鯉登平二（ゴールデンカムイ）の徹底解説・考察まとめ

鯉登平二の概要

鯉登平二（こいと へいじ）とは、『週刊ヤングジャンプ』にて連載されていた野田サトル原作の漫画・アニメ作品『ゴールデンカムイ』に登場する人物。大日本帝国海軍の少将・大湊要港部司令官にして陸軍第七師団歩兵27聯隊に所属している鯉登音之進（こいと おとのしん）少尉の父親でもある。日清戦争にも参戦した。
薩摩出身で、日焼けした浅黒い肌の持ち主。上背は低いが、年齢の割に軍人らしく鍛えられた屈強な肉体を持つ。

『ゴールデンカムイ』は、国すら興せるほどの額になるというアイヌの隠し金塊を巡る、様々な組織の熾烈な争奪戦を描いた物語である。隠し金塊の在処を唯一知るとされる網走監獄の囚人「のっぺら坊」は、その在処を記した暗号を囚人仲間に刺青の形で施した。やがてこの囚人たちはいっせいに脱獄して北海道中に散らばり、彼らの「刺青人皮」ことアイヌの隠し金塊の在処を示す刺青を巡って、様々な組織が熾烈な争奪戦を繰り広げる。陸軍第七師団を率いる鶴見篤四郎（つるみ とくしろう）中尉もまた隠し金塊を求める人物の1人で、それを軍資金にして北海道を独立させて軍事国家を樹立し、大国の侵略から日本を守ることを目的としていた。

平二は、陸軍の情報将校である鶴見篤四郎中尉に、音之進が函館で誘拐された際に救出してもらった恩がある。
親友・花沢幸次郎（はなざわ こうじろう）中将が責任を負って自刃したことについて、中央（日本政府・陸軍省・海軍省の総称）に対して不信感を抱いており、上記の恩もあって、中央と意思を別にする鶴見中尉に協力する。

鯉登平二のプロフィール・人物像

氏名：鯉登平二（こいと へいじ）
誕生日：10月6日
年齢：不明
出身：鹿児島
階級：大日本帝国海軍 少将 大湊要港部司令官
性格：海軍将校として厳格で責任感が強く、息子を思いやる一面もある
CV：大川透

鯉登音之進少尉の父親で、大日本帝国海軍の少将。作中での時間経過では、事実上の左遷を経て階級の昇進のなかった鶴見中尉とちがい、7年の間に中佐から少将へ昇進。日清戦争にも参戦。作中でも作戦実行中は歴戦の軍人らしく判断の迷いのなさを見せ、駆逐艦の指揮をとる。
また、自身が海軍少将という重い立場をよく理解しており、次男・音之進が函館の海防無力化を目論むロシア人に誘拐されたときは、国のために愛する息子へ犠牲になるよう説得を申し出たこともある。
正義感が強く、花沢幸次郎中将が日露戦争の旅順攻囲戦の責任をとって自刃した時には、その責任を第七師団のものとした中央に対して不信感を募らせた。

ほとんどのセリフを薩摩弁で話し、挨拶がわりに「もすッ」と登場するコメディリリーフ的な扱いを受ける。鶴見中尉と登別温泉に入浴している際など、階級だけで言えば自身が上官であるにも関わらず、親しげで気安い態度を受け入れていた。
普段は、明るく親しみのもてる好々爺の様な態度だが、長男・平之丞を日清戦争で亡くしたときには、6年もの間笑顔を見せなくなるほど落ち込んでおり、次男・音之進の町民に対する横柄な態度を諌めることもなかった。

鯉登平二の能力・装備

三輪車 ド・ディオン ブートン

故郷の鹿児島・函館の自宅で所有していた。息子の音之進も運転した。
作中では、函館駐在時に誘拐された音之進を救出するために鶴見中尉を後ろに乗せ高速運転走行を披露している。音之進救出の際、馬車鉄道に衝突し大破した。
フランスの知人にもらったとのことで、史実でもこの自動三輪車はフランスにかつて存在したド・ディオン・ブートン社から生産されていた。
エンジンを搭載した自動車の先駆けとして生産されたもの。トヨタ博物館に現存する機体の資料によると、排気量は240cc、重量120kg、定員は二人である。三輪車とあるが、今の軽車両ではなく乗用車の仲間である。

雷型駆逐艦

第七師団が網走監獄を襲撃した際に艦長として援護のため、この駆逐艦の指揮をとった。
主に一番艦「雷（いかづち）」に乗り込み、その他に「電（いなずま）」「曙（あけぼの）」「朧（おぼろ）」の3隻を引き連れて登場する。
この駆逐艦は吃水（船体が沈む深さ）が1.5mしかなく網走川を容易に航行できる。急襲時は網走監獄の典獄・犬童四郎助（いぬどう しろすけ）の裏をかき、網走川から遡上して砲撃で網走監獄の塀を吹き飛ばし、照明弾を撃ち上げ第七師団を援護した。
音之進を樺太先遣隊として送迎するにも使用された。樺太編の始まりと終わりを象徴するキー・アイテムである。
史実では、大日本帝国海軍が初めて運用した駆逐艦であり、日露戦争でも活躍している。上記の4隻の他「漣（さざなみ）」と「霓（にじ）」が実在したが作中では登場しない。

鯉登平二の来歴・活躍

日清戦争で長男を失う

作品舞台の13年前にあたる1894年（明治27年）9月17日、日清戦争の黄海海戦に長男・平之丞とともに参戦した。
平之丞は防護巡洋艦「松島」へ乗艦するも、清国からの砲弾をうけ「松島」は大破、平之丞含む57名が戦死した。平之丞が乗艦した松島の上でどのように死んだかは明かされていないが、音之進の海域学校の同級生の話では、蒸し焼きにされた者や甲板に飛び散った者もいたという。平二はこれを別の艦からじっと見届けることしか出来なかった。
史実でも「松島」は、旗艦として 黄海海戦に参加し、清国戦艦「鎮遠」の砲弾が命中して大破している。この艦での死傷者数は100人を数えた。

期待をかけていた優秀な長男をこの戦争で失った平二はひどく落ち込み、6年たってもなお、次男・音之進の不出来さや横柄な態度を叱るどころか、家族に笑顔を見せることすらなくなった。

息子・音之進の誘拐事件

物語の開始5年前、函館駐在時に16歳の音之進が誘拐され、乗っていたはずの三輪車がロシア領事館敷地内に放置されているのが見つかる。
明らかにロシア人の関与が疑われるが、海軍にロシア語の通訳はいなかったため、急遽、陸軍にいたロシア語の堪能な鶴見中尉の協力を仰ぐ。

犯人からの接触をさそうため、ロシア領事館に赴くと頃合を見たように建物内の電話がなる。周囲が監視されているとして、鶴見の指示を受け、一度撤退した。
電話番号で発信元の場所を特定し突撃する準備を整え、再度領事館に侵入、誘拐犯からの電話をとると、要求は「函館の要塞と駆逐艦を破壊し基地を無力化しろ」とのことだった。
息子の命と海防の要を天秤にかけ、迷いなく一度は息子へ死を受け入れるよう伝えようとする。人質の安否確認のため電話口へ息子を出すよう要求し、「私は助けない。国のために…」と言いかけたところ、電話越しに音之進から「出来のよい兄のようになれずすみません、生まれてこなかったものと思ってください」という劣等感をにじませた言葉と父の立場に理解ある思いを聞くこととなる。
息子の思いを聞いた平二は、「やはり息子を見捨ててはおけない」と思い直し、ロシア領事館に放置されていた三輪車に飛び乗る。馬が進まないことに頭を抱える鶴見の横を颯爽と駆け抜け、函館の街を爆走。追いかけてきた鶴見を後ろに同乗させ音之進のいる五稜郭・陸軍訓練所へ駆けつけた。
二人は途中で馬車鉄道に衝突・負傷する場面もあったが、怯む事なく疾走。平二は鶴見中尉の指示に従い派手に表から登場することで誘拐犯の注意をひき、息子のピンチを救った。
鶴見との戦闘により誘拐犯とされるロシア人は死亡した。

この恩があり、音之進は陸軍へ入隊。平二も鶴見中尉による協力要請に応じるようになる。

しかし、これらの事件は鶴見による、鯉登親子を自身の勢力へ引き入れるための策略で、実際に誘拐に関与したのは鶴見の部下である菊田杢太郎（きくた もくたろう）・尾形百之助（おがた ひゃくのすけ）・月島基（つきしま はじめ）の三名。誘拐を演じている間、三名は顔全体を覆う大きな布を装着し正体がわからないように行動していた。また、死亡したロシア人は小樽で強盗殺人をして捕まっていたが拘置所から消えた人物だった。

網走監獄襲撃

アイヌを殺害することで金塊を奪い逃亡したとされるのっぺら坊は、金塊を隠したまま捉えられ、網走監獄に収監されていた。のっぺら坊は囚人らに金塊のありかのヒントを刺青として施す。
のっぺら坊によって刺青を入れられ脱走した囚人達の中には、公には戊辰戦争で死亡したことになっていた幕末の侍・土方歳三（ひじかた としぞう）もいた。
土方歳三は、アイヌの金塊を元手に蝦夷共和国を再建するという目標のため、金塊の謎を解くべく幾人の囚人らと手を組み結集。
それとは別に北海道で砂金採りをしていた退役軍人・杉元佐一（すぎもと さいち）は、アイヌの金塊のうちからいくらかの分け前を貰い亡き親友・寅次の嫁の目の手術を受けさせることを目的に単独で金塊争奪戦に参戦。
同じ頃に彼と偶然出会ったアイヌの少女アシリパも、「のっぺら坊が金塊を奪った際に殺された」とされる父ウイルクの仇を取るため、彼と手を組む形で金塊争奪戦に参加。しかしその中で「のっぺら坊の正体はウイルクである」という情報を入手し、「のっぺら坊は本当は何者なのか」、「のっぺら坊＝ウイルクならばその目的は何なのか」を突き止めるため網走監獄の中にいる彼と接触する方法を求めていく。

金塊争奪戦のさなか、土方とアシリパの目的が相反するものではないことを双方が確認したこともあり、ウイルクの旧友のアイヌ・キロランケと、鶴見中尉から離反していた第七師団の上等兵・尾形百之助（おがた ひゃくのすけ）を交え、一時的に両勢力は結託し行動をともにすることになる。
この時の金塊争奪戦の勢力図は、のっぺら坊の奪還を目論む杉元・土方勢と、鶴見率いる第七師団、それらを相手するのが犬童四郎助（いぬどう しろすけ）典獄率いる網走監獄となっていた。
犬童四郎助は、網走監獄の典獄（監獄長）であり、彼もまたアイヌの金塊を手に入れるため、のっぺら坊が脱走しないよう足の腱を切らせ、囚人たちに刺青を入れるのを黙認し、囚人脱走後は秘密裏にのっぺら坊の替え玉を用意した。また襲撃に備え武器を購入するために、囚人たちを硫黄山で働かせるなど不当に扱い資金を得ていた。

金塊のありかを知るのっぺら坊と囚人たちに彫られた刺青を解く鍵を知るとされるアシリパを確保することを目的に鶴見中尉率いる第七師団が網走監獄へ乗り込んだ際、平二率いる海軍も4隻の雷型駆逐艦を指揮して援護した。
本来なら鶴見率いる第七師団の網走監獄急襲とは無関係のため、海軍所有の駆逐艦を使用することはできない。海軍が蝗害収束のため大湊要港部から道東沿岸部へ来ていたところ、網走監獄で暴動がありその鎮圧のため、という筋書きで駆けつけたことになっている。

海軍は、第七師団の侵入を阻むため正門の橋を爆破し落とした犬童典獄の裏をかき、雷型駆逐艦で網走川を遡上、川沿いに面した監獄裏側の塀を砲撃で破壊した。また、その後は新月の夜闇を、照明弾を撃ち上げることで第七師団を援護した。
第七師団は「杉元・土方勢からアシリパ、網走監獄勢からのっぺら坊を強奪し、監獄に居合わせた全ての目撃者の皆殺し」を目論んでいたが、最終的に密かに結託していたキロランケと尾形が杉元・土方勢力を裏切ったことにより、のっぺら坊は死亡しアシリパは奪われ、本来の目的は不達成となった
また、犬童典獄は土方と対峙し対決の果てに死亡、網走監獄の看守たちのほとんども第七師団により殲滅され、第七師団による急襲が明るみになることはなかった。

この網走監獄急襲により、のっぺら坊の正体はアシリパの父ウイルクであることが明らかとなった。

雷型駆逐艦VS樺太連絡船

キロランケ・尾形百之助一行からアシリパを奪還した先遣隊が、樺太から北海道へ帰還する際に迎えとして駆逐艦で来航。
しかし、アシリパと鶴見中尉との間で関係が決裂し、隙を突いて逃走を図り、アシリパ・杉元一行は樺太連絡船に乗船。
アシリパを奪い返すため、これを駆逐艦で威嚇するも、連絡船の行く手を阻んでいた流氷を砲撃で割ってしまい、距離をとられた。
自艦周囲を取り巻き行く手を塞ぐ流氷を、再び砲撃で割断するも、アシリパ・杉元一行が連絡船を降りて流氷を渡る時間を作り、自軍から逃亡することを許してしまった。

五稜郭攻囲戦での最期

金塊争奪戦の最終局面で、鶴見中尉率いる第七師団を援護するため、戦艦を引き連れて函館湾に登場し、海側で存在感を見せつけ他の勢力を威嚇。
アイヌの土地の権利書の存在を知ると、五稜郭の出入り口を砲撃し、杉元・土方勢の五稜郭からの逃亡を牽制した。
艦砲からの援護射撃で、五稜郭内で戦っていた音之進の窮地を救う。しかし、函館山に隠されていた遺品・回転丸の主砲を発掘した土方側につくパルチザンの砲撃手・マンスールの砲撃を受ける。この砲撃が直撃したことで、「雷」は沈没することになった。
他の船員は沈没する戦艦にから逃れるため避難艇にのりこむも、平二はひとり艦長として残った。
死ぬ時まで音之進を想い、恐れ慌てふためくことなく、薩摩隼人らしい勇ましい姿で戦艦とともに海に沈んでいった。

鯉登平二の関連人物・キャラクター

鯉登音之進（こいと おとのしん）