ブレードランナー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ブレードランナー』とは、フィリップ・K・ディック作のSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の映画化作品。監督はリドリー・スコット、脚本はハンプトン・ファンチャーであり、1982年に公開された。
レプリカントと呼ばれる、人間と区別がつきにくい人造人間6名が火星から地球へと逃亡してくるのをきっかけに、主人公リック・デッカードがレプリカント狩りのため復職につく。すべてのレプリカントを狩れるのか。人間と機械の違いとは何か。SF映画「禁断の惑星」や「メトロポリス」に次ぐSF映画の金字塔。

脚本の段階では、生身のタイレル博士は死病に侵されたために冷凍睡眠に入っており、登場するのは本人の記憶を移植されたレプリカントという設定であった。脚本では、タイレル博士の目を潰し殺害したロイは博士の頭部の損傷からレプリカントであることに気づき、改めて「本物の」タイレル博士のところに案内するようにセバスチャンに要求するが、冷凍睡眠に入っていたはずの博士は装置の故障により既に死亡。延命の望みが完全に絶たれたロイはセバスチャンをも殺害して立ち去る、という内容であり、実際にタイレルが安置されている部屋と冷凍睡眠装置もミードによりデザイン画が起こされていたが、このシーンは撮影準備の段階で断念されている。

ハリソン・フォードとリドリー・スコット監督の和解

デッカード役のハリソン・フォードは監督のリドリー・スコットと折り合いが悪く、高い評価であるにも関わらず本作品のことを長い間語りたがらなかった。
撮影が終わったにも関わらず事あるごとに監督に呼び出されるのことに程々嫌気がさしたハリソン・フォードだったが、ある時期から作品と「和解」し、積極的ではないもののインタビューにも応じている。
2017年10月26日公開された続編となる『ブレードランナー 2049』では同じデッカード役として出演を果たしている。

リドリー・スコットが語った『ブレードランナー』

多数のバージョンが存在する『ブレードランナー』、いくつか登場するミステリアスなシーンについても明確な解釈が難しいなど謎の多い作品であるが、リドリー・スコット監督が表現したかったことがインタビューで語られている。

良質の映画は良質の本のようなものだ。本棚にある1冊をいつでも手に取り、読み直すことができる。映画の一部は後世まで残って“アート”と呼ばれる。何度も見る価値のあるシネマアートは少ない。撮影監督や特撮監督(ダグラス・トランブル)の芸術的手腕、俳優たちの素晴らしい演技、ヴァンゲリスの音楽、アートディレクション(シド・ミード)、衣装デザイン(メビウス)……。この映画は全てアートだ。

出典: eiga.com

『ブレードランナー』はフィルム・ノワールとして作られたものだ。未来に生きる男デッカードには、私立探偵フィリップ・マーロウのようなキャラクターを想定した。進むべき道に迷い、任務が高じて窮地に陥る。デッカードはレプリカントと名づけられた人造人間を追跡している。こういうストーリーだ。『バットマン』のようにダークなSFで、笑えるタイプのSFではない。脚本は素晴らしく、キャラクター描写も優れており、これが観客の感情を激しく揺さぶるのだろう。

出典: eiga.com

25年前の質問を憶えている。“なぜ、善玉は悪玉にこてんぱんにやられるのか”。それはデッカードのことだった。というのも、デッカードを演じたハリソン・フォードは、まさに『スター・ウォーズ』や『インディ・ジョーンズ』でスターとして大ブレイクしていた時だった。
一方、私は『エイリアン』をロンドンで撮影した後で、ハリウッドでは新人監督。初めてのハリウッド映画だったが、弟(トニー・スコット)もとても気に入っていた。ところが、試写の反応は最悪で、ほとんどの観客が首をかしげたわけだ。僕の創り出した世界観に対してね。なぜいつも雨が降っているのか、なぜいつも暗いのか、なぜ悪役に同情的なのか、当時の観客は困惑した。観客はなぜハッピーエンドでないのかと不満だった。私はフィルム・ノワールなのだと主張したのだが、彼らは、エレベーターの前でユニコーンの折り紙を拾うシーンに納得いかなかったようだ。
そこで劇場公開するため、“意図したもの”と“そうでないもの”とを混ぜ合わせたハイブリッド版が出来上がった。(状況説明をする)ボイスオーバーも、ハッピーエンディング(デッカードとレイチェルの逃避行)も全くバカげたものだったがね。その結果、映画評論家には酷評されたり、こっぴどくやられたもんだ。このことは、のちにMTVが出現するまで忘れていた。当時のMTVでは『ブレードランナー』のラッシュフィルムかと見間違う創造的な映像があふれていた。映像作家たちは劇場公開版を見ていない世代だろう。ある特定の世代には大受けしていたわけだ。やがてワーナーはこの“進化”を見て、『ディレクターズカット』を進言してきた。15年後、細かい修正がなされた『ファイナル・カット』がリリースできるようになった。

出典: eiga.com

実は、25年前の観客が首をかしげたバージョンと大差ない。どちらかというと、ルトガー・ハウアー演じるレプリカントのほうに同情的な(笑)、正真正銘のフィルム・ノワールだ。ストーリーの中で、遺伝子工学の粋とも言えるレプリカントが存在するという、SF映画らしい“独自の真実”がある。この独特の世界観が今の観客なら受け入れられるはずだ。だから、何の後悔もない。これが最終版だ。この形でボックスの中に収まる。永遠にね。

出典: eiga.com

『ブレードランナー』のサウンドトラック

『ブレードランナー』の楽曲はギリシャ出身のミュージシャン、ヴァンゲリス1人によって作曲されている。他にもヒュー・ハドソン監督の『炎のランナー』や高倉健主演の『南極物語』などの音楽を手がけている。
サウンドトラックは全編がシンセサイザーによって作られているが、『ブレードランナー』の音の特徴としてデジタルリバーブ(反響)が挙げられる。ヴァンゲリスは公開わずか6年前の1976年に誕生したデジタルリバーブの名器Elektro-Mess-Technik製「EMT 250」の音作りの名手であった。また、「生きた呼吸をする歌手」と表現する人もいる名機ヤマハのシンセサイザー「CS80」を利用し、交響曲のカテゴリではない壮麗な楽曲の数々を生み出した。オープニングテーマは言わずもがな、デッカードとレイチェルのシーンに使われているサックス音が特徴的なバラードの「愛のテーマ」、ロイが最後の語りをする場面のBGMなど、映像と音楽が見事に一体化していることで高い評価を受けている。

続編『ブレードランナー 2049』

ドゥニ・ヴィルヌーヴ、リドリー・スコット、ハリソン・フォード、ライアン・ゴスリング

『複製された男』『ボーダーライン』のドゥニ・ヴィルヌーヴが監督。
オリジナルの30年後の世界。

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