17歳のカルテ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『17歳のカルテ』とはアメリカの映画。原題は、『Girl, interrupted』。青年期に精神疾患と診断された主人公スザンナ・ケイセンの精神病棟での成長を描いている。ベトナム戦争の長期化や貧困・人種差別による社会分断の深刻化、主要人物の暗殺など情勢が不安定だった60年代アメリカを舞台に、病棟の内と外、パーソナリティーの正常と異常、自己存在への疑問と確信、それらとは一体何なのかを「境界性パーソナリティー障害」と診断されたスザンナ・ケイセンの視点を通して描いていく。1999年公開。
精神病棟クレイモア女性寮に常駐する看護師のうちの一人。スザンナに好意を持っており、スザンナの顔が見たいからスザンナが部屋にいる夜に電球を変えているとスザンナに伝える。暴れるリサを抱き抑えて隔離部屋へ連れて行ったり、シンシアの受け答えをしたり、悲観的になって泣き叫ぶポリーを落ち着かせようとしたり、親切心をもって仕事にあたっている様子が多く見られる。スザンナがポリーを慰めるためにギターの弾き語りをしてリサもそれに加わりちょっとした騒ぎになった夜、スザンナとリサにそれをやめさせようとジョンが止めに入るが、高揚した気分のスザンナはリサに促されるままジョンにキス。その後騒動に関わった全員は廊下に眠ってしまい、翌朝ヴァレリーの怒りに触れることになる。その後、スザンナとジョンの関係がこのままではよくないと判断した病棟の管理者たちはジョンを男性寮に異動させる。
演じるのは俳優、監督としても活躍するトラヴィス・ファイン。ファインの監督作品で2012年公開の『チョコレートドーナツ』、原題『Any Day Now』は高い評価を得、シカゴ国際映画祭で観客が選ぶ最優秀物語賞、シアトル国際映画祭で最優秀俳優賞と最優秀映画賞、プロビンスタウン国際映画祭で観客賞などを受賞している。俳優としては1989-1992年放映の『ヤングライダーズ(The Young Riders)』で、主要人物の友人で人を守ることに情熱をささげる良きライダーのアイクを演じたことでも知られる。
スザンナの恋人
トビー・ジェイコブス (演:ジャレッド・レト)
日本語吹き替え:佐藤淳
スザンナの元彼。スザンナの高校卒業証書授与式で、スザンナが居眠りをしているところを目撃しスザンナが印象に残ったと、卒業式後のパーティーでスザンナに近づく。その後恋人関係になるが、スザンナは自殺についての話をしたい一方、トビーはそんな話はくだらないと一蹴することで、二人の関係は悪化。スザンナはもうどちらでもいいという様子でトビーの部屋をあとにする。スザンナの入院後、トビーはスザンナにカナダへ行って一緒に住もうと施設を抜け出すように持ちかける。このときトビーは徴兵されていたが、父親から援助をもらいアメリカを抜け出そうとしていた。結果的にスザンナには病棟への所属意識が芽生えており、トビーは誘いを断られることになる。
俳優はジャレッド・レト。ミュージシャン活動経験もある。2013年公開映画『ダラス・バイヤーズクラブ』ではトランスジェンダーでHIV患者を演じ、ハリウッド映画祭においてブレイクアウト演技賞をはじめ、アカデミー助演男優賞、ゴールデングローブ賞助演男優賞、放送映画批評家協会賞助演男優賞、全米映画俳優組合賞助演男優賞を受賞。2000年の『レクイエム・フォー・ドリーム』で麻薬中毒に陥る主人公、2013年の『ダラス・バイヤーズクラブ』、そして2007年の『チャプター27』では恰幅の良い暗殺犯などを演じるために自身の感覚・体型を緻密にコントロールしながらストイックな役作りに取り組む。2016年、世界的に人気の高い『スーサイド・スクワッド』でジョーカー役を演じ話題となった。
ケイセン一家とつながりのある人物たち
アネット・ケイセン(演:ジョアンナ・カーンズ)
スザンナの母。60年代アメリカの比較的上流階級に所属する典型的な母親で、パートナーであるカール・ケイセンを支える献身的な妻。カールの誕生日には盛大なパーティーを開き、カールの知人友人の教授たちを集めている。スザンナが精神疾患の診断を受けて打ちひしがれる。
演じるのは女優、また監督としても知られるジョアンナ・カーンズ。1985-1992年放映のアメリカコメディドラマ『愉快なシーバー家(Growing Pains)』で心理学者の主人公の妻で一家の母親マギー・シーバーを演じたことで知られている。アメリカのテレビ映画に多く出演している。また、『ER』、『グレイズ・アナトミー』、『グッド・ドクター 名医の条件(The Good Doctor)』『ディス・イズ・アス』などのテレビドラマの一部のエピソードで監督も務めている。
カール・ケイセン(演:レイ・ベイカー)
スザンナの父。60年代アメリカの比較的上流階級に所属する典型的な父親。スザンナの症状について本人とポッツ医師を交えて面談をした際には、クリスマスパーティーにはスザンナが家に帰れるか尋ねる。その真意は、パーティーで招待する人々にスザンナの現状が知れると都合が悪いということだった。スザンナが「境界性パーソナリティー障害」のことを遺伝かとポッツ医師に尋ねたところ、一番大きな反応を示したのはスザンナの父だった。
演じるのはテレビ、映画・舞台俳優のレイ(レイモンド)・ベイカー(クレジット表記で、「レイ」の場合と「レイモンド」の場合がある)。大きな賞の受賞歴はないが、数多くの映画・ドラマで脇役として活躍。1988年『レインマン』、1998年『フラッド(Hard Rain)』、2003年『穴(HOLES)』などに出演。
クランブル医師(演:カートウッド・スミス)
日本語吹き替え:佐々木敏
スザンナの父親の友人で、精神科医。スザンナの父親からスザンナの状況に関して相談を受けていた。本編の冒頭、スザンナに自殺未遂をしたことについて尋ね、スザンナからは要領を得ない答えが帰ってきたため、最初から予定していた通りスザンナを精神病棟クレイモアに入所させることが妥当と結論付ける。
演じるのは俳優、声優としても活躍するカートウッド・スミス。1987年『ロボコップ』で悪役一味のリーダーを演じ、翌年1988年の『ランボー3/怒りのアフガン(Rambo III)』でアメリカ国防省からの使者を演じたことで知られる。1998–2006年放映のテレビシリーズ『ザット'70sショー』で主人公の父親で出演しているほか、『スタートレック』シリーズ、『Xファイル』シリーズといったSF映画にもたびたび出演。また、ドラマ『24』のシーズン7にも特別出演している。また、2013年上映のアニメ映画『ターボ』や2010-2017年放映のアメリカのアニメ『レギュラーショー』などでは声優として出演している。
ギルクレスト教授(演:ブルース・アルトマン)
ケイセン家とつながりのある大学教授。以前にスザンナと一夜を共にしたことがあり関係を続けようとスザンナに持ちかけるが、スザンナは「1度きりのこと」と突き放す。スザンナがアスピリンとウォッカを大量摂取し病院に運ばれたときに、処置室の外側から処置の様子を見ていたり、スザンナの父カール・ケイセンの誕生日パーティーではスザンナを見つめたりしている。
演じるのはブルース・アルトマン。世界的に知られる大きな役はないものの、映画やテレビで活躍する俳優である。1991年公開、主人公の弁護士が銃撃による記憶喪失から回復するストーリーの『心の旅(Regarding Henry)』に出演してデビュー、2003年『マッチスティック・メン』で精神分析医を演じた。他にも映画では、2009年『恋するベーカリー(It's Complicated)』、2011年『人生、サイコー!(Delivery Man)』、2020年『ケミカル・ハーツ』、テレビドラマでは2010~放映の『ブルーブラッド 〜NYPD家族の絆〜(Blue Bloods)』には2010-13年放映の10エピソード、2015-2019放映の『ミスター・ロボット』には2015-17年放映の6エピソードなどに出演している。
バーバラ・ギルクレスト(演:メアリー・ケイ・プレイス)
ギルクレスト教授夫人。娘のボニーがスザンナの同級生ということもあって、スザンナの父カール・ケイセンの誕生日パーティーではスザンナに関心を示す。娘に名のある大学に入ってもらいたいという意志が強い。アイスクリーム屋でスザンナと会ったときは精神疾患に関しての偏見から嫌悪感をスザンナにぶつけるが、クレイモアのリサをはじめとする入所者から非難と奇声を浴び、その場を退散する。
演じるのは、70年代の『ニューヨーク・ニューヨーク』や『結婚ゲーム(Starting Over)』などの話題映画に出演したことで知られているメアリー・ケイ・プレイス。歌手としての活動経験もある。1976-77年放映の風刺ソープオペラ『Mary Hartman, Mary Hartman』で主人公の隣人かつ親友を演じ、エミー賞 傑出助演女優賞を受賞した経験を持つ。その後は1980年上映アメリカ陸軍のコメディ『プライベート・ベンジャミン』、1992年『キャプテン・ロン あこがれのカリブ海クルーズ(Captain Ron)』、2009年『恋するベーカリー(It's Complicated)』など多くの映画に出演。2018年のヒューマンドラマ映画『Diane』で60代未亡人の主人公を演じ、ロサンゼルス映画批評家協会賞 主演女優賞を受賞。同作でメアリーはボストン映画批評賞 主演女優賞、ゴッサム・インディペンデント映画賞 主演女優賞、インディペンデント・スピリット賞 主演女優賞にもノミネートされた。
ボニー・ギルクレスト(演:ケイディー・ストリックランド)
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目次 - Contents
- 『17歳のカルテ』の概要
- 『17歳のカルテ』のあらすじ・ストーリー
- スザンナの入院
- 入院初日
- スザンナの病名と自己理解
- リサとの脱走とデイジーの死
- スザンナの回復
- 『17歳のカルテ』の登場人物・キャラクター
- 精神病棟クレイモアの入所者
- スザンナ・ケイセン(演:ウィノナ・ライダー)
- リサ・ロウ(演:アンジェリーナ・ジョリー)
- ジョルジーナ・タスキン(演:クレア・デュヴァル)
- デイジー・ランドネ(演:ブリタニー・マーフィー)
- ポリー・クラーク(演:エリザベス・モス)
- シンシア・クロウリー(演:ジリアン・アルメネイト)
- ジャネット・ウェバー(演:アンジェラ・ベティス)
- 精神病棟クレイモアのスタッフ
- ヴァレリー・オーウェンス(演:ウーピー・ゴールドバーグ)
- メルヴィン・ポッツ医師(演:ジェフリー・タンバー)
- ソニア・ウィック医師(演:ヴァネッサ・レッドグレイヴ)
- ジョン(演:トラヴィス・ファイン)
- スザンナの恋人
- トビー・ジェイコブス (演:ジャレッド・レト)
- ケイセン一家とつながりのある人物たち
- アネット・ケイセン(演:ジョアンナ・カーンズ)
- カール・ケイセン(演:レイ・ベイカー)
- クランブル医師(演:カートウッド・スミス)
- ギルクレスト教授(演:ブルース・アルトマン)
- バーバラ・ギルクレスト(演:メアリー・ケイ・プレイス)
- ボニー・ギルクレスト(演:ケイディー・ストリックランド)
- 『17歳のカルテ』の用語
- 境界性パーソナリティー障害(Borderline personality disorder)
- 精神性無食欲症
- 反社会性パーソナリティ障害
- クレイモア(Claymoore)
- アスピリン
- ジアゼパム錠(抗不安薬)
- 60年代アメリカ
- フロリダのディズニーワールド
- 『17歳のカルテ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- スザンナ「夢と現実が混乱したことはある?」
- スザンナ「バカな事言った、もう死んじゃおう。 いい映画を観たから生きよう。 電車に乗り遅れたから死のう。」
- リサ「カミソリは痛い、水は冷たい、薬は苦い、銃は違法、縄は切れる、ガスは臭い。 生きてる方がマシ。」
- スザンナ「それ、私だ。」
- 「恋のダウンタウン(原題:Downtown)」の弾き語り
- スザンナとリサのキス
- ヴァレリーのスザンナへのまなざし
- スザンナ「あなたはもうすでに死んでいるの、リサ!」
- スザンナ「このことは、私でありあなたでもあって、心の一部が肥大化しただけ。」
- 『17歳のカルテ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 邦題は『17歳のカルテ』だが主人公スザンナの設定年齢は17歳ではない
- 原題『Girl, interrupted』はフェルメールの絵画のタイトルにインスパイアされたもの
- 長年進まなかったプロジェクト
- 脚本の方向性は『オズの魔法使い』(アイデンティティ探し)
- 極力ウィノナ・ライダーと距離を取るようにしていたアンジェリーナ・ジョリー
- デイジーを演じたブリタニー・マーフィーの悲運
- 『17歳のカルテ』の主題歌・挿入歌
- 主題歌・挿入歌:ペトゥラ・クラーク 「恋のダウンタウン」
- 挿入歌:ゼム「イッツ・オール・オーバー・ナウ、ベイビー・ブルー」
- 挿入歌:ママス&パパス 「ガット・ア・フィーリン」
- 挿入歌:ザ・チャンバーズ・ブラザーズ「タイム・ハズ・カム・トゥデイ」
- 挿入歌:ジェファーソン・エアプレイン「帰っておくれ」
- 挿入歌:アレサ・フランクリン「ライト・タイム」
- 挿入歌:メリリー・ラッシュ&ザ・ターナバウツ 「朝の天使」
- 挿入歌:ウィルコ「ハウ・トゥー・ファイト・ロンリネス」
- 挿入歌:ザ・バンド「ザ・ウェイト」
- 挿入歌:スキータ・デイヴィス 「この世の果てまで」