最上の明医〜ザ・キング・オブ・ニート〜（最上の命医）のネタバレ解説・考察まとめ

門脈圧亢進症（もんみゃくあつこうしんしょう）

肝臓や門脈（小腸から栄養分を多く含む肝臓に流入する血管）に特別な病変が存在しないにもかかわらず、門脈の圧が上昇し、食道静脈瘤が発生したり、肝臓の腫大、貧血等の症状を引き起こす。作中では豊臣淀が患っており、二次的に鉄欠乏を起こすほどで、寧々や義明に隠れてチョークを口にするなどの異食症を引き起こしていた。

コンパートメントシンドローム

正式名称、コンパートメント症候群。骨折や打撲などの外相が原因で筋肉組織などの腫脹がおこり、その区画内圧が上昇すると、その中にある筋肉、血管、神経などが圧迫され、循環不全のため壊死や神経麻痺を起こすことがある。作中では、アラスカ研修に出向いた義明たちが初めて治療した患者が交通事故により骨折と同時に引き起こしていた。

『最上の明医〜ザ・キング・オブ・ニート〜』の名言・名セリフ／名シーン・名場面

伊達正宗「人には誰にだって必ず大事な人間がいる。誰かのそういうのを守れるってよ、それだけでなんかかっこいいじゃねえか。」

「人には誰にだって必ず大事な人間がいる。誰かのそういうのを守れるってよ、それだけでなんかかっこいいじゃねえか。」このセリフは第1話で伊達が義明に対して言った言葉である。義明は忘れていたが、この言葉は元々義明が伊達に対して放った言葉でもあった。
幼少期ベーチェット病でサングラスをかけていた伊達をいじめていたいじめっ子を義明が一瞬で全滅させたのである。伊達は知り合いでもない自分を救った義明に対して「なんで俺を」と尋ねた。義明は「別にお前のためじゃねえよ。人にはよ、誰にだって必ず大事な人間がいる。」と言ったのである。医者の父親の背中を見てきた義明だからこそ言えたセリフである。

上杉謙神「人が何者かは性格や能力で決まるものであって、その人の名前や年齢、肩書とは関係がない。」

「人が何者かは性格や能力で決まるものであって、その人の名前や年齢、肩書とは関係がない。」アフリカ研修の際に、暴漢と戦闘し勝利を収めたものの、負傷した上杉が義明たちに対して言ったセリフである。上杉はアフリカの少年兵出身でそこを脱走し、西條命の恩師の神道護（しんどうまもる）に拾われたのである。その後、遠縁の上杉家に預けられ、平穏な生活を送ることができた。義明の「あんた何者だ」という質問に対して壮絶な幼少期を経ていたため「何者かは答えにくい」と返答していた。どんな過去を持とうと、今「自分」という存在を示すのに必要なものは能力や性格だけであるという意味を込められた言葉である。

最上義明「アンタや帝王大そのものには守るべき物がいくつかあるが、俺にはこの紙切れ含めて失う物は特にねえ。」

「アンタや帝王大そのものには守るべき物がいくつかあるが、俺にはこの紙切れ含めて失う物は特にねえ。」このセリフは、帝王大がしがらみと権威だけで技量の低い医者が沢山いる中、義明が三好に対して言ったものである。保険医登録（患者を診療する際に、この手続きを行っていなければならない）をしていない義明が勝手に患者を診察することは帝王大にとってかなりの損害になるが、それは義明にとっても破滅を意味していた。そこに付け込んだ三好は、義明を脅しにかかる。
最悪ニートになればいいと考えていた義明は、ポケットからくしゃくしゃになった医師免許証を取り出した。これは義明にとって「医者はいつクビになってもいい」ということを意味していた。三好は義明がここまで腹を括っていると想定していなかったのでその場から逃げ去った。一部始終を聞いていた竹中からは「見事な撃退方法だったね」と評価される。

医者の本当の存在意義

医大受験の時に突然倒れた女子高生、愛を救うために義明と伊達は救急車を呼びできる限りのことをした。間もなく救急隊が到着した。もともと息苦しそうだった愛はさらに呼吸困難な状態に陥っていた。義明と伊達は今すぐ気管内挿管を行うように救急隊に頼み込むが救急隊は規定上その作業をすることは許されていなかった。
見かねた義明は愛を抱えて救急隊に向かって一言、「どけよ」と言い放つ。救急隊が禁止されている行為を医学生ですらないただの高校生がやることは当然許されることではなかった。それでも義明は人命を最優先に考え救急車まで走り抜ける。一人ではとてもできる作業でないと判断した伊達もすぐに義明の後を追った。義明は伊達に試験に戻るように促すが、伊達はその意見を聞かずに救急車まで義明を追った。気管内挿管は本来全身麻酔をかけた状態で行うものだが、その時間すらなかったため患者をベッドに拘束し、伊達が頭を押さえつけ義明が気管内挿管を行う形で進めていった。
同じ教室で受験をしていた釈も救急隊を説得しながら義明たちの後を追った。釈が現場についたころには地面に座り込んだ伊達と義明の姿があり、すべてが終わったことを悟った。
釈は二人を慰めながら励まそうとした。そして釈が、救急車をのぞき込むと、そこには目を開き先ほどより少し表情が和らいだ愛がいた。かなりの苦戦を強いられたものの、気管内挿管は無事成功していたのだ。助かったといえる状態ではなかったが、救える可能性が桁違いに跳ね上がったのだ。義明たちはその後、規定違反の行動をとったため警察に事情を聴かれる。無論罪に問われることもなくこの一件は幕を閉じた。

大統領の息子を救った最上

義明たちがアフリカに留学中、スラム街を出る林道の入り口で停車している数台の高級車がいた。何か事情があると判断した上杉はすぐに車を降り高級車の近くまで駆け寄った。事情を聞くと大統領の息子の心臓が停止している状態だったために立ち往生してたのだ。義明、伊達、釈、愛、上杉の5人と大統領とその息子はすぐに大病院に向かった。
大病院には到着したが、そこでも治療は難しく心臓移植を行わなければならない病気だったのだ。今も心臓マッサージをやめればすぐに心肺停止してしまうほど危険な状態。
義明は人口心肺装置の代わりに、父親である大統領の血管を心肺停止状態の息子の血管と繋ぐという方法を提案する。この方法を使えば、およそ先進国に行くまでの時間を稼ぐことができる。しかし、この方法は人工心肺装置という存在のある今となっては法的に問題のある手段だった。患者の親は大統領ということですぐにこの手続きは行うことができ、五人は一時的に二人を繋ぐ簡易手術を行った。
すぐに政府専用機に乗り込み、飛行機の中で義明は「今回のような方法は大統領のような権力者だからできたが、一般人が到底できる方法ではない。結局自分たちができるのは可能な範囲で最善を尽くすということだけだ」と考えていた。普段は支離滅裂なことばかり話す義明にしては、かなり冷淡に物事を語る回でもあった。

『最上の明医〜ザ・キング・オブ・ニート〜』の裏話・トリビア・小ネタ／エピソード・逸話

賄賂

義明たちがアフリカ留学へ行ったときに、現地の看護師の交渉材料として用いたのが賄賂だ。もちろん賄賂と言っても、現地紙幣で200～300シル（日本円で約200～300円）程度。現地の看護師の平均月収は2万シル前後なので、この額で事足りるという。
実は作者もアフリカ取材の際に、この手段を用いたのである。同行したスタッフも協力し、警備員や警察をはじめ看護師、医者にいたるまで関係者や周辺人物に目にもとまらぬ速さで渡していったという。そして、病院の中やその周辺の環境状況などを撮影しまくったのである。

義明という名前の由来

「義明」という名前の由来について作中でこう語られている。「明」いう字は太陽を意味する「日」と月を意味する「月」の文字が合わさってできた漢字で様々な諸説があるが、父・一尊曰く「月と太陽を単に物理的な大きさで比較すると太陽のほうが大きく、その上月は太陽の光を反射し光っているように見えるだけで実際は光ってすらいない。これを逆に捉えると太陽は本来見えない月や数々の星の姿を照らし出しているとも言える。これに転じて目に見えない物の方が大事」という意味となっている。一尊はこれを「人の心」と考えており、普段は人には見えないが夜に月が見えるようにある時それが垣間見えるのと同じように、言葉の中にある思いをくみ取る。義明にはそんな風に「表には見えない大切な何かが見えるような人に育ってほしい」という願いを込めてこの名を名付けたと述べられている。

作者が本当に描きたかった物

『最上の命医』は『最上の明医～ザ・キング・オブ・ニート～』との二作品で一作品。作者、橋口たかし氏は最初は『最上の明医～ザ・キング・オブ・ニート～』（以後『最上の明医』）の方で、この作品を通して医療の何たるかを伝えたかったという。しかし、『最上の明医』の主人公は医者というにはあまりにも破天荒で不謹慎だと批判される可能性があったのである。そこで主人公の上司にあたる人格者「西條命」を主人公とした『最上の命医』を1部作とし、スピンオフ作品として先行して公開されることとなった。本作は、2部作にあたる『最上の明医』が本編で、作者が漫画を通して伝えたいことも『最上の明医』の方にあると語っている。

『最上の明医〜ザ・キング・オブ・ニート〜』の主題歌・挿入歌

OP（オープニング）：HI LOCATION MARKETS 『ライフラリズム』