刃牙シリーズの武術・流派まとめ

渋川剛気が興した合気道の流派。師である御輿芝喜平に勝負を挑み、“合気術の技”ではなく“刀”を使わせるところまで彼を追い詰めたことで「免許皆伝をもらった」と判断し、その刃を背中で受けて独立を宣言した。
警視庁では渋川流合気柔術を逮捕術として指導しており、この縁から警察内部にも顔が利く。

少林寺拳法（しょうりんじけんぽう）

日本の武術家の宗道臣（そう どうしん）が、「青少年の健全な育成」を目指して興した武術。柔術を土台に危険な技を排除しつつ打撃技を増やした万能型の武術で、「敵を倒す」というよりは「護身」や「心身の鍛錬」が主な目的。
なお、「少林寺」という名前が入ってはいるが、中国拳法で有名な少林寺とはまったく関係が無い。

作者の板垣が学生時代に初めて学んだ武術であり、本編にも宗道臣をモデルにした寂海王（じゃく かいおう）というキャラクターが登場する。格闘家のほぼ全てが「我こそ最強」を証明するために戦い、己を鍛えていくのに対し、寂のみは「青少年の育成のために“これは”と見込んだ格闘家を自分の流派にスカウトする」という独特の目的のために立ち回っており、その強烈な個性で印象に残る活躍を見せている。

日本拳法（にほんけんぽう）

戦前に発祥した新興武術。空手をベースに柔道の要素を取り入れ、ここに創始者である澤山宗海（さわやま むねおみ）独自の創意工夫を加えて完成した。試合の際は顔や胴を守る防具をつけて殴り合うのが特徴で、その安全性を知った一部の空手団体も同じものを取り入れている。
縦拳（たてけん）と呼ばれる、縦に構えた拳をひねらずに突き出す独特の高速パンチが有名。この技の実戦性は高く評価されており、流派やジャンルを超えて様々な格闘家がこれを使用している。組み技、投げ技、寝技の攻防も存在し、日本初の総合格闘技ともいわれている。知名度こそそれほどではないが、武術としてはかなり強力なもの。

『刃牙』シリーズにおいては、「作中屈指の猛者を相手に奮戦するも叩きのめされる」という出番しか存在しない。これは扱いが悪いわけではなく、「特定のキャラクターの“強さ”を読者に示すには、誰が見ても強いと思える別の何かを叩き潰させるのが早い」という作者の演出手法の影響である。

相撲（すもう）

発祥は神話時代まで遡るともいわれる、日本の伝統武術。近年はスポーツ化が進み、危険な技はほとんどが禁じ手となっているが、人体の限界を無視する勢いで鍛え抜かれた筋骨隆々の体に大量の脂肪をつけた力士はそのフィジカル自体が最大の脅威である。
スペック的には「最強の格闘技」とする意見もあり、実際に力士の突進を力士以外の人間が止めることはほとんど不可能。太っているようでいて動きもかなり素早く、筋肉と脂肪で覆った体は1トンクラスの衝撃も平然と受け止める。弱点があるとすれば「巨体を動かすのに大量のエネルギーを使うためすぐスタミナが尽きる」という点と、「ルールに守られた相撲の世界で戦っているため他流試合に慣れておらず、自身の強みであるフィジカルをなかなか活かし切れない」の2点くらい。横綱から総合格闘家に転向した曙（あけぼの）が当初幾度も倒されたのもこれが原因である。

『刃牙』シリーズでもその圧倒的なフィジカルは注目され、「相撲編」と銘打たれた長編エピソードが描かれている。しかし「力士の強さを細かく描こうとすると大相撲そのものをクローズアップする形になってしまい、基本的に異種格闘を扱う『刃牙』シリーズの物語とは合わなくなる」といった点を修正し切れず、鳴り物入りで登場した“謎の最強力士”も比較的あっさり敗退。全体的に低い評価を受けることとなった。

古代相撲（こだいすもう）／角力（すもう）

2代目の野見宿禰（のみの すくね）が使う流派。神代の相撲を現代に蘇らせたものとされているが、具体的にどう違うのかは不明。
宿禰は他流試合や異種格闘技を繰り返しており、力士にありがちな「ルールに守られた相撲の世界で戦っているため他流試合に慣れておらず、自身の強みであるフィジカルをなかなか活かし切れない」という弱点を持っていない。

医術（いじゅつ）

医療と格闘技は意外なほど関係が深く、絞め技や関節技は人体の関節の構造を研究することで進化していった。ボクシングでいうレバーブローやプロレスのストマッククローなど、「人体内部のこの位置に弱点がある」ことを知らなければ使えない技も多い。
治療という観点で見ても、稽古で負傷した者を治すには医療技術が必須で、教える側になった格闘家がある程度の応急処置を行うことは自然な流れでもある。実際、骨接ぎなど運動によって生じる負傷を治療する医師の中には、元（あるいは現役）格闘家という肩書きの者も珍しくない。

『刃牙』シリーズにも“医師にして格闘家”というキャラクターが存在し、その医術的にパーフェクトに鍛え抜かれた肉体と体内に衝撃を与える特殊な打撃で活躍している。物語中盤以降は医師としての側面が強くなり、他のキャラクターが負傷した際にたびたび登場する。

プロレスリング

プロレスリング（プロレス）とは鍛え抜かれた肉体の持ち主同士が、互いに見栄えのする技を容赦なく叩き込んで見る者を魅了する格闘技にしてショーである。その実戦性については疑問視する声もあるが、プロレスラーが格闘技界全体で見ても特にフィジカルとタフネスに優れていること、見栄え優先とはいえ彼らの技の中には一撃で勝負を決するほど強力なものも存在していることは事実である。
日本においては、ジャイアント馬場こと馬場正平とアントニオ猪木こと猪木寛至の両名が、それぞれのプロレス団体を牽引してプロレス人気を高めていった。最盛期ほどではないものの、現在もプロレス人気は続いており、ファンの間では「誰が最強か」といった話題がたびたび盛り上がっている。

『刃牙』シリーズ作者の板垣は、ジャイアント馬場とアントニオ猪木のプロレスラーとしてのカリスマ性に魅了されたファンの1人である。作中にも彼らをモデルにしたキャラクターが登場し、魅せることを重視したド派手な試合を繰り広げた。

剣術（けんじゅつ）

刀を使った武術の総称。日本人は刀を「ただの武器」ではなく「戦士の精神そのものを現したものである」と捉え、実戦の場で刀を使うことがほとんどない江戸時代に入ってなお剣術を研究し続けた。
この結果、日本の剣術は技術としては他の武器術が遥かに及ばない領域にまで鍛え上げられ、明治時代の武術家武田双角は「剣術こそ日本の武術でもっともハイレベルなもの」と断定している。俗に「刀で槍に勝つには相手の3倍の技量が必要」という言葉があるが、これは逆の言い方をすれば「3倍の技量があれば刀で槍に勝てる」ということであり、それだけ剣術の研究が進んでいたことを表している。

居合（いあい）

鞘に入ったままの刀を握り、これを抜き放つと同時に相手に斬りつける技。江戸時代初期に「自分が刀を収めている時に、刀を抜いた相手に斬りかかられたらどうやって凌ぐか」というコンセプトから編み出された技術である。
創作物のイメージでは“普通に刀を振るより素早い斬撃”として扱われることも多いが、これは「奇襲に対抗するために相手より速く斬りつける」ことを目標としているためで、よほど居合に特化して鍛えるようなことでもしない限り普通に斬りつける方が速い。識者の中には「“居合の方が速く刀を振れる剣士”というのは、“ユニフォームを着て普通に走るより、トーストくわえて学生服で学校に急ぐ方が速い陸上選手”のようなものだ」と揶揄する者もいる。

『刃牙』シリーズは徒手空拳の格闘技をメインとした作品だが、居合の技術を持つ者も出番は短いながら登場している。凶器を扱うこともあってか、『刃牙』シリーズには珍しいほどの人格者として描かれ、敗れた後は「相手の無事を喜ぶべきか、相手を倒せなかった己を恥じるべきか」と苦笑していた。

二天一流（にてんいちりゅう）