジャンプで2008年から2012年まで連載していた漫画作品である。ジャンプで連載マンガ家を目指す中学3年生の真城最高と高木秋人は、ヒロインの亜豆美保と真城の「描いたマンガがアニメになり亜豆がそのヒロインの声優をやる」との約束をお互いの夢として努力を続ける。夢・友情・青春に関する数多くの名言が連載終了後も作品の魅力として語られ続けている。

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【福山雅治】芸能人がタバコを吸ってる画像と銘柄まとめ!【藤原竜也 など】

【福山雅治】芸能人がタバコを吸ってる画像と銘柄まとめ!【藤原竜也 など】

俳優、女優、ミュージシャン、ジャニーズ、お笑い芸人とタバコを吸っている画像と愛煙している銘柄をまとめています。福山雅治や藤原竜也など人気芸能人ばかりなのでぜひ最後までご覧ください!福山雅治は、日本のシンガーソングライター、俳優。所属事務所はアミューズ。所属レコード会社はユニバーサルミュージック。公式ファンクラブは「BROS.」。

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