【町山智浩】知識人たちが読み解く宮崎駿の『風立ちぬ』とは【信田さよ子】
スタジオジブリの作品『風立ちぬ』を見た知識人や著名人の感想をまとめました。映画評論家やコラムニストとして活躍する町山智浩や、臨床心理士の信田さよ子など、様々な人物の称賛の声や辛口コメントを記載しています。様々な角度で『風立ちぬ』について考えられる、興味深い感想を紹介していきます。
むー。風立ちぬはアニメーションとしてはほんとうに神がかってすごくて、最初の30分とか奇跡のようなのだけど、逆に物語としては謎ばかりで、おまけに反原発の主張とも違う感じがするぞ。川上さんとの火曜日の対談は、意外ともりあがってしまうのかもしれないな。。
— 東浩紀 Hiroki Azuma (@hazuma) July 20, 2013
むろん、そういう読みはすべて野暮で、宮さんは最初から政治的主張なんてあってないようなものなので飛行機がすごければいいのだという反論はありえて、まあそれはそうだと思うのだけど、やはりね。
— 東浩紀 Hiroki Azuma (@hazuma) July 20, 2013
普通のユーザーの感覚からすれば、風立ちぬは、戦争産業に従事したり恋人が結核で苦しんでたりするのにまったく主人公に葛藤がないのでびっくりするし、ちょっと共感しがたい(どこに共感すればわからない)映画だと思う。宮崎駿はこういうものだと覚悟すれば、いい映画。そういう感じかなあ。
— 東浩紀 Hiroki Azuma (@hazuma) July 20, 2013
いろいろ世の中あるけれど、ぼくたちは美しいものを作りたかっただけなんだ、とはいえそれを肯定しようという感じでもなく、ただただすべてが空しい、そういう映画ですかね。。
— 東浩紀 Hiroki Azuma (@hazuma) July 20, 2013
ただ、最初の飛行シーンは神です。エヴァQの最初の戦闘シーンが神だったのと同じ。
— 東浩紀 Hiroki Azuma (@hazuma) July 20, 2013
いや、あれで終わりとか、普通に考えて最悪っすよ。。RT @hiroyamasuka @hazuma 黒川夫人の、「綺麗なところだけ観てもらったのね」で僕は納得しました。
— 東浩紀 Hiroki Azuma (@hazuma) July 20, 2013
岩崎夏海氏
出典: trendnews-b.com
童貞には全く楽しめない映画ですね。槍賃はニヤリとする映画かもしれない。
「風立ちぬ」は童貞には全く楽しめない映画ですね。槍賃はニヤリとする映画かもしれない。こんな言い方すると誤解が加速するけど。
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) July 21, 2013
童貞は菜穂子を見て「こんな男にとって都合の良い女はリアリティがない!」って必ず言い出すんですよね。そういう女の味方面して実は女性をよく知らない男が結局一番女性から敬遠されるのにね。
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) July 21, 2013
童貞か非童貞の違いは、「女性だって社会進出すべき」と言っていた女性が結婚したら家庭に入って主婦をやっていた場合、「矛盾してる」と怒るか、「そういうこともあるよね」と許せるかによって見分けられる。これが一番のリトマス試験紙だよな。
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) July 21, 2013
「宮崎駿は終わった」と言いたがる人の多いこと。「終わった」って言いたいだけなんだよね。
あと今回も繰り返されるのが、宮崎駿さんの過去の作品と比較しながら「宮崎駿は終わった」と言いたがる人の多いこと。「終わった」って言いたいだけなんだよね。
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) July 21, 2013
そもそも本人が単なる飛行機オタクの手から堀越二郎を取り戻すために(つまりアンチ飛行機オタクの内容になってる)と明言してるのに、「飛翔の快感が『紅の豚』と比べて少ない」と文句言うのはお門違いもいいところ。
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) July 21, 2013
テーマ「生きていくことに矛盾を感じながらも生きなければいけない」に共感する人は少ない
まあ、内容に比してヒットしすぎというのはあるでしょうね。テーマがそもそも「生きていくことに矛盾を感じながらも生きなければいけない」ということなのだけれど、これに共感する人は割合としては少ない。1割もいないと思うな、実感として。
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) July 21, 2013
だから、多くの人は主人公の悩みを共感できないので、他の共感できる感情にだけ注意を向けるんでしょうね。あと共感できないことを描かれると多くの客はむかっとするので、それに対するアレルギー反応もある。女性のことを知らない男性は、女性の複雑さとか描かれてるとムカッとくる。
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) July 21, 2013
日本の近現代史を知ってるか知らないかで120度くらい評価が違う
日本の近現代史知ってるか知らないかで120度くらい評価違うでしょうね。知らないと、主人公やヒロイン、あるいは周囲の人間性がまず理解できない。それくらい、今と戦前の文化は異なる。
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) July 21, 2013
戦前に当たり前にあって今は目隠しされているものは「貧乏」と「死」。今は「ひもじさ」を味わったことのある人が皆無だし、周囲の人がばたばた死んでいくという状況を味わうのも皆無。
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) July 21, 2013
当時の人は、「自分は生き残った」という感覚で生きている。むしろ死ぬ方がデフォルト。でも今は「なぜ死んだ?」と思いながら生きている。生きることがデフォルト。
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) July 21, 2013
「風立ちぬ」はクリエイター論
あまり話すとニコ生で言うネタがなくなっちゃうけど、「風立ちぬ」は一番大きいのはクリエイター論なんです。クリエイターって社会的なだけではなく避けようもなく反社会的な部分が出るけど、地獄に落ちても作り続けるしかないよね、っていうゲーテの「ファウスト」に近い。
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) July 21, 2013
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目次 - Contents
- 町山智浩氏
- 常に妄想する主人公。それは宮崎駿自身。
- 「ものを作る人たち」の業
- 反戦のはずなのに戦闘機や戦車を愛してしまう矛盾
- 庵野監督の声優起用
- 信田さよ子氏
- 樋口真嗣氏
- あの日々の日本を、美しい航空機を、健気な女の子を愛し抜く映画。
- 宮台真司氏
- つまらんかった
- 薄っぺらかった菜穂子
- 力と美は一体
- モノと人間の関わり
- 東浩紀氏
- アニメとしては神がかっているが、物語は謎ばかり
- 岩崎夏海氏
- 童貞には全く楽しめない映画ですね。槍賃はニヤリとする映画かもしれない。
- 「宮崎駿は終わった」と言いたがる人の多いこと。「終わった」って言いたいだけなんだよね。
- テーマ「生きていくことに矛盾を感じながらも生きなければいけない」に共感する人は少ない
- 日本の近現代史を知ってるか知らないかで120度くらい評価が違う
- 「風立ちぬ」はクリエイター論
- 小林よしのり氏
- 素朴な作品なのにイデオロギー的な見方をされるのがすごくイヤ!
- 宮崎駿の描く「日本」が好き
- 宇野常寛氏
- もしジローとナオコの間に子供が生まれていたら…
- 小飼弾氏
- 金返せ
- 「夢と技術と子供」「歴史」「女」に対する甘え
- 庵野監督の声優起用について
- 作品と「ひこうき雲」とはなんの接点もない
- 虚構を避け、現実に逃避したという甘え
- ドクター中松氏
- 航空機のプロから見た、合格点と不合格点。
- 内田樹氏
- 宮崎が描きたかったのは、あのゆったりとした「時間の流れ」そのものではなかったのか
- 岡田斗司夫氏
- 美しいモノだけが好きな男の話。美しくないモノには徹底的に冷たい
- 貧乏人が搾取され豊かな者がより豊かになる社会だからこそ「美しいモノ」が存在する
- 宮崎駿の矛盾と願望
- 菜穂子の「あなたは生きて」は菜穂子が言ったんじゃない
- モノを作る人間の性(さが)
- 悪魔のささやき
- 二郎の妹
- 「生きねば」というコピーとユーミンの主題歌。たぶん両方とも鈴木敏夫
- 宮崎駿の本音
- アニメーションは、画面の全てに意味がある
- 「風立ちぬ」の感動は、罪悪感
- 宮崎駿が大人向けアニメを作ると「大人なら当然ダンテの神曲ぐらいわかるよね?」となる。
- 僕らふつうの日本人は、二郎からシベリアを渡される庶民