CLAMP作品のスターシステムのネタバレ解説・考察まとめ
『カードキャプターさくら』、『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』を始め数々の漫画作品及びそれを基にしたアニメなどを世に送り出している女性漫画家集団・CLAMP。CLAMP作品の中には個性的なキャラクターが描かれており、スターシステムを採用することによって作品の垣根を越えて一人の登場人物が複数の作品に登場したり、共通した考え方、背景や設定を共有することが多くある。この記事ではキャラクター同士・作品同士の関連性を考慮しながら、CLAMP作品のスターシステムについて解説する。
『Wish』には天使が暮らす天界、悪魔が暮らす地界、人間が暮らす人間界と3つの世界があり、作中では天使と悪魔が人間界にやってきて生活する姿やハプニングが描かれている。
作品の設定として普通の人間は天界と地界の存在は認識していない。また、敵対関係に近い天界と地界は互いに不可侵の誓いをたて干渉しないようにしている。
物語は人間界で医者として働いている栩堂琇一郎(くどう しゅういちろう)が天界から消えた天使長・翡翠(ひすい)を探しに人間界にやって来た天使・琥珀(こはく)をカラスから救う場面から始まる。
助けてもらったお礼に琇一郎の願いを叶えたい琥珀であったが、彼には特に願いが無かったため願いが出来るまで側にいたいと申し出て半ば強引に共に暮らすようになる。
琇一郎と生活を共にしながら、探していた翡翠を見つけることに成功する琥珀であるが、実は翡翠は地界を制する魔王の息子・黒曜(こくよう)と駆け落ちするために、互いにもといた世界を捨て人間界に逃げてきていたことを知る。
黒曜も翡翠と合流するために琥珀の前に現れ、翡翠は神、黒曜は魔王から逃げるために二人でその場を去ろうとする。
しかし行き場のない二人に琇一郎は部屋を貸すことを申し出て4人の共同生活が始まる。
生活を共にするうちに互いに惹かれ合う琇一郎と琥珀であったが、琇一郎が寿命で突然の死を迎えた後に、神からの言付けに背き人間界に留まった罰として天使の力を奪われ、100年後に琇一郎の生まれ変わりが現れるまで眠ることになる。
そして100年後、目を覚ました琥珀は琇一郎と同じ魂を持って生まれてきた栩堂宗一郎を見つけ出し、幸せな生活を手にするのであった。
ここでいう琇一郎と宗一郎の関係は、『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』で多く登場する異世界の同一人物ではなく、あくまで同じ世界線で生きている同じ魂を持った生まれ変わりである。
『合法ドラッグ』、『ドラッグ&ドロップ』との関係性
『Wish』の後に連載された『合法ドラッグ』とその続きとして描かれる『ドラッグ&ドロップ』には、主人公・栩堂風疾(くどう かざはや)と火群陸王(ひむら りくおう)という二人の青年と二人をみどり薬局で雇っている店主・花蛍(かけい)と彼のパートナー・斎峨(さいが)が登場する。
本作では主人公の風疾と陸王は普通の人間として現時点では描かれているため、もともと天界、地界の概念はなく『Wish』との関連性は特になかった。
しかし『ドラッグ&ドロップ』で風疾が自身と同じ苗字の栩堂家を訪れた際に、庭にある藤の木で100年の眠りについている途中の琥珀に出逢っており、またその後にどこかミステリアスな存在としてそれまで描かれていた花蛍は翡翠、斎峨は黒曜の仮の姿であったことが判明する。
『Wish』と同じ世界線として描かれているかは不明であるが、ここでの翡翠と黒曜は琥珀が罰を受けて眠り続けている間は人間界に留まり、琥珀の大切な人と同じ姓を持つ風疾と彼と深い縁で結ばれている陸王、そして二人にとっての「ただひとりのひと」を守るという約束を神としていた語っている。
ここで風疾の「栩堂」という名字から『Wish』の栩堂家との関連があるように示唆されているが、実際の関係性についてはまだ明かされていない。
『こばと。』との関係性
『合法ドラッグ』、『ドラッグ&ドロップ』では罰を受け眠り続けている琥珀や目覚める時を待つ翡翠、黒曜が描かれている。そして同じく後に連載されいている『こばと。』には再び琥珀が登場している。
ここで登場する琥珀はすでに何度も「琇一郎と同じ魂を持つ生まれ変わり」との出会いと別れを繰り返していると語っており、もし同じ世界線であったとしても『Wish』の時代設定からかなり時間が経っていることが分かる。
『こばと。』は神の力によって人間界にやって来たこばとを主人公とした作品であることから、『Wish』と同様に天界、地界、人間界という共通した設定がある。
そしてその設定を基本として、さらにいずれにも属さない異界という世界が追加されている。
多くの作品に登場する「CLAMP学園」
CLAMP学園3部作の舞台
CLAMP作品には「CLAMP学園」という幼等部、初等部、中等部、高等部、大学・大学院の5学部を備える完全一貫教育の大型校が多く登場する。
登場の仕方は様々であるがCLAMP学園3部作と称される『20面相にお願い!!』、『学園特警デュカリオン』、『CLAMP学園探偵団』についてはCLAMP学園を舞台として物語が展開される。
通常の学校とは異なり、寄宿舎、研究所、映画館、銀行、病院などといったありとあらゆる施設が取り揃えてあるため、規模としてはもはや1つの都市のようになっている。
その為、敷地内には学生、職員、関係者を含め1万人が生活している。
入試の際に通常の試験とは別に「一芸入試」という特殊な制度を設けており、その合格者については特待生という位置づけとなりZ組に編入することとなる。
そこでは個別にカリキュラムを組むことができるようになっている。
「一芸」に関しては常識的な基準以外に制限がないので、様々な特技を持つ個性的な生徒が多く在籍している。
妹之山財閥が私財を投じて設立した財団法人CLAMP学園が運営をしており、『CLAMP学園探偵団』の主人公・妹之山残(いものやま のこる)は妹之山家の末子である。
東京湾岸の埋立地に位置し、敷地は直径3.2キロメートル、周囲10キロメートルのほぼ円形となっている。
円の内側には五芒星状に道路が敷かれ、それぞれの頂点に学部がひとつ置かれている。
各学部間の行き来を容易にするために、円周部と道路に沿った自動制御のリニアモーターカーが地下に走っている。
所在地は作中で明かされていないが、学園3部作以降に連載されている『X』では江東区の有明と若洲海浜公園と中央防波堤内側埋立地に囲まれた現実では海となっている場所に所在しているように描かれている。
他作品でも登場するCLAMP学園
学園3部作以外にCLAMP学園が登場する、もしくはCLAMP学園の関係者が登場する作品としては、『破軍星戦記』、『COMBINATION』、『東京BABYLON』、『X』、『魔法騎士レイアース』が挙げられる。
『破軍星戦記』は、ふゅーじょんぷろだくとから発刊されていた『KID'S』に4回掲載されたが、雑誌が廃刊となった関係でそのまま未完の作品となっている。学園3部作と同様にCLAMP学園を舞台としており、後に連載される『CLAMP学園探偵団』の主要人物の一人・鷹村蘇芳(たかむら すおう)が登場している。
尚、『X』に登場する麒飼遊人(ぎがい ゆうと)も本作が初出となっている。
『COMBINATION』は、元CLAMPメンバーの聖りいざ(現在は伊庭竹緒)による作品で、CLAMP学園が舞台となっているわけではないが、主要人物・佐々木圭司(ささき けいじ)がCLAMP学園の医学部出身である。
またCLAMP学園を運用しているとされる妹之山財閥の関係者も多く登場している。
『東京BABYLON』、『魔法騎士レイアース』についても舞台をCLAMP学園そのものが登場するわけではなく、『東京BABYLON』の皇昴流(すめらぎ すばる)と姉の皇北都(すめらぎ ほくと)がCLAMP学園の高等部、『魔法騎士レイアース』の獅堂光(しどう ひかる)、龍咲海(りゅうざき うみ)、鳳凰寺風(ほうおうじ ふう)がCLAMP学園の中等部に通っているとされている。
昴流については高等部を中退しているが、後の『X』では大学部に再入学をしている。
『X』では司狼神威(しろう かむい)の神剣の安置場所の役割を果たすこととなってからは、昴流と同様に神威、有洙川空汰(ありすがわ そらた)、鬼咒嵐(きしゅう あらし)、猫依護刃(ねこい ゆずりは)もCLAMP学園に編入し、敷地内で暮らしている。
複数作品に渡り対立する皇昴流と桜塚星史郎
『東京BABYLON』
1980年代を彷彿とさせる東京で巻き起こる怪奇現象を陰陽師・皇昴流が解決していく物語の『東京BABYLON』。
高校生の昴流は由緒正しき陰陽師の家系・皇家の当主でありながら、周りが心配するほど純粋で優しい青年である。
作中では昴流のよき理解者である姉・皇北都といつも優しい笑顔でサポート役を務める獣医・桜塚星史郎(さくらづか せいしろう)が主要人物として登場する。
物語が進むにつれ、実は星史郎が皇家と敵対する桜塚盛の跡取りで、人への情を一切持ちえない猟奇的な殺し屋であることが読者に明かされていくが、昴流はそんな一面に気が付かないまま彼に惹かれていってしまう。
最終的に昴流は自身の星史郎のことを想う気持ちをはっきりと自覚するが、本性を露わにした星史郎は昴流を好きになる努力をしたが特別だという感情を抱くことができなかったと昴流を殺そうとする。
祖母に助けられ昴流は何とか命拾いするが、彼の命がまたいつ狙われるか分からないと考えた北都は一人で星史郎を見つけ出し、殺される前に「彼が北都を殺した方法で今後昴流を殺そうとしたとき、その技が自分に返ってくるという術」を掛け、そのまま命を落とす。
北都が身代わりになったことを知った昴流は、星史郎に対する好意を捨てられないまま復讐することを誓い、愛憎混じる複雑な因縁関係が作られたところで『東京BABYLON』は完結する。
『X』で再び敵対する昴流と星史郎
『東京BABYLON』が完結後、新たに連載が開始した『X』で昴流と星史郎は再び登場している。
『X』では人間を守り現存する地球を存続させようとする七つの封印・「天の龍」と、人間を滅ぼし地球を変革を起こそうとする七人の御使い・「地の龍」の対立がテーマとなっている。
そして昴流は天の龍の一人として、星史郎は地の龍の一人として作中に登場し、あたかも『東京BABYLON』の続きのような形で二人の関係が再び描かれるのであった。
ただ『X』で描かれる昴流と星史郎について、CLAMP・大川はラジオ番組「CLAMP学園放送部」にて「何度も言ってるんですが、『東京BABYLON』は『東京BABYLON』で終わっていて、まったく続きはありません。昴流の話はあそこで終わっています」と述べている。
つまり天の龍、地の龍として再び敵対する昴流と星史郎はあくまで「異世界の同一人物」として描かれているのである。
作中では天の龍と地の龍が幾度も交戦し、昴流は右目の視力を失いながらもようやく星史郎と一対一での対峙することになる。
二人の激しい戦いが始まるが、天の龍の仲間たちが駆けつけたころには昴流の腕が星史郎の胸を貫通し、星史郎は昴流の胸の中で倒れていた。
それは昴流にとって望まぬ勝利であった。昴流は自身の願いとは「星史郎を殺すこと」ではなく、「星史郎に殺されること」だったのだ。
何故なら昴流は星史郎を殺して、彼がいない世界で生きていくことは考えられなかった。
そして彼が自分のことを石ころと同じくらいにしか思っていなかったとしても、彼に殺されたいと考えていたのである。
昴流は死にゆく星史郎から、彼が北都を殺した時と同じ方法で昴流を殺そうとしたとき、その技が自分に返ってくるという術を北都に掛けられていたことを打ち明かされる。
星史郎は術の内容を知りながら、昴流に同じ技を使っていたのである。
星史郎は息を引き取る直前に昴流の耳元で「昴流君。僕は、君を…」と言い、ある言葉をささやく。
読者には語られなかった言葉の続きを聞いた昴流は、「貴方はいつも、僕が予想した通りの言葉は…くれないのですね…。」と悲しい顔を浮かべ、二人の戦いは終わりを迎える。
その後、守るものを失った昴流は天の龍から地の龍へと変わる。
そして星史郎の右目を受け継ぎ、皇家当主でありながら、桜塚護の力を受け継ぐことになる。
『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』での昴流と星史郎
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目次 - Contents
- CLAMP作品におけるスターシステムとは
- スターシステムの代表作『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』と他CLAMP作品
- 『xxxHOLiC』との関係性
- 物語のリンク
- 共有される悲劇の起点
- 『カードキャプターさくら』との関係性
- 3人のさくら
- 強すぎる魔力がもたらす不幸
- 『Wish』からの派生
- 『合法ドラッグ』、『ドラッグ&ドロップ』との関係性
- 『こばと。』との関係性
- 多くの作品に登場する「CLAMP学園」
- CLAMP学園3部作の舞台
- 他作品でも登場するCLAMP学園
- 複数作品に渡り対立する皇昴流と桜塚星史郎
- 『東京BABYLON』
- 『X』で再び敵対する昴流と星史郎
- 『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』での昴流と星史郎