Maison book girl(ブクガ)の徹底解説まとめ

Maison book girlとは、2014年11月5日に結成された日本のアイドルグループ。作曲家・音楽プロデューサーのサクライケンタとBiSのメンバーであったコショージメグミを中心として誕生。サクライケンタの「現音ポップ」と称する変拍子を多用した楽曲をバックにコショージメグミが詞の朗読を行うというパフォーマンスを発展させた形といえる。一筋縄ではいかない「現音ポップ」に合わせてパフォーミングを行う、という独自の世界を持っている。2021年5月30日、活動終了が公表される。

井上唯

井上唯。
音楽活動はブクガしかやらない
──皆さんに2020年に入ってからのことを聞いています。「Solitude HOTEL ∞F」はすごいライブだと思ったのですが、井上さんは手応えとしてはいかがでしたか?
今までで一番やりきった感じがありました。過去のワンマンも達成感はあったんですけど、反省点も多くあって。「∞F」は楽しかったという記憶が一番強いです。終盤に向けてやることがたくさんあって、そこに集中できたのもあると思うし、チケットが完売したから余計そう感じたのかもしれないですね。
──矢川さんやコショージさんとは、過去のインタビューでよく「このタイミングで売れたい」と話していたと話題になったんですが、あれだけのライブをやれたら「これでいける」と実感できたと思うんです。
はい。毎回ワンマンのあとはそう思ってるんですけどね(笑)。
──その勢いのままベスト盤を出して、ツアーが始まって、というプランがあったと思うんですが、コロナウイルスの感染拡大で予期せぬ自粛期間に突入することになり。この期間はどんなことを考えていましたか?
残念ではありましたけど、今になってみるといい面もあって。ライブ中は歌ったり踊ったりすることに集中しちゃって、客観的に見れないんですよね。YouTubeで配信企画を行うにあたって、みんなで昔のミュージックビデオとかライブ映像を観る機会があったんです。普段とは違う目線で各映像をチェックしたら、すごいカッコいいことをしてるなって。ベスト盤を出すのはこれまでの活動を振り返る機会にもなるし、ちょうどよかったなって思いました。
──ずっと走り続けているとなかなかできないけど、ゆったり振り返ることができたと。
いつもだったら余裕がないんでしょうね。レコーディングも収録中は一生懸命やってるんですけど、終わってみたら「もうちょっとできたな」と反省することがよくあって。そういうタイプなので、これだけ距離を置いてブクガの活動を振り返ることができたのはよかったです。これまでもトークイベントとか、過去のライブ映像を観る機会はあったんですけど、ただ「がんばれ!」みたいな気持ちになっちゃうんですよ。今はそれがなくなって「めっちゃカッコいいじゃん」「『夢』ってこんなによかったっけ、めちゃめちゃきれいじゃん」って思いました。
──引退した人が昔の自分を振り返った感想みたいな(笑)。
もうそのくらい距離を置いているような感じです。いや、知ってました? 毎度毎度いい作品なんですよ。
──知ってました! この春活動が止まってしまったときに、「自分から歌とダンスを取り上げたらどうなるんだろう」みたいなことは考えました?
いや、私は歌とかダンスがなくても社会で生きていけるタイプなので。
──おお。ほかのメンバーにはなかった意見です。
いや、わからないですよ? 自分ではそう思ってるんですけど。
──普通に就職できる。
なんとなくそういう自信があります。ほかのメンバーと比べると、くらいの感じですけど。逆に歌とかダンスのほうが意識的にがんばってることだから、なくなったら普通の生活を送るんだろうなって。この期間じゃなくとも、普段からそういうことを考えてます。
──そうなんですね。
だってブクガしかやる気がないので。Maison book girlでしか音楽活動をやろうと思っていなくて、ほかのグループに入ろうとか、ソロで活動しよう、みたいな気持ちもさらさらないんです。

順応したらこっちのもんですよ
──なるほど。自粛期間中に何か別のことをしようかなと考えたりしました?
この期間に何かできるようになれば……って最初は思ったんですよ。
──思いますよね。
生産性のあることをしようって。でも途中から「そんな無理してやること、なくない?」みたいな考えに変わっていきました(笑)。「何かやらなきゃ」って気張ったところで身になるのかなって思ったり。歌もダンスもやってみたんですけどね。
──自主練を。
やったにせよ、しょせんは家だから。よく「家でゴルフの練習をしたらフォームが小さくなる」とか言うじゃないですか。ダンスも同じで、ひさしぶりにスタジオで踊ったら動きがちっちゃくなってたんですよ。無理してやるものじゃないなと思いました。だから楽しめる程度というか、気休め程度にやるべきでしたよね。
──そんなに焦ることもなかったんですね。
最初は鬱っぽくなるんですよ。「ヒマで何もやることないな」とか。でも、それも1周したらこっちのもんですよね。
──環境に順応していきますよね(笑)。
友達と話してても、「仕事がなくなってお金の心配とかしてても、1周したらのんきになるよね」って(笑)。心配していた親には「ヤバい」と言ってましたけどね。実はわりと元気でした。なんなら3年前に伸び悩んでいた頃のほうが焦ってました。
──そういう時期があったんですね。
あの時期があって強くなったんですかね。今も伸び悩んでいないわけではないんですけど、視野が広がったというか、「代わりにこっちでがんばろう」って考えられるようになって。大人になったんですかね? 20歳前後は今より考え方も未熟だったと思いますし。

「唯ちゃん、自分を持って!」
──この5年でどこが変わったと思いますか?
4人共見た目から何から、全部変わりましたよね。「Solitude HOTEL 1F」の映像も、今だと「子供みたい。がんばれ!」って目線で観ちゃう。別のグループみたいですよね。いろんな人の助けを借りながら変わっていったんだなと。
──最近の変化はHIROMI先生が入ったことですよね。
「∞F」は初めてHIROMI先生が参加した「Solitude HOTEL」だったんですよ。コショージもセトリとかストーリーを決めるうえで相談する人が必要だから、今まで以上に作り込めた部分があったんじゃないかなと思います。それに歌も変わった。私の声の出し方はほかの3人とは全然違うらしいんです。でも過去の自分の歌い方とか、ほかの人の歌い方に引っ張られるところがあるらしくて。レコーディングも私が最後に歌うんですけど、3人の歌い方に引っ張られて無理やり歌い方を変えちゃうクセがあるから、イヤフォンで全然違う人の曲を聴くようになったんです。
──そうなんですね!
ボイトレの先生がそういうアドバイスをしてくれて。今回はこの方法でレコーディングしました。
──ベスト盤から取り組み方が変わったんですね。仕上がりとしてはどうなんですか?
歌いやすかったです(笑)。今までは無意識に合わせようとしちゃってたんでしょうね。たまに4人でボイトレをやるんですけど、「唯ちゃん、自分を持って!」「ほかの人の潤滑油みたいになってるよ」ってみんなに言われてたんです。あと、今のボイトレの先生は各メンバーのいいところを伸ばしてくれる人で、それぞれやっているトレーニングの内容も違うんですよね。そういうこともあって、以前よりやりやすくなりました。
──新しいアプローチが功を奏している。
言われるまでわからなかったんですよ。なのでレコーディング中はあえてAIさんの曲とか聴いてました。本当はみんなの歌を聴いたうえで、「じゃあ自分はこうしよう」ってできるのがいいんでしょうけどね。

早く誰かとしゃべりたい
──ライブでの歌い方も変わっていきそうですね。新たに録った歌で、特に気に入っている曲はありますか?
「Fiction」は好きですね。あと「bath room_」の新しいキーは歌いやすかったな。
──キーが高くなったのは面白いなと思ったんです。
そうなんですか? というか初期の音域が狭すぎたんでしょうね。ここ2カ月ライブがなかったので、この間スタジオで練習したんですけど、「faithlessness」のサビとかもっとしんどかった記憶があるのに「歌いやすいな」と思って。ライブをしていなかったことで変なクセが取れたのかもしれないです。
──そういう変化もあるんですね。
私がちょっと変なのかも(笑)。うまい具合に力を入れなくなった……思い違いじゃなければ(笑)。まだツアーができないのは悲しいですけど、自粛期間は総じていい方向につながったのかもしれないです。
──この状況が落ち着いたら、やってみたいことはありますか。
個人的には……人としゃべりたい(笑)。最近やっとメンバーと会ったり、こうやって取材を受けられるようになってきましたけど、それまでは本当にしんどくて。「早く誰かとしゃべりたいな」と思ってました。独り言とかスラスラ出るようになってヤバかったです。ツアーができるようになれば、地方の人にも会いに行けるだろうし、そこは楽しみですね。「∞F」の映像を観ちゃうと、「今の自分にこんなことできるのか」って心配になることもあるんですけど、がんばって戻していきたいです。

出典: natalie.mu

和田輪

和田輪。
私たちだけじゃなく、世界中のアーティストも不安だった
──ブクガの配信を仕切っている和田さん。
めっちゃすごい人みたいになってるじゃないですか! メンバーの中でパソコンを持ってるの、私だけなんですよ。それもすごくないですか? iPhoneとSwitchとテレビを起動してもらって、なんとか配信をやってます(笑)。
──自粛期間中はどんなことを考えて、どんなことをしていましたか?
積んでたRPGを1本クリアして、あとは眠っていたアコギを引っ張り出して練習してました。
──以前から楽器をやっていると言ってましたけど、ピアノじゃなくてアコギなんですね。
もうちょっと弾けるようになってから言おうと思って。身になることをしないとどうにかなりそうだった。そうじゃなかったですか?
──そう思うときもありましたけど、結局はのんびりしてしまいました。
私ものんびりしてる時期、ありましたよ。最初は仕事ができなくなって焦るじゃないですか。今何をすべきなんだろうって考えたんですけど、「そういえば『全部辞めて1カ月くらい休みてー』ってなった時期あるじゃん」と思い出して、ゆっくり休んでました。最初が一番不安で、だんだん大丈夫になっていった感じですね。適応していきました。それに1カ月も経つと、ブクガだけじゃなくて世界中のアーティストが同じように不安だとわかったのもありましたし。いろんな時期がありましたね。「考えるのやーめた」と決めてから楽になったんですけど、そうこうしているうちに取材が始まりましたね。
──少しずつ元に戻ってきてよかったですよね。
そうですね。ベスト盤の発売が控えていたので、みんなに何か発表できる安心感もあったと思います。発売日は延びたりしましたけど、このベスト盤ができていたのは本当によかったです。

「歌ってたというより吠えてた」ブクガ史上もっとも感情的なパフォーマンス
──ブクガに新作リリースのタイミングで取材すると、よく「このタイミングで売れたい」と話していたんですけど、和田さんはその思いは常にあるのでしょうか。
私個人としてはほかのメンバーよりは売れたい、みたいな気持ちは薄いんじゃないかなと思うんです。ただただいいパフォーマンスがしたいから、収容できる人数よりもステージの規模に興味があって。だからそれほどは……。
──毎回のように言っていたし、自分も毎回同じことを聞いているなと思いました(笑)。
性格上、みんなどこまで行っても満足しないタイプなんだと思います。
──そういう結論に達しました。不安で発言しているというよりも、すごくハングリーなんだなと。
実際そうだと思ってます。自分もほかのメンバーも上を見ている、ということなんでしょうね。
──1月の「Solitude HOTEL ∞F」は和田さんもかなり納得のいくものだったのでしょうか。
そうですね。いつものライブだと、終わった瞬間の感想は「あそこができなかった。練習ではもっとできたはずなのに」だったんですけど、今回はハイになって終わりましたね。最後の「悲しみの子供たち」はブクガ史上一番感情的なパフォーマンスになったと思うんですけど、歌ってたというより吠えてたなって。でも、あとで映像を観たらちゃんと歌になっていたから、そういう面でも成長してるのかな。
──自分で吠えてしまったと思うくらいエモく歌った。
そんなふうに歌うことができるようになったし、めちゃめちゃに歌い散らかしても、ある程度は形になる力も付いてきたのかなと。
──観ている側からしてもすさまじいライブだと思ったんですよね。だから今回、改めて全員に感想を聞いているんですが、全員の意見が一致していて。
おー。珍しいですね。
──ベスト盤に収めるのにふさわしい内容ですよね。
ベスト盤に入ってる曲もライブではアレンジを変えていたりするので、その違いも楽しめますしね。でも自粛期間に入ってしまって、なかなかベスト盤がリリースできなくなっちゃって(笑)。ライブが終わったあとの勢いが途絶えるのも嫌だったし、レッスンができなくて腕が鈍っていくのも嫌だったし。今までできていたことができなくなるのは最悪って感じでした。
──活動再開に向けてやったことなどはありますか?
体力は落としちゃダメだなってことで縄跳びしたり、そのへんを走ったりしました。
──コショージさんは縄跳びを3回跳んでやめたって言ってました。
3日とかじゃないんだ(笑)。体力は落ちたあと、戻すのが特にキツいと思うんですよ。だから保つほうが楽だと思って、いろいろやってました。とはいえ落ちてそうです。恐ろしい……。
──ライブと同じだけの運動量を1人で消費するのは難しいですよね。
無理ですよ。アドレナリンが出てるときの運動はできないですよね。でも、今は意外といい感じに収まりました。
──自粛期間に入って、生活リズムが戻ったという人もいますよね。
私は朝方に寝て昼に起きてました(笑)。ライブの入り時間に合わせた生活をしているとそうなるので、あんまり変わっていないです。

今だからこそ、歌に説得力を持たせることができる
──こうしてベスト盤で振り返ってみると、歌声はもちろん変化していますが、技術的な部分以外で変わったと思うことはありますか?
1stアルバム「bath room」の頃とは取り組み方も変わりましたよね。当時歌声は楽器の1つ、くらいの認識だったので、我を出すことを美徳としていなくて。あえてそうしていたところもあったんですけど、「レインコートと首の無い鳥」「狭い物語」あたりから変わっていきました。曲調の影響もあると思うんですけど、この頃はメンバーの個性とか、人間っぽいところを出していいんだなって気付いた時期で。歌にオリジナリティを出していい、という心構えがだんだん生まれたんだと思います。
──最新曲「Fiction」を聴くと、さらに変化しているなと感じますよね。変化があったという「レインコートと首の無い鳥」ですら幼く聴こえる部分もあるくらいで。
時系列順に聴くと、よりそう感じますよね。アルバム「bath room」を発表した頃は「悲しみの子供たち」や「Fiction」みたいな曲を歌うとは思っていなかったし。
──ライブで歌うとどんな感情になるんでしょうね。
ね。だから早くやりたいんですよね。活動初期の頃にこういう感動的な曲をやっていたら、ウソくさくなってしまったと思うんです。いろんな曲を歌ってきて、説得力を持たせることができるようになったのかもしれないですね。

小さな絶望が詰み重なっていくつらさ
──唐突な質問に聞こえるかもしれませんが、和田さん自身は変なものが好きというわけではない?
変なものですか。
──メインストリームじゃないものを好む傾向にあるのかなと。
確かに普通のポップスとか、流行ってるものにはあんまりハマらないかもしれないです。あえて避けてるとか、変だから好きというわけではないんですけどね。好きなものは流行りものじゃないことが多い気がします。
──もともとサブカルチャー寄りの人だと思うんですが、ブクガの活動自体はマスに開けようとしていると思うんです。そこの折り合いはどうなのだろうかとたまに思うんですよね。
ああ、なるほど。そうですね……それこそ今回のベストアルバムみたいに、キャッチーに振り切ってないけれど、いい曲がこれだけ貯まっていて。マスに開けた曲を歌って、そこに引っかかってくれた人がもっとブクガに興味を持ってくれたとき、「いいな」と感じてもらえる曲が蓄えられたと思います。今の質問、「そういうふうに見えている人もいたんだ」って感じです(笑)。
──ちなみに自粛期間に自分のアイデンティティを考え直したりしました?
アイデンティティかあ。昔から普通の子たちになじめないタイプというか、普通になるのが難しいと思っていたので、こういう仕事をして生きるほうが楽なんですよね。だからアイデンティティみたいなものは、もとからあんまり意識してないというか。でも、家にいると歌えないのがつらくて、自分がどういう声で歌っていたかどんどん忘れちゃうから、自己肯定感がどんどんなくなって。そんなときにまだ完成してない音源の歌声を聴くと、「けっこういいな」と思ってちょっと回復する、みたいなこともあったり(笑)。ツアーが少しずつ延期になって、小さな絶望が重なっていく感じがつらかったです。
──状況が落ち着いたらやりたいことは、ライブ。
そうですね。逆にそれ以外困ってることはないかなって感じです。今はこうして取材をしてもらえるし、撮影もできているし。ブクガのライブは映像だけでは伝わらないと思うので、その空気感を早く共有できるようになりたいですね。
──といったあたりで終わりの時間が近付いてきました。最後にもう少しだけベスト盤のことを聞いておきたいなと思います。
アルバム冒頭の「bath room_」「snow irony_」「lost AGE_」は再録版なんですけど、ライブの歌声と音源の歌声があまりにかけ離れていたので、ライブで気に入ってもらえた人にもやっと聴かせられる音源ができたなと思っていて。
──かけ離れているから再録したというところもあるんですよね。
あと、ある時期からライブでかぶせがなくなったんですけど、それは今と昔で声色が違いすぎるからなんですよ。もちろん私たちが歌えるようになった、というのもあるんですけど、昔の歌に引っ張られちゃって、最近の歌声が披露できないのはちょっと……ってなるじゃないですか。
──まさか最後にかぶせの話題になると思わなかったですけど、確かに昔の歌声に合わせるのも変な話ですもんね。
そうなんですよ。あれはあれで好きな声なんですけどね。4人の子供が歌ってるみたいで(笑)。
──ベスト盤は歴史を振り返るものでもあるけれど、今のブクガにアップデートされている面も大いにあるわけですね。
はい。この5年間でいっぱい曲ができました。「rooms__」も1月のワンマンで披露したものと同じく、ブレイクが長いバージョンになっているので、「∞F」が印象に残っている人にもぜひ聴いてもらいたいです。

出典: natalie.mu

左から井上唯、和田輪、矢川葵、コショージメグミ。

以下、Music Voiceよりインタビューを抜粋して引用。
本ベストアルバム作成時の裏話や、再録楽曲の簡単な解説などが語られており興味深い内容になっている。

――キャリア5年の集大成となるベストアルバム『Fiction』が完成していかがですか。
コショージメグミ 新作を出すイメージに近いんです。いつもシングルを出す時は、だいたい2曲歌があって1曲ポエトリーとかなんですけど、今回は1曲新曲があってポエトリーも入っているから、シングルにいっぱい曲が入っているみたいなイメージというのもあります。今回のベストアルバムを機にブクガを初めて聴いてくれる方が増えたらいいなと思います。ベストでわかりやすいとも思うので。
――本作では新曲「Fiction」、ポエトリー「non Fiction」、そしてマッシュアップ曲「river」がありますね。「river」はどういったアプローチのトラックでしょうか。
和田 輪 「river」は、「karma」という曲のトラックとメロディに「cloudy irony」の歌詞と振り付けを当てはめたパフォーマンスをライブでやって、その時は収録する予定は特になかったんですけど、今回こういう形になりました。
――トラック名の末尾にアンダーバーがついている楽曲がいくつかありますが、これらにはどのような意図があるのでしょう。
コショージメグミ オリジナルと違う、録り直したものです。「言選り_」は、『yume』というアルバムに入れた時にアンダーバーがついてそのままで、「rooms__」はその時もアンダーバーがついていて、今回もまたついたのでアンダーバーが二つになっているんです。
――リレコーディングした楽曲にアンダーバーが付いている?
コショージメグミ リレコーディングしたり、オリジナルから変わったりしているものです。
――サクライケンタさんからリレコーディングでどのようなディレクションがありましたか。
井上 唯 リレコーディングした3曲を録ったのが4、5年前なので、その時にはできなかった歌い方が今できるようになっているのをふまえたディレクションをしてくれました。歌割りが凄く変わった曲もありますし、新曲みたいな感じです。
――新曲「Fiction」についてですが、Maison book girlの楽曲は変拍子が多いという印象があるなかで聴くと、4拍子の楽曲なので比較的珍しいと感じました。
コショージメグミ 珍しいですね…最初にもらったデモはサクライさんの声で入っているんですけど、いつもそこまでは思わないけど「これはブクガが歌ってきていない曲だな」と感じました。前作のアルバム『海と宇宙の子供たち』はこういう方向性を意識していて、その後に出した新曲という意味ではわりと自然な流れではあるんです。でも、それまでのブクガの過程を考えると、ブクガではない人のデモを聴いているような感覚もありました。
――矢川さんは「Fiction」を最初に聴いた時どう思いましたか。
矢川 葵 しみじみと「いい曲だな」とスッと入ってきました。聴いていて心地よいメロディもあって泣けました。
――確かにメロディも音色も心地よい雰囲気の楽曲ですよね。和田さんは?
和田 輪 今までのブクガにもこういう要素はあったんですけど、こういう風に表題曲ばかり集めると出てこないというか。最初の頃にはなかった感じではあるんですけど、4人の歌声が立つ要素が凄く詰まった曲だと思いました。
――歌がより映えている曲という印象が確かにありました。井上さんはどう思いましたか。
井上 唯 『海と宇宙の子供たち』の曲のデモをもらった時から、わりとブクガではない人が歌っている想像がつくくらいに思っていたんですけど、私達が歌うから意味がある曲になったと思っていました。「Fiction」もそういう風に思うということは、メジャーというかポップに聴こえているのかなと思いました。
――「non Fiction」にはどのような思いが込められている?
コショージメグミ サクライさんが「Fiction」を作る時に私も「non Fiction」を作っていたので、「どういう感じにしますか?」というのは話し合ったりしました。私のポエトリーとサクライさんの曲を1曲にするという案もあったんです。でも結局「やっぱり分けましょう」となって作ったのでわりとテーマは似ていると思います。
――レコーディング面についてですが、スムーズに進行しましたか。
矢川 葵 私はスムーズじゃなかったです。「Fiction」は何かが心にくる曲で、私は泣きそうになっちゃって上手に歌えなくなって一旦録るのを後回しにしてもらったくらい胸がギュッとなって歌えなくなって苦労しました。
コショージメグミ 私は「Fiction」はいい感じにスムーズだったんですけど、何かの録り直しの時に逃亡しました。
――なぜ逃亡を…。
コショージメグミ わかんないんです(笑)。たぶんちょっと一回時間を置こうと思って!
――和田さんがレコーディングで印象的だったことは?
和田 輪 わりとスムーズで、録り終わった後にみんなの声を合わせたものを聴いて「みんな歌えるようになったね!」ってしみじみしたのを凄く覚えています(笑)。昔の曲だと歌い方が変わったとか、はっきりわかるんです。
――Maison book girlの楽曲は変拍子が多くあり、歌うのが難しいと思われるのですが、慣れてくるものなのでしょうか。
和田 輪 そうですね。レコーディングする時ってたいていライブで披露する前に、前日とかに聴いた曲を歌うので難しい曲はわりと必死だったりするんですけど、再録だとライブで歌ったり踊ったりを何回も繰り返しているからというのもあったりします。
――再録も含め、井上さんはレコーディングはいかがでしたか。
井上 唯 リレコーディングした曲はライブで歌い込んでいるというのもあって、レコーディングした後に前のものと聴き比べると本当にガラッと変わっていて面白かったです。昔は声質も今と違うので、表現も淡々としていて、それが良さでもあったんですけど、今歌うとできることの引き出しが増えて深みが増したと思います。

出典: www.musicvoice.jp

左から井上唯、和田輪、矢川葵、コショージメグミ。

以下、Fanplus Musicよりインタビューを引用。
一つの区切りであるベストアルバムについて、各自の思いが語られている。

――タイトルに「_(アンダーバー)」が付いている曲が、新録や新アレンジですよね?
コショージメグミ:そうです。
和田輪:「_」が付いているものは、ライブで披露したことがあるバージョンになってたりするんですよね。
コショージ:例えば、「rooms」は、アルバムの『yume』に入れた時も新しくなって「rooms_」だったので、今回は「_」がふたつ付いて、「rooms__」なんですよ。
井上唯:新たなことをやっていたり、新曲も入っていたりするので、ベストアルバムっていうより、新しいアルバムを作ったような感覚もありますね。
矢川葵:今までの活動の中でいろんな試行錯誤をして、ライブでも様々な演出をしてきたから、こういう新しいアレンジとかをすることができたのかなと思います。
――全体のコンセプトに関しては、プロデューサーのサクライケンタさんと何か話しました?
コショージ:普段のアルバムのようなはっきりとしたテーマはなかったんですけど、「Fiction」という新曲から、何かを感じていただければという感じです。「Fiction」は、“この5年間のまとめ”みたいな感じですから。
――選曲は、メンバーのみなさんも意見を出したんですか?
井上:選曲は、サクライさんとコショージ?
コショージ:基本的にサクライさんでしたね。最初の段階では「blue light」も入っていたんですけど、曲数が多くなっちゃったので少し絞ることになって、いつの間にか代わりに「townscape」が入っていました。サクライさんは、「townscape」が、めっちゃ好きなんですよ。
――「my cut」が入っていないのを意外に思う人は、おそらくいるでしょうね。
コショージ:「my cut」も途中の段階まではリストに入っていたんですけど、よく考えたら『yume』に「MORE PAST」(「my cut」のアコースティックバージョン)を収録したんですよね。だから、「入れ過ぎじゃない?」っていうことになって、リストから外れました(笑)。
――そういう事情でしたか(笑)。「karma」が入っていないのも意外でした。
和田:そういえば、「karma」も入らなかったんですよね。
コショージ:でも、入れたらくどくない? 同じのが2曲入るみたいな感じになるから。
和田:そうなんだよね(笑)。
――でも「karma」は、収録されているとも言えるわけですよね。「river」は、「karma」のトラックで、「cloudy irony」の歌詞をアレンジしたものを歌っている曲ですから。再構築された「karma」とも言うべき「river」は、今年の1月のLINE CUBE SHIBUYA公演で披露しましたよね?
コショージ:そうです。あの時の曲です。
――「snow irony_」は、キーが変わりましたよね?
和田:はい。キーが上がったんですよね。
コショージ:昔の曲のキーが低くて、歌いづらいというのを、生バンドでライブをやり始めた頃から感じるようになっていたんです。だから、「せっかく録り直せるんだったら、キーを上げたい」っていうことになりました。
矢川:「snow irony」は、ブクガの中ではもともと明るめの曲でしたけど、キーが上がったことによって、より明るくなりましたね。
コショージ:昔の曲を改めて録ったりしながら感じたんですけど、新しい曲の方が歌いやすいというか。昔の声で歌ったものをまた歌うとなると、昔の音源の感じに引っ張られて、今の自分らしく歌うのが難しかったりもしましたし。
井上:最初の頃は、「上手に歌おう」って頑張っていたというか、与えられたものをやるので精一杯だったんですけど、できることが増えるにつれて、歌うのが楽しくなったというのも、この5年の間の変化かもしれないです。
――みなさんは、4人それぞれの歌の個性も、かなり強いですよね。例えば、葵さんは、独特な声の震わせ方をしますし。
矢川:もともと自分ではあまり気づいていなかったんですけど、サクライさんに「葵ちゃんっぽく」って言われて、「私には、そういうのがあったんだ」って知りました。そういうのが、いろんな曲に入っているんです。
井上:最初の頃の「bath room」なんかは、「誰がどこのパートを歌ってるか、わからない」って言われることが多かったんですけど、最近は「それぞれの歌の個性がある」って言われるようになって、嬉しいですね。今回、新しくなった「bath room_」も、ハモりが入ったりして、改めて良い曲になったなあって思います。

出典: music.fanplus.co.jp

左から井上唯、和田輪、矢川葵、コショージメグミ。

――先ほど少し触れた「river」は、新録とか新アレンジというレベルではないニューバージョンですよね。LINE CUBE SHIBUYA公演で初めて聴いた時、ものすごく驚きました。どういう経緯で、こういう大胆な再構築が行われたんですか?
コショージ:あれは、ライブの構成を考えている時に思いついたんです。なんでそうしようと思ったのかはわからないんですけど、「そういうこと、できるんじゃない?」ってなって、サクライさんに相談したら、「できると思う」と。「karma」も「cloudy irony」も、ミキティー(ミキティー本物/二丁目の魁カミングアウト)が振付をしてくれた曲ですけど、新しい振付師さんに曲を再構築していただくのは、とても難しくて。拍が合わなかったりもして、2回くらい振付を直したんですよね。
――ブクガって、ライブの展開がタイムリープになっていたり、パラレルワールドをイメージさせる感じになっていたり、複数の時空が入り混じったり、ワープしたりする感じがあるから、「river」も、そのイメージが反映されている……というか、パラレルワールドで活動しているブクガの「karma」として、僕は解釈しています。
コショージ:そういう感じをイメージして、やっていますね。ライブの演出とかは、技術さんが頑張ってくださることが多いんですけど、ステージに立つ私たちの側も何かできるんじゃないかなと思って、そういうギミックをやってみたのが「river」です。
――ベストアルバムの話から少し逸れてしまいますが……LINE CUBE SHIBUYAの時の「bath room」は、サウンドが逆回転したり、スローダウンした末に、真っ白な衣装が血糊で染まったのが衝撃だったんですけど、あれはどういう意図だったんでしょう?
コショージ:「Solitude HOTEL 7F」のアンコールの時に水を被ったんですけど、あんまりお客さんから見えなかったんですよね。だから1月の「∞F」の時は、「最後にどう持って行くか?」って考えて、あの演出になりました。血糊なら見えますからね。
――ブクガって、いろいろな仕掛けを盛り込みますよね。例えば、今回収録されている新バージョンの「闇色の朝_」も、1番が終わった後に無音状態がしばらくあって、また1番を頭から歌い始めたり、タイムリープ的な構成になっているじゃないですか。
井上:「闇色の朝」のMVが、これに近いバージョンだったんです。評判が良くて、こういう形のものを作ったということなんだと思います。ブクガは、曲で遊びがち(笑)。
――(笑)。遊びつつ、唯一無二のかっこよさを確立し続けてきたのが、ブクガの軌跡だと思います。「ブクガってかっこいい!」っていう自信は、みなさんもありますよね?
コショージ:………………あります。言わされてしまった(笑)。
――(笑)。このベストアルバム、濃密な活動の軌跡を辿った末に、新曲で締め括られる構成が、すごく清々しいです。
井上:「Fiction」は、4人それぞれの歌い方が前面に出ていて、アルバムの終盤にぴったりな曲だと思います。
和田:変わっているスタイルの曲を歌ってきたからこそ、こういうストレートな伝え方の曲が成り立つようになった感覚もありますね。メンバーそれぞれが歌えるようになって、気持ちを乗せられるようになったのかなと思います。ブクガって、変拍子に関して言われることが多いんですけど、一番難しいのは、サクライさんが作る独特なメロディなんですよ。
コショージ:ストレートな曲も歌うようになったのは、もしかしたら、サクライさん自身の変化もあるのかもしれないですよ。ブクガを始めた最初の頃のサクライさんは、まだ大森靖子さんのバンドのメンバーになっていなかったですし。そういう経験も、音楽的な変化とかに繋がったのかもしれないです。
井上:人造人間が、バンドをやったことによって人間に近づいた感じ? 『ドラゴンボール』に出てくる人造人間18号が、どんどん人の心になっていった感じというか(笑)。
――唯さん、とんでもないことを言っていますが(笑)。あと、ポエトリーリーディングも、ブクガならではの表現として、どんどん確立されていきましたよね。今作を締めくくる「non Fiction」も、コショージさんの書いた詩が、心地よい余韻を残してくれます。
コショージ:ポエトリーリーディングがシングルとかアルバムに入る時は、作品全体をイメージして書くことが最近、多かったんですけど、今回はベストアルバムということもあって、そこは考えなかったというか。「non Fiction」は、「Fiction」と世界観は、割と同じものがあると思います。
矢川:ポエトリーリーディングをいろいろやってきた中で、メンバーそれぞれの役割みたいなのもイメージしながらコショージが書いてくれるようになっているのを、読みながら感じるようになりましたね。
和田:最初の頃は、私自身がポエトリーリーディングというものに馴染みがなかったのもあって、よくわからないままやっていたんですけど、だんだん楽しくなっていきました。自分で読むのも楽しいですし、音楽としての面白さも感じるようになっています。
コショージ:今回、詩集が付くんですよ(初回限定盤B)。「non Fiction」以外の、今までの11曲です。これもぜひ読んでいただけたらと思います。
――ベストアルバムを出した後の活動に関しては、何か考えていることはあります? 本来ならば、7月までツアーが続く予定でしたけど。
コショージ:もともとの予定だと、そうだったんですよね。最初の頃は、何ヶ月かしたらまたライブができると思っていたので、「早くやりたいなあ」って思っていたんですけど、人の命が関わってくることだから、ただライブがやりたいっていう考え方ではなくなりました。
井上:お客さんにライブハウスやホールで観ていただくならではの熱量とかは、生配信とかにはないですけど、映像とかで表現できることは、あるんじゃないかなあ……とか。
コショージ:「何か別の表現の仕方を見つけたい」って考えるようになりましたね。いろいろ考えているので、その点に関しては、待っていてください。

出典: music.fanplus.co.jp

Maison book girl『Fiction』コメント動画

以下、Real Soundよりインタビューを引用。
これまでのMaison book girlとしての活動、そしてこれからの展望などについて語っている。

コショージメグミ

パフォーマンス面での成長を重ねた年月
ーーブクガは、変拍子や現代音楽の要素、内面を描く世界観については多く語られてきたと思うんです。メンバーから見て、まだあまり語られていないと感じる部分はあるでしょうか?
コショージ:やっぱりライブですね。舞台制作にも力を入れて面白いことをやっているので、たくさんの人に見に来てほしいと思っています。
矢川:具体的な言葉では説明できない演出などをしていて。たとえばいろんな映像を使って音に合わせたり、曲じゃないところでも私たちが動きをつけていたり。ライブに来ていない人にはそういう部分はあまり伝わっていないかもしれない。
和田:AmazonさんやYouTubeさん、いろいろなところでライブ映像を見られるようにしてもらっているんですけど、ブクガのライブって、そこにいないとわからない空気感みたいなものがあるんです。だからこそ映像を見て気になった方にはやはりライブに来ていただきたいという思いがありますね。
ーーブクガは当初、プロデューサーのサクライケンタさんの内面の投影だった部分もあったと思います。その表現の仕方に変化はありましたか?
和田:歌う曲の難易度はちょっとずつ上がっていて。それはきっとサクライさんが私たちのライブでのパフォーマンスを見て「次はこれくらいはいけるかな?」と都度判断しているのかなと思っています。
ーーサクライさんに対して、「こういう曲を歌いたい」と伝えることはあるんですか?
コショージ:たまにありますね。ふざけて言ったことはもちろん却下されますけど、本気で言ったことは要素として取り入れてくれたりします。「どういうのがいい?」と直接聞かれたりすることもあります。
矢川:歌い方やライブでの見せ方はメンバーに委ねられています。レコーディングのときも、サクライさんから「いつもの癖のある感じで歌ってほしい」という注文があったりして。そういう部分では私たちも作品づくりに参加していると感じますね。
ーー具体的に「こう歌ってほしい」というオーダーはないんですか?
矢川:「広い感じで」とか「もっと上の感じで」とか、抽象的な指示が多いです。その言葉のイメージを自分たちで想像しながら歌に反映しています。
ーーブクガのアイドルシーンでの立ち位置が変わったと感じる部分はありますか?
和田:最初の頃は「アイドルを見に来たお客さんに届けるには、どうしたらいいんだろう?」と悩んだときもあったんですけど、最近は「すべきことをやっていればいい」と思えるようになりました。アイドルが好きで、かつ他の音楽も好きという方々に刺さればいい。ただ自分が良いと思うものを作り続けていれば、好きな人の心に刺さると信じて活動しています。
コショージ:自分自身はそのアイドルシーンの渦の中にいるからよくわからないんですよ。でも、5年活動していると一緒のイベントに出ていたような人たちが、気づいたら違うステージに進んでいたりすることもあって。
ーー自分たちがどう、というわけでは特にない?
コショージ:そうですね。最初の頃と今とで違うところは、ブクガはフェスや対バンの出演よりも、ツアーやワンマンをするようになっているところなので、「よく会っていた人たちと会わなくなったな」と思うことはあります。
矢川:もともとsora tob sakanaさんとか、ヤなことそっとミュートさんとか、私たちと近いタイミングでデビューして、同じように「楽曲派」と言われるようなかっこいい曲を披露しているアイドルさんがまわりにいたので、アイドルシーンの中で私たちだけポツンとしていたとは思っていなかったですね。それぞれのグループの色を突き詰めていった結果、私たちは今、ワンマンライブにも力を入れるようになったのかな。
ーーsora tob sakanaは解散が決まりましたね。
井上:同じ頃のデビューとか関係なく好きだったので……ショックです。
ーー井上さん自身は変化を感じますか?
井上:5年やってきたってだけあって、アイドル好きな人にも名前が知られるぐらいにはなっているかな? とは思います。

出典: realsound.jp

和田輪

ブクガと関わる人すべてが大切にする“1対1”の関係性
ーー今回のベスト盤には「my cut」は収録されていませんが、2020年4月に公開された「my cut -Parallel ver.-」のMVのように全力でアイドルらしいアイドルをしていたとしたら、できていたと思いますか?
コショージ:たぶんできなくはなかったと思います。ただ5年続いてるかはわからないけど……。でもやれていたとは思います。
矢川:最初はああいうアイドルらしいアイドルに憧れていたけど……(笑)。もうすっかりブクガに染まって、素の自分がこっちに変わったというか。あの撮影のときも上手に笑えなかったので(笑)。
和田:表情筋が鍛えられてないから(笑)。
ーーやっていたらできていたかもしれない?
矢川:(小声で)かもしれない。
和田:私は、ブクガの前にアキバで働いたりしていたので、もともとそういう要素も好きではあって。今となっては「ブクガのほうが向いてるかな」とは思うんですけど。
コショージ:一番ノってたよね。
和田:昔の血が騒いじゃった(笑)。
井上:私も、最初からそういうコンセプトだったらできていたのかもしれない。かわいいアイドルさんが好きだし。でも、自分がやるんだったら、ブクガみたいなもののほうが好きかな。
ーーブクガって、立ち位置的にも音楽的にも特異なところにいると思うんですよ。なぜずっとメジャーで続けていられるのか、考えることはありますか?
コショージ:それは本当にレーベルの方たちの愛だと思いますね。お客さんもそうですけど、人と人との関係性は1対100とかじゃなくてあくまで1対1だと思うんですよ。私たちを支えてくださっている人たちは、ひとりにものすごく刺さることを大切にしてくださっているんです。1000人いて1人でも「すごく好き」という人がいたら、それで成立させてもらえるというか。ブクガにはそういうパワーがあると思っています。
矢川:コショージが言ったように、前レーベルの担当の方も、今の担当の方も、好きだから応援しようという気持ちで「一緒にやりたい」と言ってくれているんです。
和田:ファンの方も、レーベルの方も、今好きだと言ってくれている人たちは、「ブクガを知れば刺さる層」が必ずいると信じてくれていると思うんですよね。自分がそうであるように。
ーー刺さるという感じは、たとえばコショージさんが好きな欅坂46のような感じですかね?
コショージ:うーん……。ちょっとそのイメージとは違うかもしれないですね。難しいですけど。何かに例えるとしたら何なんですかね……。食べ物とか?(笑)
井上:納豆?
矢川:パクチー。
コショージ:トムヤムクン。好きな人は好きみたいな。味覚が変わって、後から食べられるようになる人もいるし。
井上:妥当な例え。一番当てはまってる。
コショージ:あざす!

出典: realsound.jp

矢川葵

新曲「Fiction」は、今の私たちだからこそ歌える曲
ーー今回のベスト盤では再録もしていますが、今、初期の自分たちの歌を聴くとどう感じますか?
和田:初期は初期で好きです。小学生のときに合唱をやっていたことがあるんですけど、みんな成長期だから声がどんどん変わるんですよ。子供のときの声ってそのときにしか絶対出せないから、それはそれで価値のあることだと私は思っていて。初期の音源を聴いていると、それと同じような感覚がありますね。あと、初期のボイトレの方針で、4人の声色を組み合わせて1曲が成り立つようにしてきたので「4人でひとつの曲を作り上げる」ということに意義を見出していたな、ということを思い出したりしました。
井上:昔の曲とはいえ、いまだに歌っている曲なので、そんなに客観的に見られないというか。前の歌い方を聴くとその歌い方になっちゃうんですよ、癖らしくて。だからあんまり聴きたくない。「戻っちゃう」と思って……(笑)。
コショージ:昔のほうが4人の歌い方に個性がない感じはします。それは意図的なものでもあったと思う。でも今はそれぞれの個性を出してパートをわけているので、そこが大きく違うかな。
矢川:「その当時の精一杯はここだったんだな」と。再録してみて、その頃よりは歌えている自分に気付けたりして楽しかったです。
ーー歌やパフォーマンスに関して、一番意識的に変えてきた部分はどこだと思いますか?
矢川:私は「歌をがんばろう」と思ってやってきました。前は4人の幼い声をきれいに束ねることによって生まれる「無機質な感じ」がいいと言われていた部分もあるんですけど、その表現だけじゃ持たないということはスタッフの方に言われたり、自分たちでライブをする中でも感じていて。それぞれが感情的に歌えるように心がけるようになっていったのがやっぱり大きいですね。
コショージ:一番意識的に変えたのはライブかもしれないです。昔はけっこう煽る曲や、コールが入る曲が多かったんですけど、たとえばそれを「今日のライブではそういうのが一切ないライブにしてみよう」とか。それによって歌とダンスに集中することができたり、お客さんのノリも変わってきたりしましたね。
和田:私はやっぱり歌ですかね。初期の頃は、自分の声はサクライさんの楽器の一部だと思っていたんです。だけど、アルバムの『yume』(2018年)くらいのときに「この曲はいつもと雰囲気をめっちゃ変えたいから」というディレクションがあって「自分の意志でいろんなことをやっちゃっていいんだな」とだんだん思うようになりました。それを楽しめるようになったのが変わったところですかね。
井上:年月を重ねていくにつれて、自分にできることが増えていて。「ここは力を抜いてやろう」とか、そういう歌い分けができるようになったのは、変わったところだと思いますね。変えようと思って変えたというよりは、できることが増えたから自然にそうなったのかなって。
ーー初期は「無気質な感じだった」という話がありましたけど、新曲「Fiction」の表現からは生々しさを感じます。
和田:曲は歌によってどのような表情にもなるというか。「私たちの歌で左右できる余地のある曲が増えたな」と改めて感じました。
コショージ:AメロやBメロのような音が少ないところは声が聴こえやすいし、個々がボイトレで歌い分けをした成果がよりわかりやすいんじゃないかな。
ーーコショージさんは最後の「non Fiction」でポエトリーリーディングを書き下していますけど、サクライさんが作った「Fiction」に対して書いたものですか?
コショージ:いや、これは同時にスタートしました。書く前に、お互い「こういう感じの曲にしよう」というイメージは話しましたけど、同時進行です。
ーーポエトリーリーディングで書くテーマや自分の感覚が、初期と変わってきたところはありますか?
コショージ:今回で12作目なんですけど、初期の頃は、特に考えなくても自分の内から出せたんですよ。でも、だんだん考えないと浮かばなくなったり、「前にこういうことしたから、被っちゃうし」とか考えちゃったり。だから今回は考えるのをやめようと思って、ある意味で制作方法は原点に戻ったのかもしれないですね。
ーーじゃあわりとこれは自然に出てきた?
コショージ:そうですね。私的にはこれが正解だった感じがします。逆に今までがどんどん自分で難しくしていたと思います。
ーー矢川さんは今回「Fiction」を渡されてどう感じました?
矢川:なんでそう思ったのかはわからないんですけど、レコーディングのときにすごく悲しいというか、せつないというか……そんな気持ちになってしまって。泣きそうになるのをこらえながらがんばって歌った曲です。メロディなのか、音の感じなのかはわからないけれど、なぜか私の涙腺にきて……。
ーー今までそういうことはあったんですか?
矢川:そこまではなかったです。「いい曲だな」と思うことはたくさんありましたけど、喉が詰まる感じまでになったのは初めてでした。
井上:私も毎回新曲をもらうたびに「いい曲だな」と思うんですけど、今回は壮大さが今までとは違いますよね……。歌が前面に出ているところとか、4人の個性が立っているところとかも含めて、この5年、6年やってきた私たちだからこそ歌える曲なんじゃないかなと思います。

出典: realsound.jp

井上唯

やるべきことは、売れようとして変なことをしないこと
ーー新型コロナウイルスの影響で、ツアーも一部公演が延期になっていますが、この状況で今後どういう活動をしていきたいですか?
コショージ:『Fiction』発売日にライブ生配信をやるんです。お客さんが目の前にいない状態で、どうやったら楽しくて、面白いものを作れるかを今考えています。
ーー配信では観客の直接のリアクションが見られませんが、ブクガだったら自分たちの完結した世界観を見せるやり方もあるとは思うんです。作りこんだものを見せるのか、あるいはある程度は人に介入をさせる余地を作るのか、どちらのベクトルに行くと思いますか?
コショージ:たとえば声を出すようなリアクションではなく、私たちの思想には介入してほしいです。めちゃくちゃに介入して、感情とかを全部出せるようなものができたらいいな。そこに私たちも楽しさを覚えて、お客さんも楽しさを覚えてくれたらいいな。……もちろん、通常のライブができるようになるのが一番いいですけどね。
和田:ブクガのライブは、お客さんが声を出したり、モッシュしたりしなくても楽しめる。これは、これからのひとつの強みになると思いました。でも、配信だと最初に話したような空気感までを伝えることは難しいので「これからのパフォーマンスの磨き方の方針まで関わってくるのかな」と今はぼんやり考えています。
井上:前回のアルバム(『海と宇宙の子供たち』2019年)では、スタジオライブの映像特典を付けたんです。白ホリに映像を投影して、私たちが歌って踊るのを撮ったもので、それが私すごく好きで。それを生配信でもできたらいいなって思ったりしました。
ーーやはりお客さんはいたほうがいい部分もありますか?
井上:ライブの空気感は、同じ空間にいないと体験できないですし。ワンマンで「映画みたいだった」って言ってくれるお客さんがよくいるんです。それもやっぱり、たくさんのお客さんがいて、席に座っている、その空気感も込みだと思うので。やっぱりちゃんとできるのが一番いいと思います。
矢川:定点で見ても楽しめるものになっていると思うので、配信ライブを見てもらった上で、生で見たいと思わせるものにしたいです。最終的にちゃんと人がいる状態でライブができるように、そこに持っていくまでの配信かな。お客さんがそこにいて見てくれているだけで、私たちも気持ちが変わったりするので。
ーー最後の質問なんですけど、ブクガは「とにかく売れたい」と思ったりしますか?
コショージ:え? 思ってますけど?
ーーサクライさんとそういう話はします?
コショージ:あんまりしないかなぁ。でも、私たちのすべきことは、パフォーマンスレベルを上げたりだとか、めっちゃかわいいメイクを練習したりとか、そういうことで。あとは、力を貸してくれる方々のことを信じて、やるだけだと思うんですよね。自分も何か気づいたら言うし。
矢川:やる気は常に持っておく。
ーー100%まであるとして、今のやる気は何%ぐらいですか?
矢川・コショージ:(即答で)100です。
和田:やるべきことは、売れようとして変なことをしないこと。ブレるのが一番良くない。本当にやりたいことをやらないと、売れても意味がないと私は思っているので。そこだけは絶対に譲らない気持ちを絶やさないようにしています。
井上:もっとブクガをすべきです。
ーー井上さんの考える「ブクガをする」はどういうことですか?
井上:もっとたくさんの人に好きになってもらうには、やっぱり私たちが、それぞれ歌やダンスを突き詰めていくしかないかなって思いますね。

出典: realsound.jp

【自撮り】 Maison book girlメンバーが“推しアイドルグッズ”や“趣味アイテム”を大公開!【誰かに自慢したい自宅の◯◯】。
上記Real Soundのインタビューと同時に行われた、アーティストが自宅にある自慢のものを紹介する自撮り動画企画「みんなに自慢したい自宅の◯◯」の映像。

Golden Record

8gfujiteru_1015
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