緋村剣心（るろうに剣心）の徹底解説・考察まとめ

緋村剣心の概要

緋村剣心（ひむらけんしん）とは『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の登場人物であり、同作の主人公。左頬の十字傷と後ろで一つ結びにした長い赤髪が特徴的な単身痩躯の男。赤い着物に白い袴姿で腰には刃と峰が逆になっている刀「逆刃刀」を差している。「～でござる」という間の伸びた喋り方をし、驚いた際には「おろ」という独特な感嘆詞を発する。

一見物腰穏やかな優男だが、その正体はかつて幕末最強と謳われた「人斬り抜刀斎」。戦国時代に端を発する古流剣術「飛天御剣流」を師匠・比古清十郎（ひこせいじゅうろう）から学び、「飛天御剣流で動乱を早く終わらせたい」という正義感と若さゆえの逸る気持ちから幕末時に維新志士側へ加勢。「影の人斬り」として幕府要人の暗殺を請け負っていた。「人斬り抜刀斎」の特徴である「左頬に十字傷」はこの時につけられたもの。また、幕府側が維新志士狩りを盛んにするとこれに対抗するべく「遊撃剣士」として抜擢され志士の護衛や新撰組という強者達との死闘を繰り広げた。そのため、維新志士や幕末を生き残った者の間では一目置かれている。しかし、「鳥羽・伏見の戦い」で維新側の勝利を見届けた後、維新志士を抜けており彼らの前から姿を消す。

維新志士を抜けた後は、動乱で多くの者を殺めてしまった償いと太平の世を生きる人々を守るため「不殺（ころさず）」の信念を掲げて旅をする「流浪人（るろうにん）」を名乗っている。「流浪人」となってからは愛刀・逆刃刀で困った人のために剣を振るっており、かつての「人斬り抜刀斎」としての人格は封印されているが、激昂した時や強敵との闘いで抜刀斎の人格に戻る様子を見せるなど危うい面も持っている。

緋村剣心のプロフィール・人物像

生年月日：1849年6月20日
星座：双子座
血液型：AB型
出身：不明
身長：158cm
体重：48kg
特技：口八丁
苦手なもの：薫の料理
CV：涼風真世（旧アニメ版）、鈴木真仁（旧アニメ版幼少期）、緒方恵美（ドラマCD版）、斉藤壮馬（新アニメ版）
演：佐藤健（実写映画版）、早霧せいな（宝塚版）

明治の世で「不殺（ころさず）」の誓いを掲げて全国を旅をする「流浪人」を名乗る侍。侍だが、刀と峰が反対になった「逆刃刀」を帯刀している。若々しい容姿だが年齢は満年齢で28歳。その風貌と物腰穏やかな態度から作中では度々「優男」と評されている。

一人称は「拙者」で、語尾に「ござる」を付ける少し間の抜けた喋り方をしており、驚いた際には「おろ」という独特な感嘆を漏らすことがある。口が達者で他者を丸め込むことが得意だが、薫や気の強い相手には勢いに負けてしまい困った顔をすることも多い。また、彼の特徴的な口調「拙者」「ござる」「おろ」は流浪人の時に意識して振る舞っており、師匠・比古清十郎と一緒にいる時や、余裕が無い時には一人称が「俺」になり、口調も落ち着いている。

普段は常に笑みを浮かべている温厚な人物だが、苦しんでいる人々の助けになるという信念を持っており、人々を苦しめる者や非道な暴力を振るう者に対しては愛刀・逆刃刀で容赦なく叩き伏せている。

その正体は幕末最強と謳われた維新志士の伝説の人斬り「人斬り抜刀斎」。戦国時代に端を発する古流剣術「飛天御剣流」を使い多くの人達を殺めた過去を抱えている。彼が「人斬り抜刀斎」になった動機は「幕末の動乱に苦しむ人々を放っておけない」という、自身の力で少しでも早く動乱を終結させたいという理由だった。奇兵隊の入隊試験の際、長州藩の指導者・桂小五郎にその剣才を見込まれ幕府要人の暗殺を請け負う「影の人斬り」となる。抜刀斎として活動する中で自身の理想と人斬りの現実と言う矛盾で苦しむが、その中で出会った女性・雪代巴（ゆきしろともえ）と結婚し精神的に落ち着きを見せる。しかし、幸せな日々も束の間、抜刀斎を狙った敵勢力との戦闘中に彼女を喪ってしまい心に大きな傷を負う。その後、桂の計らいで「影の人斬り」を志々雄真実（ししおまこと）に譲り、剣心は佐幕派から維新志士を守るための「遊撃剣士」となる。遊撃剣士となってからは新撰組や猛者達と死闘を繰り広げており、その時の活躍から剣心のことを信頼する維新志士も数多く存在する。一方、巴との死別と人を殺めてきた罪悪感から「もう二度と人は殺めない」と誓いを立て、「鳥羽・伏見の戦い」で薩長の勝利を見届け志士から身を引き「流浪人」となる。多くの人を殺めた彼が太平の世をどう生き抜いていくのか、過去の罪と向き合っていくのかが本作のテーマとなっている。

剣心が流浪人となってから数十年が経った明治十一年、東京下町を訪れた剣心が神谷道場の師範代・神谷薫（かみやかおる）と出会うところから物語が始まる。帯刀しているという理由から薫に「人斬り抜刀斎」と見なされた剣心だが、得意の口八丁と刀が人を斬ることに適さない逆刃刀ということから見逃される。一方、偽抜刀斎騒動を気にかけた剣心は彼女の身内に真犯人がいると突き止めこれを撃退。同時に自身の正体が「人斬り抜刀斎」と露呈してしまうが「人斬りではなく流浪人のあなたに居てほしい」という薫の優しさに触れ東京に留まることを決意。東京でも困っている人々を助けながら、元士族の少年・明神弥彦（みょうじんやひこ）、背中に「惡」一文字を背負う喧嘩屋・相楽左之助（さがらさのすけ）、故郷を失った女医・高荷恵（たかにめぐみ）と仲間が増えていく。
しかし、「黒笠」という異名を持つ暗殺者・鵜堂刃衛（うどうじんえ）、徳川幕府隠密集団御庭番衆頭領・四乃森蒼紫、新撰組三番隊組長・斎藤一（さいとうはじめ）といった強敵と闘っていく内に「人斬り抜刀斎」に立ち戻り始める。

その強さとは裏腹に剣心は「自身は人を殺めた罪人」という罪の意識を強く感じており、一人でなんでも背負い込もうと仲間を置き去りにしたり、命を賭してでも奥義を得ようとするなど自身の命を軽く見ている節がある。剣心のその自己犠牲的な姿勢は師匠・比古清十郎（ひこせいじゅうろう）も危険視しており、様々な形でその姿勢を改めるように諭し、命がけの奥義伝授を行うことで彼の中の「生きようとする意志」を目覚めさせている。その甲斐もあり、京都編では迫りくる「死」に必死に抗おうとしたり、京都から東京へ帰ってからは積極的に弥彦の修行に付き合ったりと、今までのどこか一線引いているような様子は無くなった。

しかし「人斬りの罪を償う答え」は見出せておらず、人誅編の剣心への復讐行為や巴の弟・雪代縁（ゆきしろえにし）との再会で剣心の精神は消耗。さらに、縁が薫を殺害（実際は偽物）したことが決定打となり精神が崩壊し廃人同然の状態になってしまう。それでも「誰かの助けになりたい」という気持ちは捨てきれず、剣心に助けを求める少女の声に応じ復活を果たす。それと同時に「人斬りの罪を償う答え」は「剣と心を賭してこの闘いの人生を完遂すること」だと答えを見出し、答えを得た剣心は再び縁と対決し勝利、薫を救出する。

緋村剣心の必殺技

使用した武器

逆刃刀（さかばとう）

緋村剣心が所有する日本刀。その名のとおり、通常の刀とは刃と峰が逆向きに打たれた特殊な構造のため、普通に使用すれば常に峰打ちの状態となり殺傷力を持たない。幕末期に「人斬り抜刀斎」として多くの人間を殺めた悔恨から、二度と人を殺めないという彼の「不殺（ころさず）」の信念を体現した一刀。
刀の外側が峰となった構造から、普通の刀よりも鞘から抜く際の滑りが悪く、抜刀術には適さないと言及されているが、剣心は飛天御剣流の達人であり抜刀術が避けられた際の対処法も心得ているため、このデメリットを全く感じさせない強烈な抜刀術を繰り出す。
また、峰打ちではあっても、攻撃力は非常に高く彼の剣技を受けた者の多くは気絶しており、その威力が絶大であることが窺える。剣心は「人間以外のものは容赦なく斬り捨てる」と語っており、相手の武器や街灯の柱を逆側の刀で斬っている。刀を納める鞘も鉄製の頑丈なもので、相手の攻撃に対する咄嗟の防御や鞘で打撃攻撃に使うことも可能。作中で逆刃刀が折れた際には、新しい刀が見つかるまでの間、鞘で敵と応戦していた。
刀の製作者は幕末の刀工・新井赤空で、剣心が倒幕派を抜けて剣を持たずに流浪の旅に出ようとする彼に対し「剣を捨てることで人斬りであったことを忘れるな」という戒めと別れの餞別として授けた一振り。
それ以降、剣心の愛刀として長年振るわれてきたが、志々雄一派との初戦、新月村での瀬田宗次郎との戦いで長曽祢虎徹と刃を交え、真っ二つに折られてしまう。折られた後は残った刀身を鞘に納めて使用していたが、残った刀身も飛竜閃により打ち出され、その後この刀自体がどうなったのかは描写されていない。

逆刃刀・真打（さかばとう・しんうち）

刀工・新井赤空最後の一振り。この刀の行方は、息子である新井青空のみが知っており、白山神社に御神刀として奉納されていた。初登場時は、鞘も柄も白木拵えとなっており、新月村の戦いで逆刃刀・影打を失った剣心の新たな刀としてその手に渡っている。刀身の茎には、これまで殺人剣を作り続けた赤空の平和を願う辞世の句が刻まれていた。赤空は、御神刀として打った逆刃刀を影打と真打の両方を作っており、剣心が倒幕派を抜ける際に授けた一振りが影打だった。その際剣心に、刀が折れた際にまた自分を訪ねるように伝えていたことから、影打が折れてもなお「不殺」を貫こうとするのであれば、真打を授けようと思っていたことが窺える。
御神刀として最上の出来である真打ゆえに影打とは比較にならない強度を誇り、瀬田宗次郎との再戦では彼の愛刀・菊一文字則宗との衝突にも打ち勝っている。また、逆側の刃の斬れ味は相当なもので、「人誅編」では鯨波兵庫が右腕に装備しているアームストロング砲を容易く両断した。
飛天御剣流では「師匠・比古清十郎の命と引き換えに奥義を習得する」という習わしが存在するが、剣心が奥義を習得する際には、この刀の目釘が緩んでおり、そのおかげで力が僅かに刀身に吸収され十三代・比古清十郎は死を免れた。比古清十郎はこの刀を「持ち主の意図を汲みとってくれる良い刀」だと評している。

飛天御剣流（ひてんみつるぎりゅう）

戦国時代に発祥した古流剣術。作中に登場する使い手は主人公・緋村剣心と彼の師匠である十三代・比古清十郎の二人のみ。飛天御剣流は、剣の速さ、身のこなしの速さ、相手の動きの先を読む速さという3つの速さを最大限に生かし、最小の動きで複数の相手を一瞬で仕留めることを極意とし、一対多数の戦いを得意とする実戦本位の殺人剣である。剣術の名の「飛天」が示す通り、その使い手は天空を飛翔するかのごとき跳躍力を持ち、相手の遥か上空から斬撃を放つこともできる。その体捌きや斬撃の速さは「神速」と称されている。飛天御剣流の抜刀術は、全て隙の生じない二段構え（双龍閃で言えば鞘での攻撃）になっていると比古清十郎は語る。飛天御剣流の剣技は主に龍の動きを模しており、技名も「〇龍閃」「龍〇閃」と名に龍の文字が入ったものが多い。

時代の苦難から弱き人々を守ることを流派の理（ことわり）としており、継承者はその理に従って剣を振るってきた。また、この剣術の使い手は「陸の黒船（おかのくろふね）」と例えられるほどの絶大な力を持つ存在であり、その力を利用されるのを防ぐため、いかなる派閥や組織、権力にも属さない「自由の剣」であるべきだとされている。しかし、幕末の動乱期、当時14歳だった剣心は動乱に苦しむ人々を助けたい使命感と血気に逸るあまり、この道理を理解できずに比古と喧嘩別れし長州派維新志士「人斬り抜刀斎」として明治政府に加担した。結果、幕府と維新志士の戦いは、維新側の勝利で終結するが、後にこれが志々雄のクーデターや雪代縁の人誅事件の遠因となり、剣心も大勢の人間を殺めた罪悪感に苛まれ続けることになる。
飛天御剣流継承者は代々、開祖「比古清十郎」の名を襲名し、それと共に継承者の力を抑えるため重さ十貫（37.5Kg）の肩当と筋肉を逆さに反らせるバネが仕込まれた白外套が受け継がれてきた。また、代々の継承の際には、その最終奥義を弟子に会得させえるために師自らの命を犠牲にするという習わしが存在する。そして、奥義を会得した弟子は「比古清十郎」の名と白外套を受け継ぎ、同じく次なる弟子にその技と理を継承させていく。
例外として、剣心の師匠である十三代・比古清十郎は奥義伝承の際に剣心の刀の特異性により技の威力が弱まり、偶然的に生存する。奥義伝授後、比古は剣心に「比古清十郎」の名と白外套を継承させようとするが、「飛天御剣流の理」のみを引き継ぎたい剣心は十四代・比古清十郎の襲名を辞退。

また、飛天御剣流はその超人的な技の数々から体への負担が大きく、十三代・比古清十郎のような恵まれた体躯と鍛え抜かれた筋肉があって初めて完全に使いこなせるものであり、剣心のようにそれらを持ち合わせないものが使用し続けると、徐々に肉体に損傷が蓄積されやがて剣を振るうことができなくなっていくと後に判明。特に奥義「天翔龍閃」の負担は大きく、数多の死闘において奥義を使い続けた剣心の肉体の損傷は加速度的に速まり、30代前半の若さで飛天御剣流のほとんどを使うことが不可能となる。

龍槌閃（りゅうついせん）

空高く飛び上がり、落下重力を利用した威力の高い斬撃で一気に相手を斬り裂く技。剣心の十八番。作中では第一幕から使用しているが、技名が判明するのは喧嘩屋・相楽左之助戦から。奥義会得後はほとんど使われない。また、派生技として上空から刀の切っ先を相手に突き刺す「龍槌閃・惨」がある。

龍槌閃・惨（りゅうついせん・ざん）

龍槌閃の派生技。上空から刀の切っ先を相手に突き刺す技で、作中で使用したのは一度だけ。主に頭部へ刀を突き刺す技で、殺傷力が極めて高い。
人斬りの時、相手を瞬殺する大技の一つ。逆刃刀でも殺人技となるため、「不殺」を誓って以降の剣心は使用していない。

龍翔閃（りゅうしょうせん）

峰を右手で支え、下から飛び上がりつつ、刀の腹で斬り上げる技。本来は刃を立てて斬り上げる技だが、「不殺」を誓った後の剣心は斬り上げる代わりに、相手の顎を打ち上げる、鞘の先端で鳩尾を突き上げるなどの使い方をしている。また、逆刃刀のため刃の部分である峰側を手で支えられないことから、刀の側面部分を使用する。志々雄の手下・尖角との戦いでも使用するが、剣心の戦いを見ていた志々雄は本来の技の使い方を看破しており、志々雄との決戦の際には技を見切られ反撃されている。

龍槌翔閃（りゅうついしょうせん）