ウイルク(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ

ウイルクとは『ゴールデンカムイ』に登場するアイヌ民族の男性である。アイヌの隠し金塊の所在を唯一知る人物であり、金塊争奪戦の原因となった。メインヒロインであるアイヌの少女アシリパの父親であり、娘と同じ独特な青い目をしている。作中では網走監獄に幽閉され、顔の皮が無い「のっぺら坊」として登場。アイヌの金塊を隠し、その場所を示した暗号を24人の凶悪な囚人達に刺青として彫った。金塊を巡る様々な勢力が網走監獄を襲撃した際にかつての仲間のキロランケの差金で暗殺された。

ウイルクがのっぺら坊である事が明確になるシーン

網走監獄にて、アシリパとのっぺら坊は双眼鏡越しに対面した。アシリパと同じ青い目を持つのっぺら坊を見た事により、アシリパはのっぺら坊がウイルクである事を確信する。

それまでのっぺら坊は、ウイルクか別人か明確になっておらずモヤモヤとしていた展開が続いていた。このシーンによりそのフラストレーションが一気に解放される。同時にアシリパの語る優しい父親像とのっぺら坊の異形とその残酷な所業が結びつき、読者はウイルクが何故この様になってしまったのかについて興味を抱いていくことになる。

ウイルクが自分の頭の皮を剥いだシーン

支笏湖付近にて、鶴見に追い詰められたウイルク。彼が取った衝撃の行動が自分の頭の皮を自分で剥がすというものであった。ウイルクがのっぺら坊になった経緯が明かされる瞬間である。頭の皮を剥がされたのっぺら坊が如何にして誕生したのか気になっていた読者は、自分の手で頭の皮を剥がすという常軌を逸した行為を目にする事になる。合理的であるが故のウイルクの狂気の沙汰に読者は深い衝撃を受けた。

ウイルクが狙撃されたシーン

狙撃されるウイルク

網走監獄に潜入した杉元一行と土方一派。途中で杉元は孤立しながらもウイルクと遭遇する事になる。当初は警戒していたウイルクであったが、杉元のアシリパを想う気持ちに触れて心を開いていく。ウイルクは杉元に金塊の在処を伝えようした。その時、尾形の弾丸がウイルクの脳天を撃ち抜いてしまうのであった。

金塊の在処を知る唯一の人物であるウイルクが死亡してしまう衝撃のシーン。偽の刺青人皮の判別方法も不明な中で、刺青の暗号解読でしか金塊の在処を探れなくなってしまう。同時に刺青の暗号を解くキーワードを知るのは、アシリパのみとなってしまう。物語は急展開を迎え、アシリパ争奪戦が幕を開けた事を象徴する衝撃的なシーン。

「ホロケウオシコニ」

北海道に移住し、最愛の妻と死別したウイルク。彼は幼いアシリパを連れ、北海道の大自然を渡り歩く。

ウイルクはアシリパをアイヌの先導者に育てるべく、北海道でのサバイバル技術を教えた。その中でウイルクはアシリパに「ホロケウオシコニ」という、妻リラッテから名付けられた、アイヌの名前をアシリパに教える。この名前は金塊の暗号を解くキーワードになっており、後々重要なものになっていく。

「アイヌを殺したのは私じゃない」

金塊の在処を直接聞き出すべく、網走監獄に潜入した杉元。紆余曲折を経て杉元はウイルクこと、のっぺら坊と遭遇する。そこでウイルクが語ったのは、「アイヌを殺したのは自分では無い」という事であった。それまで、仲間のアイヌを殺害した罪で網走監獄に幽閉されている、とされていたウイルク。杉元の仲間内では、ウイルクについて様々な憶測や陰謀が囁かれる中、遂にその真実の一端が明かされた。これにより物語はまた一歩、核心に迫っていく。

「私の娘はアイヌを導く存在」

網走監獄に潜入し、のっぺら坊ことウイルクと接触した杉元に向かって言った台詞。それまでウイルクという人物はアシリパや、彼を知る人物からの情報でしか解らない存在であった。

アシリパの語るウイルクは、優しく想いやりのある父親像であった。一方で、彼を知る人物から語られるのっぺら坊のイメージは寡黙で残酷で血生臭いイメージである。イメージの異なる両者が、網走監獄にて同一人物である事が判明した。ウイルクがどういう人物なのかが曖昧な最中、ウイルクの口からアシリパへの思惑が語られる。この時の「私の娘はアイヌを導く存在」という台詞により、ウイルクが自分の娘であるアシリパを、アイヌ独立の為の闘士に仕立て上げようとしていた事が明らかになった。

ウイルクの裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

樺太アイヌと北海道アイヌの文化の違い

17世紀から19世紀に東北地方北部から北海道、樺太、千島列島に居住していた民族。アイヌとは「人間」という意味を持つ。物語で登場した樺太アイヌと北海道アイヌは同じアイヌであるが、異なる文化を持つ。ウイルクの行動原理には、樺太アイヌが日本とロシアから受けた迫害と差別が根底にある。

樺太アイヌは13世紀以前、北海道に当時住んでいたアイヌ民族の祖先が樺太に渡ったのが始まりとされている。以来彼等は樺太で独自の生活様式や文化を発達させていった。樺太在住とはいえ、より寒冷な北部に生活圏を拡大する事なく、南部に集中して居住している。樺太アイヌの伝統的な楽器に「トンコリ」という弦楽器がある。これは樺太アイヌ独自の楽器であり、北海道アイヌには無い。また樺太は北海道よりも北にあり、より寒冷な地域の為居住環境も独自のものになっている。樺太アイヌには夏用の家と冬用の家の二つがあり、季節によって住み分けていた。冬用の家は土製の竪穴住居であり、気密性が高いものの通気性が悪い。一方、北海道アイヌは一つの家に一年を通して居住する生活様式である。これは作中でも紹介されており、樺太アイヌを象徴する文化とも言える。

樺太アイヌは時代が進むにつれ、日本とロシアの都合に翻弄されていく事になる。後述する樺太・千島交換条約により北海道への移住を強制された。また樺太に残ったアイヌ達も度重なる日本とロシアの戦争により、北海道へ移住せざるを得ない状況となった。移住した北海道ではコレラや天然痘の流行病によりその多くが死亡した。また日本政府は移住した樺太アイヌの人々の土地を補償しなかった為、彼らの生活は困窮した。日本政府はアイヌ民族を差別、迫害し彼等の伝統的文化を破壊している。作中でウイルクの故郷の人々も北海道への強制移住を余儀なくされている。そして北海道にてコレラに感染し、誰一人帰ってくる者はいなかった。ウイルクの故郷の樺太アイヌの村は人口が激減し、最終的に滅びてしまう。

アイヌの伝統的な生活は男女の役割の区別がされている。アイヌの男性は主に狩猟採集を行う他、神事や政治を行った。他の部族との戦争となれば男性は武器を持って戦闘を担当した。一方、女性は家事育児、畑仕事や山菜取り等を行う。男尊女卑の封建的な社会であり、女性は神事や政治に参加出来なかった。作中のアイヌの人々も男性が狩猟や政治を行い、女性は家事や山菜取りを行っていた。一方でアシリパはアイヌの伝統を重んじつつも、男尊女卑のような古い慣習に否定的であった。アシリパは新しいアイヌの姿を目指す快活な少女として描かれている。

実際に北海道では金が採掘されていた

北海道で採集された砂金

明治31年(1898年)、北海道枝幸郡にて砂金が産出。これをきっかけに北海道ゴールドラッシュが始まった。数千人の人々が北海道に押し寄せ、活気に湧いていた。枝幸郡の砂金が取り尽くされると、人々は他の北海道の地域に砂金を求めて行った。最終的に1万人以上の人々が北海道に移住し、各地で金脈を開発して行った。また、金脈開発に伴い砂金を求める人々の為の飲食店や宿泊施設、病院や学校等のインフラが開発。個人での採掘に止まらず、事業として大々的に執り行われる。こうしてゴールドラッシュは北海道の経済を潤わせた。北海道ゴールドラッシュは昭和の時代まで続き、昭和15年(1940年)には年間金産出料2.5トンと日本一の金を産出した。だが昭和48年(1973年)には砂金を取り尽くし、金鉱は閉山した。今現在は煙突等の砂金製錬施設の跡や慰霊碑等が残されるのみである。

多くの人を魅了し、人々を北海道に駆り立てたゴールドラッシュであった。だがその陰にはアイヌの人々の犠牲もあった。砂金は川の泥を掘り起こし、洗い流す事で採集される。狩猟採集を生活の中心とするアイヌ民族にとって、川は生活の糧を提供する非常に大切なものであった。アイヌの人々は川を信仰の対象としており、砂金採集は彼等の信仰を踏み躙る行為でもあった。実際砂金採集により川は汚され、アイヌ民族の主食であったシャケの漁獲量が大きく減っている。作中でも金塊を大規模に採集した事でアイヌにとって神聖な川が汚されていた。これによりアイヌの主食であるシャケの漁獲量が減り、砂金の存在を快く思わないアイヌの存在も描かれていた。

作中で主人公の杉元が初登場した際、彼は北海道の川で砂金の採集を行っていた。更に物語の根幹となる金塊は、一部のアイヌがかつて北海道中の川から砂金を採集したとされている。そんな多くの人々を魅了した金塊であるが、人々はこの金塊を奪い合い、血生臭い殺し合いを行っていく。鶴見はそんな金塊の呪われた宿命を、アイヌの「万物に神が宿っている」という信仰にかけて、「ゴールデンカムイ」と呼んでいる。金塊は人々に恩恵を与える一方で、北海道の大自然を破壊し、金塊を求める人々に殺し合いを行わせる恐ろしい存在としても描かれていた。

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岩息舞治(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ

岩息舞治(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ

岩息舞治(がんそくまいはる)とは、野田サトル原作の漫画・アニメ作品『ゴールデンカムイ』に登場する刺青の囚人のうちの一人で、屈強な肉体と暴力への飽くなき欲求を併せ持つ男だ。樺太にあるロシア人の村で、男たちが集団で殴り合う競技「スチェンカ」に参加していた。キロランケやアシリパを追跡する杉元と出会い、拳を通して心を通わせる。刺青は剥がずに書き写された後、強者との出会いを求めてロシアへ渡っていった。

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マンスール(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ

マンスール(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ

マンスールとは、『ゴールデンカムイ』のキャラクターで、ロシア皇帝の暗殺にも加担したパルチザンのソフィア・ゴールデンハンドの仲間の1人にして砲撃手である。 アイヌの隠し金塊を手に入れるため、ソフィアや仲間たちと共に北海道に乗り込み、主人公の杉元たちに協力。金塊を我が物にせんとする第七師団と壮絶な戦いを繰り広げ、敵の駆逐艦を旧式の大砲で撃破するという大殊勲を挙げた。突如鳴り物入りで登場し、作品の内外からその力量に疑問を持たれるも、鮮やかな活躍で評価を覆したキャラクターである。

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二階堂浩平(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ

二階堂浩平(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ

二階堂浩平(にかいどう こうへい)とは、『ゴールデンカムイ』の登場人物で、アイヌの隠し金塊争奪戦に参加している大日本帝国陸軍第七師団の兵士である。双子の兄弟の二階堂洋平を返り討ちにした杉元佐一に激しい殺意を抱くようになり、復讐を果たさんとたびたび死闘を演じた。戦いを経る毎に両耳や手足を失って行き、治療の際に使用したモルヒネによって薬物中毒者と化し、その副作用で子供のような性格の異常者となった。最終的に武器の仕込まれた義手や義足を装備し、心も体も壊れていきながら金塊争奪戦の最前線で戦い続けた。

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津山睦雄(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ

津山睦雄(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ

津山睦雄(つやま むつお)とは、野田サトル原作の漫画・アニメ作品『ゴールデンカムイ』に登場する刺青の囚人のうちの一人で、「三十三人殺し」と呼ばれている。本編には登場せず、第七師団の鶴見中尉が刺青人皮を持っている。津山から剥いだ刺青人皮をベストのように着こなす鶴見中尉の姿は、多くの読者に衝撃を与えた。「三十三人殺し」という経歴から、モデルは「津山三十人殺し」の都井睦雄(とい むつお)であるという見方が一般的だ。

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菊田杢太郎(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ

菊田杢太郎(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ

菊田杢太郎(きくた もくたろう)とは、野田サトル原作の漫画・アニメ作品『ゴールデンカムイ』の登場人物で、鶴見中尉率いる第七師団の一員。作中では珍しく、比較的常識的な言動をする男だ。日露戦争で倒したロシア将校の銃を奪い、戦争が終わった後でも持ち歩いている。金塊争奪戦には途中から参戦したが、その正体は軍中央から鶴見中尉に差し向けられたスパイ。また、かつて故郷を出たばかりの杉元佐一(すぎもと さいち)と出会い、軍に入隊するきっかけを作っており、「不死身の杉元」の生みの親とも言える。

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江渡貝弥作(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ

江渡貝弥作(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ

江渡貝弥作(えどがいやさく)とは、野田サトルによる漫画作品『ゴールデンカムイ』の登場人物で、北海道・夕張で剥製工房を営んでいる青年である。剥製職人としての腕は良いが、人間の死体の皮で革細工を作るという歪んだ趣味を持っている。自分の実の母親を剥製にして所有。母親の偏った教育の下で成長したが、母を慕うなどマザコン気質の持ち主である。鶴見の依頼により贋物の刺青人皮を作成したが、刺青を狙う尾形や杉本に狙われる。初めて自分を受け入れてくれた鶴見を慕っており、最期は鶴見の為に自らの命を犠牲にした。

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インカラマッ(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ

インカラマッ(ゴールデンカムイ)の徹底解説・考察まとめ

インカラマッとは、『週刊ヤングジャンプ』にて連載されていた野田サトル原作の漫画・アニメ作品『ゴールデンカムイ』に登場する人物で、占いで生計を立て北海道を旅するアイヌ女性。少女の頃にアシリパの父ウイルクと交流があり、金塊争奪戦の渦中にいるアシリパの周囲に現れる。目的を明かそうとせず、周囲を占いで惑わすような行動を取るため、その存在を怪しまれている。鶴見中尉率いる第七師団から離れ小樽のアシリパのコタンで療養していた谷垣源次郎と、疱瘡で家族を失ったチカパシとともに、アシリパを追いかけ旅をする。

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