君たちはどう生きるか(ジブリ映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『君たちはどう生きるか』とは、義母を救うために不可思議な世界を旅する少年の姿を描いた、宮崎駿によるアニメ映画。宮崎が「これで本当に最後」と明言して制作した作品で、宣伝も無く、公式HPも無く、一切情報を隠したまま公開されるという独特の手法で話題となった。
太平洋戦争が激化する最中、牧眞人は父と共に郊外へ引っ越し、そこで叔母で新たに自身の義母となるナツコと再会。どう接すればいいのか互いに戸惑う中、ナツコはいずこかへと姿を消し、眞人は彼女を連れ戻すために謎のアオサギに導かれて異界へと旅立っていく。

異界に持ち込まれた生物たちはそれぞれが独自の進化を繰り返し、もはやこの世界だけでは収まらないほどに数を増やしていた。異界の神である眞人の母の大叔父に世界の拡大か別の世界への進出を要求しようと考えたインコ大王は、眞人が塔の最上階に向かっていくのを見て「神と何か重要な話をしようとしている」と直感。「王らしく前に進んでいったと皆に伝えろ、必ず生きて帰れ」と部下に告げ、自身は死を覚悟して眞人の後を追う。
物語の中では悪役として登場するインコたちだが、彼らには彼らなりの理屈や道理が存在する。インコ大王の言動はまさにそれを感じさせてくれる高潔なもので、思わず敬礼して見送った部下のインコたちの気持ちがよく分かる。

ヒミ「眞人を産めるなんて幸せじゃない?」

異界が崩壊していく中、ヒミは眞人と別れて自分が本来いるべき時代の扉を通ろうとする。彼女の運命を知る眞人は、思わず「その先に行けばあなたは死んでしまう」と伝えるも、ヒミは笑顔で彼を抱き締めて「眞人さんを産めるなんて幸せじゃない?」と口にする。
母の強さと女性のしなやかな心の美しさを両方感じさせてくれる名セリフだ。

アオサギ「じゃあな、友達」

眞人をからかい、騙し、いつどこで死んでもおかしくない異界へと導いていったアオサギ。異界に来てからもしつこく眞人を狙い、「クチバシを射抜かれた仕返し」として襲い掛かるなど、危険で狡猾な存在であることが繰り返し描かれている。
しかしキリコから「ナツコを取り返したいならアオサギと協力するべきだ」と助言された眞人は、気を許したわけではないがアオサギのクチバシの穴を塞いでやるなど親切に接するようになり、これを受けてアオサギの方も次第に態度を変えていく。インコたちとの戦いが始まる頃にはすっかり相棒の立ち位置となり、眞人が「彼は自分の友達だ」とはっきり言い切った際には目を丸くしつつもまったく反論しなかった。

物語の最後、現世への帰還を果たしたアオサギは、とんでもないことに巻き込まれたと不平を口にしつつ、「じゃあな、友達」と眞人に言い残して飛び去って行く。いつの間にか互いに相手を友達だと思っていた2人の関係は非常にユニークで、突拍子もなくて、しかしどこか「友達ってそんなものだよな」と納得できてしまう。
アオサギが眞人とは別の形で多くを学び成長していった証でもある、彼のキャラクター性をガラリと変える名セリフ。

『君たちはどう生きるか』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

「アオサギのモチーフには手塚治虫も含まれている」説

物語序盤では眞人を異界に誘う存在として、中盤以降は共に旅をする相棒として、抜群の存在感を発揮するアオサギ。彼の特徴的な赤く大きな鼻は、手塚治虫の描く作品にたびたび登場する極端に鼻の大きいキャラクター、もっといえば手塚本人がモチーフに含まれているのではないかという説がある。
宮崎と手塚の関係は複雑なものがある。若い頃漫画家を目指していた宮崎は、「どうしても手塚の作品の影響から逃れられない」と挫折し、そこからアニメ監督に転向。苦労の末に今の評価を手に入れる一方、手塚がアニメにも手を出し、赤字覚悟の格安で仕事を受けまくった結果2000年代以降も続くアニメ業界の深刻な安月給につながったことについては酷評している。

しかし手塚の作品自体を悪く言ったことはほとんどなく、クリエイターとしては「偉大な先人」として高く評価している。人生最後と言い切った作品で、そんな愛憎半ばする手塚をモチーフにしたキャラクターから、自分の分身でもある眞人に向けて「友達」との言葉を口にさせたことは、宮崎の捜索活動の中でも1つの大きな節目だったのでないかというのだ。
公式からなんらかのコメントがあるわけではなく、真偽は不明。しかし多くの謎が明かされないまま終わった本作は、考察の格好の材料となっており、熱心なファンが議論を交わしている。

「大叔父が集めた13個の積み木は、宮崎駿の作品数を表している」説

世界的アニメ監督宮崎駿が、「人生最後」と明言して世に送り出した本作には、いくつもの暗示的な内容が込められている。中でも指摘の声が多いのが、「大叔父が世界を巡って集めた“より良い世界を作り出すための13個の積み木”とは、宮崎駿監督作品のことを表しているのではないか」というものだ。
TVアニメ『未来少年コナン』から始まり、本作『君たちはどう生きるか』までを数えていくと、宮崎駿は全部で13作品を世に送り出した計算になる。宮崎は作中の大叔父と自身を重ね合わせ、「自分が今までに作った作品を見てきた者は、それをどのように受け止めているのか」を問おうとした。物語の中では、眞人は「それは自分が受け取るべきものではない」として悲劇と絶望に満ちた現世に戻っていくが、それは「宮崎駿の作品を神格化して持て囃すのではなく、後進のアニメ監督や今を生きる若者たちには自分の手で新しい世界を切り開いてほしい」あるいは「自分自身もそうありたい、残る力でさらなる新しいものを作りたい」という意志表示ではないかというのだ。

公式からコメントが出されたわけではないので真偽は定かではないが、明かされない設定や謎の多い本作を考察する熱心なファンの間では、この説について盛んに議論が交わされている。

『君たちはどう生きるか』の主題歌・挿入歌

主題歌:米津玄師『地球儀』

YAMAKUZIRA
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