あしたのジョー(アニメ・漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『あしたのジョー』とは、高森朝雄(梶原一騎)原作、ちばてつや画による日本の漫画作品、もしくは漫画原作のアニメーション。講談社の『週刊少年マガジン』に、1968年(昭和43年)1月1日号(発売日は1967年(昭和42年)12月15日)から1973年(昭和48年)5月13日号にかけて連載された。
野生の本能を持った孤児矢吹丈が、ボクシングの才能を買われ孤独な戦いを繰り広げる。ボクシングにかける男の美学が、美しくも切なくもある。

ボクサーの健康管理に関する研究で世界的な権威とされるハワイ大学の医学博士。 ホセ・メンドーサの主治医も兼ねており、パンチドランカー症状を診断する見識に優れるが、ジョーの症状を誤診するという致命的なミスを犯している。

『あしたのジョー』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

ジョーの夢

ジョーは段平にボクサーの才能を見出されてしぶしぶボクシングの修業をする一方で、ドヤ街に来て以来ひそかに温めていた夢があった。 それは、ドヤ街を再開発して病院、遊園地、保育施設、ドヤ街の大人が全員就職できる商業施設や工場、老人ホームなどのある理想の住宅地にすることだった。
その資金源としてジョーがパチンコの景品をたたき売りして稼ぐだけでは無理なので、ドヤ街の子供たちと協力して新聞社の記者をだまし、恵まれない子供たちのために募金を募るいわば募金詐欺を働く。 この詐欺に引っかかり10万円の募金をしたのが白木葉子である。
この夢はジョーが警察に捕まったことでついえてしまったようで、以来全く話題に上らなくなった。

親友も恋人も頼れる親もなく、ボクシングだけが生きがいになったジョーだが、本来の姿は弱者に対する慈愛の心、深遠な計略を立てられる頭脳、目的のためなら泥も被る大胆な行動力を兼ね備える理想的な経営者の面があったようだ。 将来プロモーターとして頭角を現す葉子と似た者同士だとも解釈できる、意外なジョーの横顔が垣間見られるシーンである。 もしも、このジョーの夢がかなったならばジョーのみならず、力石やカーロス、ホセなども廃人にならずに済んだかもしれない。

「あした」をつかむため必要なこと

特等少年院でのジョーVS力石の試合に際して、段平がジョーに「あしたのためにその3」ことクロスカウンターを伝授し、二人とも倒れたのを見た葉子。 あした=未来の希望をつかむためにはきれいごとを言っていられないと葉子が悟るシーンである。 ジョーが血みどろになってまで力石との戦いにすべてをかける姿を見て、今までは祖父のコネや財産を使って好き放題してきた葉子だが、ジョーの出現によって今までの自分を完全否定され、その腹いせでジョーに嫌がらせをしてきた自分を恥じた。
世間知らずのお嬢様だった葉子が、本当に自分がやりたいこと、自分にとっての「あした」とは何かを考えるきっかけになったシーンである。

なあジョーよ…ふたりで苦しみふたりで歯をくいしばって、この泪橋を逆にわたっていこう

特等少年院の刑期を終えドヤ街に戻ってきたジョーに対する段平のセリフ。
ジョーのために泪橋のたもとにジムを建てた段平。 泪橋とは、ドヤ街に流れ着いた人たちが人生に疲れ果て、涙を流しながらわたる橋だと語る。 しかし、段平にはジョーがいる。 ジョーとともに栄光の道をつかむため、人生の吹き溜まりであるドヤ街から泪橋を逆に渡ろうと段平はジョーを励ますが、ジョーにとって段平の夢は正直重荷であった。 段平にとって自分は、夢をかなえるための道具でしかないと薄々察していたからだ。 段平とジョーの思いは初めからどこか食い違っているのだと、さりげなく示唆させる重要な場面である。

た…立て…! …立つんだジョー!

当作品屈指の名台詞の一つ。
少年院でのジョーVSウルフ力石戦でジョーがピンチになった際に心の中で叫んだセリフである。
名セリフなのだが、段平が「立て、立つんだジョー!」といったのはこの一度きりである。 しかも口で叫んではいない。
口で叫んだのは段平ではなく、ジョーVSウルフ金串戦を観戦していた力石である。

このセリフの認知度が高いのは、アニメ第一作目のED「ジョーの子守歌」の歌詞の中に「立て、立つんだジョー!」とあるので視聴者の意識にすりこまれていたためであろうと分析できる。

マンモス西うどん事件

マンモス西を語るのに外せないエピソードである。
西はミドル級までウェイトを絞るための減量に耐えられず、屋台のうどんを食べてしまう。 ジョーに見つかり「うどん野郎!」と罵られるが、一度は改心して減量に励みジョーのスパーリングの相手もできるようになった。 しかし本人の試合の成績は振るわないままだったので、結局引退して林商店を継ぐ道を選んだ。
ジョーにとって西の選択は、ともに戦えると信じていたのに裏切られ、以前は減量できなかったのにボクシングを辞めたら引き締まった体になり、しかもジョーに思いを寄せていた紀子と結婚したことで自分の店を持てたことも、内心面白くない結果だったであろう。

西がボクシングをやめたらスリムになったのは、うどん事件よりずっと前から西は林商店でドカ食いしたり、ジムで調理しているすきにつまみ食いしたり、こっそりおやつを食べていたからと思われる。 つまりボクシングによるストレス太りだったのだ。 西にはボクシングは似合わないのを段平もジョーも気づかないまま放置しているのに、西はふてくされもせず二人に気を遣っていた。 自分からボクシングをやめたのも以前のように逃げるためではなく、このままずるずるとボクシングを続けることの無意味さを悟ったからであろう。 彼の男気や地味な優しさなど一人の男、人間としての魅力は間違いなく持っているため、うどん事件のせいで西がダメな男だと認識されるのは酷である。

自分にはどう逆立ちしても入らないささやかだが確実な幸せを、減量もできずボクシングを途中で捨てた西がいとも簡単に(西はそれなりに苦労しているであろうが)手に入れたことは、ジョーの中の孤独をさらに加速させボクシングへの執着を増幅させていき、結果ジョーをパンチドランカーにまで追いつめて行ったのだ。
ジョーの少年院脱走の時西に「成功したらうどんを差し入れするぞ」と言ったのがこのうどん事件への伏線であったとすれば、うどん事件は西よりもジョーの今後にとって重要な事件だったのだ。

減量苦と闘う力石と葉子

尋常ではない減量を続ける力石だが、さすがに精神的限界を迎えた。 水を求めて白木ジム内をかけ回るが、すべての蛇口は針金で縛られていた。 そうさせたのは葉子だった。 一度決めたことは頑として貫き通す力石の性格を熟知していた葉子だからこそ、いつか力石が限界を感じるときが来るのを待つしかなかったのだ。 葉子は力石にも人間らしい弱さがあったと喜びの涙を流しつつ、弱り切った胃に優しい白湯を力石に渡す。 しかし力石は葉子の差し出した白湯を捨て「これで決心が固まった、ありがとう」と葉子に礼を言って再び減量を続けるのだった。

力石の悲愴なまでのストイックさが惜しげもなく描かれた名場面であるが、葉子に対する力石の思いも垣間見られた。 葉子の涙を見て決心が固まったということは、以前から葉子を好きではあったけど、ツンツンしたお嬢様だと思っていた彼女にも人間らしい弱さがあったことを力石も喜んだと解釈できる。 力石の死後、葉子も力石に付き合って食事を一切摂らなかったと判明することからも、二人の美しくも悲しい恋の形がこの場面から伝わってくる。

力石の死

ジョーとの死闘の末、勝利と引き換えに力石は死んだ。 過酷な減量による体力不足、ジョーからのテンプル攻撃、そして倒れた時の後頭部打撲が重なったのが原因である。 ジョーが見た力石の死に顔は、眠るように安らかなものだった。 何も後悔のない、完全燃焼しつくした男の顔だった。

しかしジョーと葉子にとって力石は何者にも代えがたい存在だった。 残された二人は力石のいなくなった穴を埋めるため、苦難の人生を歩むこととなる。
ジョーにとっては、初めて自分を負かし、ボクシングの実力も男としての人生経験もはるかに凌駕した人生の目標であり、乗り越えるべき壁であった。
葉子にとっては、祖父や両親では代替できない、本来葉子が持っているギラギラした情熱を一身に受け止めてくれる、単純に恋人とは呼べない存在であった。

そしてジョーは自分にとって大事な人を自分が殺したトラウマに苦しみつつもボクシングにのめりこみ、体が成長期を迎えて階級を上げないと無理な状態になっても力石と戦ったバンタム級にこだわった。 そしてかつての力石のような過酷な減量をこなした結果、パンチドランカーの症状を自分から悪化させた。
葉子は、力石にこだわるあまり力石と同じ行動、同じ考えをするようになっていったジョーに魅かれていき、ジョーの試合をプロモートすることでジョーを支配するようになる。 かつて力石の減量に協力したのと同じように、葉子の行動はジョーを追いつめ、パンチドランカーの症状を悪化させる原因となった。
そんな二人を、周囲の人はだれも止めることができなかった。 無論、二人にとって力石がどれだけ大きな存在であるのかも知ることはない。

男のロマンとは、自分が傷つくだけではなく、周囲の人を犠牲にしないと達成できないものであると示すシーンである。

十点鐘(テン・カウント・ゴング)

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機動戦士Vガンダム(ヴィクトリーガンダム)のネタバレ解説・考察まとめ

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『機動戦士Vガンダム』(きどうせんしヴィクトリーガンダム)とは、1993年に放送されたロボットアニメ。『ガンダムシリーズ』の作品の1つで、「宇宙世紀」と呼ばれる時代の中で繰り広げられる戦争を描いている。物語後期の主人公機であるV2ガンダムは「光の翼」という特徴的な武装を持ち、その見栄えの良さから後に様々な作品で同様の装備が用いられた。 地球の不法居住者で暮らす少年ウッソ・エヴィンは、リガ・ミリティアとザンスカール帝国の戦争に巻き込まれ、その中でパイロットとしての類稀な素質を開花させていく。

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タイガーマスク(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

タイガーマスク(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『タイガーマスク』とは、原作:梶原一騎、作画:辻なおきによる1968年の漫画作品である。「月間ぼくら」、「週刊ぼくらマガジン」、そして「週刊少年マガジン」と3種類の雑誌に連載された。尚、本作はメディアミックス作品であり1969年からはTVアニメの放映もはじまり、全105話が放映されていた。謎の組織「虎の穴」から送り込まれてくる悪役レスラーと戦いながら、みなしごたちのためにつくそうとする覆面レスラーのタイガーマスクこと伊達直人(だて なおと)の姿を描いた作品である。

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