ブレイブ ストーリー(BRAVE STORY)のネタバレ解説・考察まとめ
ブレイブ ストーリー(BRAVE STORY)は宮部みゆきの小説を原作とするアニメ映画。残酷な運命を変えるために、行けば願いが叶うという異世界へ冒険の旅に出かける少年の物語。松たか子や大泉洋といった豪華なキャストが声優を務めた。2006年公開。興行収入は20億円。
CV:今井美樹
宝玉を全て集め、試練を乗り越えた者だけがその姿を見ることが出来る女神。「運命の塔」という天空まで届くような途方も無い高さの塔に住んでいる。彼女を信仰する人々もいる一方で邪神として敵視する宗教も存在している。どんな願いでも叶えることが出来るその力は強大で、幻界を埋め尽くさんばかりだった魔物達を一瞬で一掃した。
『ブレイブ ストーリー』の用語
幻界(ヴィジョン)
亘や美鶴が運命を変えるために冒険した異世界。ロールプレイングゲームのような魔法やモンスターが数多く存在する。人種も多様で、現実世界の人間のような種族もいるが動物のような見た目の種族も多い。いくつかの国家や宗教まであり、秩序立った世界としてしっかりと成立している。
現世(うつしよ)
現実世界のこと。本来は現世(げんせ)、つまりこの世を意味する言葉だが、作中では亘たちが暮らす普通の世界のことを表している。
旅人
現世から願いを叶えるために幻界へやってきた人間は旅人と呼ばれる。歓迎されることもあるが、種族または宗教によっては命を狙われるほど嫌悪されることもある。
宝玉
幻界を訪れた旅人が集めなければならないアイテム。全部で五つ存在し、それぞれに特殊な力が備わっている。与えられた武器にはめ込むことで旅人はその力を使えるようになる。同じ宝玉でも武器によって発揮される力は異なっていて、亘の勇者の剣の場合は剣先が自在に伸びたり、高速で回転したりした。
『ブレイブ ストーリー』の名シーン・名場面
「そういうお顔で思い出すのは、大切なお友達の証です。」
闇の宝玉を求めて雪の降る帝国にやってきた美鶴は、城で行われていた舞踏会で皇女をダンスに誘って接近し、宝玉の在り処を訊き出そうとする。
ゆったりとした優雅な音楽に合わせて二人は踊る。皇女は美鶴にどこから来たのかなどいくつか質問をする。「星と月の間、それじゃダメですか?」というように美鶴は目的がバレてしまわぬようはぐらかしながら答える。家族について訊かれると、少し悩んだあとで妹がいることを話した。既に死んでしまっているとは伝えない部分に、美鶴が妹の死を認めたくないと思っていることが窺える。
「お友達は?」と訊かれた美鶴は、少し嫌そうに「変な奴が一人。」と答える。すると皇女は嬉しそうに笑って「そういうお顔で思い出すのは、大切なお友達の証です。」と彼に言う。美鶴がどんな酷いことでもやってのける覚悟を決めている幻界の住人と平和な関わり合いをしている唯一の貴重なシーンであり、亘と美鶴の関係性が分かりやすく示されている名場面。
葛藤
美鶴が帝国を訪れていたちょうどその頃、亘は美鶴が幻界で非道な行為をしているという噂を聞いたことによって「願いを叶えるためならどんなことをしても構わないのか」ということについて考えていた。そこへミーナがやって来て、夜風は冷たいからと毛布をくれる。亘は旅人として運命の女神に何を願うのかとミーナは質問する。亘が自分の家族のことを話すと、ミーナも自らの境遇を打ち明ける。父親に会いたいばかりに亘を陥れてしまったことを反省していることも話し、そして「亘は偉い」と言う。もう一人の旅人のように悪いことをしない亘は偉いのだと。その言葉に亘は改めて美鶴のしていることはやはり良くないことだと確信する。だが同時にそうまでして美鶴が変えたいと願う運命とはどんなものなのか、少し恐ろしさを覚える。
善と悪についてというこの映画の主題を提示している重要なシーン。
美鶴の最期
最後の試練をクリアできなかった美鶴は「俺、どこで間違ったんだろう」「お前は勝ったんだ、もっと喜べよ」と亘の腕の中で息も絶え絶えに話す。しかし美鶴を残して行くことなど出来ないと食い下がる亘に彼は「いい加減にしろ!」と声を荒げる。それを聞いてハッとする亘。どうにもならないことというのはあるものなのだと亘は初めて気づく。
いよいよ命の尽きかけた美鶴は最後に妹の夢を見る。それは、あの痛ましい事件によって実現できなかった、事件当日の自分の誕生日を妹とともに祝う光景だった。帰ってきた美鶴を出迎えた妹が恥ずかしそうに兄へプレゼントを渡す。両親にも誕生日を祝う歌を歌われながら、ケーキの上のろうそくを美鶴は吹き消す。そんな幸福な幻を見ながら、美鶴は空へ消えていってしまうのだった。
『ブレイブ ストーリー』のエピソード・逸話
原作について
この映画の原作は作家・宮部みゆきによる1000ページ以上の上下巻にも亘る小説である。
そのため、二時間程度の映画としてまとめるために8パターンのプロットと17種類にも及ぶ脚本が用意された。
原作者の宮部みゆきは、自身の作品がアニメになると聞いてとても喜んだそう。映画の出来についても雑誌上で絶賛した。
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