アンブレイカブル(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『アンブレイカブル』とは、2000年製作のアメリカ映画。日本公開は2001年の6月。大ヒットとなった「シックス・センス」の次にM・ナイト・シャマランが手掛けた作品。脚本もシャマラン自身が担当した。凄惨な列車事故に遭いながら、ただ一人かすり傷ひとつ負わずに生き残った男が辿る数奇な運命を描く。主演は「シックス・センス」に続きブルース・ウィリス。共演はサミュエル・L・ジャクソン、ロビン・ライト・ペン。

ドラッグの売人(演:M・ナイト・シャマラン)

デヴィッド・ダンが警備員を勤めるスタジアムで、ドラッグを売買していた。本作の監督、M・ナイト・シャマランが演じている。

『アンブレイカブル』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

デヴィッドが、ヒーローとしての行動を始めるシーン

「ヒーロー」としての行動を始めることを決意したデヴィッドは、多くの人々が行きかう駅へと降り立つ

試行錯誤の末、イライジャから言われた「現実社会に於けるヒーロー」としての自分を自覚し、ヒーローとしての行動を始めることを決意したデヴィッド。デヴィッドは、イライジャから「人の集まるところへ行け。そして、救うのだ」と言われた通りに、多くの人々が行きかう駅へと向かう。そこですれ違う人々の意識を感じ取りながら、次第にデヴィッドは手を小さく広げ、積極的に人々の意識を探り始める。主人公であるデヴィッド・ダンが、物語終盤で遂にヒーローとして行動し始める、この映画のテーマを決定付ける象徴的シーンである。若い頃はアメフトのスター選手でありながらその道に進むのを諦め、今はしがない警備員となっている男が、人々を救うヒーローとなることを決意する瞬間。見ていて鳥肌の立つような名シーンになっている。

デヴィッドがイライジャから「衝撃の真実」を告げられるシーン

自分がヒーローであることを見い出してくれた男は、同時に多くの人々を犠牲にしてきた凶悪犯だと知り、デヴィッドはいたたまれない気持ちでイライジャの元を去る

ヒーローとしての行動を開始し、同時に妻と子の、家族との絆も取り戻したデヴィッド。デヴィッドは、自分がヒーローであることを見出してくれたイライジャに礼を言いにいくのだが、そこで衝撃の真実を知ることになる。脆く壊れ易い体を持った自分と正反対の「決して壊れない体」を持った人物を探し出すため、イライジャはデヴィッドが遭遇した列車事故を始め、数々の大惨事を引き起こしていたのだ。そのことに対し全く罪悪感を感じないばかりか、「自分はヒーローと対決する悪役なのだ、君がヒーローとなる運命だったように、私もそういう運命に生まれて来たのだ」と言いきるイライジャに、デヴィッドは絶望し、イライジャの元を去っていく。そのデヴィッドの後姿に、イライジャは勝ち誇ったように尚も言葉を続ける。「悪役には、相応しいあだ名が付きものだ。私はこう呼ばれていた。『ミスター・ガラス』と」自分をヒーローだと見出してくれた男、自分が今の生活に感じていた不安や悲しみといったものを払拭してくれて、家族との絆も取り戻すことをも成功させてくれた男。その男は、自分の目的を達成するために、多くの人々を犠牲にすることを厭わない凶悪な犯罪者だったのだ。自分の「すべきこと」を見つけ、全く新しい人生を、誇りに満ちた人生を歩み始めたと感じていたデヴィッドが受けた衝撃は、計り知れないものだった。シャマラン監督が造り上げた「ヒーロー誕生物語」の最後に用意したこの強烈な「オチ」は、映画を見る者にも衝撃を与える、印象深い名シーンとなっている。

「僕は何をすればいい?」「人のいるところへ行け。そして、救うのだ」

自分に人の悪意を感じ取るような特殊な能力があり、そして自分の体重の何倍もの重さのバーベルを持ち上げることの出来るような驚異的な身体能力を持っていることを自覚しながら、なかなかイライジャの主張を受け入れられずにいたデヴィッド。しかし、小さい頃プールで溺れたことは、「ヒーローに付きものの”唯一の弱点”だ」とイライジャから言われ、そして改めて自分が遭遇した列車事故の残骸を見て、自分が「決して壊れない体を持った男」だと再認識する。それはすなわち、自分はイライジャの言う通り、現代社会に於ける「ヒーロー」であるのだと。デヴィッドは、ヒーローについて最も詳しい男であるイライジャに電話をかけ、そして問う。「僕は、(これから、ヒーローとして)何をすればいい?」その言葉を聞き、遂にデヴィッドが自分の主張を認めてくれた、ヒーローとしての「自覚」を持ったのだと確信したイライジャは、デヴィッドに告げる。「人のいるところへ行け。そして、救うのだ。」このシンプルな電話でのやり取りが、まさに「ヒーロー誕生」を告げる瞬間であり、またヒーローとしての役割=「人々を救うこと」を単純明快に説明したイライジャの言葉も、強く印象に残る。本作が「ヒーロー誕生物語」であることを決定付ける、名シーンであり名セリフであると言える。

『アンブレイカブル』の用語

骨形成不全症

イライジャから自分の病気についての話を聞く、デヴィッドと息子のジョセフ

骨を形成・結合する主要成分であるコラーゲンの不足などにより、生まれつき骨が折れ易くなったり、変形したりする先天性の疾患。患者は2万人に1人の割合で発生するとされている。

ミスター・ガラス

デヴィッド・ダンに、デヴィッドがヒーローであることを告げるアメコミ収集家のイライジャ・プライスが、生まれつき患っていた骨形成不全症という病気により、近所の子供たちから付けられていたあだ名。イライジャは病気のため体の骨が折れ易いという症状を持っており、そのため「ガラスのように脆い体の持ち主だ」という意味で付けられたあだ名である。幼少の頃はその生まれつき持った疾患を恨み、あだ名についても忌み嫌っていたイライジャだったが、成人してアメコミに心酔するようになってから、それは自分に与えられた運命なのだと考えるようになる。自分と正反対の体である「決して壊れない体」を持った人物がこの世界のどこかにいて、それはきっとアメコミで描かれているヒーローであるはずだ。決して壊れない体を持った人物がヒーローであるなら、その正反対の体を持った自分は、ヒーローと対決する悪役=ヴィランであるに違いない。自分が産まれ持ったこの体は、ヒーローと対決する運命にあるヴィランとして存在するためのものである。そして、幼少の頃付けられたあだ名「ミスター・ガラス」こそ、悪役に相応しい「ニックネーム」なのだ。そう考えることが、辛く厳しい運命を背負って生きて来たイライジャのアイデンティティを支えていたのだった。それを実証するため、また、自分と正反対の体を持つ人物を探し当てるため、イライジャは故意に航空機事故や、ホテル火災、列車事故などの大惨事を引き起こすようになった。

アメリカン・コミックス

イライジャが外に出ることを怖がっていた幼少の頃に、母親からプレゼントされたアメリカン・コミック

アメリカで製作・出版される漫画の総称で、アメコミと略されることが多い。その内容に、スーパー・ヒーローものが多い事が特徴とされる。世界最初のスーパーヒーローと言われるスーパーマンを始め、バットマンやワンダーウーマンを生み出したDCコミックスと、スパイダーマンやキャプテン・アメリカなどのヒーローを生み出したマーベル・コミックがその代表格である。

『アンブレイカブル』の主題歌・挿入歌

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