ドクター・ストレンジ（MCU）のネタバレ解説・考察まとめ

『ドクター・ストレンジ』の概要

『ドクター・ストレンジ』とは、2016年11月4日に公開されたアメリカ合衆国のスーパーヒーロー映画。日本での公開は翌年2017年1月27日である。製作はマーベル・スタジオ、配給はウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ。原作はアメリカ合衆国のマーベル・コミックが刊行するアメリカンコミックで、同一の世界観を共有する「マーベル・シネマティック・ユニバース」シリーズとしては第14作品目にあたる。前作は『シビル・ウォー／キャプテン・アメリカ』、次作は 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』である。上映時間は115分、制作費は1億6500万ドル、世界興行収入は6億7700万ドル、日本での興行収入は 18.7億円。

監督はスコット・デリクソン。米ロサンゼルス近郊のバイオラ大学を卒業後、南カリフォルニア大学の映画学科に通う。初監督作品は『ヘルレイザー』シリーズ第5弾『ゲート・オブ・インフェルノ』。監督代表作品としては、キアヌ・リーブス主演の2008年の『地球が静止する日』や、イーサン・ホーク主演の2012年の 『フッテージ』などがある。
製作はマーベルスタジオの社長でありMCU（マーベル・シネマティック・ユニバース）のトップである、ケビン・ファイギが務めた。彼はマーベルコミックスへの深い知識を買われ、2000年の『X-MEN』の製作助手として抜擢された。以来、全てのマーベル作品に参加。『アイアンマン』の監督にジョン・ファブローを抜擢したことを始め、大胆な人事を行うことで有名である。
音楽はマイケル・ジアッチーノ。2007年の『レミーのおいしいレストラン』では第35回アニー賞音楽賞、2009年の 『カールじいさんの空飛ぶ家』ではアカデミー作曲賞を受賞している。MCUシリーズでは『スパイダーマン：ホームカミング』の音楽も担当した。

天才外科医であるドクター・ストレンジは、ある時大怪我によって医師としての人生を断たれてしまう。再び人々を救うため、厳しい修行の末に西洋の医療技術に代わる魔術を習得することに成功したストレンジだが、現実世界の支配を企む暗黒次元の王・ドルマムゥと闇の魔術師たちの襲撃をきっかけに、地球の運命がかかった魔術師同士の戦いに巻き込まれていく。

ドクター・ストレンジの本名はStephen Vincent Strange（スティーヴン・ヴィンセント・ストレンジ）。原作コミックでの初登場は1963年6月刊行の「Strange Tales #110」。アイアンマンのようなテクノロジー、あるいはハルクのような腕力に依存しない「魔術使い」という設定で、精神世界での修行やバトルが多い点が他のMCU作品と異なっている。

『ドクター・ストレンジ』のあらすじ・ストーリー

天才医師に訪れた悲劇

アメリカ・ニューヨークの病院に務める医師スティーブン・ストレンジは、卓越した技術と記憶力により周囲から天才外科医と呼ばれている。だが、その天才的気質から、本人は傲慢で尊大な性格であった。

ある夜、同僚であり元恋人の救急救命医パーマーと、外科医のニックに仕事を任せ、ひとりスポーツカーを運転していたストレンジは手術依頼の電話を受ける。失敗した場合キャリアに傷が付きそうな難解な手術であることを知ったストレンジは依頼を断ろうとするが、その直後運転を誤り車ごと崖に転落。割れたフロントガラスが直撃し、腕の神経が切断される大怪我を負う。

リハビリによって日常的な手の動きは回復するが、外科医としては致命的な指先のマヒが残り、様々な高額な治療法を試すが効果はなかった。ストレンジはパーマーに対し、八つ当たりから厳しい言葉を浴びせたことで彼女に立ち去られてしまう。

奇跡の噂を耳にするストレンジ

ストレンジは諦めず医師としての技術を取り戻す方法を探す中で、半身不随から奇跡的に回復した男の噂を耳にする。男の元を訪ねると彼の名はパングボーンと言い、かつてストレンジに手術を依頼し断られていた過去があった。パングボーンはストレンジに「カマー・タージを訪ねろ」という言葉を残した。その施設でパングボーンは体を治療し、回復を遂げたと言うのである。

残された財産全てをかけ、腕を治す最後の頼りとなったカマー・タージを目指しネパール・カトマンズに向かったストレンジ。だが、街中で暴漢に襲われてしまう。フードの男に助けられるが、以前パーマーから贈られ大切に身に着け続けていた腕時計は衝撃で壊れてしまっていた。

師匠との出会い

「カマー・タージに案内する」と話すフードの男について行き古ぼけたビルに入ると、お茶を手にしたスキンヘッドの女性が現れる。女性はエンシェント・ワンと言う名で、「至高の魔術師（ソーサラー・スプリーム）」と呼ばれるカマー・タージの指導者かつ最強の魔術師であった。パングボーンは魂の力によって自力で体を治したと話すエンシェント・ワンを初めは信じないストレンジだったが、エンシェント・ワンにアストラル（魂）と肉体を分離させられ、マルチバース（現実世界とは異なる次元）の世界を見せられることでようやく信じ、自ら志願してフードの男＝エンシェント・ワンの1番弟子のモルドと共にカマー・タージで修行をすることになった。

修行を始めたストレンジは、図書館で封印された本を見つける。習得したばかりの魔術と持ち前の知識を生かし本を盗み見ると、それは「カリオストロの書」と呼ばれる書物で、「アガモットの目」と呼ばれるレリック（魔力の秘められた道具）を使用し時間を操るという禁断の魔術が記されていた。図書館の守護者ウォンに「時間を操る魔術は自然の力に反する」と本の閲覧を阻まれるが、エンシェント・ワンのスパルタ教育によって力を伸ばすストレンジは元から備わる瞬間記憶能力を生かしてウォンの目を盗み、少しづつカリオストロの書を読み解き時間を操る魔術を習得していった。

闇の魔術師・カエシリウスの襲来

ストレンジは、ウォンから他次元からの侵略を防ぐゲート「サンクタム・サンクトラム」の存在を教えられる。ゲートはニューヨーク、香港、ロンドンの3か所に存在し、それぞれカマー・タージ出身の守護者が守っているという。その時、サンクタム・サンクトラムを通って闇の魔術師カエシリウスが来襲。はずみでストレンジの体はカマー・タージからロンドンのサンクタム・サンクトラムの外へ弾き飛ばされてしまう。カエシリウスはかつてはエンシェント・ワンの弟子であったが、最愛の人を亡くしたことで永遠の命を求め、現在は暗黒次元の王であるドルマムゥに仕えていた。カエシリウスと部下ルシアンは、ドルマムゥに地球を侵略させるため全てのゲートを破壊しようとしており、ロンドンのサンクタム・サンクトラムの守護者を殺害してその場にいたストレンジと、追ってきたモルドにも襲い掛かってきた。

カエシリウスに対し防戦一方になるストレンジだったが、戦闘中にサンクタム・サンクトラム内に封印されていた浮遊マントのガラスケースが破壊され、飛び出した浮遊マントがストレンジを主人と認め戦いに協力する。1度はカエシリウスを抑え込むことに成功するが、部下ルシアンの不意打ちで怪我を負わされたストレンジは、魔術を発動させる時に使用する指輪型のレリック「スリング・リング」を奪われてしまう。

マントの協力でリングを取り戻し、その力により空間を移動するゲートを開いてパーマーの勤務するニューヨークの病院へ向かうストレンジ。突然の出来事に驚くパーマーに、ストレンジは肉体からアストラル体を分離させ自らの手術を指導する。手術中、同じくアストラル体となって追ってきたルシアンとの戦闘になるが、パーマーがストレンジの肉体に与えた電気ショックがアストラル体にも影響し、発生した衝撃によりルシアンを倒すことに成功する。

師との別れ

手術によって体の傷は回復したが、ルシアンを殺したことにショックを受けるストレンジを、エンシェント・ワンがニューヨークのサンクタム・サンクトラムの新たな守護者に任命する。医師としての技術を取り戻すために魔術を身に着けただけで、戦いには巻き込まれたくないと断るストレンジだが、カエシリウス達がニューヨークのサンクタム・サンクトラムを襲撃し戦闘になる。

カエシリウスをミラー次元内に閉じ込めようとするエンシェント・ワンだが暗黒次元の力には効かず、現実世界が破壊されていく。戦闘中にエンシェント・ワンの額に赤い印が浮かぶ姿を見たモルドは、エンシェント・ワンもまたカエシリウスと同じく暗黒次元から力を得ていたことに気づく。地面に叩きつけられたエンシェント・ワンは致命傷を負い、ストレンジは再び移動ゲートを開いてパーマーのいる病院に運ぶが、エンシェント・ワンは既にアストラル体となって消えかけていた。消滅する寸前に、エンシェント・ワンはカエシリウスと互角に戦うために暗黒次元の力を使っていたことをストレンジに告白。悪の力と戦うには時としてルールを破ることが必要であり、ストレンジに勇気を出すよう諭す。

エンシェント・ワンの命は救えなかったが、手術後にストレンジはパーマーに今までの出来事を謝罪。キスをして和解する。しかしその直後緊急手術の依頼が入り、パーマーはER（救急救命室）へ、ストレンジは残されたサンクタム・サンクトラムを護るため香港へ向かう。

地球を救う最後の戦い

ニューヨークとロンドンのサンクタム・サンクトラムが破壊され、ウォン、モルドと協力し香港でカエシリウス達を迎え撃つストレンジだが、カエシリウスの攻撃によりウォンが瓦礫の下に埋められ最後のサンクタム・サンクトラムも崩壊の危機に陥ってしまう。勝ち誇るカエシリウスに対してストレンジはアガモットの目を使用して時間を逆行させ、ウォンを助け出してカエシリウス達を瓦礫に閉じ込めることに成功する。

自ら暗黒次元に飛び込んだストレンジは、ドルマムゥと直接向かい合う。何度倒しても時間を逆行させ戻ってくるストレンジに業を煮やして望みを訪ねたドルマムゥに、ストレンジはカエシリウスの追放と地球を侵略しないよう依頼。ドルマムゥは願いを聞き入れ、カエシリウスを暗黒次元に消し去ってしまう。

地球は救われたが、ストレンジが禁断である時間の魔術を使用したこと、さらにエンシェント・ワンが暗黒次元の力を借りていたことを許せないモルドはカマー・タージから離脱してしまう。また、ウォンにより「アガモットの目」が宇宙を破壊するほどの力を秘めた「インフィニティ・ストーン」のひとつである「タイム・ストーン」から作られていることが知らされる。

ストレンジは、エンシェント・ワンの跡を継ぎソーサラー・スプリームになるべく新たなスタートを切った。その後アスガルドから父オーディンの行方を捜しに来た雷神・ソーに会い、捜索に協力することになる。

一方、パングボーンの元を訪れたモルドはパングボーンを殺害し魔力を奪い、姿を消してしまう。

『ドクター・ストレンジ』の登場人物・キャラクター

主要人物

スティーヴン・ストレンジ／ドクター・ストレンジ（演：ベネディクト・カンバーバッチ）

CV：三上哲
アメリカ・ニューヨークで名の知られた天才外科医。向上心と高い知性を持つが、プライドが高く傲慢で自己中心的な性格が欠点。同僚で救急救命医のパーマーという元恋人がいる。自動車事故がきっかけで両手に大怪我を負い、外科医としては致命的な手の細かいマヒが残ってしまう。全財産をつぎ込み様々な治療法を試すが効果はなく、かつて手術を断った半身不随の男を訪れた時に、彼を奇跡的に回復させたという施設「カマー・タージ」の話を聞きネパールへ向かう。

カマー・タージで指導者エンシェント・ワンと出会ったストレンジは、精神世界やマルチバースから魔術の力を取り出す仕組みを学ぶ。規則を無視しがちな性格を兄弟子のモルドから指摘されながらも、持ち前の才能を生かし魔術師として成長する。元医師として人を傷つけることに抵抗があり、医療技術を取り戻すために習得した魔術であったが、闇の魔術師カエシリウスに襲われたことがきっかけで暗黒次元からの侵略を知り、次第にヒーローとしての自覚が芽生えるようになる。

エンシェント・ワンの死後は後を継いで「ソーサラー・スプリーム」を目指し、ニューヨークのサンクタム・サンクトラムの守護者となる。

クリスティーン・パーマー（演：レイチェル・マクアダムス）

CV：松下奈緒
ストレンジと同じメトロポリタン総合病院に勤める救急救命医で、元恋人。ストレンジが怪我を負ってからも何かと世話を焼くが、治療の効果がなく荒れるストレンジに耐えかねて再び距離を置く。ストレンジが全財産を失ってからも唯一身に着けていた腕時計の送り主である。ルシアンとの戦いの際は傷ついたストレンジの手術を行った。

魔術師