北欧神話徹底解説・考察まとめ!おもしろくて分かりやすい!

北欧神話(ほくおうしんわ)とは、キリスト教が広まる以前にノルド人(ノース人)が信仰していた神話体系。ノルド人がスカンジナビア半島を勢力圏としていたため、スカンジナビア神話とも呼ばれている。口伝によって伝えられていたが、13世紀頃、アイスランドの詩人スノッリ・ストゥルルソンによって『エッダ』という書物にまとめられた。
「滅亡の運命」が定められた神々の隆盛と終焉を描いており、全体的に暗い印象のエピソードが多い。物語全体の完成度が高く、漫画などの現代の創作物においてもたびたび題材として用いられる。

『北欧神話』の概要

北欧神話(ほくおうしんわ)とは、キリスト教が広まる以前にノルド人(ノース人)が信仰していた神話体系。ノルド人がスカンジナビア半島を勢力圏としていたため、スカンジナビア神話とも呼ばれている。
原典や発祥については定かではなく、主に口伝によって伝えられる。「勇猛な戦士は死後にヴァルハラと呼ばれる楽園に行ける」との教義があり、北欧を中心に活動したバイキングたちには熱烈に信仰されていた。

13世紀頃にアイスランドの詩人スノッリ・ストゥルルソンによって『エッダ』や『ヘイムスクリングラ』という書物の形にまとめられ、神話としてより物語として楽しまれるようになっていく。神話ながらキャラクターの設定や様々なエピソードにおける整合性など、物語としての完成度が高いのも特徴。
現代の創作物に与えた影響は大きく、「エルフ」や「ドワーフ」といったファンタジー物に定番の種族も元々は北欧神話が出典である。J・R・R・トールキンの『指輪物語』や『ホビットの冒険』、日本やアメリカの漫画やアニメやゲームなど、北欧神話のキャラクターを物語に組み込んだり題材としているものは非常に多い。

時に狡猾な一面も覗かせる神々の長オーディン、最強の戦士トール、混沌と混乱の申し子たるロキなど個性的にして魅力溢れる神々が、滅びの運命に立ち向かうも敗れ去り、これによって人間の時代がやってくるまでを描いている。
いわゆる「バッドエンドが前提」の物語であり、神々の中にもどこか諦観めいた雰囲気を漂わせている者が少なくなく、全体的に暗い印象のエピソードが多い。

『北欧神話』のあらすじ・ストーリー

世界の始まり

北欧神話の世界は、熱い火のムスペルヘイムと冷たい氷のニヴルヘイムだったとされている。ある時、この2つが混ざり合い、原初の巨人ユミルと原初の雌牛アウズンブラが生まれる。ユミルは1人で霜の巨人(しものきょじん/ユトゥン)たちを産み落とし、彼らの親となる。
一方、アウズンブラが舐めた岩からはブーリと呼ばれる原初の神が誕生。ブーリが巨人たちと交わった結果ボルという神が産まれ、さらにボルはベストラという女性の巨人との間にオーディン、ヴィリ、ヴェーの3柱の神を作る。

オーディンたちは己の力を誇り、一方で粗暴な巨人たちを疎み、「神々による国造り」を画策してユミルを殺害。この時溢れ出したユミルの血により、霜の巨人たちのほとんどが溺死するが、ベルゲルミルの一族だけは生き残って再び数を増やしていった。
その後オーディンたちは、ユミルの死骸を使ってこの世を改めて形作っていく。この出来事は、本来血族だった神々と巨人たちの間に決して埋まらない溝を作り、後に彼らが互いの全てを懸けて戦う最終戦争へと向かう最初のきっかけとなった。

人類の誕生

霜の巨人たちがその勢力を弱めている間、オーディン、ヴィリ、ヴェーの3柱は我が物顔で世界を支配していた。
ある時、2本の木を見つけたオーディンたちは、これを自分たちに似た姿に変える。ここにオーディンが生命を、ヴィリが精神を、ヴェーが見る力と聞く力と話す力を与え、「人間」が誕生する。

2人はそれぞれにアスクとエンブラと名付けられ、北欧神話における最初の人類となる。オーディンたちの保護の下、アスクとエンブラは人間の国ミッドガルドで子孫を増やし、国を反映させていく。オーディンたちもまた同様に子供を増やし、神々の国アスガルドを中心に世界にその力を示していく。
このように階層構造となった世界は、やがて一方の巨大な樹によってつながれる。やがてこの大樹は、世界樹(せかいじゅ)もしくはユグドラシルと呼ばれるようになっていった。

アース神族とヴァン神族

順調に勢力を広めていく中、オーディンたちは「ヴァン神族」という別の場所で活動していた神々と接触する。彼らと区別するため、オーディンたちは「アース神族」と呼ばれるようになる。
当初は互いを警戒して深く関わらないようにしていた両神族だったが、ヴァン神族のグルヴェイグという女神がアース神族と交流し、その中で彼女が使った魔術を「呪われた技術」と忌避して捕らえてしまう(この出来事はグルヴェイグの魔術を欲したアース神族が仕掛けたことだとも、グルヴェイグがアース神族を侮辱したことが原因ともされている)。

これによりアース神族とヴァン神族は世界初の戦争を繰り広げるが、最終的には和解。双方の神が人質として相手方へと差し出されることとなった。
ヴァン神族は「オーディンたちアース神族とは別の存在」であるとされており、彼らがどこで誕生したのか、最終的にどうなったのかについては特に語られていない。

破滅の予言

アース神族が人間を作り、ヴァン神族との戦争や交流を重ねていた頃、霜の巨人たちも少しずつその数を増やし続けていた。彼らは種族としてはアース神族と剣呑な間柄ではあったが、個々は決してそうでもなく、中にはアース神族と隣人として交流する者もいた。
「運命の女神」とも呼ばれるウルズ、ヴェルザンディ、スクルドの3姉妹も、そんな「アース神族と交流する霜の巨人」だった。ある時、彼女たちは「霜の巨人たちとの最終戦争に敗れ、アース神族は全滅する」との予言をオーディンたちにもたらす。愕然とするアース神族の神々だったが、その運命を覆すために動き出す。

ドワーフに命じて霜の巨人と戦うための武器を造らせ、戦力とするためにワルキューレたちに人間の勇者の魂を集めさせる。スクルドはこのワルキューレの1人としても活動しており、霜の巨人に属する者でありながらアース神族のために活動していた。
しかし、「ウルズたちの予言は絶対のものである」ことを知るアース神族たちの間には、「霜の巨人を倒して滅亡の運命を覆すことなどできない」との諦観も流れ始め、なお諦めずに足掻く者たちとの間で不協和音が響き始める。

神々の誤算

オーディンの指揮の下、霜の巨人との戦争に勝利するための準備を進めていくアース神族。しかし彼らの計画は、様々な横槍や個々の神々の我欲によって、少しずつ狂わされていく。神々の中でも屈指の戦士だったフレイが、妻を得んがために「振るう者に勝利をもたらす」とされる自身の武器「勝利の剣」を手放したことはその代表例の1つである。
この頃にはすでにアース神族と霜の巨人は小競り合いのような事件をいくつも起こしており、その中で中心となって活躍したのは北欧神話最強の神トールと、狡猾で詐術に長けた悪神ロキだった。2人は様々な事件の中で友人か相棒のように振る舞い、ロキの迂闊な行動が招いた霜の巨人との衝突でトールが出て行って相手を粉砕することもあれば、トールの短気に端を発する事件をロキが知恵を働かせて解決することもあった。

オーディンやトールの武器を作らせるなど、アース神族に対して少なくない貢献を果たすロキだったが、霜の巨人たちとも平然と交流し、霜の巨人の女性を妻とし、「オーディンやトールを殺す」と予言された怪物たちの父となるなど、アース神族の完全な味方とも言いがたい不穏な振る舞いを続けてもいた。
アース神族たちの中にも彼を警戒する者は多く、仲間たちから不審の目を向けられていることにロキもまた不満を溜めるようになっていった。

バルドルの死

数あるオーディンの子の中でも、光の神バルドルはその美しさで有名な存在だった。そのバルドルが自分が殺される悪夢に苦しんでいることを知ると、アース神族は「この世の全てのものに、バルドルを傷つけないと約束させる」という方法で彼を守ろうとする。
これによりバルドルは不死身の存在となり、神々は「バルドルに向かって物を投げつけ、それが跳ね返るのを見て楽しむ」という遊びに興じるようになる。しかしアース神族から向けられる敵意交じりの眼差しに辟易としていたロキは、これを「仕返しするチャンス」と判断して、バルドルに対して唯一約束をしていないヤドリギで作った剣を盲目の神ヘズに握らせる。

「お前も一緒にバルドルと遊んでみろ」とロキに勧められたヘズは、言われるままにヤドリギの剣を投げつけ、これに貫かれてバルドルは死亡。その後ロキはバルドルを蘇らせようとする神々をも妨害し、ついには彼らによって捕らえられて毒液を浴び続ける罰を受ける。
これに腹を立てたロキは完全にアース神族を見限り、霜の巨人たちと合流。彼らを率いてアスガルドに侵攻し、ここに運命の最終戦争ラグナロクが始まる。

世界の滅亡

いくつもの誤算により、完全な形で霜の巨人たちを迎え撃つことができなくなったアース神族だったが、それでもなお敢然と破滅の運命に立ち向かっていく。
しかしオーディンは巨狼フェンリルに食い殺され、トールも世界を覆う大蛇ヨルムンガンドと相打ちになって死亡。名だたるアース神族の戦士たちも、次々と倒されていく。

フレイは炎の巨人スルトを相手に善戦するも、勝利の剣無しでは本領を発揮できず力尽きる。フレイに勝利したスルトは、世界の全てを焼き尽くす。
こうして、わずかな生き残りを除いてアース神族は全滅。霜の巨人たちも滅び、神々と巨人たちの時代は終焉を迎える。

人間の時代の到来

ラグナロクを生き残ったわずかな神々は、復活したバルドルを中心に世界を蘇らせていく。生き残りの神々の中にはヴァン神族の者もいたが、彼らはアース神族と別れて自分たちの本来あるべき土地へと戻っていった。
オーディンやトールなどの中心人物が死に絶え、かつてほどの力を失ったアース神族の代わりに世界を主導する存在となったのは人間たちだった。バルドルたちはこの変化を良しとして、人間たちの社会の発展を見守るようになる。

波乱に満ちた北欧神話の物語はこれで終わり、人間たちの時代が始まっていった。

北欧神話の登場人物・キャラクター

アース神族

オーディン

北欧神話における神々の長。詩の神であり、死神であり、戦士たちの神であり、「姿を変える者」や「長髯の者」といった様々な異名を持つ。
狡知に長ける魔術の達人で、知識に対して貪欲。一方でアース神族を代表する戦士でもあり、グングニルという槍を得物にしていた。

良い詩を考えるために自分を逆さに吊るしたという伝説があり、タロットカードの「ハングドマン」のモデルになったという説がある。

トール

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