草摩紅葉(フルーツバスケット)の徹底解説・考察まとめ
草摩紅葉(そうま もみじ)とは、高屋奈月の漫画『フルーツバスケット』に登場する、十二支の卯(兎)の物の怪に取り憑かれた人物である。ドイツ人とのハーフで、金髪と愛らしい外見が特徴。明るい性格も相まって人に好かれやすい。「神と十二支の絆」という呪いが元で母から拒絶され、その記憶からも消えてしまう。それでも、両親の心中を思いやる優しい心を持つ。主人公の本田透に想いを寄せるが、猫憑きの草摩夾と両想いなので告白はしなかった。作中において呪いが解け、改めて自分の人生を進む。
海原高校入学
4月になり、紅葉は丑(牛)憑きの草摩潑春(そうま はつはる)と共に海原高校に入学した。紅葉は「似合うから」との理由で女子のセーラー服にハーフパンツという出で立ちで透たちの前に訪れる。透は「かわいらしい」と受け入れてくれたが、女子の制服を身に着けていた為生徒会長の竹井誠(たけい まこと)に難癖をつけられた。その場は潑春によって収められる。
入学式の日、突如慊人が学校に行くと言い出した旨を聞いた紅葉は、由希と夾にそのことを伝える。物の怪憑きたちは皆慊人に逆らうことができない。また、由希は神に等しい子憑きとして幼い頃慊人と共に過ごした期間があった。何らかの原因があって突如捩じれてしまった慊人による精神的虐待を受け続けた為、由希は特に慊人を怖れていた。「会いたくないなら、尚のこと知らせた方がいい」と思い、紅葉は慊人の来訪を告げた。
由希は紅葉達の知らない所で慊人と接触し、トラウマを掘り起こされてしまう。それでも透によってその場を離れ、戻ってきた。透の提案により、紅葉、潑春、夾、彼女の友人である魚谷ありさ(うおたに ありさ)、花島咲(はなじま さき)は透、由希も交えてバドミントンをして遊ぶのだった。
避暑地
夏休みになり、紅葉は透、紫呉、夾、由希の他、寅(虎)憑きの草摩杞紗(そうま きさ)、未(羊)憑きの草摩燈路(そうま ひろ)と共に草摩家の避暑地に赴くことになった。海水浴、スイカ割りを楽しむ面々。バカンスの最中、燈路の母が第二子を妊娠したとの連絡が入った。物の怪憑きは全員生まれてきている為、もう母親を悲しませることもないと、紅葉たちは新しい命の誕生を喜ぶ。
そんな中、慊人もまた避暑地に来た。紅葉たちは、透を置いて慊人の泊まる離れへと向かう。猫憑きの夾だけは元々集まりには不参加であり、透と共に留守番することになった。紅葉は比較的慊人への恐怖に慣れていたが、それでも挨拶を速く済ませて透の下へ帰りたい気持ちがあった。慊人への用事を済ませた紅葉たちは、浜辺で夾と共に砂の城を作っていた透の下へ帰り着く。
旅行が終わる2日前の夜、突如慊人が現れた。「帰る前に本田透さんに挨拶をしていく」という慊人に不穏なものを感じた紅葉は、「神を裏切るな」という物の怪の声に苛まれながらも慊人の前に立ちはだかる。怒っている時の慊人は、他者にひどいことをすることが分かっていた為だった。
慊人は、紅葉の態度に怒り彼を殴りつける。そこに透が現れ、止めに入った。紅葉の目の前で、慊人は自分が神であること、透が好いている夾が高校を出たら幽閉されることを告げ、彼女の頬に傷をつけた。これ以上透が傷つけられないよう、紅葉は紫呉と、慊人に随行してきたはとりを呼びに行った。戻ってきた時、既に慊人は去っていた。紅葉は透を守り切れなかったと悔やむが、透は紅葉の悔し涙を美しいと感じ、彼を抱きしめる。
紅葉の頬には慊人によって殴られた傷ができたが、年少者の杞紗たちには透の頬の傷共々「転んだ」とだけ説明した。避暑地最後の夜、一同は花火を楽しんだ。
生まれる願い
高名なバイオリニストについてバイオリンを習っていた紅葉だが、突如父がその師匠の下でのレッスンに苦言を呈してきた。モモが同じ師匠についてレッスンを始めたためだった。紅葉は父の意を汲み取り、その師匠の下を去る。
ある日、自室でバイオリンを弾いていると透が現れた。透にはところどころ汚れがついていたが、紅葉は明るく振る舞う。透は、紅葉がバイオリンを弾いていたことを指摘。今までついていた師匠のレッスンはもう受けていないと答えると、「バイオリンはやめませんよね?」と聞いてきた。
透が紅葉の家に来たのは、モモに頼まれてのことだった。モモは「外」で暮らしているが、時々秘密の通路を通って「中」に入る紅葉の様子を見に来る。モモは、紅葉に兄になってほしい、一緒にいたいと思っていたのだ。
父から「モモが紅葉を気にしている」と聞いていた紅葉は、「どうしよう…嬉しい」と言い、自分の夢を語る。紅葉の夢はバイオリニストになることだった。コンサートを開き、そこに両親とモモが聞きに来てくれたらと願っていた。
透が本家まで来たのには、目的があった。酉(鳥)憑きの草摩紅野(そうま くれの)に会うことだった。紅野に会いたいと願っている人物がいる。紅野は奥の屋敷で生活しており、物の怪憑きたちの前にもなかなか現れないため、会うのは難しいと思われた。しかし、慊人に接触を禁じられているから物の怪憑きたちが会えないと感じているだけかもしれない。紅葉は紅野の住所を書き、誰かに見つかったら自分の名前を出すよう念を押して透を送り出した。
透は無事紅野に会えたようだった。様子を見にいた紅葉は、用が済んだらしい透の手を引き、自分の家に連れていく。透は紅葉に迷惑を掛けたと詫びるが、彼自身はモモのことを教えてもらったこともあり、むしろ喜んでいた。
お礼として透の為だけのコンサートを開きたいとリクエスト曲を聞くと、「生まれる願い」という曲を呟いた。紅葉はその曲を弾けるよう練習すると約束する。
突然の解放と決意
2年生に進級すると、紅葉は目に見えて身長が伸びた。制服も男子のものを着用するようになり、透からは「王子様みたい」と言われた紅葉は喜ぶ。由希と潑春も誘い、紫呉の家で食事をすることになった。家には杞紗と燈路もおり、皆でカレーを作ることとなる。
夾の部屋に行き、夕食がカレーになったと告げると、背が伸びたことを指摘された。このままいくと夾よりもカッコよくなるかもしれないと言った紅葉は、「そしたらもしかして、透は僕のプロポーズを受けてくれるかな」と続ける。夾は高校を卒業すれば、猫憑きの常として幽閉されることが決まっていた。その為、透に想いを寄せながらも彼女に想いを告げることを諦めていたのだ。紅葉はそんな夾の気持ちを見抜いており、諦めると何が起きると分からない、自分も考えても仕方ないとあきらめることをやめると宣言。それは夾への宣戦布告ではなく、鼓舞であった。透の気持ちが夾にあったためだった。その日は、紫呉の家でちょっとしたカレーパーティーが行われた。
その夜、何の前触れもなく紅葉の呪いが解けた。兎の物の怪は去り、紅葉は自分だけの自我を獲得する。絆が切れたことを感じた慊人が現れる。もはや、紅葉にとって慊人は神ではなく、小さく弱く、哀れな人でしかなかった。今までの価値観が変わったこと、自分だけが輪から外れたことなど、呪いからの解放は紅葉に混乱をもたらした。慊人に「今夜は帰って」と言い、紅葉はカーテンを閉める。
後日、改めて慊人の下に向かう。慊人は、今更呪いが解けた所で、家族は「誰も紅葉を受け入れない、幸せになんかなれない」と言う。確かに、紅葉はもう十二支の一員ではなくなっていた。それでも、自分の為の幸せは、この先の世界で彼が来るのを待っているかもしれない。紅葉は、ようやく自分の人生を歩む決意をしたと慊人に告げ、「君はいつまでそこにいるの?」と声を掛けた。
夏休みを控えたある日、紅葉は登校時に母の家の前を通りかかる。紅葉に気付いた母が話しかけてきた。夏休みには家族旅行に行くこと、モモが今からはしゃいでいるという。母は、紅葉も家族旅行に行くのかと尋ねてきた。
いずれ自分が持てるであろう家族を思い浮かべ、紅葉は「行くよ」と答えた。学校へと向かおうとした紅葉に、母は「いってらっしゃい」と声を掛けた。親類としての言葉だったが、紅葉は嬉しげに学校へと向かう。
大団円
ある晩。透が崖下に転落したとの連絡が入った。紅野が慊人に刺され、透もまた転落時慊人と共にいたという。紅葉も含め、知らせを受けた物の怪憑きたちは眠れぬ夜を過ごした。紅葉が透の見舞いに行くと、意気消沈した慊人が病院にいた。既に紅野の見舞いをしたらしい慊人は、「何をされても何を言われても許すなら、お人好しを通り過ぎてただのバカだ」との慊人の言葉に、紅葉は「よかったじゃない。2人がバカなおかげで慊人は無罪放免だ。バカは利用できていいね」と皮肉を言った。
慊人は今までの自分の行いを悔いているようだった。紅葉は慊人に「これからは大事にすればいい。誰かにとってそれはバカでも、自分にとってはバカじゃないなら、これからは大事にすればいいんだ。それだけのことだよ」と言い、『世界で一番バカな旅人』の話をした。
透が退院したその日、全ての物の怪憑きが呪いから解放された。十二支との絆に対する慊人の執着は「神でない自分は、誰からも愛されない」との考えを両親や使用人たちに植え付けられた為だった。透は、神ではなく一個人の慊人に「お友達になりましょう」と声を掛け、見舞いに来た慊人と和解する。これにより、慊人は神をやめることを決意。元より弱っていた呪いの力は完全に消えた。
後日、物の怪憑きだった者たちが本家に集められる。慊人は振袖を着て現れた。紅葉も含めた年少の物の怪憑きは知らないことだが、慊人の母の草摩楝(そうま れん)は生まれつき複数の異性に愛される運命の我が子に嫉妬。「男にしなければ産まない」と言い、慊人は男として育てられた。女性に戻ったのは、皆が本来の自分に戻れたためで、神ではなくなったが当主として皆の自由を守ると慊人は誓った。
紫呉は慊人を1人の女性として愛しており、彼女を自分のだけのものにしようと企んでいた。その為、透という他人をも使い十二支と神の絆に亀裂を入れようとした。真相を知ったら透や由希たちに怒られるだろうと紫呉は思っていたが、誰も紫呉を責めなかった。潑春からその旨を聞いた紅葉は、「みんなしーちゃん(紫呉)より大人になっただけ」と口にする。透は夾と共に、夾の師匠で養父の草摩藉真(そうま かずま)の知人が経営する道場のある土地へ行くことになっていた。
紅葉は夾にいくらかの嫉妬心があったが、いつか自分も彼らに見せびらかせる人を見つけるという新しい夢ができた。「だから、2人には幸せでいてもらわなきゃ嫌だ」と紅葉は口にする。
草摩紅葉の関連人物・キャラクター
紅葉の父
CV:関俊彦(旧アニメ版)、柳田淳一(新アニメ版)
紅葉の父で、透のバイト先の社長。妻が紅葉のことで精神を病んだ際、彼を家族から外すことで妻を救済する道を選ぶ。妻の精神が回復した後は必死で幸せを築き直し、娘のモモを授かった。その後は妻子にも内緒で紅葉と会う二重生活を行う。紅葉への愛情や憐憫を思わせる描写はあるものの、彼が妻子と接触することで今の幸せが壊されることへの懸念もある。
紅葉の母
CV:仲尾あづさ(旧アニメ版)、本田貴子(新アニメ版)
紅葉の母で、ドイツ人。紅葉が自慢に思うほどの美人でもある。我が子が動物に変身する呪われた存在であるとの事実を受け止めきれず、精神を病む。はとりによる記憶の隠蔽術を施され、紅葉を忘れることで精神が回復した。隠蔽を受ける際、「後悔しないんですか?」とのはとりの問いに「私の人生最大の後悔は、あの生き物を自分の体から出したことよ」と口にしている。
その後は紅葉を「草摩家の誰かの子」と認識している。ある朝、登校途中の紅葉と少し会話をし、親類の1人としてだが彼に「行ってらっしゃい」と声を掛けた。
草摩モモ(そうま モモ)
CV:田中沙耶(新アニメ版)
紅葉の妹。紅葉と同じバイオリンの師匠につく、海原高校に行きたいと言うなどして父を慌てさせることが多い。母と紅葉が似ていると指摘する、こっそり「中」に住む彼の様子を見に行くなど自分と紅葉の関係に感づいている節がある。
草摩はとり(そうま はとり)
CV:井上和彦(旧アニメ版)、興津和幸(新アニメ版)/長谷川育美(新アニメ版幼少期)
辰(龍)の物の怪憑き。通称は「はーさん」、「とりさん」。紅葉からは「ハリィ」と呼ばれる。長身でクールな風貌。職業は医者で、草摩家の主治医をしている。記憶の隠蔽と呼ばれる催眠術を用いて、十二支の秘密を知った者の記憶を消す。紅葉の母の記憶も消した。後に、自身の恋人だった佳菜の記憶も消しており、「忘れられる」ことの辛さを思い知る。
紅葉の記憶を消した後、夕食を共にするなどしてフォローしていた。
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目次 - Contents
- 草摩紅葉の概要
- 草摩紅葉のプロフィール・人物像
- 草摩紅葉の能力
- 卯憑き
- ドイツ語
- バイオリン
- 草摩紅葉の来歴・活躍
- 母の記憶から消える
- 本田透との出会い
- 「世界で一番バカな旅人」の話
- 紅葉の告白
- 海原高校入学
- 避暑地
- 生まれる願い
- 突然の解放と決意
- 大団円
- 草摩紅葉の関連人物・キャラクター
- 紅葉の父
- 紅葉の母
- 草摩モモ(そうま モモ)
- 草摩はとり(そうま はとり)
- 草摩潑春(そうま はつはる)
- 草摩紫呉(そうま しぐれ)
- 草摩夾(そうま きょう)
- 草摩慊人(そうま あきと)
- 本田透(ほんだ とおる)
- 草摩紅葉の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 「忘れていい思い出なんて一つもないって思いたいから」
- 「どうしよう…嬉しい」
- 「この人の一体何がボクを縛れるっていうんだ」
- 草摩紅葉の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 名前の由来は9月の異名「紅葉月」
- 原作で最後の変身描写が描かれたキャラクター
- 続編で描かれた紅葉の家族模様