CLAMP作品のスターシステムのネタバレ解説・考察まとめ

CLAMP作品におけるスターシステムとは

日本の女性漫画家集団であるCLAMPは『カードキャプターさくら』、『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』を始め、数々の人気作を世に送り出している。
それぞれの作品には個性的なキャラクターが多く登場し、ストーリーもシリアスなものからコメディ、日常物からファンタジーに至るまで幅が広い。
CLAMPが作り出した作品やキャラクターが多い分、スターシステムとしてある作品で登場していたキャラクターを他作品の脇役として登場させたり、ストーリーの基本的な設定や背景を共有していることも多くある。
そしてスターシステムを採用した作品が多い分、CLAMP作品にはよく「同じ魂を持つ別の人物」が登場する。
例えば1つの作品中、もしくは複数の作品に同じ名前、外見のキャラクターがいる場合、彼らは必ずしも同一の存在ではなく、あくまで同じ魂を持った別人だという考え方を基本としている。
様々な作品のキャラクターがスターシステムで多く登場している『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』では、魂を同じくする別人のことを「異世界の同一人物」、「同じだけれど違う人」という言葉で表現している。
その為、元となっているキャラクターが得た経験や記憶や人間関係までは共有せずにあくまで独自の存在として生活していることが多い。
また同じ魂を持つキャラクター達は必ずしも同じ名前、同じ外見とは限らず、その点が物語のキーポイントになっているケースもある。

スターシステムの代表作『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』と他CLAMP作品

CLAMP作品の中でも色濃くスターシステムを採用しているのが『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』である。
本作は『カードキャプターさくら』の主要人物である木之本桜（きのもと さくら）と李・小狼（リ・シャオラン）の「異世界の同一人物」を主人公として配置しており、サクラ姫が失った記憶の羽根を取り戻すために異次元を旅をする物語である。
この異次元の旅をしていく中で他CLAMP作品の登場人物たちが異世界の同一人物として多く登場しており、CLAMPの過去作品を読んできた読者はより楽しめる作品となっている。

作品の冒頭で魔術師の飛王（フェイワン）・リードの手により記憶の羽根を失ったサクラ姫は危篤状態となってしまう。
成す術のない小狼は神官・雪兎の力によって異次元へと渡り、侑子の助けを得るために対価を支払うことで、サクラ姫を助けるために記憶の羽根を取り戻していく。
しかし物語が進むにつれて段々と彼らの旅自体が魔術師の飛王によって全て仕組まれたものであることが分かっていく。

『xxxHOLiC』との関係性

物語のリンク

同時連載されていた『xxxHOLiC』のキャラクターについては、異世界の同一人物として『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』に登場しているわけではなく、全くの同一人物として登場しており、且つ物語が完全にリンクしている。
両作品のキャラクター達が互いの物語に影響を及ぼしたり、異世界や夢の中へ行き来することで出会い、互いのことを認識しているのである。
基本的には『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』の小狼とサクラ姫の物語が中心にあり、『xxxHOLiC』に登場する次元の魔女・壱原侑子（いちはら ゆうこ）が二人の行く末を見守り、彼女の元で働き実はもう一人の小狼である四月一日君尋（わたぬき きみひろ）も無意識のうちから何かしらの影響を受けるという構図になっている。

共有される悲劇の起点

『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』では登場人物たちが大切な人を亡くしたりするなどの悲劇的なシーンが多く描かれる。
それらの悲劇は飛王によって仕掛けられたものである。
彼は自分の願いを叶えるために、邪魔な者は容赦なく排除し、自身の駒として動かしたい人物を悲しみによって奮い立たせ思い通りに行動させている。
彼の願いとは「ある人を生き返らせたい」というものであり、その願いはファンタジーに位置づけられる本作中でも世の理に反する禁忌とされていた。
そして物語が進むにつれ飛王が生き返らせたいと切望している相手というのが、死ぬ直前で時を止められたまま異空間で暮らす侑子であることが判明していく。
このことから悲劇的なストーリーが始まった原因は両作品の登場人物にあったことが分かる。

『カードキャプターさくら』との関係性

3人のさくら

『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』には、3人のさくらが登場する。
主要人物として描かれるサクラ姫とサクラ姫の写身、そして異世界の同一人物で『カードキャプターさくら』の世界と同じような背景を持つとされるさくらである。
写身とは本体となる人物から身体や魂を写して創られた存在のことで、サクラ姫の写身は飛王の願いを叶える為に創られた。

異世界のさくらはサクラ姫の写身の夢に現れ、小狼一行の助けになればと自身の魔法の杖・星の杖を差し出す。
ここで登場する星の杖は『カードキャプターさくら』の主人公・さくらが使っている魔法の杖と酷似している。
また彼女は『カードキャプターさくら』のさくらが口癖のように使っている「絶対大丈夫だよ」というセリフを口にしている。

夢に現れたさくらが差し出した夢の杖が何故『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』の世界で小狼たちの助けになるのかというと、「願いを叶えるためにはそれと見合った対価が必要」といった『xxxHOLiC』の世界で強く根差し、またリンク作品の『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』にも共通している考え方があるためである。
『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』で侑子が小狼一行を助ける際にも手放しに何でも手助けできるわけではなく、常に願いに見合った何かを要求しなければならないし、逆を言えば見合った対価が支払えるレベルの願いしか叶えてやることはできない。
その為いかに大きな対価を支払って自身の思い通りに事を進められるかが、物事を有利にしていくための重要なポイントとなっている。

強すぎる魔力がもたらす不幸

『カードキャプターさくら』には魔法のカード・クロウカードやクロウカードを守る者としてケルベロス、月が登場する。
これらは全て偉大な魔術師のクロウ・リードが創り出したものである。
さくらがクロウカード集めに奮闘する姿が描かれるクロウカード編ではクロウは既に故人であり、ケルベロスや月は彼は気の優しい変わり者であったが、魔力については彼に勝るものはなく、最強の存在であったと語っている。
しかしさくらカード編では彼の生まれ変わりで魂の半分を受け継いでいる柊沢エリオルが登場し、クロウが自身の強すぎる魔力に悩まされていたと打ち明している。
このことから本作では強すぎる魔力は術者に不幸を招くという考え方があり、実際に同じく強い魔力を持つ主人公・さくらの前にも試練が立ちはだかっている。

そして『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』にもこの考え方が共通している。
死の直前で時間ごと切り取られてしまった侑子を生き返らせようと飛王が企むことにより様々な悲劇が起こるが、そもそも死の直前で侑子の時間を止めてしまったのは彼女の良き友人であったクロウなのである。
クロウ自身は死ぬはずの者を生き返らせることは禁忌であることをよく理解しており、彼自身は魔力を使って侑子の寿命を延ばそうとは考えていなかった。
しかし死んでほしくないと少し思っただけで彼の強すぎる魔力が発動してしまい、侑子をこの世とあの世の境に留めることになってしまったのである。
そこから飛王が関係のない人々まで犠牲にして巻き起こす悲劇が始まり、クロウはもとのあるべき運命に軌道を戻すため、また飛王の犠牲になった人々のために自身を犠牲にして亡くなる。

『Wish』からの派生