BLOOD-C（ブラッド シー）のネタバレ解説・考察まとめ

『BLOOD-C』のあらすじ・ストーリー

2つの顔

湖の岬にある浮島地区の神社に暮らす浮島神社の巫女「更衣 小夜（きさらぎ さや）」。
高校2年生の彼女は、神主の父「唯芳（ただよし）」を手伝い、父の知人「七原 文人（ななはら ふみと）」のカフェで朝食を食べ、学校ではクラスメイトの「網埜 優花（あみの ゆうか）」や双子の「求衛のの（もとえ のの）」と「求衛 ねね（もとえ ねね）」、委員長の「鞆総 逸樹（ともふさ いつき）」、寡黙な「時真 慎一郎（ときざね しんいちろう）」たちとの学園生活を楽しむ毎日を送っていた。

その一方、小夜は父の命により、〈古きもの〉と呼ばれる人間の力を遥かに凌ぎ、人を喰らうモノを狩るという「務め」を果たしていた。
〈古きもの〉を唯一倒すことが出来る武器「御神刀（ごしんとう）」を手に、独りで日々戦っていた。

そして、父から「小夜の母」は〈古きもの〉に敗れたことを明かされた。

約定

ある日、クラスメイトと一緒に文人のカフェでケーキを食べていると、町の警察からこの村唯一のパン屋さんの主人が行方不明という情報が入った。

夜、父の命により〈古きもの〉討伐に向かった小夜は、パン屋の主人らしき人を見つけて尾行したが、彼はやってきた電車に無意識のように乗り、その瞬間〈古きもの〉に殺された。

小夜は〈古きもの〉の討伐をするが、最後に「約定を守れ」と謎の言葉をかけられた。
翌日、その言葉が気になった小夜は父にそのことを話すが、うやむやにされてしまい、〈古きもの〉は倒すべきものと念を押された。
父を盲目的に慕っている彼女は、父の言葉を信じて、〈古きもの〉を倒すべくもっと強くならないといけないと決意した。

しかしそれ以来、小夜は時々フラッシュバックのようなものをみるようになった。
通学中や、文人のカフェでギモーブを食べた際に、光のような、刀のような映像が脳裏をよぎるのであった。

3人組の人を襲う鳥の形をした〈古きもの〉と戦う小夜。
この〈古きもの〉も人語を喋る存在であり、また「約定を守れ」と言われたが、父との約束を守り〈古きもの〉の言葉に耳を貸さずに討伐をした。

しかし、我に返った小夜は少し恐怖と疑問を覚えたのだった。

次の日の学校では、先生が町の平和をアピールしていた。
これまでの事件がまるで無かったかのように。

不審に思った小夜は、昨夜〈古きもの〉と戦った現場を訪れたが、何事も無かったかのようになっていた。
そしてまたフラッシュバックが起こり、覚えのない映像が脳裏をよぎった。

その夜、女性を襲っていた〈古きもの〉と戦い、激戦の中、手刀で討伐をした。
襲われていた女性に手を差し伸べたが、彼女は血相を変えて逃げ出してしまう。

覚えのない記憶

学校では雨で体育が中止となり、怪談話大会を開催することになった。
担任の「筒鳥 香奈子（つつとり かなこ）」がこの町の階段を話すことになり、この町には人ではないものが存在することを語り出す。
それがまるで〈古きもの〉そのものの話であり、その話が終わるとともに小夜はフラッシュバックをみて、気を失ってしまう。

小夜のお見舞いに訪れたねねであったが、そこに〈古きもの〉が現れた。
なんとか〈古きもの〉を食い止めた小夜であったが、ねねは喰べられてしまった。

討伐後、その惨事にショックを受けていた小夜であったが、父に「今は眠れ」と言われると、彼女は眠りについてしまった。
目覚めると、小夜の部屋に文人が訪れ、コーヒーを彼女に飲ませた。
すると、その直後に再び眠りについてしまい、覚えのない記憶を夢で見るのであった。
血の入れ物が沢山ある謎の部屋で、男性と小夜が会話をしていた。

学校の帰り道、小夜の前にねねの行方を探すののが姿を現した。
そんなののの影が〈古きもの〉となり、町の人々を襲い、ののを取り込んだ。
その影を倒した小夜であったが、ののを守れなかった小夜は再びショックを受ける。

そして、学校は休校となった。

小夜は父のことを知っている〈古きもの〉と遭遇した。
その〈古きもの〉は以前に小夜と戦ったことがあるようなことを仄めかしたが、小夜にはその記憶が無かった。
さらに、「戯言と偽り言で約定を違え続けているのは人だ！」と小夜が何も知らずに騙されていることも仄めかした。

討伐後、〈古きもの〉は「お前の真実を唯芳に尋ねてみよ」と言い残した。
〈古きもの〉から噴き出た血の海をすすろうとする小夜であったが、そこに時真が現れて正気に戻った。
小夜を心配した時真の真摯な態度に、小夜は〈古きもの〉との戦いの秘密を明かした。

それから、3日ほど平穏な日々が続いた後、学校が再開となった。
しかし、ついに学校に〈古きもの〉が乗り込んできて、次々とクラスメイトを喰べていった。

そんな中、またもやフラッシュバックが起きた。
記憶に無い戦いや、血の袋が沢山ある部屋など、あらゆる映像が脳裏をよぎった。
そして、〈古きもの〉は人を守るに小夜に「解せぬ」と言い、まるで小夜が人側の存在では無いことを匂わせた。

戦いの中、真澄までもが喰われてしまい、その怒りからようやく討伐することが出来た。
その後、香奈子先生が目の前に現れ、「これ、全部あなたが殺したの？」と問いかけられると、小夜は気絶してしまった。
目覚めると、時真が小夜のもとに訪れた。
彼と話す中、学校が再開したはずなのに、小夜のクラスであるB組しかいなかったこと、先生が香奈子しかいなかったことを不思議に思った。
そして、突然時真から告白されるが、小夜は彼に「どれくらい一緒にいましたか？」と尋ねた。
小夜は自分の記憶に疑問を感じ始めていた。

何かを思い出そうとしたとき、父が割り込み、時真は姿を消した。
小夜はついに父に疑問を投げかけた。

自身が本当に更衣小夜なのか、そして母親の名前が分からないことを告白した。
それに対して父は黙り込んでしまった。

さらに邪魔をするように、〈古きもの〉が現れて小夜を襲う。
この〈古きもの〉も小夜が人間でないことを仄めかす。

その戦いの中、小夜を心配した時真が姿を現すが、捕食されてしまう。
討伐後、フラッシュバックでみていた血の部屋と、この世界を行き来しているような夢を見ていた。
そして、目覚めるとギモーブを持ってきた文人が座っていた。

明かされる真実

担任の香奈子が、小夜の元に訪れた。
彼女にせがまれ、古文書がある自宅の蔵を見せることになった。
父が小夜に読み聞かせていた〈古きもの〉が書かれた古文書を香奈子が手に取るが、彼女の一言により小夜は不審に思った。
伝記を写した古い本であるはずなのに、古文書は新しい綺麗な紙で出来ていた。
そして、他の古文書を手に取り開いてみると、全て白紙の束であった。

それを見て混乱する小夜の前に、惨殺されたはずの求衛姉妹が現れ、香奈子と共に全てが「茶番劇」だったことを明かす。
慎一郎までもが現れて茶番劇の内容を明らかにした。

「ザ・サバイバル」と呼ばれる黒幕が仕掛けた実験であり、小夜と〈古きもの〉との戦いのために実験場としてこの町を作り、住人を集めた。
小夜と親しい人という役割を与えられた「メインキャスト」である求衛姉妹や時真は呪符を与えられており、〈古きもの〉に捕食されることはなく、小夜の目の前で喰べられた彼らは実際は「エキストラ」と呼ばれる参加者であった。

実験が長引いていることに苛立った香奈子は、彼らをそそのかして、本来のシナリオを歪める形で真実を小夜に突きつけた。
小夜は香奈子によって強引に〈古きもの〉の血を飲まされ、記憶を取り戻していく。

記憶の中で、今とは異なる制服を着ている小夜は、米軍基地のようなところで戦っていた。
そこに化け物を連れた謎の人物が現れ、彼らに捕まってしまう。
そして、血の袋が沢山ある部屋で謎の人物により、小夜は血を抜かれていた。

記憶が戻る最中、巨大な〈古きもの〉と文人が現れて、全ての真実を語りはじめた。

小夜は人間の姿をした人外の存在であり、〈古きもの〉の血肉を糧とする〈古きもの〉の上位種であった。
しかし、彼女は〈古きもの〉でありながら人を殺さない存在であり、心情も人間に近かった。

国の上からの指示で文人は彼女を捕獲して、生い立ちや環境、記憶を全て書き換えることで「小夜の根本を変える」実験を計画した。
実験のために、採取した小夜の血液で〈古きもの〉を使役して、この町や人物を用意し、偽の姓「更衣」を与えた。
文人が小夜に出していた食事やコーヒーも、小夜の記憶を操る薬物や〈古きもの〉から採取した血を用いて作ったものであった。

真実を知った小夜は我を失ってしまった。

黒幕

文人は小夜が記憶を取り戻したことを確認すると、自分の意に反して動いた時真・求衛姉妹・香奈子を不要と見なし、〈古きもの〉の餌にした。
香奈子だけは辛うじて、我に返った小夜に救助されるが、小夜の血を投与されて〈古きもの〉の姿と化した唯芳に喉を食い破られて絶命する。

文人に命じられて小夜に襲いかかった唯芳を倒した小夜に満足した文人は、小夜の友人役だった優花や逸樹、そして自分に忠実な私設兵団と共に去ろうとした。
しかし、逸樹は小夜と過ごした日々の中で彼女を本当に愛してしまったため、私設兵に銃撃される彼女を庇い、射殺される。

小夜は文人の理不尽な所業の真意を問いただすべく、彼の計画のエキストラ役だった町の人々が〈古きもの〉の集団によって喰い殺されていく惨状の中を駆け抜け、ついに文人と優花を乗せて飛び立ったばかりのヘリコプターに追いつき跳躍した。
しかし、そのことを予見していた文人の銃撃によって左眼ごと左頭部を吹き飛ばされてしまい、そのまま湖へ落下してしまう。

しかし、小夜は生きていた。
誰もいなくなった町の水辺で左頭部の再生を待ちながら、茶番劇とはいえ楽しかった日々を思い出していた小夜は、まだ再生が完了していない左眼をスカートの裾で覆い、ヘリコプターの飛び去った方向へ駆け出す。
そのはるか彼方には、東京の街並みが広がっていた。

半年後

惨劇から半年後、小夜は復讐のため、文人を追って東京都へ来ていた。

東京都では、青少年育成を目的とした保護条例が半ば強引に可決され、未成年者の夜間の外出が制限されるなど厳格な規制が敷かれていた。

ある夜、運行中の東京メトロの車両内で1人の乗客が突然怪物化して、他の乗客を喰い殺していった。
しかし偶然乗り合わせいた小夜の力に怯え、逃げ遅れた少女をとらえて電車から逃げ出してしまった。
小夜は怪物を追いかけて、さらわれた少女「柊 真奈（ひいらぎ まな）」を救出した。

その後、怪物の目撃者を確保しようとする文人の組織から追われる身となるが、真奈が所属する組織「サーラット」の仲間の協力のおかげで逃亡することに成功した。
そして、サーラットのリーダー「殯 蔵人（もがり くろと）」から、招待を受けて組織のアジトへ向かった。

殯は文人によって「自由」を奪われた過去から、復讐を考えていた。
そして、文人は自身が会長を務める世界的企業複合体「セブンスヘブン」と、秘密組織「塔」の2つの力を使い、あることを成し遂げようとしているのだと語った。

小夜は彼からサーラットへの協力を要請され、「文人は自分の獲物である」と宣言して、協力を受け入れた。

蔵人と文人

殯は、屋敷の地下に隠された一室へと小夜を案内した。

遙か昔に〈古きもの〉と人間との間に交わされた約定「朱食免」（〈古きもの〉が特定の人間を捕食しない代わりに、それ以外の人間は捕食しても良いという、大昔に交わされた約束）。
この朱食免を取り交わし、〈古きもの〉の存在を隠匿してきた家系、それが殯家だった。
表の殯家と、秘術で殯家を助ける裏の七原家、この両家を合わせて塔と呼ばれていた。
しかし、6年前のある日、文人は「朱食免」を手に入れるために武装部隊を引き連れて屋敷を訪れ、殯は目の前で両親を殺害された。
殯は、家族を奪われた復讐のため、文人を殺してくれと頼んだ。

文人との再会

文人についての情報を調べていたサーラットの「月山 比呂（つきやま ひろ）」は天才的ハッキング技術により、彼が私立十字学園へ講演のために訪れる、との情報を手に入れることに成功した。

真奈が通う十字学園。
彼女は小夜に制服を貸して、小夜と共にこの講演へ潜入することとなった。
そして講堂で学生達の前に文人が姿を見せたが、その時、突然警報が鳴り響いて学生たちに避難指示が出た。

逃げ出す学生の中、小夜は怒りを滾らせて文人斬りかかるも、そこにいた文人は彼が秘術で作り出した偽者だった。
そして一匹の巨大な〈古きもの〉が小夜に襲いかかった。
傷つきながらも〈古きもの〉を打ち倒した小夜は真奈と共に脱出を図るが、扉には電子ロックが掛けられており、真奈が解除を試みた。

直後、塔の実行部隊指揮官の「九頭（くとう）」が襲いかかってきた。
実力では小夜の方が勝ったが、彼女には人である九頭を殺す事は出来なかった。
「だから誰も守れない」と笑う九頭は、電子ロックを無事解除した真奈に剣を突きつけ、小夜を討とうとするが、そこにサーラットメンバーの車が飛び込んできて、二人を救出した。

しかし、全ては文人の計画だった。
嘘の情報を流し、小夜の血を手に入れるための罠だったのだ。

決意

傷ついた小夜を心配する真奈であったが、傷が既に治りかけていることを見せた。
そして、安心した真奈は小夜に自分の過去について語り出す。

早くに母を失い、父子家庭に育った。
父は新聞社に勤めており、セブンスヘブンについて記事にしようとしていたが、上からの圧力で取材は中止となった。
それでも諦めずに独自に調査を続行していた父の力になろうと、真奈は得意のパソコンを使ってセブンスヘブンのネットワークにハッキングして、セブンスヘブンを通じて多くの人々が塔へ送られて行方不明になっている情報を突き止めた。
その情報を手に、文人に面会することとなった父だが、父はその日を境に戻ってこなかった。
以来、真実を知るのが恐ろしくて、真奈はネットワークを介して調べることもハッキングすることも出来なくなった。

しかし、真奈は自分が信じて決めたことに向かって生きる小夜の生き様を感じ取り、逃げることを止めてハッキングすることを決意した。
真奈のハッキング技術は、比呂にその技術を教えるほどの実力である。

潜入

比呂らと夜を徹してハッキングを行う真奈。
そんな真奈にコーヒーを差し入れる小夜に、真奈は殯が自分たちのために入れてくれたコーヒーであり、小夜にも飲んで欲しいと語っていたことを告げた。
小夜はこれまで彼らの出すものにも口を触れようとしなかったが、真奈の心に触れてコーヒーを口にした。
その直後、ついに真奈は文人の拠点を発見した。

文人は東京湾の埋め立て地にあるビルに身を潜めていた。
小夜は真奈たちのバックアップを受けながら、塔の本拠地へと侵入を図る。
しかし、彼女の侵入を事前に察知していたかのように、迎撃態勢を整えていた。

文人のもとへ向かう小夜の前に九頭が立ちはだかった。
腕を切り落とすことは出来たが、小夜は人である彼を殺すことは出来なかった。
九頭は文人の指示である物体を頭へと張り付けると、人から〈古きもの〉へと変化し、敵味方構わずに襲い始めた。

小夜は彼を打ち倒して、文人のもとへ向かうが、小夜を映し出すモニターに囲まれた部屋に辿り着いたとき、全身から力が抜けて倒れてしまった。

真相