鯉登音之進(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ
鯉登音之進とは野田サトル原作の漫画・アニメ『ゴールデンカムイ』に登場する人物で、大日本帝国陸軍第七師団歩兵第27聯隊に所属する陸軍少尉である。鶴見篤四郎中尉を崇拝しており、彼からも「お気に入り」とされている。銃器が多く登場する本作において、薩摩に伝わる日本剣術・自顕流を実践で通用するレベルにまで鍛え上げた一流の使い手。海軍少将の鯉登平二を父に持ち、裕福な家庭で育ったいわゆる「ボンボン」。様々な場面で月島基軍曹の補佐を必要としたが、最終的には一人前の将校へと立派に成長した。
「月寒あんぱん」の月寒とは、作中でも紹介されている通り陸軍歩兵第25連隊が置かれていた「月寒」の地名である。当時は「つきさっぷ」と呼ばれていたが、1944年に難読を嫌った陸軍の要請を受けて「つきさむ」と改められ、以後「つきさむ」と呼称されている。
月寒あんぱんは、1874年(明治7年)に東京・木村屋の「桜あんぱん」の大ヒットを噂で聞き、旧陸軍歩兵第25連隊内で菓子販売を行っていた大沼甚三郎がその「あんぱん」を自分なりに作ってみようと月餅のようなまんじゅうを作り上げたのが始まりとされている。その後、月寒あんぱんの製法は10軒に広められ、現在も営業を続ける「株式会社ほんま」の創業者本間与三郎もその一人であった。
なお、鯉登が少年時代に誘拐されたのは1902年とされているため、彼が食べた月寒あんぱんは1906年創業の「株式会社ほんま」によるものではなく、上述の大沼か彼に製法を広められた他9軒のどれかと推察される。しかし、その後の太平洋戦争に伴う物資不足により菓子店は休業に追い込まれ、「株式会社ほんま」のみが戦後に製造を再開しているため、現代においては「株式会社ほんま」でしかこの製法の「月寒あんぱん」を手に入れることができない。
この「月寒あんぱん」は作中に登場すると製造元の「株式会社ほんま」にファンからの問い合わせが増え、コラボ商品を熱望されるようになると、2021年4月より6種類の味をキャラクターパッケージに包装し販売されるようになった。ヒロインのアシリパを王道の「こしあん」、杉元を「かぼちゃあん」に採用している。もちろん、作中でこしあんの「月寒あんぱん」を食べた鯉登もパッケージに採用され、「復刻こしあん」味として販売された。
また月寒にはこの「月寒あんぱん」を由来とする「アンパン道路」と呼ばれる道路が存在する。札幌市豊平区にある国道36号(月寒通)と国道453号(平岸通)を結ぶ全長2.6㎞の道路である。この道路は、1911年(明治44年)、陸軍歩兵第25連隊と住民が協力して平岸から月寒に抜ける道路を造る際、豊平町が軍にあんぱんを提供したことから、造られた道路は愛称を込めて「アンパン道路」と呼ばれた。
五稜郭攻囲戦の前に土産として持参した「大沼だんご」
北海道亀田郡七飯町にある1905年(明治38年)創業の「沼乃家」の「元祖 大沼だんご」のである。初代堀口亀吉が、陸蒸気に乗って大沼にやってくる観光客向けに新粉の団子を作って販売したのがはじまりだという。パッケージデザインは発売当初から変わっておらず、左下に「定貨金拾五銭」と書かれており、作中のパッケージにも再現されている。
1907年(明治40年)には駅前に店舗ができたとのことで、鯉登が汽車に乗って五稜郭へ駆けつけたところから察するに、この駅前の店舗で購入してくるのが一番効率が良かったと考えられる。ヤングジャンプにこの話が掲載された際には七飯町のTwitterアカウントからも情報発信された。
大変美味であるが日持ちしないので、購入後はすぐに賞味する必要がある。作中では鶴見も五稜郭攻囲戦に先駆けて食べている。鶴見自身の好物が団子であることも理由であろうが、日持ちしないため何時戦いが終わるかもわからず、勝利したとしても後始末が必要な状況が予測され、戦いの前に食べておく必要があったとも言える。
鯉登が進学した東京海城学校
鯉登が進学した海城学校は東京にある海軍予備校である。1891年(明治24年)に開校し、現在は海城中学・高等学校という名称で中高一貫教育を提供する私立男子中学校・高等学校である。校名の「海城」は、戦艦を意味する古語が由来となっている。海軍のために設立されているが、開校時から官立ではなく私立制の学校である。
開校当時は「海軍予備校」という名称であったが、1900年(明治33年)に海軍省の要請を受けて「海城学校」と改称している。このことから、史実に基づくのであれば鯉登がここへ入学した時点では「海軍予備校」であったが、鹿児島で鶴見と出会ったときには「海城学校」へ名称が変更していたことになる。また、兄の平之丞は1894年(明治27年)の日清戦争に参戦していること、当時3年制の海軍兵学校を卒業して少尉に任官されていることから、海城学校ではない別の予備校へ進学・卒業したと推察される。
なお作中に登場する14歳・16歳の鯉登少年は東京ではなく鹿児島や函館に滞在している。いずれの季節も夏であることから、夏期休暇での里帰り中に鶴見と出会ったと考えられる。
樺太先遣隊として駆逐艦で航行した稚内~大泊連絡航路
作中では樺太連絡船が就航しているように描写されているが、稚内大泊間を連絡する稚泊連絡船が正式に就航されたのは1923年(大正12年)から1945年(昭和20年)のことである。稚内~大泊港はおよそ160kmの距離であり、今でこそ4時間半の航路であるが、当時は8時間程度の航行時間で運航していた。ただしこれは連絡船であるという前提であり、作中の鯉登は樺太の往路・復路の両方を父である平二が司令官を務める雷型駆逐艦で移動している。雷型駆逐艦の速力は31ノット(60km/時弱)であることから、もう少し短い時間で移動できた可能性もある。
また、少年期の鯉登は兄の戦死により「長時間船に乗れなくなるほどひどい船酔い」をするようになったとのことであったが、この時の稚内~大泊港の航行でひどい酔い方をしている描写はなかった。彼が兄の戦死というトラウマを乗り越えたか、単に描かれなかった可能性もあるが、「一日しか船に乗れない」と言った鯉登が体調を崩さない程度の航行時間であった可能性もある。
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目次 - Contents
- 鯉登音之進の概要
- 鯉登音之進のプロフィール・人物像
- 鯉登音之進の能力・装備
- 身体能力
- 自顕流
- 天才的な軽業の能力
- 武器
- 軍刀
- 二十六年式拳銃
- 三八式歩兵銃
- その他
- 刺青人皮
- 鶴見中尉ブロマイド
- 手鏡
- お手製メンコ
- 三輪車 ド・ディオン ブートン
- 鯉登音之進の来歴・活躍
- 兄・平之丞の戦死
- 鹿児島での鶴見との出会い
- 鯉登音之進誘拐事件
- 金塊争奪戦に参戦
- 樺太先遣隊
- アシリパ奪還
- 帰国までの道のり
- インカラマッの出産に立ち会う
- 札幌麦酒工場での囚人狩りと鶴見への疑念
- 五稜郭攻囲戦
- 函館行き車両内での延長戦
- 鯉登音之進の関連事物・キャラクター
- 鶴見篤四郎(つるみとくしろう)
- 月島基(つきしまはじめ)
- 尾形百之助(おがたひゃくのすけ)
- 鯉登平二(こいとへいじ)
- 鯉登平之丞(こいとへいのじょう)
- 鯉登ユキ(こいとゆき)
- 杉元佐一(すぎもとさいち)
- アシリパ
- 土方歳三(ひじかたとしぞう)
- 永倉新八(ながくらしんぱち)
- 鯉登音之進の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 「キエエエッ(猿叫)!!」
- 「おぉおのれ よくも…私の部下たちをッ」
- 「銃を下ろせ これは上官命令だ」「私は鶴見中尉殿と月島軍曹を最後まで見届ける覚悟でいる」
- 「もうこの男を解放してあげてください」
- 「だからこそ優秀な右腕となる人間が必要だ」「月島軍曹 私のちからになって助けてくれ」
- 鯉登音之進の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 杉元に小便をかけられるシーンは『花の慶次』のオマージュ
- 稲妻強盗夫婦の息子を鶴見が抱く姿は『歌を歌う天使達(1881)/ウィリアム・アドルフ・ブグロー』のオマージュ
- 週刊誌掲載分と単行本とで演出が異なる「五稜郭攻囲戦にて鯉登と鶴見が対峙するシーン」
- 鯉登少尉のキエエエッ(猿叫)!!ボタン
- 鯉登音之進のモチーフとなった鯉登行一
- 鶴見との出会いのアイテムになった「月寒あんぱん」
- 五稜郭攻囲戦の前に土産として持参した「大沼だんご」
- 鯉登が進学した東京海城学校
- 樺太先遣隊として駆逐艦で航行した稚内~大泊連絡航路