Maison book girl(ブクガ)の徹底解説まとめ

Maison book girlとは、2014年11月5日に結成された日本のアイドルグループ。作曲家・音楽プロデューサーのサクライケンタとBiSのメンバーであったコショージメグミを中心として誕生。サクライケンタの「現音ポップ」と称する変拍子を多用した楽曲をバックにコショージメグミが詞の朗読を行うというパフォーマンスを発展させた形といえる。一筋縄ではいかない「現音ポップ」に合わせてパフォーミングを行う、という独自の世界を持っている。2021年5月30日、活動終了が公表される。

4月14日
東京・昭和女子大学 人見記念講堂にて「Solitude HOTEL 7F」開催。
以下、Music Voiceより「Solitude HOTEL 7F」ライブレポートを引用。
ステージの構成などがより大きくなってきていると同時に、より物語性が強くなってきていることが窺い知れる。

音楽がシャワーのように降り注ぐ
ここに記したレポートは、筆者が、この日の公演を観ながら勝手に夢想していた物語である。夢の世界で戯れる4人の少女たちの姿を観ながら、自分の妄想のスクリーンに映し出していたライブの感想文みたいなもの。そこを踏まえて読んでいただきたい。この解釈、間違っている可能性はきわめて高い。だったら書くなと突っ込まれそうだが。まぁ、そこは察してもらいたい。あくまでも、一つの見方。勝手なもう一つの夢物語として受け止めていただけたら幸いだ。
そこは、小さな星空が無数に輝く夜の世界。その光はとても小さく、大きな闇に吸い込まれそうだ。その黒い闇の世界から息を吹き返すように、黒い装いを身にまとった4人は舞台の上で<長い夜が明けてゆく>と、「長い夜が明けて」を歌い踊りだした。心を優しく揺らすワルツの調べ。少し火照った気持ちのまま、少女たちは小さな部屋(舞台)の中、華麗に舞い踊りだす。闇に抱かれることへ心地好さを覚えるように…。その闇の先にある光へ憧憬を抱くように、4人は美しい調べと瞬くストロボライトの光に照らされながら自分がここにいる意味を探していた。時を忘れるようにワルツに乗せて歌い踊る少女たち。そんな彼女たちが身を預けた音楽を遮るように、強い雨の音と轟く雷鳴が、瞬く光と重なるように闇の世界を直撃した。もうすぐ、長い夜が明けようとしていたはずなのに…。
いつしかそこは、夕焼け景色が広がる巨大な草原の地へと塗り変わっていた。少女たちは<それは夢じゃないの>と「狭い物語」を歌いながら、ふたたび繰り返される夢の物語の住人として、互いに身体を重ねるように、お互いの手を触れ合うように想いを結びながら、ふたたび落ちていく暁の風景に身を預けていた。
闇が支配する空間の中、激しく瞬くストロボライトの輝きが意識を酩酊させる。揺れる意識をつんざくように流れた重い弦楽の音色。いつしかそこは蒼の闇が広がる世界へ様変わっていた。「レインコートと首の無い鳥」を歌う4人の背景には、ドロッとした蒼い雨が渦巻くように降り注ぐ。そこへ時おり刺し色として赤い雨が色を塗り重ねていた。それはまるで、心がどんどん濁っていく様を映し出した映像のよう。そんな病んだ心模様を映した映像を背に、4人は意識を白濁させ、重厚な演奏に身を預けては、心地好くステップを踏みながら歌と戯れていた。
少しの光を抱きながら弾む「rooms」の調べに身を寄せた4人は、黒(闇)と白(光)が交錯する世界の中、歓喜の想いへ浸りながら<安心していいよ 全部無くなるの>と歌い出した。彼女たちが求めていたのは光に包まれた世界? それとも…。はしゃぐ4人の気持ちを濁すように、ふたたびストロボライトが激しく瞬きだした…。
大きく呼吸をするごとに、その空間と4人の表情、そして歌声に華やかさが増していく。彼女たちは、「十六歳」を介し<ただ願っているの 出口を探して>と明るい表情を魅力に歌い出した。跳ねる演奏に合わせスキップするように、<愛されたいとか思ってもいいの>と歌いかける。とても心地好く温かさと光を抱く楽曲だ。いつしか心も華やいだ気分に包まれていた。
優しく弾むヴォイオリンの音色に導かれ流れたのが、「faithlessness」。おもちゃ箱をひっくり返したら、気持ちがわちゃわちゃと騒ぐ音楽が止めどなく溢れだしたような気分だ。気持ちがどんどん膨らんでいく。なのに、彼女たちは<裏切られて 裏切るの>とネガティブな感情を、あえて作り笑いを浮かべるように明るく歌いかけていく。人はあきらめと希望二つの想いを交錯させながら現実を長らえてゆく。そうやって痛む心ではしゃぐことが生きる術だと言うように。巨大な病棟の中の、小さな白い部屋に隔離された中で、小さな自由を謳歌していく彼女たちが笑顔でいれる理由が、そこにあるとでも言うように…。
彼女たちの宴は終わらない。大地を揺さぶるような音を上げて駆けだした躍動的な「karma」に身を預けた少女たちは、その小さな空間の中で思いきり走り続けていた。ここは夢の世界。何をしてもいつかは覚めるはず。だったら、闇を呑み込む勢いで騒ごうよ。きっと何もかも、夢の中なら許してくれるはず…そう信じて。そんな無邪気に戯れる彼女たちの姿を、ふたたびストロボライトが照らしだした。
黄金色の輝きが眩い世界を描き出した。4人が「snow irony」を歌い踊りだすと同時に広がったのは、キラキラとした光と音楽がシャワーのように降り注ぐ巨大なダンスホール。今はただ、華やかな宴に身を預け、闇に苦しむ感情をすべて解き放ち踊りはしゃごうじゃないか。とても華やかな空間だ、カラフルな音符の雨がどんどん身体を輝かせていく。それまでの闇に縛られた心が嘘のように、今は心騒ぐままに歌い踊り続けていたい。
ストロボライトの光と高鳴るクラップ音。その音に合わせ、少女たちの姿を熱い眼差しで追いかけていた観客たちも、同じよう手拍子を打ち鳴らしだした。スリリングかつダークさも抱いた「bath room」に導かれた少女たちは、いつしか病棟を抜けだし、深い森の中へ足を踏み入れていた。演奏に合わせ、無邪気に森の中を駆けめぐり、はしゃぐ彼女たち。それは束の間の自由。いや、少女たちはこの深い深い森を駆け抜け、繋がれることのない本当の自由を求め彷徨っていた。その力強いクラップ音へ導かれるように走りながら…。
身体を刺激するエレクトロなビートが響き渡る。「lost AGE」が、ついに昇る光を導き出した。力強く歌う4人の背景には、輝きを放ちながら空へ昇る丸い球体が映し出されている。時に、闇の世界へ暗転しながらも、それでも輝く光の景色が彼女たちを未来へ連れ出そうとしていく。

出典: www.musicvoice.jp

「Solitude HOTEL 7F」の一コマ。

希望を求める悲しみの物語
さあ、またここから新たな始まりを描こうか。曇り空を割って注ぐ光を身に感じながら、少女たちは心開く気持ちを持って「cloudy irony」を高らかに歌いだした。優しく身体中へ降り注ぐ雨も、闇をすべて洗い流すためのシャワー。どんどん心が、身体が弾みだす。心が光に満ち、新たな細胞が息をし始める…。
「sin morning」が生み出すアタックの強いビートに刺激を受け、身体が騒ぎだす。彼女たちは、新たな自分へ生まれ変わるように、<ずっと好きだった 汚さも>と過去の自分たちの姿さえ懐かしみながら、これまでの罪を消し去るように弾む声で、歌うことを謳歌していた。
騒ぐ気持ちを抑えられない。少女たちは、新たな自分を謳歌するように<朝の夜は消えてくの>と「言選り」を歌っていた。声を発するたびに、4人の感情に光と熱が宿るようだ。これまでの縛られた世界を抜け出し、本当の自由を謳歌しながら4人ははしゃいでいた。でも、それは儚い夢の世界だったことを後に知ることになる。こぼれた夢を助けても続きは扉が塞いでいることを…。
降りしきる雨の音。そこは、以前から何度も眺めていた馴染みある風景。4人は、嘆くように歌っていた。<おかえり さよなら いつまでも叶わないの>と。彼女たちの夢は、何度も何度も終わることなく悪夢を繰り返していく。そのたびに「おかえりさよなら」と自分たちへ言い聞かせるように。
そこには、真っ白な服を身につけた4人が立っていた。少女たちは嘆くように、「夢」を歌いかけた。<ゆめ 見たの><ゆめ おきて まだゆめの途中>と。逃れられない運命にあきらめを抱きながら。でも、忘れたくない希望をそっと胸の奥へとしまい込み、小さな鍵をかけていく。明けだした朝日を全身に感じながらも、まだ夢の世界へとらわれながら、<本当のことは いつも ゆめに そっとしまってる>と4人は歌を口ずさんでいた。
舞台には、再び黒い装いを身に抱いた4人が居た。少女たちは<僕らの唄はどこに届いているんだろう>と「鯨工場」を、どこか切なさを抱きながら歌い出した。少女たちが観ていたのは、今、まさに工場でその身を解体させられている鯨が、涙を流しながら見ていた夢だったのかもしれない。自らの求める意思を鯨は4人に託し、僅かな時の中で自由を謳歌しようとしていたのかも知れない。そんな4人もまた、いろんな人たちの夢を背負いながら、小さな部屋の中で、希望を求める悲しみの物語を変わりに体現し続けていくのかもしれない。
アンコールで披露した、朗読劇「まんげつのよるに」。最期にMaison book girlは、再び「長い夜が明けて」を歌い出した。夜の帳の中、4人は優しく流れるワルツの調べに乗せ、踊り戯れていた。彼女たちは、再び誰かの夢を背負い、新しい物語を描き出すのだろうか。それとも…。新たな知らせを告げるように鳴り響きだした雷鳴。記憶を入れ換えるようにいつしか途切れ途切れるに鳴る演奏。そして、しばらくの闇…でも、再びそこにはワルツの調べが鳴り響いていた。そのまま朝を迎えるように。長い長い物語を一つ閉じ、自分らしさを持って朝を迎えるように…。

出典: www.musicvoice.jp

「Solitude HOTEL 7F」の一コマ。

以下、オフィシャルサイトよりインタビューを引用。
「Solitude HOTEL 7F」開催後に行われたメンバーへのインタビューであり、本ライブまでの経過や、各メンバーがこのライブをどう受け止めたのか、またライブの裏話などが語られており、興味深い内容になっている。

ーーちょうど1年前の5月4日、Maison book girlは東京キネマ倶楽部で行われた『Solitude HOTEL 4.9F』でポニーキャニオンへの移籍を発表しました。
コショージ ーそっか、あれからもう1年なんですね。
ーーそれ以前と比べて、この1年は相当濃かったと思いますが?
和田 ー体感的にも時の流れがすごく早かったです。特にこの1年はポニーキャニオンさんがプロデューサーのお尻を叩いてくれたおかげで(笑)、新曲とか次にやるべきこととかどんどん飛び込んできたので、そういう意味でも早かったなって思います。
井上 ー確かにあっという間でした。シングルも1年に何枚も出せているのはポニーキャニオンさんのおかげでもあるだろうし、それによってワンマンライブもちゃんとコンスタントにできているし、やることがいっぱいあって充実していました。
ーーしかも活動が途切れずに、常に動いている感が伝わってきたのも印象的で。特にアルバム『yume』前後から、その傾向がどんどん強くなってきた。それは2019年に入ってからもずっと続いていて、4月3日リリースのシングル『SOUP』まで良い形でつなげられたと思うんです。
全員 ーうんうん。
ーーその『SOUP』に関して、改めて聞かせてください。前回のインタビューはシングル完成直後でしたが、改めてリリースから1ヶ月以上経った今、あの作品をどのように捉えていますか?
矢川 ー聴いてくれたファンの人、特に以前からブクガを知ってくれている人は「長い夜が明けて」に対する反応がすごく良くて。「CDも良かったけど、ライブで観てさらに好きになった」って言ってくれる方もいて、このタイミングにすごくいいシングルを出せたなって、自分たちでもそう思っていたけど、さらにファンの人たちも同じように思ってくれたことがうれしかったです。
ーー今回はオリコン週間ランキング17位という記録やセールス枚数という、数字の面でも結果を出せたんじゃないかなと。
コショージ ーそうですね。
ーースタッフさんから聞いた話ですと、発売初週で前作『elude』のトータル売上とほぼ同じぐらいだったそうですし。
矢川 ーうれしいですね。私、『yume』のときにあるインタビューで「ウィークリーで20位以内に入るとか、明確とした数字で見える結果が欲しい」と言ったんですけど、それを『SOUP』で実現できて。そうやって目に見える形で結果を出せたのは、正直ホッとしました。
井上 ー実際、有線でも『SOUP』の曲がいっぱい流れているみたいで、いろんなところから「これブクガかな?と思ったら本当にブクガだった」という声をよく聞きますし。
和田 ー〈僕らの唄はどこに届いているんだろう。〉というダイレクトなメッセージが入っている曲(「鯨工場」)と、「長い夜が明けて」みたいに直接的に感情を込められる新しい曲の熱が、初めての人にもわかりやすく伝わったのかな。
ーー直接的に感情を込められる曲が増えたというのは、それだけ皆さんの歌の技術も向上しているという証拠なんじゃないでしょうか。実際、Twitterなどでもそういう声をよく見かけますし。
井上 ー以前はライブによく来ていたけど長らく観てなかったという人から、最近アイドルさんがたくさん出ているイベントでブクガを観てくれて「めっちゃ変わったね」という声はたまに耳にします。
ーーちょうどこのGW中にブクガは『ビバラポップ!』にも出演しましたが、生バンドをバックにあれだけ強い歌を聴かせられるようになったのも今ならではと思いました。
矢川 ーうれしい!
井上 ーたぶんバンドさんも私たちも、回を増すごとに見せ方というか、みんなで上手になっているというのもあって。最初の頃に比べたらだいぶやりやすくなったと思います。
コショージ ー最初の頃は、バンドさんにすべて遠慮していたところもあって。バンドさんがいるステージでの立ち方もわからなかったし、そこで結構苦戦していましたけど、今回のビバラでは何ならバンドさんとも戦っていたし、ほかの出演者でもバンドで出ている人もいたし、戦わなければいけない感じがすごくあったので……だんだんステージの立ち方がわかってきたのかもしれない。
ーーそれが当日、序盤のMCでコショージさんが発した「今日は戦いに来ました」というMCにつながると。
コショージ ーああ、言いましたね(笑)。そうですね、ビバラは試される場というか。
ーー昨年の出演時はLEDスクリーンのトラブルがあり、完璧な形でのステージを見せることができなかった。そのリベンジという気持ちもあったんでしょうか。
井上 ー悔いがちょっと残ったしね。
和田 ー設備が壊れてしまったからどうってことではなくて、それによって心が乱されてしまったことによる後悔が大きかったので、今回はのびのびやるぞっていう心構えはありました。
ーー今回は会場の規模感も味方してくれて、熱もダイレクトに伝わったでしょうし、本当に素晴らしかったと思います。
全員 ーありがとうございます!
ーーで、話を戻します。シングルのリリースに関連して全国ツアーがあり、そこから『Solitude HOTEL 7F』に向かっていきました。今回ツアーを回りながら新たな発見などはありましたか?
和田 ー以前は各地を回っていて、それぞれの客層や雰囲気の違いにわりと飲み込まれてしまっていたんです。お客さん側が一方的に盛り上がっていると、自分たちも「頑張らなくちゃ!」と焦っちゃったりとか。でも、今回は自分のやりたいこととその場の雰囲気が自分の中で調整できたというか、以前よりもバランスが取れるようになったのかなと感じました。それも去年のビバラ含め、いろんな状況のステージに立たせてもらえたからだと思うんですけど、成長は感じましたね。
ーーそういう経験がちゃんと身になっていることが感じられたと。
和田 ーはい。それまではあまり自覚はなかったんですけど、ツアーを経てちょっと実感が湧いたので。それで7Fでも今までより堂々とやれる下地にできたのかなって感じました。
矢川 ー私は今回、ツアーの途中で体調を崩してしまって。前よりは体力がついたと思っていたんですけど、まだまだなんだなとも思ったりしました。あとは、各地でのお客さんの盛り上がり方とかもだんだんわかってきたし、それに対しての自分のテンションの上げ方もちゃんと考えていかないといけないなって思いました。
ーーお客さん側に何か変化は感じました? 例えば新しいお客さんが増えたとか、ノリ方が少し変わってきたとか。
矢川 ー大阪で女子限定エリアができていて、そういうエリアができるぐらい女の子のファンが増えたんだなって実感はありました。
ーーこれまでも女性ファンは決して少なくはなかった気がしますが、特に最近増えている印象が強いですよね。
井上 ーうん、そうかもしれない。しかもアイドルファンというよりも、バンドとかが好きな子が多いかもしれないですね。

出典: www.maisonbookgirl.com

「Solitude HOTEL 7F」の一コマ。

ーー単純に楽曲から入ってくる人が増えたってことなんでしょうか?
コショージ ーそうなんですかねえ。
和田 ーワンマンを座席指定でやっているのもあって、たぶんライブハウスでのアイドルライブはちょっと怖いと思っている子たちも来やすいのかなって、私は思ってます。
ーーなるほど、それはあるかもしれませんね。そして、シングル『SOUP』のリリース日には初の試みとなるライブ『Solitude BOX 1st』も新宿MARZで開催されました。リリース当日、日付が変わったと同時に開催が発表され、会場でCDを購入した人なら誰もが観ることができる、画期的な内容でした。
コショージ ーあれもポニーキャニオンさんが考えてくださって。
井上 ー本当にありがたいですね。
矢川 ータイトルもギリギリまで悩んでたよね。
コショージ ーうん。ああいう企画を毎回やっていけたらいいかなって思います。例えばインストアイベントだと、CDショップのスペースをお借りしてライブをすることがほとんどなんですけど、ブクガの場合そういう場所でのライブが弱点みたいなところもあって。
井上 ー蛍光灯の煌々とした明かりの中で……。
矢川 ー違和感がね。
ーー日常の中にいきなりポツンと非日常が現れるような。
コショージ ーそうなんです。なので、ああいうライブハウスでやれるというのはすごくありがたいです。
ーーしかも、ボリューム的にもミニライブ以上のものがありましたし。あの日の選曲も初期の『bath room』や『summer continue』の楽曲に新曲を加えたもので、また面白いものでしたよね。
コショージ ーツアーのセットリストをギュッとしたような内容でしたしね。ツアーでは『bath room』全曲と『cloudy irony』までの、2016年までのブクガに新曲をプラスして披露していて。「鯨工場」で原点に戻るというか、アーティスト写真も初期のものを流用していたりしたので、その頃の曲である『bath room』をメインでやりたいなというのがあったんです。それに、新規の人は初めて聴く曲も多いだろうから、『bath room』の曲を「新しい曲を聴いた」みたいな感覚になってくれたらなと思って、ああいう構成でやりました。
ーー2016年までの楽曲を今の4人が歌うわけですから、当然その当時のものともまた違った形になりますし、僕も新曲を聴いている感覚で楽しめました。
井上 ーファンの方からも「振付も以前と変わった?」って言われましたし。あんまり変わってないんですけど、たぶん昔と比べて私たちの技量が上がったというのもあって、違ったものを観ているように感じた人もいたみたいです。
ーー振付はもちろんですけど、やはり特筆すべきは歌なんですよね。
井上 ーですよねー、やっぱり(笑)。
ーー(笑)。
井上 ー当時CDでサクライ(ケンタ)さんが使っていた音源や制作環境が年月も経って進化したらしくて、「『bath room』時代の曲と最近の曲のオケって、鳴っているトラックも音圧が違うんだよね」ってマネージャーから聞いたんです。なので、昔のちょっと軽い感じのトラックに今の声が乗るという、また違った趣が……。
矢川 ー「趣が」(笑)。
井上 ー深みが増しましたよね(笑)。
ーー確かに(笑)。この初心を振り返るようなセットリストが、のちの7Fにもつながっていったのかなと。このタイミングに改めて「Maison book girlとは?」とおさらいするような流れがあって、だから7Fを観たときは集大成感というか、初心者に優しいセットリストだなと思ったんです。
全員 ーうんうん。
コショージ ー7Fのセットリストは新曲とポエトリー以外、実は全部MVがある曲なんです。確かに集大成感は間違ってないと思います。それもあってか、ファンのみんなからは「ブクガ、解散するんじゃないか?」と思われていたみたいですから(苦笑)。
井上 ーびっくりしちゃったね、「解散するの?」って言われて(笑)。
コショージ ー「最近のコショージの発言とか見てたから、私はそういうのがわかる」とか。
和田 ー意味深なことを言ったみたいな(笑)。
コショージ ー全然! 普通に「CDが発売できてうれしい」ってことを言っていただけなんですけどね(笑)。
ーーそういう深読みもできないこともないと。
コショージ ーそうなんです。でも、「鯨工場」やシングルを聴けばなんとなくわかるとは思うんですけど、7Fは壁を突き破っていく、今までのMaison book girlの世界観を突き破っていくぞ、みたいなものを見せたいライブだったので、だからこそ今までのMaison book girlを全部見せたかったんです。
ーーセットリストに関してはそういう気持ちが込められていたと。では、演出という点においてはいかがでしょう? あれだけ大きなホール会場での着席ライブで、何を見せたいと思いましたか?
コショージ ーまずは「煙を出そう!」と(笑)。
矢川 ーふふふ(笑)。
ーーあ、そこなんですね(笑)。
井上 ー煙は毎回言ってたよね。
和田 ーうんうん。
コショージ ーそう。前回の『yume』公演(2018年12月16日、ヒューリックホール東京で開催された『Solitude HOTEL 6F yume』))で……。
ーーあ、やっぱりそこだったんですね!
コショージ ーそうですそうです! 出したかったんです!

出典: www.maisonbookgirl.com

「Solitude HOTEL 7F」の一コマ。

ーー「夢」でのあの煙の演出が始まったときに、「あ、前回やりたくてもできたかったことって、これなのかな?」と思いました。
コショージ ーこないだは幕がシューっと降りたじゃないですか。じゃなくて、最初は煙で終わりたかったんですよ。でも、あの会場では無理で。ほかのフロアまでブザーが鳴っちゃうからって(笑)。
矢川 ーそれは迷惑すぎるなあ(笑)。
コショージ ーなので、念願の煙なんです!
井上 ーやばかったもんね、「3秒で煙がいっぱいになります」みたいな(笑)。
和田 ーびっくりするっていう(笑)。
コショージ ーでも、結果的に人見記念講堂でやれたので、よかったなって。
井上 ーいい会場でしたよね。
コショージ ーもう一回やりたいね。
井上 ーしかも、終わってみたら座席が青くて。
コショージ ー衣装と一緒でね。
井上 ーそう。『yume』公演のときは、会場の座席が赤かったんですよ。
和田 ーベッドと同じ色でね。
井上 ー意図せず、ぴったりでした。
ーースクリーンに映された“首だけの鳥”がストーリーテラー的に語りを入れてくる、あの演出も面白かったです。
コショージ ーあれは「もうちょっと、ちゃんと喋れなかったんか?」って言ったんですけどね(笑)。
矢川 ーああいうストーリー的なことを話してくれる子がいると、ライブ全体が物語っぽくなっていいのかなって思いました。だからこそ、もうちょっとはっきり聞こえたほうがよかったのかなと。
ーーそういえば、「夢」の際には衣装面でも興味深い試みがありましたよね?
コショージ ー初期からの衣装を4人バラバラで着たんですけど、もしかしたら「夢」の中に今までのMaison book girlがいたのかもしれないみたいな解釈になるかなと思って。そこから煙に包まれて今までの衣装も消えていくみたいな流れで、そのまま「鯨工場」へと続く構成が私的にすごくしっくり来たんです。
ーー煙で何かを消し去るというか、一回すべてを隠してクリアにする……でも、ここまでの話を聞いていたら、確かに「解散するのかな?」って勘違いしてしまいそうですね(笑)。
和田 ー走馬灯っぽいし(笑)。
コショージ ーだから、先に解散ライブをしちゃいましたという(笑)。
ーーで、「夢」から「鯨工場」へと続くと、壁一面までが赤く染め上げられる。あの演出のインパクトはすごかったですよ。建物自体を含めて演出の道具になっている、あれができたのも人見記念講堂という会場ならではだなと。
全員 ーうんうん。
ーーアンコールではまず「まんげつのよるに」を披露しました。これもかなり気合いの入った演出でしたよね。一部、詩が追加されていましたが、これは7Fのために用意したものだったんですか?
コショージ ーそうです。「まんげつのよるに」みたいな曲って詩の朗読ですし、ライブでやるのはなかなか難しいじゃないですか。しかも今回のライブ自体、壁を突き破るみたいなことを表現したかったので、CDから飛び出すみたいな雰囲気というか、生でやっている意味みたいなものをちゃんと考えようと。たぶん2階の人は気づかなかったと思うんですけど、実は「まんげつのよるに」では4人とも全身ずぶ濡れになっていたんですよ。最初はみんな、乾いているんですけど。
矢川 ー「乾いている」(笑)。濡れてないのね。
コショージ ーそう(笑)。先に私がステージから掃けて、濡れて戻ってくるんですけど、そこからみんなも次々に濡れて帰ってきて。だから、その時間稼ぎじゃないけど、ほかのメンバーが濡らしている間に私が間を持たせようということで、ああいう演出になったんです。「最後の曲で濡れたい」というのはサクライさんからの提案だったんですけど、じゃあ「まんげつのよるに」でひとりずつ濡れていくのがちょうどいいかなと思って、ああいう感じになりました。ちょっとわかりにくかったですよね?

出典: www.maisonbookgirl.com

「Solitude HOTEL 7F」の一コマ。

ーー僕は2階で観ていましたが、髪が若干しっとりしているなとは感じられました。
コショージ ーあと、最後の曲でマイクにビニールを貼っていたんですけど、それがちょっと心残りで。最後だから声がこもってるんじゃないかなと思われていないかなって。
井上 ー水で壊れないようにした結果なんだけどね。
和田 ーエフェクトをかけていた説とか、和田輪があんなに汗をかいているのを初めて観たとか(笑)。やっぱり上手に伝わらなかった部分はありますね。
井上 ーあそこ、一番頑張ったのにな(笑)。床とか濡れたらマズイ場所にもシートを敷いて、こちらも滑らないように踊っていたんですけどね。
ーーでも、あの「まんげつのよるに」には心臓を鷲掴みにされるくらいグッとくるものがありましたよ。ポエトリーだけで全体の熱をあそこまで上げられたのは正直圧巻でした。
矢川 ー私、コショージが長く喋るところのセリフを知らなくて。袖でイヤモニで聴いていたら、ちょっと泣きそうになっちゃった。このあと歌わなくちゃいけないし、泣いたら歌えなくなると思って上を向いて目を乾かしてからステージに出ました(笑)。
コショージ ー顔は濡れてるけど、目だけはね(笑)。
井上 ー私、そのとき一生懸命濡れてた(笑)。
ーー(笑)。そこからもう一度、オープニングの「長い夜が明けて」に戻る。あの構成も素晴らしかったです。そして最後の最後、映像演出にびっくりさせられるという。
全員 ーふふふふ(笑)。
ーーいろんな人が驚いたいと思うんですよ。観ていない人のために説明すると、「長い夜が明けて」の終盤に後方のスクリーンが突如PCのブルーバックになり、左側に「入力ソース:」映像信号が入力されていません。」と表示。ライブが終了すると、その右側には6月からスタートする全国ツアーのスケジュールなど新情報が表示されていたと。きっと昨年の『ビバラポップ!』でのトラブルを思い出して「わっ、また壊れた!」と考えた人もいれば、ラストの新情報解禁とあわせて「これ、計算なの?」と深読みした人もいたかと思います。
井上 ー最初は「えっ?」って思いますよね。私もリハのときにびっくりしましたから、「何してんの?」って。
コショージ ーあれは「壊れていく」ことを表現した結果なんです。スクリーンが半分に折りたたまれたり、天井の照明も降りてきたのもそういうことを意識していたみたいなんです。そうか、私パソコンとか詳しくないから意味がちょっとわかってないかも、あれの。
和田 ーああ、エラーが。
矢川 ー不具合が起こると、ああいうメッセージと青い画面が出るんだよ。ファミコンとかやってると出でない?
井上 ーファミコンって(笑)。
ーー最後の最後に、どこまでがリアルでどこからが虚像なのんだろうっていう。
コショージ ーあ、まさにそのとおりです!
井上 ーじゃあ成功かな(笑)。
ーーそこまでを含めてブクガからの所信表明じゃないけど、2019年さらに攻めますっていう意思表示のライブだったわけですものね。
コショージ ーうん、そうですね。
ーーそれはちゃんと伝わりましたよ。にしても、6Fは3公演あってそれぞれ見せ方も違ったぶん、大変さもあったけどいろんな試みができたと思います。なので、それを7Fの1公演で上書きしていくのは相当大変な作業だったんじゃないかなと。
全員 ーうんうん。
ーーもちろんサクライさん含めて、まだまだやりたいことはたくさんあるだろうし、観る側としては「次はどんなすごいことをやってくれるんだろう?」っていうハードルだけがどんどん高くなっているところを、今回しっかり乗り越えましたよね。
井上 ーやった(笑)。
コショージ ーでも、やっぱり今回のシングル3曲の強さも大きいなって思います。VJさんや照明さん、煙を出してくださった方とか皆さんもすごいものを作ってくださったし、そういう演出はこれからさらに凝ったものができるとは思うんですよ。でも、そこを超えていくには新しい曲と、それを私たちがすごくいいパフォーマンスで表現することが大前提だから、そこさえ更新していければきっと8Fもさらによくなるのかなと思います。
ーー環境と実力が今、いい感じに比例して上を向いている状態にあるんでしょうね。
コショージ ーそこまでに4年ぐらいかかりましたけど(笑)。
井上 ーかかったねえ(笑)。
コショージ ーすぐに、ポーンといけなかったからね。
井上 ーサクライさんがやりたいことってこういうことだったんだなって、最近わかってきて。それが最初の頃は私たちの実力が追いついていなかったが故に、あのアンバランスな感じになってしまった。でも、今はそこにやっと実力が追いついてきて、この規模感のことを表現できているんだなって思います。
コショージ ーでも、この1年に関して言うと、特にライブに関しては逆にサクライさんよりもうちらの割合が増えたのかなと。だから、最近はサクライさんのやりたいことを勘ぐるみたいなこともやめて、こっちはこっちでやりたいようにやってという考えに変わりました。
ーーきっと皆さんの中でMaison book girlに対する確たるものが芽生えたからこそ、なんでしょうね。そこも含めて、サクライさんの中では皆さんにいろいろ委ねることで、そこから生まれるものがまた面白いと感じているのかもしれないし。
コショージ ーそう考えると、もしかしたらこっち側主体でやってほしかったのかなとも思います。サクライさんはもともと自分が主役になりたいタイプではないから。だとすると、今の感じはちょうどいいのかもしれないですね。

出典: www.maisonbookgirl.com

4月16日
シングル『SOUP』より「長い夜が明けて」のSolitude HOTEL 7FでのライブパフォーマンスをYouTubeにて公開。

4月26日
東京・新木場STUDIO COASTにて開催された「OPC fes. -HEISEI LAST FRIDAY-」に出演。

「ekoms主催定期イベント『bmg』」のバックステージ。
FINAL SPANK HAPPYと共に。

4月30日
東京・渋谷WWWにて「ekoms主催定期イベント『bmg』」開催。ゲストはFINAL SPANK HAPPY、ミソシタ。

2019年5月

「VIVA LA ROCK EXTRA『ビバラポップ!2019』」のバックステージ。
大森靖子、ピエール中野夫妻と共に。

5月2日
埼玉・さいたまスーパーアリーナ内CAVE STAGEにて開催された「VIVA LA ROCK EXTRA『ビバラポップ!2019』」に出演。

5月6日
アルバム『image』より「int」のMVをYouTubeにて公開。

5月6日
東京・新木場STUDIO COASTにて開催された「ギュウ農フェス春のSP2019 怪物音響オクタゴン is BACK!」に出演。

5月8日
東京・阿佐ヶ谷ロフトAにて「コショージメグミ生誕トークイベント2019『名探偵コショ 迷宮の誕生日(バースデー)』」開催。

5月10日
東京・新木場STUDIO COASTにて開催された「AVIOT新プロダクトローンチパーティー」に出演。

5月20日
東京・渋谷WWWにて「ekoms主催定期イベント『bmg』」開催。ゲストはsugarbeans、諭吉佳作/men。

5月23日
東京・吉祥寺NEPOにて開催された「NEPO presents Maison book girl × 鎌野愛」に出演。

5月25日
東京・FEVERにて開催された「Shimokitazawa SOUND CRUISING 2019」に出演。

2019年6月

北海道・KLUB COUNTER ACTIONにて「Maison book girl LIVE HOUSE TOUR 2019」を開催。
サッポロでジンギスカンを食べる矢川葵。

6月1日
北海道・KLUB COUNTER ACTIONにて「Maison book girl LIVE HOUSE TOUR 2019」開催。

6月7日
栃木・HEAVEN’S ROCK 宇都宮 2/3にて「Maison book girl LIVE HOUSE TOUR 2019」開催。

6月8日
福島・HIP SHOT JAPANにて「Maison book girl LIVE HOUSE TOUR 2019」開催。

6月13日
東京・新宿ロフトにて開催された「ヤなことそっとミュート3rdアニバーサリー」に出演。

6月15日
東京・SOUND MUSEUM VISIONにて開催された「YATSUI FESTIVAL! 2019」に出演。

6月23日
新潟・GOLDEN PIGS(RED STAGE)にて「Maison book girl LIVE HOUSE TOUR 2019」開催。

6月24日
シングル「umbla」の特設サイトを公開。

6月25日
東京・渋谷WWWにて「ekoms主催定期イベント『bmg』」開催。ゲストはケンモチヒデフミ、amiinA。

6月30日
千葉・LIVE HOUSE ANGAにて「Maison book girl LIVE HOUSE TOUR 2019」開催。

2019年7月

7月6日
石川・金沢AZにて「Maison book girl LIVE HOUSE TOUR 2019」開催。
石川・金沢AZにて「シングル『umbla』リリースイベント」開催(終演後)。

7月7日
長野・松本ALECXにて「Maison book girl LIVE HOUSE TOUR 2019」開催。
長野・松本ALECXにて「シングル『umbla』リリースイベント」開催(終演後)。

7月12日
東京・吉祥寺CLUB SEATAにて開催された「AVIOT LIVE:01」に出演。

7月15日
静岡・Sunashにて「Maison book girl LIVE HOUSE TOUR 2019」開催。
静岡・Sunashにて「シングル『umbla』リリースイベント」開催(終演後)。

7月20日
石川・山代温泉 瑠璃光にて開催された「加賀温泉郷フェス 2019」に出演。

7月28日
沖縄・沖縄Outputにて「Maison book girl LIVE HOUSE TOUR 2019」開催。
沖縄・沖縄Outputにて「シングル『umbla』リリースイベント」開催(終演後)。

7月29日
沖縄・HMV&BOOKS OKINAWAにて「シングル『umbla』リリースイベント」開催(14:00)。

7月30日
7月31日リリースのシングル『umbla』より「闇色の朝」のMVをYouTubeにて先行公開。
東京・新宿マルイ メンにて「シングル『umbla』リリースイベント」開催(19:00)。

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