キングスマンに隠された007シリーズへの愛憎

キングスマンとは

キングスマンとは2015年に劇場公開されたスパイ映画である。
原作はマーク・ミラーとデイヴ・ギボンズによる「キングスマン：ザ・シークレット・サービス」で、監督はマシュー・ヴォーンが務めている。
映画のタイトルにもなっている「キングスマン」とは、表向きは高級テーラー店の名前だが、裏の顔は世界最強のスパイ機関の名前である。
作中では難事件やテロを解決するキングスマンの活躍と、キングスマンにスカウトされた主人公エグジーの成長がユーモアを交えて描かれている。

007とは

007シリーズとは1962年から今に至るまで続いている大ヒットスパイ映画シリーズである。
シリーズを通して、"MI6"と呼ばれるイギリスの秘密情報部の工作員であるジェームズ・ボンドが、テロリストや悪の組織の企みを阻止するという活躍が描かれている。
007シリーズは"ボンドカー"と呼ばれる様々な機能が付いた車を駆使したり、びっくり仰天な秘密兵器が登場することが特徴である。
作品によって監督と俳優が変わり、作品の雰囲気が変わることが特徴的でもある。2006年に公開された「007／カジノ・ロワイヤル」ではボンド役がダニエル・クレイグへと変わり、シリーズの雰囲気もコメディアクションからシリアスなアクション映画へと移り変わった。

マシュー・ヴォーンとは

マシュー・ヴォーンはイギリス人の映画監督・プロデューサーである。
1998年に公開された「ロック、ストック＆トゥー・スモーキング・バレルズ」をはじめとして、ガイ・リッチー監督の作品をプロデュースしている。
2004年にはガイ・リッチーとコンビを組んでダニエル・クレイグが主演の「レイヤー・ケーキ」を製作するも、ガイ・リッチーが降板したためマシュー・ボーンが監督を務め、高評価を得た。その後も2010年の「キック・アス」や「X-MEN：ファースト・ジェネレーション」では監督を担当し大ヒットするなど活躍している。
彼はもともとダニエル・クレイグがジェームズ・ボンド役となった「007／カジノ・ロワイヤル」で監督を務める予定だった。
ダニエル・クレイグ演じるボンドがMI6にスカウトされ007になるまでのストーリーを企画したが、コンペで落選し監督を務めることができなかったのである。
その後、007と同じイギリス人のスパイを描いた「キングスマン」を製作したのだった。
そんなキングスマンには、監督を務めることができなかった007シリーズへの愛憎が隠されている。
この記事ではそれらのシーンに込められたメッセージを紐解いていく。

キングスマンで描かれた007のオマージュ

劇中には、数多くの007へのオマージュを含んだシーンが登場する。それらのオマージュは愛を感じるものもあれば、皮肉とも取れるものがある。
ここからはそのオマージュについて解説していく。

雪山での戦い

まず1つ目のオマージュシーンは冒頭で描かれる雪山のシーン。雪山でマーク・ハミル演じるジェームズ・アーノルド教授が敵組織に誘拐されてしまう。彼を助けるためにキングスマンの一員であるランスロットが助けに行くが、敵に一瞬で殺されてしまうのだった。
まず、この雪山という舞台が007のオマージュである。007シリーズにおいて雪山での戦いというものは定番でもある。
特に「女王陛下の007」が有名で、クリストファー・ノーラン監督の「インセプション」でもオマージュされているほどだ。

そしてこの舞台に登場するランスロットというキングスマンのメンバーも007のオマージュである。
ダンディなルックスにスーツ姿。そして手にしているのはサイレンサーの付いたピストルと007の雰囲気と一致する。
そんな彼が敵のキャラクターに一瞬にして殺されてしまうのだ。このキャラクターの扱いの雑さは、監督の007への憎しみを感じ取れる部分でもある。

登場する秘密兵器

007シリーズでは研究開発担当のQが開発した、派手で奇想天外な秘密兵器が多く登場するが、キングスマンでもそのような武器が多く登場する。その中には007シリーズの影響を濃く受けたものも多い。仕込み靴、仕込み時計、仕込みボールペンといったものが、キングスマンで登場している。