デス・ウィッシュ（映画）のネタバレ解説・考察まとめ

『デス・ウィッシュ』の概要

『デス・ウィッシュ』とは、2018年公開となった、アメリカ合衆国で製作されたアクション、スリラー映画で、さらに、主人公が正当な司法の措置を取らず、私刑や復讐のために犯罪者に挑むというジャンルの自警団映画（別名：ヴィジランテ映画）でもある。監督はイーライ・ロス、主演はブルース・ウィリス、その他には、『ジュラシック・ワールド』のビンセント・ドノフリオ、『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』のエリザベス・シューらが出演。

本作はブライアン・ガーフィールドの小説『狼よさらば』を原作とし、1974年にマイケル・ウィナー監督、チャールズ・ブロンソン主演で公開された映画『狼よさらば』のリメイク版となっている。この作品は、シリーズ化されるほどの大ヒットを記録した。

映画製作費には約3千万ドルが費やされた。2018年3月アメリカ公開時には、全米2847館で公開され、公開日の週末には、アメリカ全土で1301万ドルを稼ぎ週末興行収入ランキング初登場3位となった。日本での興行収入は1億5100万円となった。

警察すら手に負えない無法地帯となったシカゴで外科医として病院に勤務するポール・カージー。郊外の家で妻と娘と一緒に幸せな日々を過ごしている。ある日、ポールの留守中に家族が強盗に襲われ、妻は死亡し、娘は頭を撃たれて昏睡状態になる。警察の捜査は一向に進まず、歯がゆい現状に我慢のならないポールは、自らの手で復讐することを誓い「シカゴの死神」となる。生まれて初めて銃を手にし、復讐のため強盗犯を探し街へと出る。街は犯罪に満ちていた。ポールは暴漢に襲われている女性を救うため路上で銃撃戦をしたり、病院に運び込まれた、銃弾を負った男の子を救うため麻薬の密売人を銃殺したりと夜間自警活動を始める。警察に進捗状況を聞きに行くが、未解決の事件が壁一面埋め尽くされている様子を見て、やはり警察に頼っていたのでは、いつまでたっても犯人は捕まらないだろうと悟る。そして、とうとう、妻殺害の強盗団を突き止めて、一人ずつ処刑を始めるのだった。ポールが「シカゴの死神」であることが弟のフランクにバレてしまい、やめるように説得されるがそう簡単にやめるわけにはいかないポール。
順調に復讐は進むが、強盗犯の最後の一人ノックスとの対決で仕留めることに失敗したポールだった。ポールは、返り討ちを予想し、すぐに正規銃取扱店で銃を購入する。その後、ポールの予想通りノックスは仲間を連れてポールの家へポールと娘ジョーダンを殺害するため押し入る。いち早くノックスとその仲間に気づいたポールは、娘を安全な場所に隠し、正規の手順で購入しておいた銃でノックス達を迎え撃ち全滅させる。やって来た警察は正当防衛であると判断し、ポールは銃を永久に手放すことを誓う。
『ダイハード』などのハリウッド映画を代表作とするアクションスター、ブルース・ウィリスが、YouTubeを見ながら銃の扱い方を勉強する外科医の役を演じる姿は、他作品で見られない斬新なものとして注目を集めた。
またただのアクション、スリラー映画ではなく、現在のアメリカ銃社会問題を浮き彫りにした内容にも注目すべき映画となっている。ロス監督は、正義を貫こうとした男が道を踏み外していく様や「善」と「悪」との境界線が少しずつずれていき、自分の行為を正当化していく主人公ポールの様を共感してほしいと言っているが、映画評論家の中には銃犯罪を促進するのではないかとの心配の声が上がっていた。

『デス・ウィッシュ』のあらすじ・ストーリー

シカゴ

シカゴは殺人事件が762件、銃を使った犯罪が3500件以上起こるほど政府のコントロールが不可能な街になっていた。
銃で撃たれた警察官が病院へ搬送され、別室で手術中のポール・カージーが看護婦に呼ばれた。
ポールは警察官の処置に向かったが、彼がメスを握るとすぐ心臓は止まり警察官は死亡してしまった。

ポールは郊外の邸宅で、妻のルーシーや娘のジョーダンと共に幸せに暮らしていた。
ある休日にポールとルーシーは、娘のジョーダンが所属するサッカーチームの試合を見に行った。試合の最中ポールは近くにいた男が、スラングだらけの応援や罵倒をしているのを不愉快に思った。我慢ができなくなったポールはその男に注意をした。注意を受けた男はポールを脅したが、彼は冷静に対処し事なきを得た。

試合が終わりポール一家は、ポールの弟のフランクとレストランで食事をした。ポールたちは治安の悪い街に住んでいたので、フランクはジョーダンに護身術を身につけるように話した。ジョーダンは既に週3回の護身術のトレーニングを受けていた。
ルーシーはこの場で苦労して博士号を取得し、ポールと同じ病院で医師として働くことを発表した。
弟のフランクは前科があるため仕事に就くことが難しく、ポールに金の無心をしていた。

食事を終えるとポールは駐車場係のミゲルに駐車券を渡し、車をレストランの出入り口までもって来てもらった。
ミゲルはレストランに来た金持ちを狙う強盗団の一味だった。ポールに狙いを付けたミゲルは、カーナビに登録してあった彼の自宅の住所を携帯電話で撮影した。その後何食わぬ顔でポールに車を引き渡し、彼の家の住所を仲間に送信した。

ポール家の悲劇

ポールの誕生日にディナーに出かけようとすると、彼の勤め先から連絡が入り急遽出勤することになってしまった。
ディナーが中止になったルーシーとジョーダンは、家でバースデーケーキを作ることにした。ルーシーがケーキを作っているとレシピ本がめくれた。辺りを見回すと窓が開いていて、床に靴跡と泥が残っていた。
異変を感じたルーシーはジョーダンを何度も呼んだが、電話をしていたジョーダンは気にしなかった。

ジョーダンは2階、ルーシーは1階で強盗に捕まってしまった。
金庫を開けるよう言われたルーシーは大人しく従った。ジョーダンは強盗が自分をレイプしようと揉め始めたので、隙をついて顔を切りつけ逃げ出そうとした。
顔を切られ覆面を外してしまった強盗は、素性を隠すためルーシーとジョーダンを銃で撃った。

病院で手術をしていたポールは、館内業務放送で緊急搬送された2人の女性のアナウンスを聞いた。嫌な予感がしたポールは、別のドクターに後処理を任せ処置室に向かった。運ばれた2人はルーシーとジョーダンだった。
同僚や警察の制止を振り切り処置室に入ったが、部屋には誰もいなかった。頭蓋骨骨折のジョーダンは手術室へ運ばれ、胸を撃たれたルーシーは息を引き取っていた。

無能な警察

この地区では9か月の間に6件の拳銃盗難の強盗が発生していた。ポールの事情聴取に同席していたフランクは、凶悪犯罪が住民に知らされていないことに怒りをあらわにした。しかし警察はこの凶悪犯罪が、日常茶飯事であるかのように言うのだった。
一方病院ではジョーダンの頭から銃弾の破片を取り除く手術が成功したが、彼女は昏睡状態で目を覚ます気配はなかった。

ルーシーの葬儀の日、彼女の父親もテキサスから参列した。義父の希望でルーシーの遺体は、テキサスに連れて帰ることになった。
義父とポールはテキサスへ向かっている途中で密猟者に遭遇した。義父は逃げる密猟者に発砲したが、取り逃がしてしまった。
義父は「警察は町を守ってくれない、警察は犯罪が起こってから駆けつける。大事な物を守りたいなら自分で行動するしかない」とポールに言った。

シカゴに戻ったポールは担当の警察官に、事件の進捗状況を電話で聞くが全く何も進んでいなかった。
ポールはカウンセリングに通うほど精神状態が深刻だった。眠ることも食べることもできない地獄のような毎日を送っていた。
何をしていてもルーシーの事が頭に浮かび、家族を守れなかった自分を責め続けていた。

警察に出向いたポールは担当の警察官に話を聞くが、犯人確保にはほど遠かった。警察は強盗団が窃盗を続け、ボロを出したときに捕まえる方針だった。
ポールは懸賞金を賭けることを提案したが、偽の情報が増えるだけだと却下された。また私立探偵を雇う提案もするが、浮気調査に向いていて殺人事件は解決できないと却下された。
「警察を信じることしかない」と言われ、ポールは警察に頼っていてはいつまで経っても犯人が捕まらないと悟ったのだった。

ポールの決断

ある晩街を歩いていると女性が2人の男に絡まれていた。助けようとしたが反対に犯罪者に殴り蹴られてしまった。ポールは自分を守るために、インターネットサイトで見た銃器取り扱所へ向かった。
初めて訪れた銃器店で、銃の所持の手続きがあまりにも簡単なことに驚いた。銃器店で銃を購入すると使用した時に足がつくことや、店の防犯カメラが気になってその日は何も買わず家に帰った。

ある日勤務中のポールの元に、銃で撃たれた患者が搬送された。患者のポケットから拳銃が床に落ちるのを見たポールは、素早くそれを隠し家に持ち帰った。
銃を使用したことのない彼は、使用方法や手入れの仕方をYouTubeを見ながら覚えていった。
それから昼は外科医、夜は銃を使う処刑人の二重生活が始まった。

ジョーダンはあまり容態が良くなく、ある晩発作を起こしたが一命はとりとめた。ポールは未だ逮捕されず、自由に生活している犯人に憤りを感じ拳銃を持って街に出た。
ちょうど犯罪現場に出くわし、襲われていたカップルを助けるため発砲した。
その一部始終を女性が近くのアパートからビデオで撮影していた。そうとは知らないポールは上着を脱いで、ゴミ箱に捨てて家に帰った。

警察は犯人を特定できなかったが、事件を撮影したビデオがネットに流され「ヒーロー」や「死神」と呼ばれもてはやされた。
フードを被っていたので正体がばれることはなく、ポールは今まで通りの生活を続けた。彼はSNSにアップされた自分の映像を見て、少し満足そうに微笑んだ。

ポールは自警団活動を続けた。銃で撃たれて運ばれてきた黒人の子供の話を聞き、アイスクリーム屋と称し、ドラックを捌いていた元締めを射殺した。
事件はニュースになり、フードを被った「死神」の仕業だと世間は思っていた。警察は「シカゴの死神」を捕まえるべく動き始めた。しかし多くの人は「死神」を称賛し、「死神」を見習い街の改善に努めたいと思う人まで出てきた。
いつものカウンセリングに行ったポールは、非常に健康状態も精神状態も良くなっていると診察された。

ある日ポールの勤務中に、瀕死の重症患者が運ばれてきた。その患者はレストランの駐車場係をしていたミゲルだった。
処置中にふと目をやると、ミゲルは見覚えのあるパネライの時計をしていた。それは強盗事件で盗まれたポールの時計だった。
ミゲルはそのまま死亡したが腑に落ちないポールは、自分の時計を取り戻しミゲルの私物を確認した。携帯電話のメッセージアプリを見ると、自分の家の住所が他の誰かに送信された履歴が残っていた。
担当の警察官に電話するが繋がらず、ポールは自分で何とかしようと考えた。
彼はミゲルの携帯電話の送信履歴を元に犯人のアジトへ向かった。

復讐

ポールはミゲルの携帯電話の履歴から、盗まれた時計と関わりのあるバーを探し当てた。このバーのトレボルに、自分はミゲルの使いで来たと伝えた。
トレボルはポールの服に病院のタグが付いているのに気づき、仲間のフィッシュに連絡をした。
ポールは銃を取り出そうとしたトレボルの手にダーツの矢を刺し、店の奥にある金庫へ案内させた。ポールの思った通りそこには、ルーシーのブレスレットなど家から盗まれた物があった。

仲間のフィッシュが到着したが、誤って味方のトレボルを撃ち殺してしまった。その後ポールとの銃撃戦の末フィッシュは死亡した。
その際残りの2人の強盗仲間のうち、ジョーという名の自動車修理工の情報を得ることができた。

自動車修理工場へ向かったポールは、着くや否や工具でジョーを殴り車の下に拘束した。そして拷問をし、もう1人の犯罪者の名前を聞き出した。もう1人がノックスと分かると「殺さないよな」と聞くジョーに、「俺は殺さない。重力だ」と答え車を落として殺害した。
「死神」の正体が分からず行き詰っていた警察は、「死神」が左利きであることや時期がルーシー殺害事件に重なることから、前科のあるフランクに疑惑の目を向けた。

「死神」を真似して一般人が悪を相手にしようとしたが、反対に撃ち殺される事件が起こった。ポールがジョーダンの病室でそのニュースを見ていると、ノックスから連絡が入った。今すぐ指定の場所に来れば、ルーシーの最後の言葉を教えてやると言われた。
同じころフランクがポールの家を訪れた。合鍵で家に入り地下に降りると、そこには「死神」に結び付けられる物が散乱していた。

ポールはノックスが指定したクラブに到着し、奥のトイレに行った。
ノックスの顔を知らないポールは、携帯電話で彼に電話をしてみた。するとトイレの個室で電話が鳴ったので、そこに向けて発砲した。ドアを開け中を確認したが、そこには誰もいなかった。
そこへノックスが後ろからやって来て銃で撃ってきた。
銃撃戦になったがノックスを仕留めることができず、ポールは肩を撃たれた。彼は病院までなんとか辿り着き自分で治療し家に帰った。
ポールの銃弾で負傷したノックスは、ポールの勤務する病院に担ぎ込まれた。そして警察に「死神」の目撃情報を提供した。

ポールが家に帰るとフランクが待ち構えていた。兄を心配し復讐を辞めるように説得するが、ポールは聞かなかった。
その話し合いの最中に、病院からジョーダンが目を覚ましたと連絡が入った。上手くいけば1週間で退院できるという嬉しい知らせだった。

退院の日車いすに乗ったジョーダンとエレベータに乗ると、ノックスが乗ってきた。ノックスはポールを知っていたが、ポールはノックスの顔をはっきり知らなかった。しかしこの人物がノックスだろうと感づいていた。
フランクにもう復讐はしないと約束していたポールだったが、危険を感じ銃器店で正規に銃を購入した。

その夜ポールの家の前で、ノックスと仲間が車から家の様子をうかがっていた。不審な車を見たポールは、ジョーダンを階段下の物置に隠した。
ジョーダンは警察に電話をして状況を伝えた。
家に入ってきたノックスたちは躊躇することなく銃撃戦を繰り広げた。ポールはノックス以外の強盗団を始末したが、ノックスだけが見つからなかった。家中を探していると背後から撃たれてしまった。しかし間一髪、隠し持っていたショットガンでノックスを撃ち殺すことができた。

全てが終わり警察がやって来て事情聴取された。ノックスを撃った銃は、銃器店で正規に購入したものだと主張した。それ以前の殺人については知らないと言い張った。
警察官は半信半疑だったが、ジョーダンの口封じに来たノックスを正当防衛で撃ったということになった。
ようやく平和が訪れた瞬間だった。

「死神」が消えたシカゴだったが、犯罪率は確実に減っていた。元気になったジョーダンは大学に行くために実家を出た。
街でひったくり犯に遭遇したポールは、手で銃の形を作り犯人に向けるのだった。

『デス・ウィッシュ』の登場人物・キャラクター

主人公

ポール・カージー （演：ブルース・ウィリス）

吹き替え：内田直哉
本作の主人公でシカゴの病院に勤める外科医。妻と娘の3人で郊外の邸宅にて幸せに暮らしている。曲がったことが嫌いで正義感にあふれる人物。妻と娘が強盗に襲われたことから、「自警」として夜街を巡回するようになる。昼間はメスを持つ優秀な外科医、夜は処刑人として銃を持ち成敗する「死神」と化す。

カージー家

フランク・カージー （演：ヴィンセント・ドノフリオ）

吹き替え：加藤清司
ポールの弟。カージー家とは頻繁に行き来している。刑務所上がりで職探しをしているが、苦労しいてる。時には兄ポールにお金を借りることもあったが、無事仕事を見つけて新たな人生を歩んでいく。「シカゴの死神」の捜査にあたっている刑事に左利きであること、元スポーツをしていたことから容疑者として目をつけられる。ひょんなことから兄ポールが「シカゴの死神」であることを知ってしまい、辞めるように説得する。

ルーシー・カージー（演：エリザベス・シュー）