太陽の牙ダグラム(Fang of the Sun Dougram)のネタバレ解説・考察まとめ

『太陽の牙ダグラム』とは、テレビ東京系列で1981年10月から1983年3月まで放送されたSFロボットアニメである。地球からの圧政に苦しむ植民惑星「デロイア」が独立するまでの動乱を、戦争と政治の両面から描く。地球生まれの主人公「クリン・カシム」は数奇な運命の下、デロイア独立戦争に義勇兵として参戦する。『機動戦士ガンダム』の流れを汲んだ「リアルロボット」路線の作品であり、後に『装甲騎兵ボトムズ』や『機甲界ガリアン』を手掛ける高橋良輔のロボットアニメ初監督作品でもある。

目次 - Contents

ジョークの血で染まったスーツを見てひどく取り乱すカルメル。しかしここに及んでもラコックの洗脳は解けない。

第68話。独立派の幹部が集まり会議している最中、北極ポート制圧を絶対とするサマリン派と、現状で和平交渉をすべきとのカルメル派で意見が真っ二つに割れる。冷静に考えれば地球連邦の軍事的プレゼンスをそのままに対等な和平交渉など不可能なことは分かりきった話だが、完全にラコックに操られているカルメルは持論を曲げない。対立はエスカレートし、カルメル派が銃を持ち出す事態に発展する。掴みかかろうとして銃撃を受けたジョークは、最後の力でカルメルのスーツにべったりと血をなすりつける。カルメルは慌てて血を払いながら、「手荒なまねはしたくなかった」と呟く。以後自身の名誉欲を大義名分で覆い隠したカルメルは、今までの戦いを台無しにする安易な和平交渉に突き進むことになる。

ドナン・カシム「自分の信じた道を生きろ」

父ドナンと最後の時を過ごすクリン。ドナンは自分に似て信念を貫く息子の背中を押す言葉をかける。

第69話。病状が悪化し余命幾ばくも無いドナンの元に、カシム家の家族が集まってくる。かろうじて意識が戻ったドナンが、末期の願いとしてクリンとの再会を望む。ラコックの思惑もあり、独立派の陣内からクリンを特別に呼び寄せることになる。自分の行動を責められると思っていたクリンだったが、ドナンは「どういうわけかお前のことばかり考えていた」と穏やかに告げ、自分の生涯と信念を振り返る。地球人類の未来を繋ぐためにあえて圧政者となったと語るドナンは人心の移ろいやすさを説くが、クリンは人を信じたいと訴える。ドナンは「自分の信じた道を生きろ。ただ、私の言ったことも忘れるな」と告げて手を差し伸べる。別人のように細くなったドナンの掌に、クリンは偉大な父がこの世を去ることを実感する。病室を出た時、母フィナの悲痛な叫びが響いた。クリンは見上げる空に父の最後の言葉が響くのを聞く。こうして地球人類の父たらんとした偉大な政治家ドナン・カシムは旅立ったのだった。

デビッド・サマリン「生きて、新しい時代を作ってくれ」

若者達が手を取り合い、新しい時代を築き上げていくのを確信したサマリンは、穏やかな笑顔を浮かべて永遠の眠りに就いた。

第74話。軟禁されていたサマリンを救出し、新たな闘志を燃やす太陽の牙。しかしサマリンは押し黙り、多くを語らない。困惑する太陽の牙にカルメルの差し向けた追っ手が迫る。明日の無い戦いに奮闘する若者達を救うべく、サマリンは傷を押してカルメルに直談判し、太陽の牙の助命を約束させる。太陽の牙の元に戻ったサマリンだが、その命は尽き果てようとしていた。新しい社会を目指しながらも結局地球流の経済やイデオロギーの対立に縛られていたと悔やむサマリン。新時代は純粋な若者達が作るのだと諭すと、クリン・ロッキー・キャナリーの手を取り「生きろ、生きて新しい時代を作ってくれ」と告げる。そして今まで道行きを共にした同志達に繰り返し感謝を伝えると、静かに息を引き取った。デロイアの未来に生涯を捧げた男は、後悔と希望を共に抱えながら永久の眠りに就いたのだった。

ヘルムート・ラコック「寄生虫めが!」

すり寄るデスタンに対して、初めて激しい感情を表に出すラコック。それが命取りになるとは思いもよらなかっただろう。

第75話。ラコックは自らの野望のためにサマリンと太陽の牙を叩き潰すべく軍を差し向け、抗議するカルメルを直接ねじ伏せるべく議事堂に向かう。そんなラコックに、テレビを見て自分にもチャンスがあると踏んだデスタンが卑屈に擦り寄る。同族嫌悪の感情を抑えきれないラコックは苛立ち混じりに「いつか言ったはずだ。私はお前のような男が一番嫌いなんだ。日の当たる場所だと?笑わせるなこの身の程知らずめ!」と吐き捨てる。デスタンはなおも食い下がるが、ついに忍耐の限界を迎えたラコックは、あらん限りの嫌悪とさげすみを込めて「寄生虫めが!」と言い放つ。その言葉が精神に深く突き刺さったデスタンはついに発狂し、銃を乱射する。デスタンが放った凶弾はラコックの背中を捕らえ、ラコックは何が起こったのか分からないまま即死する。完全に自我崩壊したデスタンは流涎し痴笑しながら連行された。かくして独立派の仲間を裏切り金のために売り飛ばしてきた男は、意図せずデロイア独立の最大の功労者となるのだった。

クリン・カシム「僕はこの手で、ダグラムと別れる!」

ダグラムを渡すことを激しく拒絶するクリン。しかしそれは、自らの手でダグラムを眠りに就かせるためだった。

第75話。ラコックの死によって地球連邦軍の指揮系統が麻痺し、太陽の牙への攻撃が止む。命拾いした太陽の牙は、カルメルの指示で無罪放免と引き換えに武装解除を求められる。戦いの日々が唐突に終わったことに戸惑いつつも、サマリンの遺言通りに新たな生き方に向かおうとするロッキー達。しかしクリンはダグラムの上から叫ぶ。「ダグラムをこのまま渡すのだけは嫌だ!このダグラムは、このダグラムは僕の全部だ!僕の身体で、僕の牙で、僕の心で、一緒に泣いて、一緒に走って、一緒に歩いてきた!デロイアでの僕の全てなんだ!ダグラムをこのまま渡しちゃったら、この先一歩も進めない!僕はこの手でダグラムと別れる!」と叫ぶ。夕日に向かって歩き出したダグラムをロッキー達が追う。周囲が慌てふためく中、轟音と煙が上がる。炎に包まれながら擱座するダグラムの元に、武器を投げ込むロッキー達。こうして太陽の牙は闘争の日々に自分たちの手で決着をつけ、新しい人生に踏み出していった。爆破されたダグラムの残骸は風化し、第1話冒頭のシーンに繋がるのだった。

『太陽の牙ダグラム』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

実はパラレルワールドだった第1話

列車襲撃作戦に参加するフェスタ。しかし第2話以降でこのような状況が生まれたことは無かった。

時系列を無視し、太陽の牙がすでに「解放軍遊撃隊」として活動している第1話だが、後の展開とは細かい部分で矛盾が生じている。太陽の牙が列車を待ち伏せして爆破するシーンでもフェスタが登場する。しかしフェスタが存命の第17話まで太陽の牙は逃避行に徹しており、このような作戦に参加する余裕はなかった。このように第2話以降とはリンクしない場面が描かれる。これは第1話が、主人公メカであるダグラムの登場が遅い事により視聴者が離脱するのを防ぐため、本作のテイストを説明するプロモーションとして作られたためである。

『アニメック』誌上で展開されたあまりにも辛口な批評

『太陽の牙ダグラム』に対する批判的な記事が掲載された『アニメック 1982年27号』

ラポート刊のアニメ雑誌『アニメック』の1982年27号で展開された「ひねくれコンバットアーマー解説」において、『太陽の牙ダグラム』の内容を嘲笑するような度を超した批評記事が展開され、次号で謝罪文が掲載される事故が起こった。謝罪文では編集部員のひとりが副編集長の目を逃れて記事を勝手に入稿してしまい、発覚した時にはすでに修正のできない段階だった経緯が説明された。批評記事の内容は『機動戦士ガンダム』の頭部を破壊されたガンダムを引き合いに出し、ダグラムの頭部が破壊されて「たかがコクピットが破壊されただけ」などとギャグを書き込んだり「主人公達の行動が大勢に影響していない」といったシナリオへの偏った批判などが複数載せられていた。

ラコックの死という衝撃的な展開を台無しにした次回予告

ラコックがデスタンに射殺されるシーンがまるまる収録された第74話の次回予告。ただし最終回の見所はここだけではない。

最終回手前の第74話。サマリンの遺言によって、戦いよりも未来に目を向け始めた若者達。かならず生き残ると決意するが、ラコックの差し向けた大部隊に包囲されその命は風前の灯火だった。かたや策謀の限りを尽くして自らの野望に王手をかけ、勝利を確信するラコック。次は最終回ということで、このまま悪辣なラコックが全てを手に入れてしまうのか、果たして太陽の牙の運命は、という視聴者をひきつける展開だ。しかしその後の次回予告で、ラコックがデスタンに射殺され斃れるシーンがまるまる放送されてしまう。当時としてもあまりにひどいネタバレは視聴者の話題を呼んだ。

go-1048911130337558694580
go-1048911130337558694580
@go-1048911130337558694580

Related Articles関連記事

装甲騎兵ボトムズ(VOTOMS)のネタバレ解説・考察まとめ

装甲騎兵ボトムズ(VOTOMS)のネタバレ解説・考察まとめ

装甲騎兵ボトムズ(Armored Trooper VOTOMS)とは、日本サンライズ(現・サンライズ)制作のロボットアニメである。テレビシリーズが1983年4月1日から、1984年3月23日までテレビ東京系で放送された。テレビシリーズは全52話である。 テレビシリーズの後日談や、サブエピソードを描いた小説、漫画、OVA作品が制作、発表され続けている。 アーマードトルーパー(通称AT)と呼ばれる、大量生産の安価なロボット兵器が、主役機、敵機、関係なく次々と撃破されていく姿は、圧巻である。

Read Article

沈黙の艦隊(かわぐちかいじ)のネタバレ解説・考察まとめ

沈黙の艦隊(かわぐちかいじ)のネタバレ解説・考察まとめ

『沈黙の艦隊』とはかわぐちかいじによって1988年から1996年まで『モーニング』に連載されていた、架空の戦争・軍事政策をテーマとした漫画作品、およびそれらを原作としたラジオドラマ、アニメ、映画作品である。政治的な陰謀や軍事技術の進展による国際関係の緊張を背景に、架空の最新鋭潜水艦「やまと」の艦長である海江田四郎とその乗組員たちの活躍を描いている。本作は、そのリアルな描写と緻密なストーリー展開で高い評価を受けた。

Read Article

機甲界ガリアン(Panzer World Galient)のネタバレ解説・考察まとめ

機甲界ガリアン(Panzer World Galient)のネタバレ解説・考察まとめ

『機甲界ガリアン』とは、日本テレビ系列で1984年10月から1985年3月まで放送されたSFロボットアニメである。騎士や城塞といった西洋の中世的風景に、巨大ロボットという異質な存在が闊歩する独特の世界観が特徴である。亡国の王子が仇敵に打ち勝つ貴種流離譚を描きつつ、やがて宇宙規模の冒険に発展する非常に壮大なストーリーが展開された。監督を高橋良輔が務め、キャラクターデザインに塩山紀生、メカニックデザインに大河原邦男、音楽に冬木透と、『太陽の牙ダグラム』を手掛けたスタッフが集結している。

Read Article

装甲騎兵ボトムズ入門(ロボット・キャラクター)

装甲騎兵ボトムズ入門(ロボット・キャラクター)

1983年にサンライズにより制作された、「装甲騎兵ボトムズ」はガンダムと並ぶ、サンライズのリアルロボの傑作であり、高橋良輔監督の代表作と言えるだろう。アニメファンなら、是非見ておきたい作品であるが、とっつきにくさを感じさせる部分も多いと思われる。そんな、装甲騎兵ボトムズを「キャラ」「メカ」の視点から、シンプルに紹介したい。

Read Article

目次 - Contents