今日も嫌がらせ弁当（映画）のネタバレ解説・考察まとめ

『今日も嫌がらせ弁当』の概要

『今日も嫌がらせ弁当』とは、シングルマザーの母親と反抗期の娘がお弁当を通じて交流する実話に基づくヒューマンストーリー。Amebaブログデイリー総合ランキングの1位にもなったKaori(ttkk)による『ttkkの嫌がらせだけのためのお弁当ブログ』の反響の大きかったお弁当と日記を抜粋したエッセイ『今日も嫌がらせ弁当』が原作である。エッセイ『今日も嫌がらせ弁当』は20万部を突破するほどの大ヒットを記録する。2015年に発行されたエッセイを元に、2019年6月にオリジナルストーリーも交えて映画化された。監督・脚本は代表作『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』の塚本連平が担当した。
ハリウッドで開催された映画祭『JAPAN CUTS HOLLYWOOD』のオープニング作品としても上映されて話題を呼んだ。『27thキネコ国際映画祭』で特別賞を受賞する。
原作者の指南を受けたフードコーディネーターが忠実に再現したお弁当の数々も見どころである。

舞台は豊かな自然に囲まれた東京・八丈島。シングルマザーの持丸かおり（演：篠原涼子）は、女手ひとつで2人娘を必死に育ててきた。家族に愛されていた夫・持丸島次郎（演：岡田義徳）は12年前に事故死してしまう。子供たちも大きくなり、ようやくかおりが甘えられると思った矢先に始まった次女・持丸双葉（演：芳根京子）の反抗期。返事も挨拶もしない双葉とどうにかコミュニケーションを取ろうと思ったかおりは、クールな双葉が嫌がるようなお弁当を作ることを思いつく。双葉の高校入学と同時に始まった嫌がらせ弁当は高校卒業まで続いた。双葉のお弁当は次第に先生や同級生の注目の的となっていく。
お弁当は次第に親子のコミュニケーションツールとなっていき、かおりから双葉に向けた海苔で作られたメッセージも乗せられていく。しつこいと感じながらも双葉はいつもお弁当を完食し、かおりからのメッセージを受け止めた。
かおりは一生懸命作ったお弁当を見てもらうためにブログを開設し、あっという間に人気ブログになる。熱心なブログ読者・岡野信介（演：佐藤隆太）との交流もしていく。
恋や将来に悩む双葉、病に倒れるかおり、親子関係に悩む信介たちをお弁当が繋ぐヒューマンストーリー。

『今日も嫌がらせ弁当』のあらすじ・ストーリー

反抗期

東京・八丈島の自然豊かな地で、持丸かおり（もちまる かおり／演：篠原涼子）は夫の持丸島次郎（演：岡田義徳）と2人娘の4人で仲良く暮らしていた。しかし4人での幸せな暮らしは長くは続かなかった。島次郎は交通事故で亡くなってしまったのだ。

夫の死から12年。かおりは女手ひとつで仕事を掛け持ちしながら、2人の娘を大切に育てていた。
長女の持丸若葉（もちまる わかば／演：松井玲奈）は高校卒業後は、八丈島で一人暮らししながら仕事をしている。高校1年生になる次女の持丸双葉（もちまる ふたば／演：芳根京子）は反抗期真っ只中で、かおりと共に暮らしていても口も利かない状態であった。朝に寝起きの悪い双葉をかおりが起こすが挨拶もなければ、お弁当を渡してもお礼すらない。会話は同じ空間にいても連絡アプリを使っていた。
反抗期の双葉が心を開くために何かいい方法はないか考えるかおり。ある日の深夜、月夜に照らされたお弁当箱を見ながらかおりはいいことを思いついた。

高校入学初日の双葉に、かおりは「あなたがそういう嫌な態度とるなら、私もあなたが嫌がることをします。態度を改めるまでね。」と言う。双葉はすぐにはその意味がわからなかった。
双葉が朝のかおりの言葉の意味を理解したのは昼食時だ。かおりはクールな双葉に赤ずきんのキャラ弁を作ったのであった。かわいいお弁当を同級生に見られて恥ずかしがる双葉。
帰宅した双葉はお弁当の文句をかおりにぶつける。しかし綺麗に完食してあり、文句ではあるが久しぶりの双葉との会話にかおりは喜んだ。
かおりは双葉に愛のある嫌がらせ弁当を作ることを決めたものの、毎日キャラ弁のネタを考えるのに苦労した。広告に載っていた芸人“スギちゃん”を海苔で作ったり、映画『リング』に登場する“貞子”のキャラ弁も双葉に持たせた。次第に同級生の間で双葉のキャラ弁は注目され、双葉がお弁当を開ける時には多くの人が集まるようになる。

ブログ

毎日の嫌がらせ弁当にうんざりしていた双葉だったが、いいこともあった。周囲にお弁当が注目されることによって、密かに思いを寄せる幼馴染の山下達雄（やました たつお／演：佐藤寛太）もお弁当を見にきたのだ。双葉は達雄に普段は恥ずかしくて自分から声をかけることはできないので、照れながらも嬉しく思った。
嫌がらせ弁当を始めてから3ヶ月もすると、かおりもさすがにネタ切れしてしまう。長女の若葉にいいアイディアはないか求めると「メッセージとか入れたらどう？」とアドバイスを受ける。
翌日、双葉がお弁当を開けると“皿は片せや”と海苔でメッセージが書かれていた。途端にメッセージの内容は先生や同級生に広まり、双葉はみんなに皿の片付けを促される。話は学校外にも広まり、帰り道には道端に居たおばあさんからも「双葉ちゃん、皿は片付けたほうがよかんのよ」と注意されてしまう。さすがにメッセージは双葉に響いたようで、その日の夕食では食べ終わった食器を流しに持っていった。普段かおりから双葉になかなか伝わらないメッセージを、お弁当を通じて伝えることに成功したのであった。

かおりは毎日苦労して作っているキャラ弁をブログにアップすることにした。徐々に読者は増え、人気ブロガーとなっていく。
妻を病気で亡くした岡野信介（おかの しんすけ／演：佐藤隆太）は、保育園に通う息子・岡野健太郎（おかの けんたろう／演：鳥越壮真）を1人で懸命に育てていた。お友達の凝ったお弁当を羨む健太郎を喜ばせたいと思った信介は、ネットでキャラ弁について検索する。するとかおりのブログが目に止まった。
ブログを参考にして試行錯誤してみる信介であったが、早朝から準備したにもかかわらず思いの外時間がかかってしまう。見栄えは悪く、栄養バランスも最悪であった。昼食時にお弁当を開けた健太郎は、ぐちゃぐちゃのお弁当にショックを受けてしまう。
信介はかおりのブログに助けを求めて長文でコメントすると、信介の丁寧な文面にかおりは好感を持った。そしてかおりは信介に弁当作りを教えることになる。
初めから難しいことはせず、かおりは信介に初歩的な“たこさんウインナー”の作り方を教える。信介が作ったお弁当はとても綺麗とはいえないがそれなりに可愛い仕上がりとなり、以前より副菜のバランスも良くなる。健太郎にも好評であった。
いつもは凝った双葉のお弁当のはずなのに、たこさんウインナーだけの日があって深読みする双葉と同級生たち。しかし同級生の中にかおりのブログ読者がいて、すぐに謎が解けた。

失恋

たこさんウインナー弁当を見た達雄は、いつもキャラ弁を作ってもらっている双葉に「愛されてるよな、母ちゃんに」と言う。達雄は母親にお弁当を作ってもらったことはなく、いつも購買のパンがお昼ごはんであった。
八丈太鼓を熱心に練習している達雄は、昼休みも練習に励んだ。上半身裸になり鍛え上げられた姿で太鼓を叩く姿に双葉は見惚れてしまう。しかし達雄には普通科の女の子と付き合っている噂もあり、双葉は達雄を見ているだけしかできなかった。
下校途中に影から達雄が太鼓を叩く姿を見つめる双葉を見かけたかおりは、達雄に対する双葉の気持ちに気が付いた。翌日かおりはここぞとばかりに凝った相合傘弁当を作る。お弁当を開けた双葉は思わず同級生からお弁当を隠した。

かおりと信介は、次第に互いの私生活についても相談し合うようになる。
信介は、自分がいい子にしていなかったから母親が亡くなってしまったのではないかと涙を流す健太郎を抱きしめながら心を痛めていた。父親だけで育てていくことに不安を感じていたのだ。信介は「差し支えなければ」と前置きした上で、かおりがどうしてシングルマザーになったのか尋ねた。
12年前のある晩、かおりは夫におつかいを頼んだ。その道中で夫は信号無視をしたトラックとぶつかって帰らぬ人となってしまう。かおりは、おつかいなんて頼まなければよかったと自分を責めた。そして父親がいなくても娘たちに苦労をかけないようにと必死で働いて家計を支える。仕事に出ているときは、長女に次女の面倒を任せきりになっていく。そんな生活が続いたら長女からSOSが出た。想像以上に幼い姉妹に負担をかけてしまっていたことにかおりは気がつき、貧しくても娘たちと向き合う時間も作るようにしてきた。ようやく子供たちが自立してきたところで始まった次女・双葉の反抗期。行き場のない気持ちをぶつけるために始めた嫌がらせ弁当であった。
かおりと信介は、お互いの気持ちを分かち合い原動力に変えていった。

双葉の高校入学から始まったかおりの嫌がらせ弁当は続き、卒業まで半年となった。相変わらず双葉は反抗期真っ只中で、会話もかおりの一方通行だ。
同級生たちの進路が決まっていく中、卒業後はどうしていいのかわからなくなってしまっていた双葉。想いを寄せる達雄は、八丈太鼓で世界を目指すそうだ。まずは東京で基盤を作ることを決めているという達雄の話を聞いて、双葉も島を出て東京での就職を決意する。

来年から小学生になる健太郎にひらがなを覚えさせたいと思った信介は、かおりに教わった海苔での文字作りを実践してみた。毎日一文字づつお弁当にひらがなを乗せていたが、お弁当を開ける度に健太郎の表情は曇っていく。信介は男親だけでもしっかり育て上げると前向きに頑張っていたが、健太郎と気持ちはすれ違っていってしまった。

太鼓の全国大会に出場する達雄にお弁当を作ってあげたいと思った双葉は、かおりに作り方を教わるために声を掛ける。双葉は海苔でメッセージを作りながら、気持ちを込めて作ることが大切だとかおりに教わる。かおりは夫との出会いのきっかけがお弁当であり、「お父さんともね、お弁当作って付き合うことになったからね」と話した。
双葉は一生懸命に作ったお弁当を渡すつもりだったが、達雄は別の女の子からお弁当をもらっていた。そして女の子は達雄の頬にキスをした。双葉は現場を目撃してしまい、失恋してしまった。

最後の嫌がらせ弁当

かおりは双葉を励ますが、双葉のショックは大きく再び反抗的な態度に戻ってしまった。追い打ちをかけるように、双葉が面接していた会社からの不採用通知の知らせが届く。
翌日、起きてきた双葉はテーブルにあった“無駄なことはない”とメッセージが乗せられたお弁当を床に叩きつけた。お弁当はメッセージと共に床に散らばった。話を聞くように双葉の部屋に入ろうとするかおりと双葉は揉み合いになり、ふすまが壊れた。かおりにビンタされた双葉は家を飛び出し、若葉の家に行く。
若葉の家で出てきた夕食のオムライスを見て、双葉はオムライス率の高さの理由を聞く。母親のかおりも、月末になるとよくオムライスを作っていた。一人暮らしで自炊するようになった若葉は、月末の家計が苦しい時に残り物でなんとか作れるのがオムライスであることに気がついたそうだ。双葉はかおりの苦労を知ることとなった。
翌朝双葉が家に帰ると、双葉の部屋のふすまはなかった。双葉の反抗的な態度にかおりは怯まなかったのだ。双葉の部屋のふすまを燃やし、焼き芋を焼いていた。かおりは「あなたが謝るまでふすまはありませーん」と宣戦布告する。双葉は小さい声ではあるが、反省して謝った。
昼食時に双葉がお弁当を開けると“やっぱり、無駄なことなんてない”とメッセージが乗っていた。双葉は「しつこ…」と声を漏らすが、両手を合わせ「いただきます」と言って笑顔でお弁当を食べた。

双葉は前向きにまた東京就職を目指した。ちょうどその頃、かおりは体に異変を感じ始める。
双葉の努力の甲斐あって、無事内定が出た。徐々に双葉がかおりに心を開いてきていたが、かおりの嫌がらせ弁当は続いた。就職先が決まったとはいえ、勉強をおろそかにしないように難解の漢字をメッセージとしてお弁当に乗せていた。
ある日かおりは雨の中、急いで洗濯を取り込んでいる最中に倒れてしまう。見つけた双葉は慌てて病院に連れていく。診断の結果、かおりは初期の脳梗塞であり入院が必要となった。双葉は東京行きを諦めようとしていたが、かおりは「今更やめるって、あなたを選んでくれた人たちに失礼でしょ。ここにあなたの居場所はありません」と突き放して応援した。

信介はひらがなを乗せたお弁当作りを続けていたが、保育園の先生から思いもよらぬことを聞く。健太郎はお弁当を食べずに捨てていたそうだ。健太郎は母親は話を聞いてくれたが、いつも一方的な信介は健太郎の話に耳を傾けてくれなかったことに不満を持っていた。帰り道、健太郎は感情的になってその場を逃げ出してしまう。健太郎を見つけた信介は、同じ目線になり健太郎と向き合う。健太郎のためを思って作っていたお弁当は、ただの嫌がらせのお弁当になってしまった。反省して謝る信介に対して健太郎は「パパ、またお弁当作って、ひらがなの。頑張るよ」と言う。2人は仲直りした。

安静を言い渡されて入院していたかおりであったが、最後のお弁当を作るために若葉の力を借りて病院を抜け出す。病院のベットには若葉がかおりの身代わりとなって横になる。若葉は看護師の見回りが来た際には、布団をかけて眠ったふりをした。かおりは一晩かけて丹精込めて大きなお弁当を完成させる。
卒業式当日、双葉は若葉から「謎の人物から、謎の贈り物」と言われて大きな包みを渡される。双葉は中身は何かわからぬまま学校に向かった。
卒業式が終わり、包みを開く双葉の周りにはたくさんの同級生たちが集まった。包まれていた2段になった大きなお弁当の上段には、みんなで食べれるようなかわいいキャラ弁が入っていた。下段は海苔で文字を書いたかおりから双葉に向けての表彰状であった。双葉は涙を流す。そしてみんなで美味しくかおり特製弁当を食べた。

双葉が東京に行く日、かおりはまだ病院にいた。双葉は置き手紙とお弁当を残して家を出た。若葉が家にあったお弁当に気がつきかおりに渡す。双葉からの手紙を読んだかおりは堪えきれずに涙を流す。お弁当を通して伝えていたメッセージはしっかり双葉に届いていた。双葉からの感謝の気持ちを受け取ったかおりは、急遽双葉の見送りに行くために再び若葉の助けを借りる。
かおりと若葉は急いでフェリー乗り場に向かうが、間に合わなかった。仕方なく、フェリーから見える崖のところで必死にフェリーに向かって手を振った。双葉に“左を見ろ”と連絡アプリでメッセージを送るかおり。崖の上にいるかおりと若葉の存在に気がついた双葉は大きく手を振りかえす。「双葉、愛してるよー！」と全力で叫ぶかおりの声と「お母さん、元気でねー！」と叫ぶ双葉の声は波音にかき消されながらも通じ合った。

東京で働く双葉は颯爽と街を歩くが、つまづいてしまう。少し微笑みながら、新生活を歩き出していた。
八丈島ではかおりと若葉が2人で海沿いを歩いている。八丈島に観光に訪れていた信介と健太郎は海沿いで写真を撮っている。ブログのコメントで信介たち親子の写真を見たことがあるためかおりは動揺しながらも「はじめまして」と挨拶をするのであった。

『今日も嫌がらせ弁当』の登場人物・キャラクター

主人公

持丸かおり（もちまる かおり／演：篠原涼子）

2人の娘を育てるシングルマザー。夫は12年前に事故死する。女手ひとつで、仕事を掛け持ちしながら育児を続けてきた。昼間は菓子工場、夜は居酒屋で勤務し、深夜まで内職もしていた。
次女の双葉が高校生になる頃に突然反抗期が始まる。挨拶も返事もない双葉への対応に困っていた。話ができないのであれば、胸の内をお弁当にぶつけることにして嫌がらせ弁当を作り始める。キャラクターやお笑い芸人で作ったキャラ弁や、海苔でメッセージを乗せてお弁当を作り続けた。
一生懸命に作っている嫌がらせ弁当を誰かに見てもらいたい気持ちになり、ブログを開設する。あっという間に読者が増え、人気ブロガーになった。読者の1人である信介とは、お互いにシングルということもあり、私生活を相談し合うような仲になった。
双葉の高校卒業間近、初期の脳梗塞で倒れてしまい入院が必要となる。それでも最後までお弁当を作り上げた。
東京に就職が決まった双葉とは離れて暮らすことになってしまうが、お弁当を通して親子の絆が深まった。

主人公の家族

持丸島次郎（演：岡田義徳）

12年前に信号無視をしたトラックとぶつかり、事故死してしまう。2人の娘にも愛されていて、家族想いの父親であった。
事故にあったときは、妻のかおりからのおつかいで塩を買いにいく途中であった。

持丸若葉（もちまる わかば／演：松井玲奈）

持丸家の長女。高校卒業後は八丈島で一人暮らしをしている。母親のかおりと同じ菓子工場に勤務する。
若葉のアパートは行き詰まった双葉の逃げ場にもなっている。しっかり者で、母親と妹にとって良き理解者である。

持丸双葉（もちまる ふたば／演：芳根京子）