キングダム2 遥かなる大地へ(実写映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『キングダム2 遥かなる大地へ』とは、古代中国で“天下の大将軍”となることを目指す少年の活躍を描いた、原泰久の同盟漫画作品の実写映画シリーズ第2弾である。公開翌年となる2023年には、同シリーズ第3弾となる『キングダム3』の公開が決定している。
500年もの間戦乱の中にある古代中国。魏国の軍勢の侵攻を受けた秦国は、これを迎撃するための軍を編成する。ひょんなことから秦国王宮内の人々と知り合った奴隷の少年信は、天下の大将軍になるという夢を叶えるためここに参戦。本物の戦場の中で剣を振るう。

魏の将軍。同国でも将としてはトップクラスの実力の持ち主で、知略と軍略を用いた正統派の戦術を得手とする。かつては小国の王族だったが、秦によって祖国を滅ぼされ、その復讐のために魏の軍人となった。
隙の無い戦術によって秦軍を追い詰めるも、王騎が放ったたった一手で身動きが取れなくなり、麃公率いる主力部隊の突撃を受ける。このままでは泥沼の消耗戦になり、しかも勝ち目は薄いと判断し、麃公が申し込んだ一騎打ちに応じるも、そのまま彼に敗北して討ち取られた。

宮元(きゅうげん/演:高橋努)

魏の将。呉慶から別動隊体を任され、蛇甘平原の2つの丘の内の1つを占拠。戦況を優位に進めていく。呉慶から信頼されるだけあって将としてのタイプが似ているのか、堅実な用兵で付け入る隙を与えず、秦軍を苦しめた。
しかしあまりにも基本に忠実な指揮が仇となり、本陣が手薄となったところに信たち生き残った秦の歩兵隊の突撃、さらにこれを好機と見た縛虎申の猛攻を受ける。本陣に突入するも満身創痍で力尽きる縛虎申を嘲笑し、これに自らトドメを刺すも、最後の力を振り絞った彼の反撃により命を落とす。

『キングダム2 遥かなる大地へ』の用語

秦(しん)

春秋戦国時代の中国に存在していた国の名前。主人公である信の属する国であり、後に史上初の中国統一国家となる。

魏(ぎ)

春秋戦国時代の中国に存在していた国の名前。周囲を秦を含む敵対する国に囲まれているため戦が絶えず、兵も将も戦上手であることで知られている。

蛇甘平原(だかんへいげん)

物語の主な舞台となる平原。ほぼ平坦な地形だが2つの丘があり、ここが攻防の要となる常陽地点となっている。

伍(ご)

秦の軍における歩兵の部隊の最小単位。5人1組で構成され、その長たる伍長の指示で行動する。
作中では特に紹介されていないが、当時の中国の軍では一般的な概念で、魏や他の国でもこの制度が採用されていたと思われる。

戦車(せんしゃ)

洋の東西を問わず、この時代の戦場で広く用いられた、武装化した馬車のこと。
天蓋などは外しており、馬による突進力と馬上からの兵士による攻撃で敵の歩兵を蹂躙する。金属の装甲で車体を覆い、大砲を備えた“現代の戦車”とはまったく異なるものである。

蚩尤(しゆう)

中国の神話に登場する伝説の悪鬼。作中においては、同じ名前を冠する伝説的な暗殺者一族のこと。「1人で1国を滅ぼした」とまで称され、恐れられている。
蚩尤の戦士となれるのは基本的に女性のみで、特殊な暗示と呼吸により人間の限界を超えた戦闘能力を発揮する。蚩尤の戦士の候補者たちは孤児から選別され、山奥から一歩も出ることなく修行の日々を送り、最後には同期の候補者と殺し合って生き残った者だけが戦士として世に出ることを許される。

羌瘣は修行仲間でもあった羌象という少女を慕い、「自分は死んでもいいから彼女にこそ生き残ってほしい」と考えていた。これは羌象の側も同じだったらしく、候補者同士の殺し合いの当日に特殊な薬で彼女を眠らせ、自分だけで戦いに赴いている。
しかしこの時の候補者の中でも群を抜いた実力者だった羌象は、最後の試練の場に集まった全員から集中攻撃されて命を落とす。これは蚩尤の掟に反する行いであり、そうまでして敬愛する姉を殺して蚩尤の戦士となった者を許せなかった羌瘣は、羌象の仇を討つための旅に出ることとなった。

『キングダム2 遥かなる大地へ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

信と羌瘣の交流

魏の兵士たちの追撃をからくも切り抜けた信と羌瘣。敵の気配が去るまで洞窟に身を潜める中、信は彼女からその身の上について話を聞く。「姉の仇を討ちたい。それさえ終われば生きている理由も無いから、死んで姉の下に行く」と平然と語る羌瘣に、信は「そんなことでお前の姉が喜ぶと思っているのか」と指摘する。
かつて漂を失い、その仇を討つことに躍起になっていた信だからこそ羌瘣は理解できたし、同時に自分と彼女の違いにも思い至ることができた。羌瘣の姉が彼女を生かそうとしていたなら、そこには何かしらの意味がある。死んだ者に託された何かがあるなら、生きている者は簡単に生を諦めてはならない。自分が漂から託された「天下の大将軍になる」という夢に代わる何かを、羌瘣も姉から託されていたはずだ。信にそう諭された羌瘣は、姉が「この目で世界を見たい、心から思い切り笑ってみたい」と語っていたことを思い出す。

後に戦場における無二のパートナーとして共に成長していく信と羌瘣が、最初に打ち解けていく姿を描く名シーン。本作において信と羌瘣の関係は序盤から終盤までをふんだんに使って描かれており、この点に注目して作品を楽しむのもまた違った味わいが感じられる。
物語のラスト、姉の仇を探すために魏へと旅立つ羌瘣は、信から「必ず戻ってこい、お前の姉の夢を叶えてやれ」と再度諭され、それに否とも応とも言わないまま去っていくが、その顔にはぎこちないながらも笑顔が浮かんでいる。信との交流で羌瘣にも変化が生じていることをうかがわせる別れであり、微笑ましい余韻を感じさせる。

信vs戦車隊

魏軍戦車隊に囲まれ、絶体絶命の信。ここから始まる大逆転は、彼の蛇甘平原での戦いのクライマックスである。

物語終盤、敵軍に向かって突撃する麃公軍に追いついた信。そこに魏軍の戦車隊が現れ、その突進力で麃公の軍を攻撃。このままでは敵本陣に辿り着く前に麃公軍が消耗すると考えた信は、1日前には手も足も出ずに逃げ回るしかなかった魏軍戦車隊に敢然と立ち向かう。
序盤から終盤まで怒涛のアクションシーンが続く本作だが、この戦車隊との戦いは信の蛇甘平原での戦いのクライマックスである。戦車に組み付き、飛び乗り、振り落とされそうになりながらも食い下がって戦う信の姿は、主人公の面目躍如と言わんばかりの大活劇となっている。

果たして信は、どのようにして戦車隊を撃破するのか。手に汗握る迫力の攻防を刮目しながら見届けてほしい。

YAMAKUZIRA
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