ブレードランナー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ブレードランナー』とは、フィリップ・K・ディック作のSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の映画化作品。監督はリドリー・スコット、脚本はハンプトン・ファンチャーであり、1982年に公開された。
レプリカントと呼ばれる、人間と区別がつきにくい人造人間6名が火星から地球へと逃亡してくるのをきっかけに、主人公リック・デッカードがレプリカント狩りのため復職につく。すべてのレプリカントを狩れるのか。人間と機械の違いとは何か。SF映画「禁断の惑星」や「メトロポリス」に次ぐSF映画の金字塔。

『ブレードランナー』の概要

『ブレードランナー』とは、アップルコンピュータのCM「1984」や、H・R・ギーガーがデザインを担当した「エイリアン」で有名なリドリー・スコットが監督を務めたSF映画。SF映画としても、フィルムノワールとしても有名で、劇場公開版、ディレクターズカット版、ファイナルカット版など数々のバージョンがある。
工業デザイナーとして参加したシド・ミードが描いた未来世界や車などは当時斬新で、その後のSF映画の未来像にも多大な影響を与える。製作費2800万ドル、興行収入3286万8943ドル(US)。
原作は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』。『トータル・リコール』『スクリーマーズ』『クローン』『ペイチェック』『マイノリティー・リポート』『ネクスト』『スキャナー・ダークリー』『アジャストメント』で有名なSF小説作家フィリップ・K・ディックの作品だ。彼の作品は数々のSF映画に影響を与え続けている。

本作は様々な人種、多国籍の言葉、看板、特に日本語の多用が多く、独特の世界観は監督のリドリー・スコットとプロダクトデザイナーのシド・ミードにより構築されている。

1982年公開時は興行成績初登場2位を記録するが、当時の明朗で分かりやすいSF映画とは一線を規していたため多くの劇場で早々に上映が打ち切られるといった反面、映画マニアからは好評を得ており、リバイバル上映などで徐々にカルト的な人気を博すようになった。また日本の『AKIRA』や『攻殻機動隊』といった作品にも強く影響を与えている。

1983年にはヒューゴー賞最優秀映像作品賞、英国アカデミー賞、ロンドン映画批評家協会賞特別業績賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞最優秀撮影賞、アカデミー賞視覚効果賞、第14回星雲賞映画演劇部門賞といった数々の賞を受賞する。
2017年、続編の『ブレードランナー 2049』が公開される。

21世紀初頭、タイレル社は遺伝子工学の発達により、人造人間・レプリカントを作り出す。地球は環境汚染が進み、人類のほとんどは宇宙の植民地(オフワールド)に移住していた。レプリカントは知能の高さや、運動能力を活かし、前線で戦闘や宇宙開拓を行なっていた。それから数年後、過酷な環境にいたレプリカントに感情が芽生える。レプリカントたちは人間に反旗を翻した。その事態に対し、レプリカントを「解任(射殺)」する「ブレイドランナー」が動き出す。

『ブレードランナー』のあらすじ・ストーリー

ブレードランナー

2019年、地球は環境の荒廃に晒されていた。それにより人類の大半は宇宙へ移住している。
アメリカ、ロサンゼルスは常に酸性雨が降りしきり、そこに残った人々は密集して暮らしていた。
タイレル社は遺伝子工学技術の進歩により、人造人間『レプリカント』を開発した。強靭な肉体と高い知能を併せ持つレプリカント「ネクサス6型」はほとんど人間と区別がつかないほどで、特殊な検査でしか判別できない。
レプリカントたちは火星で重労働を強いられていた。製造から数年が経った頃、ある日突然レプリカントに感情が芽生える。レプリカントたちは反乱の意思を示す。それ以降、安全装置として最新のレプリカント「ネクサス6型」には4年の寿命が与えられた。しかしレプリカントたちは自我を持ち、人間社会に紛れ込もうとする者が絶えなかった。そこで、人間社会に紛れ込んだレプリカントを処刑する「ブレードランナー」が動き出す。

デッカードとレイチェル

2019年の11月。オフワールドで反乱を起こしたネクサス6型のレプリカントたちは、人間を殺した挙句に、宇宙船を奪って地球へ戻り、人間社会へと紛れ込んだ。男女のレプリカント『ロイ・バッティ』『リオン』『ゾーラ』『プリス』はタイレル社へと侵入し、自分の身分を書き換えた。人間との見分けがつかないレプリカントは、社内の人間でも見分けることができなかった。ブレードランナーである『ホールデン』がレプリカントを処分するために捜査に入るが、リオンによって返り討ちにあい、負傷してしまう。そこでブレードランナーをすでに退職していたリック・デッカードが呼び戻されることとなった。
デッカードは情報を得るためタイレル社の社長でもあるエルドン・タイレル博士に会いに行く。博士の秘書と会った際、レプリカントと人間を判別するテストを秘書のレイチェルにかけると、彼女がレプリカントだとわかる。レイチェルは自分のことを人間だと思っていた。真実を知って動揺するレイチェルを慰めるデッカードは、次第に彼女に惹かれていく。

バッティの反乱

歓楽街でダンサーとして潜伏していたゾーラを見つけたデッカードは、逃げるゾーラを後ろから撃って処刑する。すると現場に、警部であり、ブレードランナーを統括するハリー・ブライアントと、刑事であるガフが姿を表す。ブライアントはレイチェルがタイレル博士の元から脱走したことを告げ、デッカードに処分するように命じた。その直後、デッカードはリオンに襲撃され、ピンチに陥る。そんなデッカードを救ったのはレイチェルであった。リオンは駆けつけたレイチェルによって射殺された。レイチェルを自宅へ誘ったデッカード。レイチェルは自身を処分するのか、デッカードに問う。デッカードは「自分はやらないが、他の誰かがやる」と返した。レイチェルはその答えに怯える。デッカードはそんなレイチェルを抱き寄せ、熱いキスを交した。

レプリカントのリーダー・バッティは4年という定められた寿命を延ばすために、リオンと共にレプリカントの眼球技師であるチュウを脅し、タイレル社の遺伝子設計技術者J・F・セバスチャンの情報を手に入れ、恋人のレプリカントであるプリスを自宅に潜入させる。セバスチャンの自宅に潜入したプリスの元に現れたバッティはタイレル博士に会わせるようセバスチャンに強制する。孤独だったセバスチャンは、バッティの脅しがプリスと自分たちレプリカントの延命が理由であることを知る。だがタイレル博士との面会は容易ではない。タイレル博士と遠隔でチェスの対戦をしていたセバスチャンは本社ビルにいるタイレル博士の元へチェックメイトを理由に訪れる。タイレル博士との対面に成功したバッティだったが、しかし、博士の答えは、寿命を延ばすことは技術的に不可能というものだった。断られたバッティは逆上し、タイレル博士とセバスチャンを殺害して逃走する。

その知らせを聞いたデッカードは、セバスチャンの高層アパートを訪れる。そこでプリスを見つけ、デッカードは射殺する。するとそこにバッティが現れ、戦闘を始める。しかしバッティの戦闘能力は高く、デッカードは屋上へと追い詰められる。デッカードは隣のビルへと飛び移ろうするが、誤って転落しそうになる。そんなデッカードを救ったのは、バッティであった。バッティは自分の寿命を悟り、デッカードを救って微笑みながらその最後を終えたのだった。

任務終了を告げにデッカードの同僚ガフが現れ、レイチェルについて話をする。それを聞いてデッカードはレイチェルの寿命が尽きているのではないか、と考え、自宅へと走った。しかし、レイチェルの寿命はまだ尽きてはいなかった。バッティに救われたことでレプリカントに人間性を見出したデッカードは、残り少ない命のレイチェルを連れて旅立った。

『ブレードランナー』の登場人物・キャラクター

リック・デッカード(Rick Deckard/演:ハリソン・フォード)

本作の主人公。地球に紛れ込んだ人造人間レプリカントを探し出し、処刑するブレードランナー。
コートを着て、デッカードブラスターという武器を持ち、スピナーと呼ばれる空飛ぶ車両に乗り込み、レプリカントたちを追う。
フォークト=カンプフ法と呼ばれるテスト方法で人間かレプリカントかを判別し、レプリカントだった場合処刑する。
ジョニーウォーカーのブラックラベルを飲む。
タイレル社で出会ったレプリカントのレイチェルに惹かれていく。そしてレプリカントのリーダー・バッティに追われ命を落としそうになるが、逆にバッティに救われレプリカントに人間性を見つける。

ロイ・バッティ(Roy Batty/演:ルトガー・ハウアー)

俺は、お前たちが想像もできないものを見てきた。オリオン座の近くで燃える宇宙船、タンホイザー・ゲートの闇に輝くオーロラ。だが、そんな思い出も消えていく。雨の中の涙のように…。

レプリカントのリーダーで戦闘用男形レプリカント。プリスの恋人。
力が強く、素早い体を持ったレプリカントで、デッカードを追い詰める。
寿命を延ばしてもらうためにセバスチャンに近づきタイレル博士に会うが、その願いは技術的に叶えられるものではなかった。逆上したバッティは、セバスチャンとタイレル博士を殺害して逃走する。
デッカードとの戦闘中、自身の寿命が近いことを悟り、ビルから落ちそうなデッカードを助けてその最後を終えた。

レイチェル(Rachael/演:ショーン・ヤング)

本作のヒロインで、タイレル社で博士の秘書をやっている。
自分は人間だと信じていたが、タイレル社にやってきたデッカードからフォークト=カンプフ法のテストを受け、自分がレプリカントだということを知る。レプリカントとしては数年分の記憶しかなく、それ以前の記憶はタイレルの姪の記憶を移植されている。
デッカードのピンチを救い、リオンを射殺した。その後、デッカードと心を通わせ、残り少ない寿命で共に旅に出た。
タイレル博士が特別製であると言った意味が続編で明らかになる。

J・F・セバスチャン(J. F. Sebastian/演:ウィリアム・サンダーソン)

タイレル社の遺伝子設計技術者で、タイレル社長のチェス仲間。老化病の為地上勤務であり、廃墟のような高層アパートに一人暮らしをしている。部屋はオモチャや自動人形でいっぱいである。
バッティをタイレル博士のもとへ連れて行くが、寿命を延ばすことができないと知って逆上するバッティに殺害された。

エルドン・タイレル博士(Dr. Eldon Tyrell/演:ジョー・ターケル)

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