【町山智浩】知識人たちが読み解く宮崎駿の『風立ちぬ』とは【信田さよ子】
スタジオジブリの作品『風立ちぬ』を見た知識人や著名人の感想をまとめました。映画評論家やコラムニストとして活躍する町山智浩や、臨床心理士の信田さよ子など、様々な人物の称賛の声や辛口コメントを記載しています。様々な角度で『風立ちぬ』について考えられる、興味深い感想を紹介していきます。
あー。 一晩経ってまだ抜けない。 絶対に現実に引き戻されて映画に没入できないと思っていたあの声が寧ろ映画の中への橋渡しになるとは! 好きだという気持ちを伝えるニュアンスは芝居では出来ない凄みがあったし、ミーティング場面のセリフ回しは実際に人の上に立った者の説得力がある。
— 樋口真嗣 (@higuchishinji) 2013.06.25 11:14
宮台真司氏
つまらんかった
掘辰夫の「風立ちぬ」という小説は中学二年のときに読みましたが、ほんとに糞な小説だと思ったんですよ。なんなんだこれはってね
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当時、中学紛争の激動の中でね、見てたっていうこともあるんだろうけど、まさに絵空事の私小説。ご都合主義的な展開。
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「風立ちぬ」の原作のダメな部分はそのまま引き継がれていましたよね。
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薄っぺらかった菜穂子
女がまるでね…まあ、よくありがちですよね。
今のセカイ系のマンガと同じですよ。
男の妄想通りの薄っぺらな類型なんです。
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これは昔、宮崎駿さんと僕が大喧嘩になってしまったっていう一件と同じ。「宮崎さんはなんぜ女性を描けないんですか」問題がモロに、モロに出ていて。
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力と美は一体
例えば堀越二郎がどうして名戦闘機を作ることが出来たのかというと、堀越二郎が美、或いは美が引き起こす願いに関心を持っていたからだ、という結論なんですね。
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ドイツでバウハウスというデザイン運動が起こったんですね。BMWやメルセデスなんかに大きな影響を与えている。
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美と力というのは分かれてなくて、まさに一体であって、美しいものは機能する、機能するものは必ず美しい、機能するものは美しくて眩暈を引き起こす、そういうことをバウハウスは主張した。
つまり、堀越もバウハウス的な発想なんですよ。機能するものは必ず美しく、であるからして眩暈の対象になる。
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モノと人間の関わり
力と美が乖離してたらいいんだけど、一体なんだよ、多くの場合ね。だから美を追求すると戦争機会の魅惑に繋がっていく問題は堀越二郎のキャラクターの問題じゃなくて、もともと存在するモノと人間の関わりの問題。
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だから僕達が力に魅惑されるというのは浅ましい権力欲じゃなくて、別の問題が存在していて、その別の次元についてちょっと触れてるんです。そこはね、肯定して、良いんだけども、それは見る側がちゃんと受け止めるためにも、もう少し、戦間期はどういう時代だったのかを描かなきゃダメ。
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東浩紀氏
アニメとしては神がかっているが、物語は謎ばかり
皆さんが絶賛するのはよくわかった、というところかしら。宮崎駿のアニメ作家としての天才性はすごく良く出ている。
— 東浩紀 Hiroki Azuma (@hazuma) July 20, 2013
見て半時間ほど経っての感想は、すごい映画ではあったけど(本当にすごい)、あまり好きではないと言ったところでしょうか。ぼくはきっと宮崎駿とは相性が悪いんだな。
— 東浩紀 Hiroki Azuma (@hazuma) July 20, 2013
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目次 - Contents
- 町山智浩氏
- 常に妄想する主人公。それは宮崎駿自身。
- 「ものを作る人たち」の業
- 反戦のはずなのに戦闘機や戦車を愛してしまう矛盾
- 庵野監督の声優起用
- 信田さよ子氏
- 樋口真嗣氏
- あの日々の日本を、美しい航空機を、健気な女の子を愛し抜く映画。
- 宮台真司氏
- つまらんかった
- 薄っぺらかった菜穂子
- 力と美は一体
- モノと人間の関わり
- 東浩紀氏
- アニメとしては神がかっているが、物語は謎ばかり
- 岩崎夏海氏
- 童貞には全く楽しめない映画ですね。槍賃はニヤリとする映画かもしれない。
- 「宮崎駿は終わった」と言いたがる人の多いこと。「終わった」って言いたいだけなんだよね。
- テーマ「生きていくことに矛盾を感じながらも生きなければいけない」に共感する人は少ない
- 日本の近現代史を知ってるか知らないかで120度くらい評価が違う
- 「風立ちぬ」はクリエイター論
- 小林よしのり氏
- 素朴な作品なのにイデオロギー的な見方をされるのがすごくイヤ!
- 宮崎駿の描く「日本」が好き
- 宇野常寛氏
- もしジローとナオコの間に子供が生まれていたら…
- 小飼弾氏
- 金返せ
- 「夢と技術と子供」「歴史」「女」に対する甘え
- 庵野監督の声優起用について
- 作品と「ひこうき雲」とはなんの接点もない
- 虚構を避け、現実に逃避したという甘え
- ドクター中松氏
- 航空機のプロから見た、合格点と不合格点。
- 内田樹氏
- 宮崎が描きたかったのは、あのゆったりとした「時間の流れ」そのものではなかったのか
- 岡田斗司夫氏
- 美しいモノだけが好きな男の話。美しくないモノには徹底的に冷たい
- 貧乏人が搾取され豊かな者がより豊かになる社会だからこそ「美しいモノ」が存在する
- 宮崎駿の矛盾と願望
- 菜穂子の「あなたは生きて」は菜穂子が言ったんじゃない
- モノを作る人間の性(さが)
- 悪魔のささやき
- 二郎の妹
- 「生きねば」というコピーとユーミンの主題歌。たぶん両方とも鈴木敏夫
- 宮崎駿の本音
- アニメーションは、画面の全てに意味がある
- 「風立ちぬ」の感動は、罪悪感
- 宮崎駿が大人向けアニメを作ると「大人なら当然ダンテの神曲ぐらいわかるよね?」となる。
- 僕らふつうの日本人は、二郎からシベリアを渡される庶民