17歳のカルテ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『17歳のカルテ』とはアメリカの映画。原題は、『Girl, interrupted』。青年期に精神疾患と診断された主人公スザンナ・ケイセンの精神病棟での成長を描いている。ベトナム戦争の長期化や貧困・人種差別による社会分断の深刻化、主要人物の暗殺など情勢が不安定だった60年代アメリカを舞台に、病棟の内と外、パーソナリティーの正常と異常、自己存在への疑問と確信、それらとは一体何なのかを「境界性パーソナリティー障害」と診断されたスザンナ・ケイセンの視点を通して描いていく。1999年公開。

日本語吹き替え:本田貴子

スザンナの2人1組のルームメイトで17歳。虚言癖があると診断されている。人当たりはよく穏やかであり、怒鳴り声などは苦手で、リサの怒声には耳をふさいでいる。オズの魔法使いが好きで、シリーズの本はほとんどすべて読破している。病棟の共有スペースのテレビでオズの魔法使いの主人公ドロシーが家へ帰るシーンを見ているときは涙を流している。状態が安定してきたスザンナはジョルジーナのことを「ジョルジーナは自分をここにかくまってくれる人たちに嘘をつく。彼女は一生オズの世界に住んでいたいみたい。」と記述し、ジョルジーナはそのことに腹を立てる。スザンナ退所の際にスザンナは「噓つきは私かも」とジョルジーナを励まそうとし、ジョルジーナは「私かも」と言いながらスザンナと抱き合い別れを告げる。

演じるのは、クレア・デュヴァル。アメリカで女優、脚本家、プロデューサー、ディレクターとしてマルチに活躍する。1998年の『パラサイト(原題:The Faculty)』で主要人物のうちの一人を演じたことで注目される。翌年本作公開。2012年作品『アルゴ』でハリウッド映画賞最優秀俳優賞、第19回全米映画俳優組合賞傑出演技賞、2018年テレビドラマ『ヴィープ』で第24回全米映画俳優組合賞コメディーシリーズ傑出演技賞の受賞経歴がある。

デイジー・ランドネ(演:ブリタニー・マーフィー)

日本語吹き替え:小島幸子

父親から性的虐待を受け、自傷行為と下剤中毒と診断された18歳。虐待されつつも父親の愛情を信じており、町でデリを経営する父親がローストチキンをデイジーに差し入れしているが、デイジーはそのローストチキン以外食べれないと言う。また、食堂でなく自室でチキンを食べることを好み、ベッドの下にチキンの食べかすを隠し置くほど執着している。言動は荒っぽく、他の患者たちとの交流はあまりなく、リサの仲間たちとスザンナが地下室で遊ぶ際も登場しない。状態が比較的安定してきたと診断され、父親が用意したアパートに一人暮らしをする手はずを整えて、クレイモアを退所する。その後、施設を逃げ出しフロリダに行こうとするスザンナとリサに部屋を宿として提供するが、リサに薬を持っているか尋ねたり腕の自傷行為をリサに見られたりしたことで、出所しても状態が不安定なことをリサに見抜かれてしまい、クレイモアを去る人を攻撃する傾向のあるリサはデイジーに、出所してもデイジー自身が変わっていないこと、デイジーが父親からの虐待を喜んでいるのではないかという罵倒を浴びせ、翌朝デイジーは2階の自室の隣の部屋で首つり自殺をしてしまう。

演じるのは1995年公開の『クルーレス』2002年公開の『8 Mile』で注目されたブリタニー・マーフィー。『クルーレス』ではアワードサーキットコミュニティー賞の助演女優賞にノミネート、『8 Mile』も10代が選ぶドラマ女優にノミネートされている。悲運なことに家のカビが原因で32歳で夭逝。2021年にはブリタニー・マーフィーの生涯を描いた伝記的ドキュメンタリー映画『ブリタニー・マーフィー・ストーリー』が公開されている。

ポリー・クラーク(演:エリザベス・モス)

日本語吹き替え:小笠原亜里沙

家で火災に遭い顔にやけどを負った(ジョルジーナはこの原因をスザンナに話すときに自分でガソリンをかけて火をつけたとつくり話をする)、統合失調症と診断された16歳。言動が幼く無邪気な振る舞いをすることが多く、ささいなことで癇癪を起こす。スザンナの元彼トビーがクレイモアを訪ねたとき、スザンナとトビーが部屋でしていた行為をなんらかの手段で知り、自分にはそういう相手がいないと悲観的になり、さらにそれは自分のやけどの跡が醜いからだと夜になって泣き叫ぶ。落ち着かせようと看護師たちはポリーを隔離部屋へと移動させ、ポリーはその中で泣いている。それを見かねたスザンナは倉庫からギターを引っ張り出し、隔離部屋の前の廊下で「恋のダウンタウン(原題:Downtown)」を弾き語り。リサもそこにタンバリンで参加し、それを聞いたポリーの気持ちは、「恋のダウンタウン」を口ずさむくらいにまで落ち着いていく。施設脱走から戻ったスザンナが持ち込んだデイジーのネコのルビーを大変気に入っており、物語の終盤ではいつも抱きかかえている。

演じるのはエリザベス・モス。幼いころから子役として出演しはじめ、1999年から2006年まで、ヒットドラマ『ザ・ホワイトハウス』に出演。2007年から人気ドラマ『マッドメン』の主要人物として出演し、一躍脚光を浴びた。この役でサテライト賞テレビドラマ部門主演女優賞とエミー賞主演女優賞(ドラマ部門)にノミネートされた。2017年のHulu製作・配信の『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』では主演のほか監督も務め、エミー賞主演女優賞(ドラマシリーズ部門)とゴールデングローブ賞女優賞(ドラマシリーズ部門)を受賞した。

シンシア・クロウリー(演:ジリアン・アルメネイト)

本人は自身のことをリサと同様反社会性パーソナリティー障害と思っているが、リサからは同性愛者だと言われる。22歳。何でも愉快に感じてしまいやすい。手先が器用なようで、リサと仲間たちがスザンナを連れて地下の遊び場へ向かったときも、部屋の鍵を針金で開ける芸当を見せている。本編では描かれていないが、原作ではうつ症状もあり、ショック療法を受けているという設定。

演じるのはジリアン・アルメネイト。1999-2005のアメリカのテレビドラマ『ジャッジング・アミー』で主要人物のうちの一人ドナ・コズロウスキーで知られる女優。舞台『Great Men Of Science, Nos.21&22』のワールドプレミアではディレクターとしても活躍。同作はロサンゼルス劇場賞で小劇場部門の最優秀賞を受賞している。彼女自身も舞台『メロニー』でニューヨークのアトランティックシアター、シアトルレピートリーシアター、そしてロサンゼルスのマークテイパーフォーラムを巡業、ドラマ・デスク・アワード(ブロードウェイの優秀な舞台作品に贈られる賞)にノミネート、エンタメ新聞バックステージによるガーランド賞、ニューヨーク舞台の傑出した俳優に送られるシアターワールド賞のニューヨークステージデビュー賞を受賞している。

ジャネット・ウェバー(演:アンジェラ・ベティス)

精神性無食欲症と診断されて入所している20歳。他の患者に比べ比較的社会性はあるものの、怒りやすい性質を持っている。体重が74ポンド(約34kg)しかないという設定で、本人は退所できない悔しさからか「34kgは適正体重だ」と泣き叫ぶときもある。みんなでアイスクリーム屋へ行くときは、軽やかに雪のかたまりの上を歩いている。スザンナの退所日、ジャネットはこっそりと手に入れたマニキュアをスザンナに渡す。

演じるのはアンジェラ・ベティス。女優、プロデューサー、ディレクターの肩書を持つ。本作がベティスのブレイクのきっかけとなった作品である。2002年のテレビ映画『Carrie』やホラー映画『May』で重要人物を演じ、高評価を得る。『May』ではブリュッセル国際ファンタスティック映画祭、シッチェス・カタロニア国際映画祭、ホラー映画雑誌ファンゴリアチェーンソー最優秀女優賞で3つの賞を受賞。

精神病棟クレイモアのスタッフ

ヴァレリー・オーウェンス(演:ウーピー・ゴールドバーグ)

日本語吹き替え:小宮和枝

精神病棟クレイモアの看護師長。長年多くの入院患者たちを見てきた。患者たちからも信頼され、かつ恐れられているようで、デイジーもリサが自身に不利なことをしそうなときに「ヴァレリーを呼ぶぞ」と言っているほど。スザンナが自身の症状を理解しはじめたころ、それによって甘えが生じていること、リサの魅力に取りつかれていることを見抜いて釘を刺したり、スザンナが自身の心情を言葉にして打ち明けるようになったころ、それをもっと頭の中から外へ出すように文章を書いていけばいいと進言したり、患者たちのターニングポイントで適切な対応ができる人物として描かれている。スザンナに釘を刺したときスザンナがヴァレリーに対して人種差別的な発言を口にするが、それには反応せずスザンナに自分に溺れるなとだけ伝える部分でベテラン看護師の貫録を醸し出している。スザンナの入院当初、風呂に入っている様子も看護師に監視される状態で、ヴァレリーに「私の脚の毛をバスタブで剃ってるところも見るの?」と話をしたころから、スザンナの退所時の別れ際にヴァレリーは「脚を剃るときに私のこと思い出して」と冗談交じりでスザンナに言う。

演じるのは世界的に有名なエミー賞、グラミー賞、オスカー(アカデミー賞)、トニー賞の4つの賞をすべて受賞した経歴のある、ウーピー・ゴールドバーグ(本名:カリン・エレイン・ジョンソン)。デビュー作『カラーパープル』でゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞。1990年の『ゴースト/ニューヨークの幻(原題:Ghost)』ではゴールデングローブ賞のみならず、アカデミー助演女優賞も受賞。1992年公開の『天使にラブソングを…(原題:Sister Act)』が人気作品になり世界的に名が知れることとなった。ウーピー(Whoopi)というのは、「ブーブークッション(Whoopi Cusion)」から来た彼女の初期のころのステージネーム。

メルヴィン・ポッツ医師(演:ジェフリー・タンバー)

日本語吹き替え:仲野裕

精神病棟クレイモア従事のセラピスト。冷静な診断ができ、入所者とつかず離れずの立場でいる人物。落ち着いた静かな声で話す。スザンナの入所初期にスザンナに対して最終的に「境界性パーソナリティー障害」と診断。リサの話によると、メルヴィン医師は必要であれば入所者にショック療法を行っていたらしい。原作で実在したメルヴィン医師に対してスザンナは「メルヴィンは年老いていて髪がなく、どちらかといえば『男性的な魅力』はあまりない」と記述しながらも、彼とのセッションを快適に感じており、楽しんでいたという。また、院内は騒がしいことがあったが、そういうときには静かなメルヴィンの部屋に避難して静寂を楽しんでいた。

演じるのはジェフリー・タンバー。1979–1980放映のアメリカのコメディドラマ『ロペス(The Ropes)』で主人公の隣人、1992–1998の同国のコメディドラマ『ラリー・サンダースショー(The Larry Sanders Show)』で主人公の相棒、2003–2006, 2013, 2018–2019のコメディドラマ『アレステッド・ディベロップメント(Arrested Development)』で主人公の父親を演じたことで知られる。映画でも1979年のデビュー作『ジャスティス(...And Justice for All)』をはじめとして、1998年『ドクター・ドリトル』、同年『ジョー・ブラックをよろしく(Meet Joe Black)』、2009年~の『ハングオーバー』シリーズなどに出演のほか、2009年『モンスターVSエイリアン』、2016年『トロールズ』などで声優としても活躍している。

ソニア・ウィック医師(演:ヴァネッサ・レッドグレイヴ)

日本語吹き替え:藤波京子

精神病棟クレイモア従事精神科医。スザンナが看護師と不貞をしたあとにスザンナの対応をする。原作で実際のウィック医師は、極めてオールドファッションで恥ずかしがりだとスザンナに記述されている。劇中ではブリティッシュアクセントで話し、形式を重んじる人間として描かれている。スザンナの現状を鋭く見抜き、叱るでも甘やかすでも励ますでもなく、ただ事実だけを彼女に延べ道を示そうとする。

演じるのはアカデミー賞、エミー賞、トニー賞、ゴールデングローブ賞など多数の受賞歴のあるヴァネッサ・レッドグレイヴ。1966年『モーガン(Morgan – A Suitable Case for Treatment)』、1968年『裸足のイサドラ(Isadora)』の両作でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞、1977年『ジュリア(Julia)』でタイトル名でもある主人公の幼馴染で反ナチの同志ジュリアを演じ、アカデミー賞 助演女優賞及びゴールデングローブ賞 助演女優賞を受賞。1980年のテレビ映画『ファニア歌いなさい(Playing for Time)』でフランス出身のユダヤ人のシンガーピアニストを演じ、エミー賞 傑出リード女優賞を受賞。2003年上演のブロードウェイ舞台『夜への長い航路(Long Day's Journey Into Night.)』では、主に舞台演劇やミュージカル作品あるいは俳優に送られるトニー賞で最優秀女優賞を受賞している。

ジョン(演:トラヴィス・ファイン)

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