鯉登音之進(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ
鯉登音之進とは野田サトル原作の漫画・アニメ『ゴールデンカムイ』に登場する人物で、大日本帝国陸軍第七師団歩兵第27聯隊に所属する陸軍少尉である。鶴見篤四郎中尉を崇拝しており、彼からも「お気に入り」とされている。銃器が多く登場する本作において、薩摩に伝わる日本剣術・自顕流を実践で通用するレベルにまで鍛え上げた一流の使い手。海軍少将の鯉登平二を父に持ち、裕福な家庭で育ったいわゆる「ボンボン」。様々な場面で月島基軍曹の補佐を必要としたが、最終的には一人前の将校へと立派に成長した。
刺青人皮
杉元らが旭川第七師団の拠点へ潜入した際に手を貸した囚人・鈴川聖弘(すずかわきよひろ)の刺青人皮。自前で皮を鞣し、鶴見のマネをして制服の下に肌着のように装着していた。鶴見には「“せん”が甘い」と評価を下されている。この後、鶴見陣営の持つ刺青人皮に加わった。
鶴見中尉ブロマイド
月島に懇願し譲ってもらったブロマイドで、「月島と並んで立つ鶴見」「額当てを装着した鶴見」「部下達に囲まれて集合写真を取る鶴見」の3種類が作中でも確認されている。
鯉登は鶴見に心酔するあまり、鶴見以外の人物にあろうことか自身の顔写真を切り取って貼り付けるコラージュ写真を手ずから作製した。これらは「鯉登クソコラ寫眞コレクション」として『週刊ヤングジャンプ』の付録になった他、ファンブックでも掲載された。
集合写真の鶴見以外の全ての人物に自身の顔をコラージュしただけでなく、肘置きにすらコラージュが施されており、流石に狂気めいたものを感じずにはいられない作品である。
手鏡
男性であっても自身の見目に気を払っており、任務中であっても背嚢に手鏡を入れるなど余念がない様は流石の貴公子と言わざるを得ない。扱いにも注意を払っており、月島が鏡面を触った際には「手垢がつくだろうが」と叱責している。作中では敷香市街地でロシアの手練の狙撃手である脱走兵ヴァシリ・パブリチェンコの襲撃を受けた際に、この手鏡で相手の位置を確認するのに役立った。この時、ヴァシリにより鏡面を撃ち抜かれている。
なお鯉登の高い人気により、この手鏡も公式でグッズ販売がなされており鏡面に彼のイラストが描かれている。
お手製メンコ
樺太での任務で負傷した鯉登と月島が小樽での療養後、第七師団に合流する直前に暇を持て余してメンコで遊ぶシーンがあった。この時鯉登が使用したのが、「東郷大将」と「上村中将」である。これに月島は陸軍の「伊地知少将」で対抗した。
鯉登は自慢の「東郷大将」が月島の「伊地知少将」に返され奪われると接待メンコをしろとでも言わんばかりに「おまえ出世せんぞ」と負け惜しみを吐いた。
この頃の鶴見のメンコは劇中で作製・流通されている様子はなかったが、鯉登は自ら作製した「鶴見中尉」メンコを月島相手に自慢している。
またこのあと札幌で第七師団と合流する際に、鶴見への疑いを持ち始めていた鯉登に対して月島が「これまでどおり接することができるか」と問いかけた際には、「お互いのメンコを交換して肌身離さず気を張っておこう」とお手製の「鯉登少尉」メンコを月島に差し出したが、拒否されている。
史実として明治10年代(1868年~1877年)には紙製のメンコが普及しており、とくに満州事変から大東亜戦争の時期にかけて、軍隊を題材にしたメンコが多く製造されていた。鯉登が使用した「東郷大将」は東郷平八郎(とうごうへいはちろう)、「上村中将」は上村彦之丞(かみむらひこのじょう)がモデルとされ、当時は実際に何種類か流通していた。この2人はともに薩摩出身の海軍将校で、東郷は1904年6月に大将へ昇進、上村は1903年9月に中将へ昇進している。
これに対抗した月島の「伊地知少将」は伊知地幸介(いぢちこうすけ)であり、彼もまた薩摩出身の陸軍将校で、1900年に少将・1906年に中将となっている。これらのことから、メンコはどれも鯉登の私物で、士官学校でも学友と遊んでいたと考えられる。
三輪車 ド・ディオン ブートン
故郷の鹿児島・函館の自宅で所有していた。本来は父・平二がフランスの知人にもらったものであり鯉登の個人所有ではない。長男である平之丞の戦死後、平二が次男の鯉登に対して不出来ぶりを諌めることもしなくなるなど無関心気味になったことで、父の関心を引くためか日頃の鬱憤かその両方か、勝手に持ち出し乗り回していた。
作中では、16歳の鯉登が誘拐された際にロシア領事館にこれが放置されていたことで、彼が何者かのロシア人により攫われたと気付くことになった。
平二と鶴見はこれに乗り込んで鯉登が監禁されている五稜郭に突入しようとしたが、その途中の函館市街で馬車鉄道に衝突し大破した。
史実でもこの自動三輪車はフランスにかつて存在したド・ディオン・ブートン社から生産されていた。
エンジンを搭載した自動車の先駆けとして生産されたもの。三輪車とあるが、今の軽車両ではなく乗用車の仲間である。
鯉登音之進の来歴・活躍
兄・平之丞の戦死
1894年(明治27年)9月17日、日清戦争の黄海海戦に兄・平之丞(へいのじょう)が参戦、防護巡洋艦「松島」へ乗艦する。この「松島」は清国からの砲弾をうけ大破し、平之丞を含む57名の兵士が戦死した。
平之丞が乗艦した松島の上でどのように死んだかは作中で明確な描写はされていない。海城学校の同級生の話から、蒸し焼きにされた者や甲板に飛び散った者もいたということだけが明らかになっており、この中に平之丞もいたとされる。この時、父の平二(へいじ)もまた別の艦に乗艦して参戦していたため、平之丞の乗った「松島」が大破する様を為す術なく見届けた。
当時8歳であった弟の鯉登にとっては年の離れた「優しい兄」であったとのことで、兄の死は鯉登にとっても深い悲しみとトラウマを植え付けた。後に彼は長時間乗船しているとひどく船酔いするようになり、父や兄と同じ海軍将校を目指すには大きなハンデを背負うことになった。
また、期待をかけていた優秀な長男をこの戦争で失った平二もひどく落ち込み、6年たってもなお、鯉登の不出来さや横柄な態度を叱るどころか、家族に笑顔を見せることすらなくなった。これにより鯉登と平二の親子関係は希薄化し、鯉登が思春期を迎える頃にはもはや当人達だけでは修復できないほどになっていた。
鹿児島での鶴見との出会い
14歳になった鯉登は、東京にある海軍予備学校である海城学校へ進学する。しかし先述する兄の死に起因する船酔いにより、思うような結果を出せず、海城学校では問題児とされていた。夏期には実家へ里帰りするも、日々の劣等感から町民へ横柄な態度を取るようになっていた。
父の所有する三輪車を乗り回していたところ、鹿児島を訪れた鶴見篤四郎(つるみとくしろう)をはねてしまう。謝りもせず相手に非があるかのように怒鳴りつけて逃走しようとする鯉登だったが、三輪車後部に飛び乗った鶴見に鼻を摘まみ上げられるという報復を受け、たまらず父親の権威を笠に着て挑発する。しかし、逆に「ケンカをするなら自分の名前でやれ」と論破される。逆上した鯉登は町民から奪った杖で自慢の自顕流を披露するが、鶴見に素手で受け止められ頬をぶたれた上、「太刀は真っ直ぐで綺麗なのに」と残念がられると、途端に戦意を喪失し怒りを収めた。
鯉登は非礼の詫びとして西郷隆盛の墓を訪ねる鶴見を案内する。彼に勧められた「月寒あんぱん」を賞味した鯉登は、近くにあった平之丞の墓へ半分を供える。
兄の戦死とそれによるトラウマ、父の期待に応えられない自身への不甲斐なさから「自分が死ねば良かった」と劣等感を吐露し、鶴見に「いなくなった兄君の穴を君が埋める義務はない」と慰められると、彼への態度をさらに柔らかくした。
この時2人は「また会えた時に友達になろう」と約束を取り交わし、鶴見は鯉登の記憶に「月寒あんぱんの人」として刻まれ、その正体を知ることなく別れた。
このすぐ後、鯉登は父平二の転勤に伴い家族で函館へ転居した。
鯉登音之進誘拐事件
1902年夏16歳になった鯉登は誘拐され、五稜郭の陸軍訓練所に監禁される。ロシア領事館敷地内に、鯉登が乗っていた三輪車が放置され誘拐が発覚すると、ロシア語の堪能な鶴見中尉が陸軍より招聘される。
鶴見・平二は鯉登の救出のため、函館に部下を配備し電話番号で発信元の場所を特定することで突入する準備を整えロシア領事館に侵入すると、誘拐犯はロシア領事館へ電話をかけ「函館の要塞と駆逐艦を破壊し基地を無力化しろ」と要求した。
安否確認のため人質を出すよう平二らから要求され電話口に立った鯉登は、平二からの救出を拒む言葉に全てを察する。鯉登は兄に比べて不出来な自分を忘れるよう平二に伝えると覚悟を決め、背後の誘拐犯と乱闘となる。
平二はまだ子どもと思っていた息子から父の立場を思いやった言葉を聞くと、息子を見捨ててはおけないと思い直す。平二はロシア領事館に放置されていた三輪車に飛び乗り、鶴見を後部に同乗させ鯉登のいる五稜郭・陸軍訓練所へ駆けつけた。
暴れて押さえつけられていた鯉登は平二・鶴見の登場で窮地を救われ、この鶴見との戦闘で誘拐犯とされるロシア人は死亡した。
鯉登は拘束中に食べさせられた月寒あんぱんと「月寒あんぱんの人」である鶴見に対して運命を感じ、これをきっかけに鶴見を敬愛するようになり陸軍へ入隊、平二も鶴見からの協力要請に応じるようになる。
しかしこれらの事件は、鯉登親子を自身の勢力へ引き入れるための鶴見による策略で、本当の誘拐犯は鶴見の部下である菊田杢太郎(きくたもくたろう)・尾形百之助(おがたひゃくのすけ)・月島基(つきしまはじめ)の三名であった。誘拐を演じている間、三名は顔全体を覆う大きな布を装着することで正体がわからないように行動していた。鯉登救出後に、小樽の拘置所にいたロシア人を誘拐犯に仕立て上げ射殺すると服装も全て入れ替え、死亡したロシア人に全ての罪を負わせた。月寒あんぱんもまた、鶴見によって仕掛けられた「運命的な出会い」を演出するための仕込みである。
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二階堂浩平(にかいどう こうへい)とは、『ゴールデンカムイ』の登場人物で、アイヌの隠し金塊争奪戦に参加している大日本帝国陸軍第七師団の兵士である。双子の兄弟の二階堂洋平を返り討ちにした杉元佐一に激しい殺意を抱くようになり、復讐を果たさんとたびたび死闘を演じた。戦いを経る毎に両耳や手足を失って行き、治療の際に使用したモルヒネによって薬物中毒者と化し、その副作用で子供のような性格の異常者となった。最終的に武器の仕込まれた義手や義足を装備し、心も体も壊れていきながら金塊争奪戦の最前線で戦い続けた。
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津山睦雄(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ
津山睦雄(つやま むつお)とは、野田サトル原作の漫画・アニメ作品『ゴールデンカムイ』に登場する刺青の囚人のうちの一人で、「三十三人殺し」と呼ばれている。本編には登場せず、第七師団の鶴見中尉が刺青人皮を持っている。津山から剥いだ刺青人皮をベストのように着こなす鶴見中尉の姿は、多くの読者に衝撃を与えた。「三十三人殺し」という経歴から、モデルは「津山三十人殺し」の都井睦雄(とい むつお)であるという見方が一般的だ。
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菊田杢太郎(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ
菊田杢太郎(きくた もくたろう)とは、野田サトル原作の漫画・アニメ作品『ゴールデンカムイ』の登場人物で、鶴見中尉率いる第七師団の一員。作中では珍しく、比較的常識的な言動をする男だ。日露戦争で倒したロシア将校の銃を奪い、戦争が終わった後でも持ち歩いている。金塊争奪戦には途中から参戦したが、その正体は軍中央から鶴見中尉に差し向けられたスパイ。また、かつて故郷を出たばかりの杉元佐一(すぎもと さいち)と出会い、軍に入隊するきっかけを作っており、「不死身の杉元」の生みの親とも言える。
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江渡貝弥作(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ
江渡貝弥作(えどがいやさく)とは、野田サトルによる漫画作品『ゴールデンカムイ』の登場人物で、北海道・夕張で剥製工房を営んでいる青年である。剥製職人としての腕は良いが、人間の死体の皮で革細工を作るという歪んだ趣味を持っている。自分の実の母親を剥製にして所有。母親の偏った教育の下で成長したが、母を慕うなどマザコン気質の持ち主である。鶴見の依頼により贋物の刺青人皮を作成したが、刺青を狙う尾形や杉本に狙われる。初めて自分を受け入れてくれた鶴見を慕っており、最期は鶴見の為に自らの命を犠牲にした。
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インカラマッ(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ
インカラマッとは、『週刊ヤングジャンプ』にて連載されていた野田サトル原作の漫画・アニメ作品『ゴールデンカムイ』に登場する人物で、占いで生計を立て北海道を旅するアイヌ女性。少女の頃にアシリパの父ウイルクと交流があり、金塊争奪戦の渦中にいるアシリパの周囲に現れる。目的を明かそうとせず、周囲を占いで惑わすような行動を取るため、その存在を怪しまれている。鶴見中尉率いる第七師団から離れ小樽のアシリパのコタンで療養していた谷垣源次郎と、疱瘡で家族を失ったチカパシとともに、アシリパを追いかけ旅をする。
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目次 - Contents
- 鯉登音之進の概要
- 鯉登音之進のプロフィール・人物像
- 鯉登音之進の能力・装備
- 身体能力
- 自顕流
- 天才的な軽業の能力
- 武器
- 軍刀
- 二十六年式拳銃
- 三八式歩兵銃
- その他
- 刺青人皮
- 鶴見中尉ブロマイド
- 手鏡
- お手製メンコ
- 三輪車 ド・ディオン ブートン
- 鯉登音之進の来歴・活躍
- 兄・平之丞の戦死
- 鹿児島での鶴見との出会い
- 鯉登音之進誘拐事件
- 金塊争奪戦に参戦
- 樺太先遣隊
- アシリパ奪還
- 帰国までの道のり
- インカラマッの出産に立ち会う
- 札幌麦酒工場での囚人狩りと鶴見への疑念
- 五稜郭攻囲戦
- 函館行き車両内での延長戦
- 鯉登音之進の関連事物・キャラクター
- 鶴見篤四郎(つるみとくしろう)
- 月島基(つきしまはじめ)
- 尾形百之助(おがたひゃくのすけ)
- 鯉登平二(こいとへいじ)
- 鯉登平之丞(こいとへいのじょう)
- 鯉登ユキ(こいとゆき)
- 杉元佐一(すぎもとさいち)
- アシリパ
- 土方歳三(ひじかたとしぞう)
- 永倉新八(ながくらしんぱち)
- 鯉登音之進の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 「キエエエッ(猿叫)!!」
- 「おぉおのれ よくも…私の部下たちをッ」
- 「銃を下ろせ これは上官命令だ」「私は鶴見中尉殿と月島軍曹を最後まで見届ける覚悟でいる」
- 「もうこの男を解放してあげてください」
- 「だからこそ優秀な右腕となる人間が必要だ」「月島軍曹 私のちからになって助けてくれ」
- 鯉登音之進の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 杉元に小便をかけられるシーンは『花の慶次』のオマージュ
- 稲妻強盗夫婦の息子を鶴見が抱く姿は『歌を歌う天使達(1881)/ウィリアム・アドルフ・ブグロー』のオマージュ
- 週刊誌掲載分と単行本とで演出が異なる「五稜郭攻囲戦にて鯉登と鶴見が対峙するシーン」
- 鯉登少尉のキエエエッ(猿叫)!!ボタン
- 鯉登音之進のモチーフとなった鯉登行一
- 鶴見との出会いのアイテムになった「月寒あんぱん」
- 五稜郭攻囲戦の前に土産として持参した「大沼だんご」
- 鯉登が進学した東京海城学校
- 樺太先遣隊として駆逐艦で航行した稚内~大泊連絡航路