ウチの娘は、彼氏が出来ない!!（ウチカレ）のネタバレ解説・考察まとめ

『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』の概要

『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』とは、2021年1月13日から同年3月17日まで、日本テレビ系の「水曜ドラマ」枠で放送された連続ドラマ作品である。略称は「ウチカレ」。シングルマザーで売れっ子恋愛小説家の水無瀬碧（みなせ あおい）を演じた菅野美穂と、一度は恋をしてみたいオタク女子・水無瀬空（みなせ そら）を演じた浜辺美波は本作で初共演を果たした。主題歌を務めたのは、これまでも数々のドラマ主題歌を担当してきた家入レオ。

脚本は、連続テレビ小説『半分、青い。』、ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』などを手掛けた北川悦吏子（きたがわ えりこ）が務め、演出はドラマ『東京タラレバ娘』『過保護のカホコ』などを手掛けた南雲聖一（なぐも せいいち）と、ドラマ『あなたの番です』『恋です！〜ヤンキー君と白杖ガール〜』などを手掛けた内田秀美（うちだ ひでみ）が務めた。

「恋愛小説の女王」と呼ばれるほどの売れっ子恋愛小説家だった碧の、初のミステリー小説が連載打ち切りになるところから物語は始まる。その後、新たに碧の担当編集者となった橘漱石（たちばな そうせき）から恋愛小説を発注されるのだが、もう何年も恋愛などしていない碧は頭を悩ませた。また、オタ活一筋で彼氏が出来たことのない娘の空のことも心配で悩みが尽きない碧。しかし偶然にも2人は同じイケメン整体師の渉周一（わたる しゅういち）を好きになってしまい一波乱。さらに、空のイケメン同級生・入野光（いりの ひかる）の登場や漱石の碧への恋心発覚、碧と幼馴染のゴンちゃんも碧への想いを自覚するなど母娘の恋は大波乱。さらには空が碧の本当の子供ではなかったことまで発覚し、母娘の絆に亀裂が入っていく。碧にとっては久しぶりの、空にとっては初めての恋というものを通して自分の本心を見つけ、真っ直ぐにぶつかり合いながら親子の絆を深めていく2人の姿は多くの視聴者に笑いと感動を与えた。

本作は笑いあり涙ありのラブコメ作品であるため、碧や空に想いを寄せる男性陣の仕草やセリフが刺さった人と刺さらなかった人で毎話面白い議論が繰り広げられ、SNSを大いに賑わせた。また、男性陣だけでなく碧と空のラブラブ母娘シーンも大反響を呼び、「こんな母娘関係、理想すぎる！」と羨む声が多く寄せられた。

恋に恋することも時には必要ではあるが、恋愛においても人生においても、自分が本当に愛する人は誰なのか、自分を本当に愛してくれている人は誰なのかをきちんと知っておくことが幸せへの近道なのだろう。自分の足で自分の道を歩き、自分の幸せは自分で選ぼう、と思わせてくれる作品だ。

『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』のあらすじ・ストーリー

母と娘が恋のライバルに

「恋愛小説の女王」と呼ばれるほどの売れっ子小説家だった水無瀬碧（みなせ あおい）。しかし最近はスランプ状態で、散英社の文芸誌『ラファエロ』にて連載していた初のミステリー小説も打ち切られてしまう。そんな時に、碧とは旧知の仲である『ラファエロ』の編集長・小西（こにし）が、碧の新しい担当編集者・橘漱石（たちばな そうせき）を連れてきて「恋愛小説を書いてくれるならまた『ラファエロ』での連載を考える」と提案してきたのだ。それを知った碧の娘・水無瀬空（みなせ そら）は、「私が恋愛するからそれをネタにしろ！」と碧に告げた。オタ活一筋で恋とは無縁だった空が恋愛する気になってくれたことが碧は何よりも嬉しかったが、オタクがヒロインとなると若い子が読むライトノベルになってしまうため、結局は自分が恋をするしかないと悟った。悩みすぎて凝り固まった体をほぐすべくいつもの整体院に向かった碧だったが、そこで新しい院長先生・渉周一（わたる しゅういち）と出会い恋に落ちる。さらに渉は碧の大ファンだと言ってくれて舞い上がる碧。しかし渉は、数日前に道端で派手に転んだ空を助けてくれた人であり、その時に空が恋に落ちた相手だったのだ。そうとも知らず「40代の女性が整体師に恋する小説を書く」と漱石に宣言する碧だったが、渉が25歳だと知り、短い短い恋に終止符を打ったのだった。母が自分と同じ人を好きになっていたことなど知りもしない空は、後日行きつけのカフェで渉と偶然再会しおしゃべりを楽しんでいた。そこにたまたま通りかかった碧は2人の姿を目撃し、娘と同じ相手を好きになっていたことに驚いたものの全力で応援することを決めた。

空に訪れる恋の予感

立青学院大学に通う碧は、授業中に落書きをしていたことが教授にバレてしまい怒られたのだが、その絵を見た陽キャのイケメン同級生・入野光（いりの ひかる）に何故か絡まれるようになっていた。あまりにも入野がしつこいため一度話を聞くことにした空は、そこで初めて入野が隠れオタクだということを知る。入野は陽キャでいたいからこのことは内緒にしておいてほしいと言い、さらには自分が考えたストーリーを見せてきて「一緒に漫画を描かないか？一緒にジャンプのテッペンを取ろう！」と空を誘ってきたのだ。しかし空は、「恋愛で忙しいから」と入野の誘いを断った。実は以前のカフェでの会話の流れから、渉とデートすることになっていた空。碧と一緒に当日の服装や男を落とすテクニックなどデートの計画を練りに練って挑んだデート当日。渉の鼻毛が出ているのを見つけてしまい、空はすっかり気持ちが冷めてしまった。何とも言えない気持ちをぶつけるかのように、入野が考えたストーリーに沿って漫画を描き出す空。それを入野に見せるととんでもなく喜んでくれ、空自身も描くことが楽しかったため入野と一緒に漫画を描くことに決めた。その矢先、碧の幼馴染・ゴンちゃんこと小田欣次（おだ ごんじ）が店主を務める老舗鯛焼屋「おだや」で、デートの日の渉の鼻毛は付け鼻毛で、わざと付けていたことを知ってしまった空。なんと渉は、小学生の頃に結婚の約束をした女の子のことが今も忘れられず、空が自分のことを好きになってしまったら困ると思い、わざと嫌われるように鼻毛を付けていったというのだ。渉の謝罪を聞いた空は悲しくもあったが諦めきれず、店を後にしてしまった渉を追いかけた。「おだや」で一緒に渉の話を聞いていた入野も空を追いかけると、渉に追いついた空が「もう一度、今度は鼻毛なしで本当のデートをしてほしい」と伝えているところだった。それを見た入野は自分がすごくモヤモヤしていることに気がつき、空のことが好きなのだと自覚した。しかし、フラれて今の関係が壊れてしまうことが怖くて気持ちに蓋をする事に決めたのだった。

碧に訪れる恋の予感

一方で碧は、過去作『私を忘れないでくれ』の映画化が決まり喜んでいたのだが、主演を務める俳優が原作小説の設定を大幅に変更し、タイトルの変更まで要求してきたことで頭を抱えていた。しかし漱石が俳優を説得してくれたおかげで、ちゃんと碧の原作通りに映画化されることに。その報告をしに碧の家に来た漱石は、「ありがとう」と碧に言われ、そのあまりの真っ直ぐさに思わず本音を溢してしまう。実は漱石は碧の大ファンで、碧の担当編集者になりたくて散英社に入社していたのだ。それを知った碧は胸を打たれ、2人は感情のままにキスをしようとしていた。しかしそこで空が帰宅したためキスは未遂で終わったが、碧は漱石に謝られ、そこから距離を取られてしまう。後日、漱石と話す機会があり、碧はまたもや感情のままにキスしようとしてしまったのだが、漱石に「3ヶ月経ってもお互いが同じ気持ちでいられたらその時は一緒になりましょう」と言われてしまう。それから自分の漱石への気持ちに悩みながら過ごしていた碧だったが、そんな時にゴンちゃんのお見合い話を耳にして、今度は何故かそっちにモヤモヤし出してしまう。

本当の親子ではなかった碧と空

ジャンプの新人賞受賞を目指して漫画を描き続けていた空と入野。キャラクターの血液型を何にしようかと考えている時に、たまたま碧と空の血液型の話になった。碧はO型で、空はAB型。しかし、父親が何型であれ、O型の母からAB型の娘は生まれない。空も入野もそれに気がつき、空は血液検査を受けることにした。結果はやはりAB型で、「調べなきゃよかった」と泣きつく空を、「俺がいるから。何があっても俺がいることを忘れるな。」と入野はひたすらに慰め続けた。家に帰りたくなかった空は入野と漫画喫茶で一晩過ごし、翌日、碧に「どういうことだ」と問い詰めた。その時、碧は「スランプに陥って、鬱みたいになって、死のうと思って樹海に行ったら赤ちゃんの声がした。それが空だった。気がつけば抱き上げていて、そしたらあったかくて自分も泣けてきて、この子と生きていこうと思った。」と話したのだが、後日、空のへその緒が見つかったことで碧の嘘が発覚。怒った空は事情を知っているであろうゴンちゃんや入野も家に呼び、再び碧を問い詰めた。そしてようやく空は真実を知ったのだ。碧は、お芝居をしていたある男性と恋に落ちたのだが、彼は1週間で姿を消してしまった。碧は心配になって彼の家に行くと、身重の女性が出てきたそうだ。それが空の生みの母・星野鈴（ほしの すず）だった。鈴は持病があるにも関わらず命懸けで出産しようとしており、碧は「同じクズ男に酷い目にあった運命共同体だから」と鈴に何かあったら自分が空を育てると約束し、鈴の入院する病院に通い続けた。そして鈴は空を出産し、しばらくして息を引き取った。碧は約束通り、今日まで空を育ててきたのだ。真実を知った空は、「あまりにも勝手だ！」と鈴に対しての怒りを露わにしたが、命懸けで空を産んだ鈴を1番近くで見ていた碧はその言葉が許せず、思わず空を叩いてしまった。冷静になり落ち込む碧を見ていた漱石は、ゴンちゃんを呼ぶことを提案した。今、碧がそばにいてほしいのは自分ではなくゴンちゃんだと思ったからだ。碧は、空とも漱石とも気まずくなってしまった。

空の実の父が登場

碧と喧嘩してからは「おだや」にいた空。実は空は、鈴に対して怒っていたのではなく、自分が碧の娘ではなかったことがショックだったのだ。樹海で拾ったのでも何でもいいから、ただただ碧の娘がよかったのだ。そんな空の本音を聞いていた空の友人・サリーこと伊藤沙織（いとう さおり）は、気を利かせてその空の本音を碧にこっそりと教えてあげた。それがきっかけで碧と空はきちんと話し合い、血の繋がりなど関係なく、元通りの母娘へと戻ることができた。しかしそうなると今度は父親・一ノ瀬風雅（いちのせ ふうが）のことが許せなくなってきた空。旅先で偶然風雅と出会っていた渉から風雅の居場所を教えてもらい、碧と一緒に会いに行くことに。そしていざ会いに行くと、碧のことは覚えていないと言う風雅。「空のことは鈴さんの妊娠を知る前に姿を消しているから知らなくて当然だし、仕方ない」と碧は思った。そして空は「鉄拳の一発でも喰らわせてやる！」と意気込んでいたのが嘘のように、風雅と意気投合してしまった。そんな空の様子を見て、空を取られてしまうのではないかと不安になった碧。その予感が的中したのか、翌日、目を覚ますと空は「風雅と旅に出る」と書き置きを残していなくなってしまったのだ。

それぞれが選んだ未来

空がいなくなってから4日、碧は何も食べられないほど落ち込んでいたのだが、何でもなかったような顔で空が帰ってきた。碧は大喜びしたのも束の間、風雅が本当は碧のことを覚えていて、さらに空のことも鈴からの手紙で知っていたという事実を本人から聞かされた。そして「一緒に沖縄でやり直さないか？」と言われてしまい、碧は大混乱。さらには、散英社のNY支社に転勤が決まった漱石からも「一緒にNYへ行きませんか？」と言われてしまい、頭を抱えながらも空前のモテ期到来に舞い上がる碧。そんな碧を他所に、風雅は「おだや」を訪れていた。そこで碧のことを軽視するような発言を繰り返し、そんな風雅にゴンちゃんは激怒して「碧も空もお前のせいでどれだけ傷ついたか！碧と空は俺のもんだ！」と何発も殴ってしまう。ゴンちゃんはずっと、自分も知らないうちに碧を想っていたのだ。そして実は、風雅がゴンちゃんに喧嘩を売ったのはわざとだった。「かあちゃんとゴンちゃんがくっついてくれたら1番嬉しい」と空が言っていたからだ。わざとゴンちゃんを焚きつけて、2人がくっつくように一芝居打ってくれていたのだった。全てを知った碧はようやく自分の中にゴンちゃんへの気持ちがあることに気がついたが、それでもやはり碧が選びたいのは空だった。空の成長をもう少しそばで見守っていたいというのが碧の1番の願いだった。そうして碧は漱石とのNY行きも風雅との沖縄行きも断り、ゴンちゃんとも持ちつ持たれつの変わらない関係を続けることにした。一方で空は、どんな時もそばにいて支えてくれた入野への気持ちに自分でも薄々気づいており、渉に別れを告げた。そして入野と空は漫画を完成させ、見事ジャンプの努力賞を受賞。2人は今までよりもほんの少し近くなった心で喜び合い、未来への一歩を踏み出した。そして碧と空も、今まで以上に繋がり合った心で、今まで通りの2人の日常をこれからも過ごしていくのだった。

『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』の登場人物・キャラクター

水無瀬家

水無瀬碧（みなせ あおい / 演：菅野美穂）

「恋愛小説の女王」と呼ばれるほどの売れっ子恋愛小説家であり、シングルマザー。44歳。よく笑う陽キャで、思ったことはすぐに口にしてしまう賑やかな女性。自分が生まれ育ったすずらん町のすぐ近くにタワマンを購入し、そこで娘の水無瀬空（みなせ そら）と2人で暮らしている。最近は初のミステリー小説にも挑戦してみたものの、上手くいかず迷走中。オタ活に一筋で一向に彼氏が出来ない空のことも心配で悩みが尽きない。

水無瀬空（みなせ そら / 演：浜辺美波）

碧の娘。20歳の大学生。筋金入りのアニメ・漫画オタクで、クールで愛想のない自他共に認める陰キャ。しかし心は優しく、天然で暴走しがちな母を「自分が守らなければ」と思っている。