シド・ハイウィンド(ファイナルファンタジーVII)の徹底解説・考察まとめ

シド・ハイウインドとは、スクウェアから1997年にPlayStation専用として発売されたロールプレイングゲーム『ファイナルファンタジーVII』の主要キャラクターの1人で、過去に神羅カンパニーでパイロットをしていた職人気質の男である。パイロット時代に宇宙計画が中止となった後も宇宙への夢を諦めきれず、ロケットを整備する日々を送っていた。「反神羅組織アバランチ」のクラウド達がロケット村を訪れたことを機に行動を共にすることになる。

ロケット村に神羅のルーファウス新社長と宇宙開発部門時代の顔見知りであるパルマーが訪れたことから、シドは宇宙開発計画が再開されることに期待を寄せていた。しかし、ルーファウスの目的はシドが所有している複葉機タイニーブロンコを渡してもらうことであった。
シドは過去に自身の飛空艇ハイウインド号を私物化されており、宇宙開発計画の中止によって夢であった宇宙へ行く計画も取り消されていた。シドは他人の所有物を私物化し続ける神羅と手を切ることを決める。そんな折、クラウド達はパルマーが奪おうとしていたタイニーブロンコを横取りして村から脱出しており、シドはクラウド達の後を追ってタイニーブロンコにしがみついた。
神羅カンパニーが有名な大企業であることは、旅の中でソルジャーに憧れる少年や、神羅から恩恵を受けている住民の存在からもうかがうことができる。そんな神羅カンパニーを相手にして、タイニーブロンコを横取りしたクラウド達の度胸を買ったシドは「この時代、神羅にさからおうなんてバカヤロウのクソッタレだ!気に入ったぜ!」と激励して仲間に加わった。口は悪いが、それゆえにシドの裏表のなさを感じられる言葉でもある。

「科学は、人間が自らの手で生み出し、育て上げた『力』だ。その科学が、この星を救うかもしれねえ」

出典: stat.ameba.jp

シドが大切に整備を続けてきたロケット「神羅26号」が、神羅のメテオ破壊計画によって打ち上げられることになった際のシドの台詞である。
セフィロスに黒マテリアが渡ったことで世界の上空にメテオが出現し、神羅は自社の兵器にヒュージマテリアのエネルギーを使うことで、メテオを破壊する計画を立てていた。この計画にシドが整備を続けてきたロケット「神羅26号」が使われることになり、シドの部下達は、自分達のロケットが星を救うのだと意気揚々に準備を進めていた。
シドは長年の夢が思わぬ形で叶う機会に恵まれたが、ロケットをヒュージマテリアごとメテオにぶつけるということは、貴重なヒュージマテリアを1つ失うことを意味していた。部下に代ってロケットの調子を見始めたシドに対し、クラウドは古代種の知識や知恵が封じ込まれたマテリアの大切さを説き、シドを説得しようとする。
シドは、マテリアが大切であることを理解した上で、科学も魔法もどっちでもいいと言い放つ。その後、自分が長年携わってきた「科学の力に賭けたい」という胸の内を明かし「科学は、人間が自らの手で生み出し、育て上げた「力」だ。その科学が、この星を救うかもしれねえ」と熱い想いを見せた。
それでも反論しようとするクラウドを遮ったシドは、ロケットから出ていくよう強い口調で促した。その直後にロケットは揺れ始め、カウントダウンもない状態で突然宇宙へ打ち上げられてしまう。
シドにとっては神羅もアバランチも関係なく、人間が作ってきたものが星を救うという途方もない可能性に心を動かされていることがわかる言葉である。また、自身の携わってきた科学の力に対して誇りを持っていることもうかがえる。

「シエラ……確かにおまえが正しかったぜ」

爆発したのはシエラが長い時間をかけて点検していたボンベだったと気づき、シエラの仕事ぶりを認めるシド(右)

上空のメテオをめがけて突然打ち上げられたロケット内部に取り残されたシド達は、脱出ポッドでロケットから逃げ出すことが急がれた。クラウド達は、ロケットに積まれたヒュージマテリアのロックを解除し、入手に成功する。急いで脱出ポッドへ向かうが、途中で酸素ボンベが爆発を起こし、シドは足を破片に挟まれて動けなくなってしまう。
クラウド達は急いでシドの上の破片を取り除こうとするが、重量があり、なかなか破片をどかすことができなかった。このままではロケットごとメテオに衝突し、全員の命も失われてしまうため、シドはクラウド達だけでも逃げるようにと促す。しかしクラウドはシドを見捨てず、引き続き破片をどかそうとしていた。
爆発したのは、かつて中止になった宇宙開発計画でのロケット打ち上げの際、シエラが最後まで点検を続けていた8番ボンベであった。そのことに気づいたシドは「シエラ……確かにおまえが正しかったぜ」と、これまで辛く当たってきたシエラの仕事ぶりを認めた。
その後動けない不甲斐なさから珍しく弱気になるが、隠れてロケットに乗り込んでいたシエラが姿を現し、シドは無事に救出されることとなった。シエラの誘導によって脱出ポッドに乗り込み、どうにかメテオに衝突する前にロケットから脱出できたシドは、いつもの口の悪さでポッドが動くのかをシエラに確認する。シエラが直近までチェックをしていたことがわかると、「それなら安心だぜ」と穏やかに返事を返した。
これまで宇宙計画の中止をシエラの仕事が遅いせいにしてきたシドだったが、シエラへの評価が良い方へ変わり、彼女を認めたことがわかる言葉である。

コレル列車を止める

出典: i.ytimg.com

ヒュージマテリアを乗せた列車に追いついた後、列車を止めるために悪戦苦闘するシド(中央)

クラウドが重度の魔晄中毒に陥り、治療のために旅から離脱した際、シドが旅のリーダーを務めることになる。シドに課せられた任務は、通常のマテリアよりも遥かに大きなエネルギーを持つ「ヒュージマテリアの回収」。神羅側は、その大きなエネルギーを兵器に使用することで、上空に現れたメテオを破壊する計画を進めていた。古代種の知識が蓄えられたマテリアの力を借りてセフィロスに立ち向かおうとする一行にとっては、ヒュージマテリアが兵器に利用されて失われることを防ぐ必要があった。
マテリア回収のため、コレル魔晄炉へ急ぐシド達だったが、一足早くヒュージマテリアは列車で運び出されてしまった。自分達の足では追いつけないため、シドは自分達も列車で神羅の後を追うことを決断する。列車の操縦は未経験のシドだが、持ち前の感覚で操作方法を掴み、神羅の列車に追いつくことに成功する。
しかし、次は急いで列車を止める方法を見つけ出さなければならなかった。このまま列車を走らせた場合、北コレルに住む住民達の元に列車が衝突する恐れがあったのだ。シドは感覚を頼りにレバーを動かすが、列車は加速を始めてしまう。次は逆にレバーを動かすが、列車は更に加速を始め、シドは一か八かでレバーを思い切り下へ動かした。
大きな音を立てた列車は住居の直前でなんとか止まり、北コレル住民の安全は守られることになった。ヒュージマテリアも無事に回収することができ、ようやく安堵の時間が訪れるのだった。列車を止めたシド達は、神羅によって村を失った過去を持つコレルの住民達から多くの感謝を寄せられた。

神羅の計画に巻き込まれて長年の夢を叶える

思わぬタイミングで夢が叶ったシド(左奥)は、宇宙を目に焼き付ける。

セフィロスによって発動したメテオを破壊するため、神羅はヒュージマテリアを積んだロケットを打ち上げてメテオにぶつける計画を遂行しようとしていた。ヒュージマテリアの回収を続けていたクラウド達はロケット村へ急ぐが、シドが部下達に代わってロケットを点検している最中に、突如ロケットが打ち上げられてしまう。
ヒュージマテリアよりもロケットで宇宙に行くという自分の夢を優先したシドだが、ヒュージマテリアをどうするかという話になった際にはクラウド達にも「自分達がしたいようにすればいい」と伝え、マテリアの回収に協力する。シド達はヒュージマテリアを回収した上で脱出ポッドでの脱出を試みる。
脱出ポッドから宇宙を眺めるシドは、地上へ戻るまでの短い時間で、長い間憧れてきた宇宙を自分の目に焼き付けた。そして長年、整備を続けてきたロケット「神羅26号」に別れを告げるのだった。
その後、無人となったロケットはそのままメテオに衝突するが、メテオの破壊はおろか、傷をつけることさえできなかった。神羅の計画は失敗に終わり、期待を寄せていた人々は肩を落とした。ハイウインド号でその様子を見守っていた一行は、引き続き星のためにできることを考え始めた。
皆が悩む中、シドは宇宙から見た自分達の住む星の小ささを「子供」に例え、その星を守れるのは自分達じゃないのかと仲間達を鼓舞するのだった。
比較的長めのイベントシーンの中では、夢見る少年のように宇宙を見つめたり、星を子供に例えるシドを見ることができる。この場面によって、シドの宇宙や星に対する愛情を感じることができる。

シド・ハイウインドの裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

実年齢の割に渋い外見

出典: ff7-like.com

実年齢は32歳のシドだが、無精ひげやくわえ煙草によって年齢より老けて見えている。

無精ひげに煙草をくわえた「渋いおっさん」という印象のシドだが、その年齢は32歳。年齢を見て驚くファンも多い。
今作のキャラクターデザインを担当していた野村哲也は、デザインした当初に30代をかなり大人だと思っていたことを明かしている。野村がシドの年齢を追い越してから、30代がまだ若いことに気づき、以後の作品などでシドを描く際には微調整をして少し若返らせていることをTwitterで明かしている。

セフィロスや古代種とは無関係

旅のおさらいを聞いてるうちに居眠りしてしまったシド(中央左奥)

シド本人がクラウド達の旅に同行した理由は「神羅との縁が切れた」ことと「村に飽きた」ことがきっかけである。偶然村を訪れたクラウド達に興味を持ち、ある種の気分転換のような感覚で合流している。シド本人は宇宙開発が再開されないという神羅への怒りはあるものの、他の仲間達と比べて強い憎しみを抱いてはいない。
セフィロスや古代種とも、これまで関わることなく過ごしてきた「一般人」側の人物である。ゴールドソーサーで全員集合した際に、これまでの旅のおさらいをクラウドから聞く場面でも1人だけ居眠りをしている場面があり、どちらに対しても特別な思い入れがないことがわかる。
9人のキャラクターの中では、シドはプレイヤーに近い目線で旅をしているキャラクターと言え、深刻になりがちな場面でのクッションのような役割を果たしている。

飛空艇クルー達の憧れ

ハイウインド号では、クルー達がシドを尊敬している様子がうかがえる。

シドは「伝説のパイロット」と称されており、ハイウインド号のクルー達にとって憧れの存在。神羅から脱出した後にティファをコントロールする際に、ハイウインド号のクルーに話しかけて「雑談でも」を選ぶと、ハイウインド号を神羅から手に入れた経緯と彼らの心中を聞くことができる。
元々シドの所有物だったハイウインド号だが、神羅に私物化されており、クルー達はハイデッガーのパワーハラスメントに耐えながら働いていた。彼らがパワハラに耐えていたのは、ハイウインド号が憧れだったからと打ち明ける。竜巻の迷宮から脱出した際、シドが自分達に声をかけてくれたことに感動したクルー達は、神羅側ではなく「星を救う旅」をするシドに賛同してハイウインド号を神羅から取り返したのだ。
大空洞での決戦前夜、クラウドとティファ以外の仲間達はそれぞれの「戦う理由」を確かめるためにハイウインド号を降り、クルー達も同様にハイウインド号を離れている。翌朝、仲間が全員集まったところでシドがハイウインド号を動かそうとすると、クルー達も戻ってくる。クルー達はハイウインド号が自分達の家だと告げると、最後までシドについていく覚悟を見せた。命の保証がない最終決戦となることを覚悟して、ハイウインド号に戻ってきたクルー達の姿から、シドに対する信頼の厚さがうかがえる。

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