Maison book girl(ブクガ)の徹底解説まとめ

Maison book girlとは、2014年11月5日に結成された日本のアイドルグループ。作曲家・音楽プロデューサーのサクライケンタとBiSのメンバーであったコショージメグミを中心として誕生。サクライケンタの「現音ポップ」と称する変拍子を多用した楽曲をバックにコショージメグミが詞の朗読を行うというパフォーマンスを発展させた形といえる。一筋縄ではいかない「現音ポップ」に合わせてパフォーミングを行う、という独自の世界を持っている。2021年5月30日、活動終了が公表される。

秋葉原が楽しすぎて、岩の絵を描くのが辛すぎて
--じゃあ、さっき名前が出た秋葉原でのアルバイトが、東京での生活が変化したきっかけなんですね。
和田 はい。えっと、高校生の時くらいからでんぱさん(でんぱ組.inc)が好きで、その辺のカルチャーも好きで。それで大学1年になった時に秋葉原でアルバイトしてみようと思ったんです。高校までは校則で出来なかったんで。憧れてた店がたまたま大量募集してる時期だったんで、生まれて初めて履歴書書いて送って。
--東京に住むようになって、秋葉原は行かなかったんですか?
和田 足を運んでなかったんですけど……そういう世界はインターネットで。
--東京に来たのにネットで情報収集!
和田 田舎の時からの習慣がしみついてるんで。行かないともったいないですね、本当に……。
--憧れてたお店で秋葉原にバイトで通うようになって、生活変わりました?
和田 今思うと課題とアルバイトをどうやって両立させてたか謎なんですけど、本当に秋葉原通うのが楽しくなって。最初は飲食のお店とかやったことなかったから、すごい胃とか痛めてました。毎日お腹痛かったんです。
--秋葉原だとメイド喫茶とかコンセプトカフェとかいろいろありますけど、和田さんが働いてたお店もけっこうお客さんと話すような所ですよね。
和田 はい。わたしこの頃、本当に人生でいちばんコミュニケーションが取れない時期で、人と喋るのが苦手なのに初対面なんてもってのほかという時期だったんです。それなのに接客会話に重きをおいてる仕事についてしまってうっかり……大変でした。
--マニュアルとかなかったんですか?
和田 ないです。ツイッターを昔から使ってたんで、自分が何を好きなのか発信していくスタイルを取ろうと思って、めっちゃいっぱいツイートしてたら、それを見たお客さんがそれをネタに話しかけてくれるようになって。本当、この頃はリハビリをさせていただいたと思ってます。
--かなりお客さん頼みなスタイルで(笑)。それで慣れて楽しくなりましたか。
和田 はい。働いてる子も、そもそも好きでそこに集まってるんで、気が合う子が多くて。
--コスプレ欲も満たされるし。
和田 それも楽しかったです(笑)。
--学校に行きつつも、秋葉原にどっぷりですか。
和田 それが、学校にも行ってたんですけど、自分の中でいちばんやりたいのがそっちになってきちゃって、だんだん割合が……。そのお店が音楽活動とも近くて、そもそも最初にやりたいと思ってたのが音楽ですし、自分の中でも出来るものならやりたいなっていうのはあって。それがふつふつと湧き上がってきて。
--「やっぱり音楽やりたい!」という気持ちが。
和田 旭川にいる時は「音楽でやってくとか無理だよ」って言われて、わたしには無理だって思ってたんですけど、いざ東京に出てきたらいろんな窓口があって、行けばやれるもんだなと思っちゃったんで、大学辞めちゃいました。
--中退ですか。
和田 はい。一年生のちょうど終わりです。
--ブクガ加入が決まる前ですよね。
和田 はい、ずっと前です。
--そこ度胸ありますよね。
和田 本当ですよね!えへへへへ。
--自分だったら、もし転職するとして次が決まらないと辞められないタイプなので。決まってないけど辞めるってのは思い切りいいですよね。
和田 いやー、自分もずっとそうだったんですけど、その頃すごい鬱みたいになったんですよ。岩の絵を描くのが辛すぎて……。
--授業で岩の絵ですか。
和田 岩にあまり興味が持てなかったんです(笑)。
--まあ、岩にはなかなかねえ。
和田 入る学科が違ったらまた違ったと思うんですよ。アートよりも工芸だったと思うんですよ、私が行くべきだったのは。間違えちゃったですね。それにもうちょっと踏ん張れば、また好きなことがやれるゾーンが来てたかもしれないですけど……。
--でも自分の中ではもう音楽をやるんだと。
和田 もう本当に朝とか起きれなくなって……。それで辞めちゃいましたね。
--今思い出してみて、その頃の秋葉原ってどこが楽しかったですか?
和田 その頃はコンセプトカフェに魅力を感じてて。そういうお客さんがキャストのことを好きで通ってて、キャスト側も愛をふりまくことで成立してて。なんかそこにお金のやり取りが生まれることによって、キャスト側からするとすごい信憑性が湧くんですよ……。わたし、ちょっと気持ち悪いこと言ってます?(苦笑い)。
--いや、面白いこと言ってますよ!「キャストが感じる信憑性」とはどういう意味ですか?
和田 この対価を払うということは、つまりその分の犠牲を払っていいくらいには私のこと好きなんだ、みたいな。キャストでいるうちは、それを信じられる時間なんだというのはありますね。それにキャスト側にいると楽屋の感じもわかるんで、女の子の側にもその気持ちが伝わってるのが分かるんです。
--「客から巻き上げるぜ、へっへっへ」みたいな 嫌な感じではなくて。
和田 そうじゃなくて(笑)。そこに愛があっていいなと思ってました。それってアイドルも同じだと思うんですけどね。

出典: getnews.jp

和田輪

ゴキブリは実際見るまではカブトムシみたいなもんだろうと……
--あらためて東京に引っ越したころの話を聞きたいんですけど、自分の部屋が決まって住み始めた最初の日のこととか覚えてますか。
和田 えぇっと、間取りを見た時のことは覚えてるんですけど、その後はどうだったかな……。嬉しかった思い出が思い出せないんですけど、「ユニットバスってやっぱ嫌だな」ってことを思い知りました。トイレがじめじめするのは嫌だなあって。
--次はセパレートに住むぞ!と。最初に思ってた「誰にも怒られず、自分の好きなように」ひとり暮らしは出来ましたか。
和田 いやまあ、好きなように出来るのは嬉しかったですけど、散らかりました(笑)。
--あはは、誰も片付けてくれないし。
和田 それが心地よくもあったんですけど。人様にお見せできる状態ではないんですけど、家から出るときはちゃんとするし、中の事ができてなくてもそっとしておいてもらえるという点では、すごく快適に暮らしてます。
--ホームシックとかは?
和田 ないです(きっぱり)。そっとしておいてほしいタイプなんで。
--初めての一人暮らしでご飯作ったりちゃんと出来ました?
和田 初めの頃は全然できなくて、何食べてたっけ……学食があったんですけど、ご飯の用意の仕方が分かんなくて、ちょっと痩せました。今はちょっと作るようにしてます。そんなに身構えなくても食べるものは作れるんだなって気づいたんです。前は主婦が 全員分作るのしか見たことなかったんで。一人前が作れるようになりました。
--では得意料理は。
和田 得意料理っていうか、普段食べてる雑なご飯は豚肉とキムチを炒めて、レンジでチンしたもやしをざっと入れて 食べてます。
--いいですね、一人ごはんって感じで。
和田 いいでしょ。ごま油でキムチを炒めるんです。
--実際に東京に住んでみて 普段の生活で驚いたことってありますか?よく聞くのが「北海道の人はゴキブリを見たことがない」って。
和田 ああ!!それは本当にそうです。東京に来て見てびっくりしました!家の中に出る生物とは聞いてたんですけど、逆に外の自販機の下に歩いてるのを見てびっくりして。実際見るまではカブトムシみたいなもんだろうと思ってたんですけど、目にした瞬間鳥肌が立って。ちゃんと刷り込まれてるんだなと思いました……。
--本能として ゴキブリ 怖い!ってのが。北海道ならではって他にあります?
和田 驚いたってのじゃないですけど、季節の変わり目の時に服装がおかしいことを突っこまれるんです。たぶん私が個人的に温度の変化に鈍感なんだと思うんですけど、私的に10月ってすごい寒いはずなんですよ。 だから秋ってどうしたらいいか分からなくって。こっちで皆やってる「薄手のニット一枚で過ごす」ってのがすごい怖くて、夜冷えるんじゃないかと思うと……。
--北海道って室内がすごく暖かいから、意外とみんな部屋の中では薄着って聞いたことあります。
和田 そうなんです。薄っぺらいやつにコート一枚とか着てたりするんです。でも東京だとコート脱いだら下は半袖だと突っ込まれるんですよ!不思議なもんですよね。

出典: getnews.jp

和田輪

雪かきしなくていいってめちゃくちゃすごい事なんですよ
--さてブクガに加入してからの話も聞きたいんですけど、大学辞めてオーディションで加入したわけですよね。音楽一本の暮らしになって和田さんの生活は変わりましたか。
和田 新宿とか渋谷に適当な格好で行けるようになりました。それまでは都会だ!って感じで構えてたんですけど、行こうと思えばスッと行けるんだなって。
--それまでは気合が必要。勝負服で行くぞ!みたいな。
和田 勝負服まで行かなかったですけど、あー、でも何着てたっけ……その前もちゃんとした格好してなかった気がします。まあ、ずっとダサいんですけど。制服とかに興味がありすぎて、リアルクローズに興味が持てない人生なんですよ。
--最初の頃は渋谷新宿は怖いってイメージがありましたか。
和田 怖かったです。まさか自分が毎日のように歌舞伎町の奥に入ってくとは思ってなかった。ヤクザ映画とかマンガに出てくる場所だっていう。歌舞伎町の入り口の光る門みたいなところとか。最近やっとしっくりきました。
--最近なんですね、もう上京して4年近くなるのに!
和田 ライブハウスに行くのが増えたんですけど、しばらく毎回緊張してました。昔はわたしライブハウス行くのが怖かったんですよ。
--音楽好きなのに、東京来てからあまり行かなかったんですか?
和田 また地元の話になるんですけど、アーティストさんがツアーとか回るじゃないですか。北海道はせいぜい札幌なんですよ。なので旭川に住んでた頃はぜんぜんライブハウスとか行ったことなくって、東京に来てからもライブハウス行くのはすごい大ごとだったんですよ!まず行くぞと決めて、チケットを取って、コンビニでお金を払って、もらって当日支度をして、財布にそれが入ってることを確認して……そのくらい「いざ!」ってならないといけないんです。だからアイドル好きな人たちのフットワークの軽さってすごいなって本当に思ってるんです。
--普段の生活で自分が地方の人間だなと感じる瞬間ってありますか。
和田 えー、そうだな……。北海道ってそんなに訛りないんですけど、すごい細かいイントネーションの違いとか突っ込まれた時とか。コーヒーのことコーヒー(コにアクセント)って言うんですよ 。
--本当に細いですね(笑)。
和田 本当に細かいとこばっかり違うんですよ。あと「ビタミンカステーラ」っていう大きめの菓子パンみたいなのがあるんですけど、それが置いてあるの見かけたら大きめで反応してしまいます。(ビタミンカステーラ:旭川市にある高橋製菓の銘菓)
--北海道といえば、物産展あちこちのデパートでやってますよね。ああいうの見たら北海道の人ってテンション上がるんですか?
和田 アガりますね!素直に上がります。ビタミンカステーラ、カツゲン、あと何かな……鮭とばの大きい袋!ジップロックみたいなのじゃなくてすげー大きい袋、でかいやつ。それ見たらアガりますねー。
--しょっちゅう北海道物産展ってやってますけど、やっぱアガるもんなんですね。
和田 あと、その辺の回転寿司の寿司が美味しいと思えない時は地元の味を思い出しちゃいますね。
--北海道は回転寿司でも美味いっていいますもんね、こっちに比べたら。
和田 本当に生魚は全然違います。あっちは回転寿司とかスーパーのパックでも、めっちゃ美味しいんで。そこはちょっと悲しかったです。あとは……いっぱいありそうなんですけど 結構慣れちゃって。
--東京の女になったなって感じですかね。アイドルやる上で地方出身でいい所あると思いますか?
和田 北海道でライブをしたりする時に、地元の人たちが愛着を持ってくれるのが嬉しいですね。ブクガ知ったばっかりでも地元っていうんで愛情を持って見てくれて。そういう地元がある強みってあると思います。東京で実家暮らししてるアイドルも羨ましいんですけどね。
--まあ、生活する上ではそれは感じますよね。
和田 家賃払わなくてどんだけいいか……。東京に来て何が一番馬鹿らしいって家賃なんですよ。生きてるだけなのにお金が……。
--でも地方は地方で車とか持ってなきゃいけないですし。
和田 ああ、それはありますね。お父さんとお母さん、一台ずつ車持ってます。ただ雪かきをしたくない!
--実家だと頻繁なんですか。
和田 雪かきしなくていいってめちゃくちゃすごい事なんですよ!旭川だと降る時は毎日降るんです。30センチぐらいの積雪が毎日。朝はまず近所の方が雪かきをしてくれてるおかげで通学できる、みたいな状態なんで。ちょっと早いと雪の中ズボズボ歩いて獣道を作らないといけないですし。
--服の話がさっきありましたけど、東京の人は寒さに弱いと思ったりします?
和田 寒さに弱いって言うか、冬の路面に弱いですよね。スニーカーですっ転んでる人を横目にヒールでスタスタ歩くのがすごく楽しいです。
--足腰の強さは旭川育ちだからなんでしょうね。では最後に和田さんから見た、東京に住んでわかった地元の良さってありますか?
和田 えー、そうだなー……。地元に帰った時に、すごいおしゃれな人たちが大通りの過疎り始めてるところに集まってセッションしてたんですよ、楽器を持ち寄って。旭川って家具とかも有名で、デザイン系の人たちが集まるところとかあったりして。
--一度田舎を離れると、そういう若い人たちか芽吹かせてるシーンとか眩しく見えますよね。自分はそこから離れちゃったわけですけど。
和田 生まれた土地だからってのもあるけど、ゆっくり出来て過ごしやすいところだなってあらためて思います。
--若い頃だと物足りなさみたいなのもあって、外に刺激を求めてしまいますけど、年取ってそういう気持ちが削げた後だとあらためて馴染むのかもしれないですね。
和田 外からのものより、自分の中でやりたいことができたら余生をそれで過ごすのもいいかなって。
--帰ったら美術やりましょうよ!岩の絵とか書いて。
和田 あははは!それもいいかもしれないですね(笑)。

出典: getnews.jp

和田輪の名付け親である中野ロープウェイ店主のイトウ氏。

「和田輪」の名付け親は、Maison book girlプロデューサー・サクライケンタの知人の中野ロープウェイ店主のイトウ氏。
2015年4月10日付のサクライケンタのTwitterより引用。
「和田輪の名付け親はエビ中あぃあぃの名付け親でもある中野ロープウェイに潜む変態(褒め言葉)イトウさんです!」
以下、アイドル専門サイト「チカカラ」より名づけ親のイトウ氏のインタビューを抜粋。
「和田輪さんは(ブクガのプロデューサーをしている)サクライケンタさんがお店に遊びにきたときに『新メンバー入るんだけどまだ名前が決まってない』って言っていたので、そのときたまたま自分が出した名前が採用されたので、それで名付け親とか言われたりすることもありますけど。本当にたまたまですね。」

2018年夏からVTuberとしての活動を開始している。
VTuberとは2DCGや3DCGで描画されたアバターを用いて動画投稿・生放送を行う配信者のこと。
VTuberとしては「ワダリン」という名称を使用している。
以下、KAI-YOU.netよりインタビューを引用。
和田輪が「バーチャルワダリン」を開始した動機や、バーチャルYoutuber(VTuber)がどういったものなのかを知ることができる。

10分でわかる 和田輪のMacBook Air受肉

物質にいのちを吹き込む"バ美肉"
──「MOSAIC.WAVが10年前に歌っていた未来」みたいな活動をなされてますね。
和田 そうですね(笑)。
MOSAIC.WAV…秋葉原系ポップソング「AKIBA-POP」を標榜する音楽ユニット。電波ソングの旗手であり、歌詞には秋葉原やコンピュータゲーム、インターネットミームが頻出。ユーモアを交えながら電子・電脳世界と現実世界を往来し、至近未来の希望を歌う楽曲が多い。
──それに感動して、取材に来ました。本日はよろしくお願いいたします。
和田 お願いします。
──Twitterでも言及していましたがブクガのファンの中には、突然のVTuber活動に戸惑う方もいらっしゃいますよね。
和田 「(VTuberという)流行り物に飛びついた!」みたいに見えるじゃないですか(笑)。
メンバーがそういうのに疎いタイプで「何やってるんだ?」みたいな感じでした。ファンにもそういう人多いよなと思って、今のうちに言っておこう、と(笑)。
──ここでは、「ずっと物質にいのちを吹き込みたかった」と表現されていましたが、最初にそう思ったきっかけを聞かせてください。
和田 多分、自分が自分のままでほかに何も生まずに死んでいくのが嫌だったんだと思います。
自分がなりたいものになるか、存在してほしいものを生み出したいという気持ちがあって。それが、物質にいのちを吹き込みたい、っていう気持ちにつながっていったんだと思います。
──今回のバ美肉(※1)以前からこういった制作活動はずっとやっていたのですか? 美大に在籍していた過去があるとお聞きしたのですが。
和田 美大の彫刻科を1年で中退しました。
そもそも美大時代にやりたかったことっていうのが、「理想の見かけの人間をつくって、他人が触れられないような状況に置いたら、それは"人が黙ってそこに座って居る"という状態と同じではないのか?」っていうのをやりたくて。
※1バ美肉……「バーチャル美少女受肉」の略称。美少女のイラストや3Dモデルをアバターにして、バーチャル空間で活動する依り代を得ること。
──触れられないものをつくりたかった?
和田 触れられても良いんですけど、触られて中身が空洞なことに気づかれたくない。
もし本当に人体錬成ができたら触っても良いんですけど、それが叶わなくて似たような素材で見た目だけを取り繕うってことしかできなかったので。
シュレディンガーの猫的な、実際に触って、バリバリって開くまで、そこにいのちが宿っているかもしれないし、宿っていないかもしれない。そういうものをやりたかったんです。
でも技術的なところとか、材質とかの兼ね合いでそれが叶わなくて。それでダメだと思って大学は辞めちゃったんですけど。
──自身のテーマに沿った制作の限界が、素材や技術にあったんですね。
和田 あと、彫刻科を辞めた1つのきっかけとして、3Dプリンタが出回り始めた、っていうのがありまして。
パソコンとかで自在に作れるものを「実在として落とし込める手段」ができたっていうことは、私にとっては粘土とかのマテリアルをこねこねする必要はないのかな、って。
この分野で手に職をつけても後できっといろんな新しい技術とかが出てきて、私はそっちに惹かれるのかもしれないと思ったんです。
──その後、アイドルになるわけですよね。
和田 そこで出会ったのがアイドルという"媒体"だったというか……。
自分の生まれ持ったものがあるので、そのなかでできる範囲ですけど、お化粧したり、髪型や眼鏡を変えたり、きれいな衣装を着せてもらったりして、お客さんに触れるところを自分の手の届く範囲でコントロールできる。
……ってことは、それまで私がやりたかったことと同じなのではないかな、みたいなところがありまして……。
──表現活動のルーツが現在にまでつながっているんですね。
和田 でも、先に「これ良いじゃん、格好いいじゃん、超やりたい!」っていう気持ちが先行してて。後々取材とかで聞いていただいて、昔考えていたこととかがつながったりすることも多いです。

出典: kai-you.net

和田輪

──いつごろからVTuberをチェックしてましたか?
和田 すっごく前からではないんですけど、「四天王」が出始めたあたり(2017年12月頃)から、気になっていました。
──VTuberに度々言及されているなかでも、特にいわゆる「バ美肉」に衝撃を受けたように見えたのですが。
和田 「バ美肉」もいろいろ見ていたんですが、りむとまきちゃん、っていう2人組が「バ美肉布教動画」という動画で、Live 2D(※2)で動けるようになるまでを3時間ぐらいで配信している動画を見て、すごいぞと。
一般人が「受肉」できる環境がもうできているんだ! ということに衝撃を受けました。
──その時、自分もできそうかもと思いましたか?
和田 難しそうだな、とは思ってたんですけど……。ここまで細かく指南していただいたらもうやるしかないなと(笑)。
それで5月に"なりたく"なってから、Live 2Dの試用期間で受肉を果たしたので、その前に下絵を描く期間が結構あったんですけど、準備には1カ月もかかってないと思います。
──初めて受肉した時、どうでした?
和田 最初は眼鏡かけてなくて、髪の色とかも違ったんですけど、自分の声で発言を乗せるにあたってそれが全然乗らなくて(笑)。
けっきょくこねこねしてたらそれができたんですけど、試行錯誤を重ねた末の完成だったので、そんなに「できたぞ!」という感じではなかったですね。
──そこから外見もアップデートしていったわけですね。
和田 最初はロリになりたくて(笑)。金髪で、漫画『日常』のハカセをリスペクトした下絵を描いて、その後に目の形を調整する期間が割とあって。最初ジト目ができるモデルから、目を閉じた時にジト目ではなく笑顔になるようにしたんです。
でも自分で声を出してみたとき、私が成り代われる、手の届く範囲からちょっと外れてるな、と思って。髪色を変えて眼鏡をかけたらしっくり来ました。
──声もはじめから変えようと思っていました?
和田 思っていました。私のアカウントで発言しているわけで、私がやっているんですけど、別人に見られたくて。見た目と声も変えたいなと思って変えました。
──で、8月12日にPeriscopeで初配信をなされてますよね。僕もちょうどあの配信を見てて、放送中にプロデューサのサクライさんからお電話かかってきちゃったりして、いろいろ含めてとんでもないものを目撃したな、と思いました。
和田 あれは"事故"ですね(笑)。アーカイブも残してないので、伝説回になってしまいました。
──声が変わったり姿が変わったりするけれど、画面上には自身の顔に追従する姿があるっていうことは強烈な違和だと思うんですが、その違和感を面白がること自体がメディアアートとして成立しているのに驚きました。たとえば、動画が増えていくたびに和田さんの喋り方が変わっていて、「えへへ〜」とか「いいでしょ〜」とか、おっしゃるじゃないですか。
和田 恥ずかしい……(笑)。
──こういうワードは、「ブクガの和田さん」からはあんまり出てこないワードだったと思うんですけど、こういうのも自然に出てくるんですか?
和田 もう、なんか脳が混乱してくるんです(笑)。"なって"くるんですよね。その、別人格と言うか、その娘に"なる"んですよ。自分と離れて。
──つい先日の動画(外部リンク)でも「バーチャルワダリンは和田輪を離れて、進化していくと思います」って仰ってましたね。
和田 もともと分けるつもりでしたし、実際に離れていると思います。……それの最たる例がまぐろなちゃん(※3)だと思うんですけど──まぐろなちゃんはボイスチェンジャーで声のキーが上がっているのにもかかわらず、それが自身の声であるかのように歌えるんですよ。
それがめちゃめちゃ凄いなと思っています。極めるとああなるんだなって。
──いずれ自身もバーチャルで歌ってみたいですか?
和田 普通に歌ってボイスチェンジャーかけてみたこともあるんですけど、やっぱりうまくいかずケロケロしちゃったので。そこもいずれ、という感じですね。

出典: kai-you.net

最初期の「バーチャルワダ」。

アイドルよりも先にこの文化に触れていたら、アイドルになってなかったかもしれない
──和田さんは、立体造形・アイドル・VTuber、いろんな"媒体"によって表現をなされてきた経験のある稀有な人物だと思うのですが、それぞれのアプローチに対する思いなどを聞かせてください。
和田 彫刻科にいたときは、「作品が私達と同じ次元に"実在"することが大事だ」と思っていて──触れられたりとか、同じ空気の中にいたりとか──実在するという実感を持って初めてそれが"ある"と言えると思っていたので、絵でもなくデザインでもなく彫刻科に行ったんです。
だけど、やっぱり素材には限界があって。
柔らかい肉の中に骨を入れて血管を通して、みたいなことはかなりの技術があればできるんでしょうけどそれは私には難しかった。ここが限界なのかな、って感じたりしました。でも、実在があるのは、それだけで強みだと思います。
──ではVTuberの強みって、どこにあると思いますか?
和田 VTuberみたいな人たちって、私みたいな"個人勢"の方もいっぱいいますけど、"企業勢"の方とかだと技術に特化した人がいて、キャラクターデザインに特化した方がいて……。
声をきれいに出すこととか、いろんな技術のトップの人が集まってつくり上げた最高の状態だと思ってて──自分自身だと生まれ持ったものというのが足かせとなるので──自分の手から生み出せる範囲でならいくらでも好きなものがつくり出せるという意味で、バーチャルというのはむしろリアルの上位互換のように捉えています。
──上位互換というのは?
和田 アイドルという媒体よりも、バーチャルアイドルのほうが、自分のやりたいことが全部やり尽くせる場所なんじゃないかなと。
──それはかなり、衝撃的な発言にも聞こえますね。
和田 もしかしたらアイドルよりも先にこの文化に触れていたら、私、アイドルになってなかったかもしれないです。
──自身のコンディションを気にせずに、一番いい状態を見せることができますよね。
和田 たとえば、アイドルはトイレ行っちゃいけないけど、VTuberのキャラクターデザインの人は、結婚して妻子持ちでもOK、みたいな。
見せたくない裏側があったとしても、つくる側の意図するところだけをそのキャラクターの要素として伝えられるところが強みだと感じています。
──なるほど!
和田 別に私が悪いことやるつもりもないし、アイドルもやってるからそれはそうなんですけど(笑)。
アイドルには、私が彫刻でやりたかったのの向こう側であり、"実在"というのがすごく強くあるし、バーチャルでは自分のやりたい表現っていうのをなんの際限なくできるっていう利点がある。それぞれいいところだと思います。
──突然なんですけれど、夢眠ねむさんお好きですよね?
和田 好きです!
──夢眠ねむさんもボーカロイド『夢眠ネム』が発売されて、「あるいは夢眠ねむという概念へのサクシード」(※4)である意味"自分自身"共演されてましたね。
和田 MOSAIC.WAVの10周年ライブで、夢眠ねむさんと夢眠ネムさんが2人であの歌を歌ってたんですけど、ほんっとうにすごくて………!!(尊くて無言になる和田さん)
和田 すみません、言葉を失ってしまいました……。
──大丈夫です(笑)。夢眠ねむさんは自身について、「夢眠ねむの中の人」と言っていて、更に将来は「夢眠ねむを襲名させたい」っていうことを仰っているじゃないですか。これって、自身との距離感があるから出てくる言葉だと思うんですけど、和田さん自身も、こういった距離を実感として持っていますか?
和田 そもそもアイドルになろうと思ったきっかけというか、一番始めに魅力的だと思ったのが夢眠ねむさんで。
だから、そのスタンスをすごくリスペクトしていて、私のなりたいアイドルっていうのが、そもそも客観的な形だったんだと思います。
──和田さん自身にも、どこか客観的な部分がおありなんですね。
和田 主観だけだと、世界に溶け込めてこなかったので。普通の人たちと馴染むのもすごく下手で、友達もすごく少ないんですけど……。
周りに馴染もう馴染もうとするのではなくて、そんな「多分普通と変わっている自分」っていうのを、見世物にすることですごく生きるのが楽になったんですよ。自分自身ではなく、自分が手がけたものに関しては自信が持てるというか、そういうことがあります。
できるだけ第三者者目線で「この発言はどうなんだ?」みたいなのを考えるようにしてて、アイドルというお仕事に就くにあたって、そうなっていったんですかね。
──アイドルにせよ、VTuberにせよ、一見、「目立ちたがり屋がやる活動」に見えちゃうことがあると思うんですけど、でも自分の思っていることをうまく伝えられない人にとって、道が開ける手段になったりもしますよね。
和田 そういう手段として広がってほしいです。りむとまきさんの受肉動画の話なんですけど、「受肉したからと言ってYouTuberにならなくても良い」とおっしゃってて。"バ美肉一般人"という形もアリだと思うんですよ。……わかります?
──わかります。バ美肉一般人っていうワードの強さに笑ってしまいました。
和田 なので、Twitterのアカウントを1人1個持つように、バーチャルアバターを1人1個持つ時代が来るんじゃないかなって。
──バーチャル美男子YouTuberおばさんとか。
和田 絶対、絶対出てくると思うんですよ! ボイスチェンジャーがすごくて、男性の声出せるので、絶対出てくると思います(笑)。

出典: kai-you.net

「キーボードの上にピアスを置いて、気づかないまま閉じたら画面が割れてしまって……」という和田輪のMacBook Air。

──ところで和田さんは、完全な"Mac・iOSネイティブ環境での受肉"を果たしてますよね?
和田 そうなんですよ!
──めちゃめちゃ大変ですよね?
和田 これって、大変ですよね……?私が素人だからとかじゃなくて、本当に大変なことですよね?
──僕、元コンピュータ雑誌の編集者で、MacとかiOSデバイスにかなり詳しいんですけど、これは、Windows環境の倍は大変だと思います……。
和田 嬉しい! この大変さをわかってくれる人がいなくて……(笑)
──Macでの受肉にはあまり前例もないなかで、いろいろ試行錯誤をしたと思うんですけど、例えば絵って何で描かれました?
和田 絵はMacBook Airのトラックパッドに、iPhone用のタッチペンで描きました。左手にマウスを握って、描きたいところをマウスでクリックしつつ、トラックパッドでペンを滑らせて。
──作業で1番大変だったのは?
和田 Live2Dの作業を終えて、アバターを画面に映して自分と同期させるところが1番大変でした。
技術的に、FacerigもMacには対応してないし、iPhoneを接続してもレイテンシーが発生するし、同時にGarageband立ち上げると重いし……。
しかも、なぜか『RPGツクール』のゲームがどうしてもやりたくて、Wineでexeファイル無理やり立ち上げて(※8)みたいな……。めちゃめちゃでやってたので、放送の途中でゲーム落ちちゃったりとか、音声がなぜか乗らないとか……。
──そういえば、バーチャルの和田さんは眼鏡浮いてますよね?
和田 「つる」がなくて(笑)一応前人の方がいらっしゃって、つるを別パーツで作ればできそうなんですけど、まだ「面」の作り方もあんまりわかっていないので、眼鏡でも実装できたのが奇跡です(笑)
──今、3D化を目指して作業されてますよね。これも大変そうですか?
和田 大変ですね、何もかも初めての状態でゼロから完成まで行こうとしているので……。
過去に完成までつくった経験があれば、「後で後々こういう問題が起きるから最初のうちに対策を打っておこう」みたいなこともできると思うんですけど、それがいま行き当たりばったりでいろんな問題を乗り越え乗り越え……という感じ。大変です。
──3Dモデルの作成にあたって導入したBlender(※9)はどうですか?
和田 感動しました(笑)。接着剤を使わなくても接着できるわけじゃないですか、皮膚と骨を。それはすごいことだと思うんですよね。
もし現実世界のマテリアルで人間の形をつくれたとしても、あるポーズでここに立たせようとしたら物理的な問題で倒れちゃうとか、支えが必要だったりとかで、一番理想の形にはならなかったりします。でも3DCGだとそれを軽々乗り越えられるということに感動しました。
──結局Boot Camp(※10)でWindowsも導入してましたね。
和田 そうなんです。本当はできることなら全部Macでやりたかったんですけど、プログラミングまではまだ手が出せなくて、Unity(※10)とかもよくわからないし……。
──受肉した後にも、「生きる大変さ」があるんですね……。
和田 VTuberの世界にも、「テレビの世界で活躍するバラドルからライブアイドルまでの幅広さ」みたいなものがあると思っていて、配信トラブルとかの"生きてる大変さ"も含めて、エンタテイメント的な目で見てもらえたら良いなって思います。だんだんアップデートして可愛くなっていくさまを見せていければいいなと思ってます。
──引き続き、応援しています。

出典: kai-you.net

和田輪の「こだわりの部屋」「ファッション」

和田輪のおこだわり。

以下、OTOTOYに掲載された「メンバーおこだわりの「お部屋」を写真とともに公開」より抜粋。
和田輪のおこだわり。
「お風呂セットです。百均で買ったけど部屋のキッチンにサイズが合わなかったシンク用の水切りカゴがしっくりきています。普段はこれを湯船のへりの壁際に置いています。わりと安定しているのだけどシャンプーが減ってくるとバランスを崩しそうになります。マンションに住んでる人お風呂セットどこに置いてるの? シャンプーはいろいろ試したくて無印良品のボトルに詰め替えています。右奥のチューブのトリートメントを使っているのだけどこれのでっかい詰め替え用を見つけたので今度からそれもポンプボトルに入れて使おうと考えています。髪フェチなのでお風呂でヘアケアをしている時間がわりとしあわせです」

和田輪

以下、FINEBOYSに掲載された「個性派ガールズユニット、Maison book girlがファッション観を語る!」より抜粋。
――みなさんの普段のファッションについて教えてください!
「ブランドにはあまりこだわらず、ファストファッションのお店もよく利用しています。上下モノトーンでそろえることが多いですね。こだわりはサイズ感。自分は背が低いので、Sサイズでもちょっと大きいと感じるものがあったりするんです。なのでなるべく試着をしたり、サイズ展開が多いお店ではXSサイズなどを選ぶようにしています」
――”おっ!”っと思う男子のファッションってありますか?
「自分がメガネをしているので、男性もメガネに気を遣っている人は素敵だなと思います。サングラスとまではいかないけれど、レンズに薄い色がついていてUVカットできるものだったり、ブルーライトをカットできるものだったり……そういう些細なことでいいんです(笑)」

和田輪

以下、HARAJUKU POP WEBに掲載された「Maison book girl、5年間の物語の歩みを綴ったベスト盤「Fiction」を発売!!」より抜粋。
─みなさんのファッションへのこだわりもお聞きしたいなと思います。
和田輪:昔から、そんなにファッションへこだわるタイプじゃないんですけど…。わたし、「市販の服を着ると、なんかダサい。なんでだろう??」とずっと思っていたんです。
矢川葵:市販の服って、それ以外の服、普通はないでしょ(笑)。
和田輪:そこが悩みだったんですけど。ここ近年、「市販の服が似合わない」と思っていたのはわたしの身体のサイズが小さいすぎて、体型に合う服がなかったからなんだということに気づきました。わたしもH&Mが好きなんですけど。理由が、サイズ展開がすごく広いからです。わたしの場合、上半身はSとMの中間がいいけど、下半身はXSがいいみたいに、体型に合わせやすいサイズが揃っているから、H&Mはよく利用しています。

和田輪の偏愛レター

和田輪

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