勇者特急マイトガイン(Might Gaine)のネタバレ解説・考察まとめ

『勇者特急マイトガイン』とは、1993年に放送されたサンライズによるロボットアニメ。「少年と意思を持つロボットが悪に立ち向かう」様を描いた『勇者シリーズ』の第4作目の作品である。1970年代の特撮ヒーローをイメージした、娯楽に徹した明るく痛快な作風で知られる。「オモチャの販売に合わせて突如新型ロボが登場する」といったメタフィクション的な手法が多く用いられたことでも有名。
旋風寺コンツェルンの総帥・旋風寺舞人は、自ら作り上げた勇者特急隊を率い、ヌーベルトキオシティに蠢く悪党たちに立ち向かう。

ウォルフガング

CV:佐藤正治

ヌーベルトキオシティで暗躍する天才科学者。悪党ではあるが「自分の研究成果を世間に知らしめたい」という想いが強いらしく、ブラックノワールという共通の敵を見つけて以降は舞人やジョーをサポートするように立ち回った。旋風寺コンツェルンの工場長・大阪次郎(おおさか じろう)とは旧友であるかのようにも描かれたが、詳細は濁されたままとなった。
名前の由来は、狼の英語表記(ウルフ)とオモチャ(玩具)から。

ショーグン・ミフネ

CV:梁田清之

常に日本風の鎧兜と刀を身に着け、歌舞伎風の隈取を施したアメリカ人。「古き良き日本文化を取り戻す」ことを目的に、様々なテロ行為に手を染める。作中で唯一舞人との直接対決で敗れて逮捕された順レギュラー悪役である。
名前の由来は、黒沢作品での名演で有名な三船敏郎。

ホイ・コウ・ロウ

CV:島香裕

アジアンマフィアのドン。東洋でも特に発展したヌーベルトキオシティを我が物とするべく様々な悪事を進め、その邪魔をする勇者特急隊と敵対。AIのデータを含めた完全なコピーロボットを開発するなど、悪辣な作戦で舞人たちを苦しめた。
最終的にブラックノワールに組織を乗っ取られ、裏社会での居場所を完全に喪失。ヌーベルトキオシティで堅気として生きていく道を選ぶ。名前の由来は、中華料理の「回鍋肉」(ホイコーロー)から。

カトリーヌ・ビトン

CV:叶木翔子(アニメ版)、渕崎ゆり子(ゲーム版)

国際窃盗団「ピンクキャット」のボス。美と宝石を愛する女傑。他の組織が程度の差はあれ「打倒勇者特急隊」に力を注いでいくのに反して、「宝石や美術品を盗む」という目的を比較的見失わず、この結果ブラックノワールに目を付けられることがなかったこともあって作中で唯一組織の命脈を保った。

ブラックノワール

エグゼブ

CV:菅原正志

謎の犯罪組織ブラックノワールの表向きの長。舞人の両親とジョーの父の命を奪った張本人であり、強大無比な大敵として二人の前に立ち塞がる。
かつてはケン・エノモトという名の若手政治家として活躍していたが、ブラックノワールに誘拐され、洗脳を受けたことで現在の冷酷な人格となった。

ブラックノワール/三次元人(さんじげんじん)

CV:水原リン(現・真山亜子)

自らの名を冠した組織「ブラックノワール」の真のボス。自ら語ったところによると、その正体は「三次元人」であり、『勇者特急マイトガイン』の世界の全ては「自分が作り出した二次元世界」に過ぎないと語る。
その言葉に違わぬ恐るべき力で舞人たちを追い詰めるが、最後の力を振り絞った彼らの反撃によって滅ぼされる。その際、「自分もまた“正義に倒される巨大な悪”という名の、三次元人の駒に過ぎなかった」と気づいて苦笑めいたものを浮かべていた。

『勇者特急マイトガイン』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

ウォルフガング「機械が己の存在に疑問を抱くようになったら、それはもう人間と変わらんのじゃないか?」

自立型人造人間のユリウスは、殺し屋として名を馳せる一方で、「自分は機械なのか、機械なのだとしたらどうしてここまで人間に近い姿と心を持って生み出されたのか」との苦悩を長年抱えていた。舞人打倒のためにユリウスと手を組んだウォルフガングは、彼がこのような悩みを抱えていることを知ると、「機械が己の存在に疑問を抱くようになったら、それはもう人間と変わらんのじゃないか?」と何気なく語り、期せずして彼に1つの答えを提示する。
悪役として登場するウォルフガングだが、一方で「自己顕示欲を満たす手段として悪事を選んだだけ」、「独善的なものではあるが科学者としての良心を持ち、これに抵触することには強く反発する」という独特の立場にあり、物語の中盤以降は「自分をむりやり従わせ、旧友たる宍戸博士の仇を討つ」ために舞人たちに影ながら協力するようになる。ユリウスにかけたこのセリフは、SF作品でたびたび取り上げられる哲学的な問いかけに対する回答にして、ウォルフガングの秘められた善性や後の活躍をうかがわせるものともなっている。

エグゼブ「だから…ドリルは取れと言ったのだ…」

最終決戦にて、舞人とジョーの前に立ち塞がったエグゼブは、圧倒的なパワーを持つ自身のロボットで彼らを追い詰める。最早手段を選べる状況ではないと考えたジョーは、死を覚悟してエグゼブの機体に特攻。その機首についた大型ドリルで敵機を貫き、壮絶な死闘に決着をつける。
「だから…ドリルは取れと言ったのだ…」とは、その決着の際にエグゼブが発した言葉。実はこの時ジョーが乗っていた機体は、ウォルフガングがエグゼブの命令で作らされたものであり、その設計図を見たエグゼブは「ドリルは私の趣味ではないから外せ」と命じていた。ブラックノワールにむりやり従わされることに辟易としていたウォルフガングは、これに反発してドリルをそのままに機体を作り上げ、「自身の最高傑作」としてジョーに託したのだ。本作のストーリーを見続けた者にだけ理解できる、長い長いフラグが結実した瞬間である。

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