機甲界ガリアン(Panzer World Galient)のネタバレ解説・考察まとめ

『機甲界ガリアン』とは、日本テレビ系列で1984年10月から1985年3月まで放送されたSFロボットアニメである。騎士や城塞といった西洋の中世的風景に、巨大ロボットという異質な存在が闊歩する独特の世界観が特徴である。亡国の王子が仇敵に打ち勝つ貴種流離譚を描きつつ、やがて宇宙規模の冒険に発展する非常に壮大なストーリーが展開された。監督を高橋良輔が務め、キャラクターデザインに塩山紀生、メカニックデザインに大河原邦男、音楽に冬木透と、『太陽の牙ダグラム』を手掛けたスタッフが集結している。

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『機甲界ガリアン』の概要

『機甲界ガリアン』とは、日本サンライズが制作し、1984年10月5日から1985年3月29日まで全25話が日本テレビ系列で放送されたSFロボットアニメである。監督に『太陽の牙ダグラム』や『装甲騎兵ボトムズ』で知られる高橋良輔を据え、メカニックデザインに『機動戦士ガンダム』で著名な大河原邦男と『聖戦士ダンバイン』に参加していた出渕裕、キャラクターデザインと作画監督を、数々のサンライズ作品を手掛けた塩山紀生が担当している。当初は4クール放映を予定していたが放送初期で話数短縮が決まり、2クールに短縮された。塩山の「半年間の放送なら(全話を作画)監督できる」との希望により話数が半減したのと引き換えに、塩山の監督による全話一貫した作画を得た。当初の予定では舞台が中世の情緒漂う「惑星アースト」から、超文明を誇る「高度文明連合」に本格的に移る予定であった。

テレビ放送終了後に総集編としてセルビデオ『機甲界ガリアン 大地の章』(第1話から第13話)が1986年1月21日に、『機甲界ガリアン 天空の章』(第14話から第25話)が1986年3月21日に発売された。さらにテレビ版から名称等を流用したまったく新しいストーリーであるOVA『機甲界ガリアン 鉄の紋章』が1986年8月5日に発売された。これらの映像作品は、のちにタカラが1991年12月25日に『機甲界ガリアン パーフェクトコレクション』と題してLD(レーザーディスク)-BOXを発売した。バンダイビジュアルからは1998年4月25日に『機甲界ガリアン メモリアルボックス』と題してLD-BOXを、さらに2003年3月28日にDVD-BOX『機甲界ガリアン DVDメモリアルボックス』を、2011年1月28日に『機甲界ガリアン DVD-BOX』を発売している。ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメントからは2011年1月28日にBlu-ray BOX『機甲界ガリアン プレミアムBlu-rayBOX』として発売されている。

本作では騎士が活躍する中世風の世界に「SFロボットアニメ」が融合したストーリーが展開される。類似するコンセプトとしては同じサンライズ作品である『聖戦士ダンバイン』がある。しかし今作には妖精や不思議な力は登場せず、巨大ロボット「機甲兵」などは先史文明の遺物、すなわち科学技術の産物である点が異なる。主人公である「ジョジョ(ジョルディ王子)」は誕生してすぐに亡国の憂き目に遭うが、忠臣「アズベス」の手で救い出されて隠れ育ち、やがて大義を掲げて決起し仇敵を討ち果たさんと立ち上がる。ここまでは王道的な貴種流離譚であるが、後半になると物語が宇宙規模に広がるという急展開を見せる。テレビ放送後に制作されたOVA『機甲界ガリアン 鉄の紋章』では主人公ジョルディは征服王・マーダルの第2王子となり野心に取り憑かれた義兄と対決するという、テレビ版から世界観だけを引き継いだ全く新しいストーリーが展開された。

『機甲界ガリアン』のあらすじ・ストーリー

伝説の鉄巨人

惑星「アースト」。その大地では剣と騎士の時代が花開いていた。アーストの辺境にある「ボーダー王国」は、王室の嫡男「ジョルディ」誕生に沸いていた。しかしその晩、ロボット兵器「機甲兵」を率いた征服王「マーダル」の大群に襲われる。剣や騎馬、弩しか持たないボーダー王国は瞬く間に攻め滅ぼされ、ボーダー王は戦死し王妃「フェリア」も囚われてしまう。忠臣である剣豪「アズベス」は赤子のジョルディを抱え、かろうじて落ち延びる。マーダル軍の追っ手から逃れるため、アズベスはジョルディを自分の孫「ジョジョ」として育てながら各地を放浪する。放浪は12年に及び、ジョジョは勇敢な少年として成長する。旅の果てに「白い谷」と呼ばれる反マーダルの拠点に立ち寄り一時の安息を得るジョジョとアズベスだが、そこにマーダルの軍勢が攻めてくる。そんな中幼なじみの「チュルル」と共に谷の奥深くに分け入ったジョジョは、そこで伝説の鉄巨人「ガリアン」を発見する。不思議な力でガリアンを自在に操れるようになったジョジョはマーダルの尖兵を打ち払う。勝利の熱狂に沸く白い谷。ジョジョは反マーダルの旗手として期待を一身に受ける。

謎の女の暗躍

マーダル軍による再度の猛攻をかろうじて凌ぐジョジョ。その混乱の中で謎の女「ヒルムカ」が不可思議な「光る船」でチュルルを連れ去る。ジョジョは彼女たちを追うもマーダル親衛隊隊長「ハイ・シャルタット」の追撃を受けてしまう。「無重力の谷」に不時着したジョジョは、そこで知り合った盗賊「レッド・ウィンドウ」と手を組み、チュルル奪還を目指す。重力が消失する不可思議な空間に翻弄されながらも、合流したジョジョ達4人は間一髪で脱出する。マーダル軍の将軍「ローダン」の白い谷攻撃が迫る中、ヒルムカはローダンの矛先を変えるためのマーダル軍施設への奇襲を提案する。施設へ乱入するジョジョ達は、そこで発掘される大量の機甲兵と謎の巨大機械を発見する。雪辱に燃えるハイが猛攻を仕掛けてくるが、ローダンの横やりで痛み分けとなる。白い谷に戻ろうとするジョジョ一行だが、その行く手をマーダル軍の騎士「ジムルセン・ランベル」が駆る機甲兵「ザウエル」が立ち塞がる。ヒルムカが「光る船」で援護して事なきを得るが、その事で上位存在の査問を受ける。彼女の正体は宇宙から来た「高度文明連合」の調査官だった。

王子の帰還

白い谷に帰還したジョジョに民衆は歓喜し、白い谷の長「ダルタス」は、ジョジョがボーダー王国の王子であることを告知する。ローダン軍との決戦が始まるが、幾多の激闘で満身創痍となっていたガリアンはザウエルを相手に防戦一方となる。そこにヒルムカが駆けつけてガリアンを強化改造したことで、大幅にパワーアップしたガリアンは再度突撃してくるローダン軍を蹴散らす。ランベルはガリアンとの一騎打ちを申し込み、両者一歩も引かぬ激闘を繰り広げる。その隙を突いてローダンは白い谷を騙し討ちする。それに怒ったランベルは剣を引くも、ローダンの奇策により白い谷は絶体絶命となる。そこに現れ窮地を救ったのは、機甲兵旅団を率いる「ドン・スラーゼン」だった。かつてボーダー王に仕えていたスラーゼンは、反マーダル勢に合流すべく駆けつけたのだった。ついに敗走するローダン。スラーゼンの立ち会いの下、雌雄を決するべく再度激突するガリアンとザウエル。ジョジョは紙一重で勝利を掴み、噂を聞きつけた反マーダル勢力が続々と白い谷に集結してくる。

マーダルの秘密

スラーゼンの語るマーダルの正体は、白い谷の一同を驚愕させる。彼はアーストに現れた傑物などではなく、宇宙から来た侵略者だったのだ。同じ頃マーダルはハイへ真の野望を語る。改めてマーダルに心酔するハイ。今や反マーダルの旗印となったジョジョだったが、耳にした母フェリアの消息に思い悩み白い谷を飛び出す。マーダルの居城「鉄の城」でジョジョが見たのは、生きながら彫像にされたフェリアだった。自ら出撃したマーダルは白い谷を徹底的に攻撃する。アズベスはその命を賭してマーダルを急襲するが一歩及ばず戦死する。反マーダル勢の気勢は燃え上がり、鉄の城への進撃が始まる。マーダルは復活させた装置を起動させ、巻き込まれた反マーダル勢共々惑星ランプレートに旅立つ。そこで屍のように生きるかつての同胞を恐怖と怒りで目覚めさせるのが、マーダルの最終目的だった。しかし高度文明連合はランプレートごとマーダルを消滅させることを選択し、破壊装置「イレイザー」を発動させる。敗北を悟ったマーダルはジョジョにフェリアを託して去る。アーストに無事帰還したジョジョがボーダー王国を再興し、チュルルを娶ったと思わせる場面で物語は終幕を迎える。

もうひとつのアーストもうひとつの物語(OVA『鉄の紋章』より)

惑星アーストに現れた傑物「マーダル」は、伝説の機甲兵を探して各地を彷徨っていた。やがて果ての地で半人半蛇の禍々しい「邪神兵」を発見し狂喜する。それを契機に数多の機甲兵を手中に収めたマーダルは、戦乱のアーストを平定すべく天下統一の戦を始める。強力無比な機甲兵の力を振るい、次々と他国を屈服させ手中に収めていく。そして十数年の時が経った。マーダルの元には戦火から庇護して育て上げた3人の養子がいた。第2王子「ジョルディ」は義兄「ハイ・シャルタット」と共に、マーダルと覇道を共にしていた。最後の抵抗勢力「鳥一族」との戦いが終われば天下統一は成る。しかし決戦を前にして、ハイは崇拝する父マーダルを背後から刺し殺す幻影を見る。混乱と苛立ちをぶつけるように、ハイは降伏してきた「鳥一族」の長を斬殺してしまう。対照的にジョルディは鳥一族の戦士「ヒルムカ」を救う。兄弟で意見が対立するが、マーダルはそれを諫めて勝利の美酒に酔う。人望が厚く妹「チュルル」に慕われるジョルディへの劣等感と、繰り返す幻覚に正気を失ったハイは、守衛を斬り倒して邪神兵を封印した館に踏み込む。そしてそこに現れたマーダルを幻覚通りに刺殺し、マーダル暗殺を目撃してしまったジョルディとチュルルにも襲いかかる。その時一筋の光が差し2人を連れ去る。やがて来襲した竜巻の中から、機甲兵を滅ぼすために現れる伝説の「鉄巨人」が現れる。その中にはジョルディがいた。本能的に襲いかかる機甲兵を次々と蹴散らす鉄巨人。やがてハイの乗りこんだ邪神兵との一騎打ちとなる。壮絶な戦いは鉄巨人が勝利し、同時に全ての機甲兵は地の底に葬り去られる。全てが終わった時、人類の痕跡が失せ果てた大地に、生まれたままの姿をしたジョルディとチュルルだけが残されていた。

『機甲界ガリアン』の登場人物・キャラクター

主人公と仲間たち

伝説の鉄巨人を復活させたジョジョの元に集まった、マーダルの支配に反抗する勢力。白い谷を拠点として、マーダル軍の攻撃をはね除けているうちにその健闘ぶりが民衆の間に広がる。やがて各地からマーダル打倒を目指す民衆や、かつてのボーダー王国の臣下などが集っていき、一大勢力となる。主に白い谷から発掘した兵器をそろえてマーダル軍に対抗する。

ジョジョ/ジョルディ・ボーダー

ジョジョ/ジョルディ・ボーダー

CV:菊池英博/千々松幸子(赤子時代)
本作の主人公で12歳の少年。鉄巨人「ガリアン」の操縦者。生身では主に愛用の短剣で戦う。実はボーダー王家唯一の生き残りである王子「ジョルディ」であり、ボーダー王の忠臣アズベスに彼の孫「ジョジョ」として育て上げられた。12歳にして短剣片手に戦いを挑む勇敢さと、不屈の精神を併せ持つ。その資質はマーダルですら惚れ込み籠絡しようとするほどである。しかし母を想うあまりに無謀な行動をするなど子供らしい一面や、チュルルに強引に手を引かれ連れて行かれたり、ヒルムカに密着されて顔を火照らせたりするなど未熟な面もある。

第2話においてガリアンでマーダル軍を蹴散らす活躍を見せると、白い谷の英雄として期待を一身に受けることとなる。さらにボーダー王国の王子であることが公表されると、続々と集まって膨れ上がった反マーダル勢の旗印となる。仲間達の助力を得て命がけの冒険を乗り越える内に、無垢な少年から屈強な戦士として、また人の上に立つ者として成長していく。惑星ランプレートでの最終決戦後、惑星アーストに帰還した。その後は明確な描写がないが、その出自や多大な功績を考えるに、民衆の支持を受けてボーダー王国を再興したと思われる。最終話エンディングにて、成人してチュルルを娶ったと思われる場面で物語は締め括られる。

CVの菊池英博は同役そのままに次回予告のナレーションも担当している。

チュルル

チュルル

CV:渕崎ゆり子
本作のメインヒロインで、白い谷の指導者「ダルタス」と妻ローナの一人娘。10歳。ジョジョとは3歳の頃に会ったことがある幼なじみだが、本人達は覚えていない。性格は天真爛漫で好奇心旺盛、さらに無鉄砲で考え無しのトラブルメーカー。しかしその無茶な行動力がガリアン発見のきっかけとなった。ジョジョに好意を持っており、何かと世話を焼いたり一緒に行動したがったりする。大人の色香が漂うヒルムカにライバル心を持っており、ジョジョに近づかれると嫉妬心を剥き出しにする。思慮の浅さで危機を招くことが多々あるが、逆に状況を打破するきっかけをもたらすこともある。

第1話の中盤から登場。マーダル兵に包囲されていた所をジョジョとアズベスに救出され、白い谷にふたりを案内した。噂を元にジョジョを白い谷の奥深くにある洞窟に連れだし、ガリアンを発見するきっかけを作った。その後ヒルムカに誘拐されたのを皮切りに、ジョジョと数々の冒険を乗り越える。ジョジョが王子であることを知ると気後れしていたが、その後もジョジョに付き添い続ける。最終回のエンディングでは成人してジョジョと婚姻したと思われる姿が描かれた。

ヒルムカ

ヒルムカ

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