おおきく振りかぶって(おお振り)のネタバレ解説・考察まとめ

『おおきく振りかぶって』とは、ひぐちアサによる日本の漫画作品。講談社「月刊アフタヌーン」にて2003年11月号より連載が開始された。従来のスポーツ漫画にはない繊細な心理描写や日常の細やかな描写が高く評価され、2006年には第10回手塚治虫文化賞「新生賞」を受賞した。2007年、講談社マンガ賞も受賞し、累計発行部数1000万部を突破。全く新しいタイプの野球漫画として高く評価されている作品。
弱気で卑屈な性格の投手・三橋を中心に、1年生だけしかいない県立西浦高校野球部が甲子園を目指す物語。

『おおきく振りかぶって』の概要

『おおきく振りかぶって』とは、ひぐちアサによる日本の漫画作品。講談社「月刊アフタヌーン」にて2003年11月号より連載された。累計発行部数1000万部を突破した大人気野球漫画。
テレビアニメが2007年から第1期、2010年4月から第2期がTBS・毎日放送他で、放送された。
野球漫画に革命をもたらしたと評される作品で、従来のスポーツ漫画にはない繊細な心理描写が丁寧に描かれており、高い評価を受けた。
軟式から硬式へとかわったばかりで新入生10人しかいない、しかも女性が監督を務める野球部が甲子園を目指すという王道を受け継ぐ筋書きでありながら、斬新な表現方法により「野球漫画に新風を吹き込んだ」と評価され、2006年第10回手塚治虫文化賞新生賞を受賞した。
2007年第31回講談社漫画賞一般部門を受賞。
文化庁メディア芸術祭10周年企画「日本のメディア芸術100選」マンガ部門に選出された。
2010年12月25日発売の「月刊アフタヌーン」2月号にて作者が1年間休載することが発表され、休載期間中はショートストーリー「小さく振りかぶって」を不定期連載。2011年11月発売の「月刊アフタヌーン」1月号より連載が再開された。
休載の理由は作者産休によるものと判明した。

物語の舞台となっている埼玉県立西浦高校は、原作者ひぐちアサの母校がモデルとなっており、作者はこの作品を描くために足繁く母校に足を運び取材を続けているという。
「おおきく振りかぶって」は「おお振り」と略して呼ばれている。

中学時代、群馬県で祖父が理事を務める学校で「ヒイキでエースをやらせてもらっている」とチームメイトから疎まれ、トラウマを抱えてしまった三橋廉。埼玉県の西浦高校に進学し、軟式から硬式に代わったばかりで1年生のみの新設野球部に入部することになった。そこで、投手に不信感を抱く捕手・阿部や天才肌の4番打者・田島、他、チームメイトと出会い関わることで三橋は「ホントのエース」に成長していく。
1年生10名しかいない無名高校野球部が甲子園を目指す奮闘を描く物語。

『おおきく振りかぶって』のあらすじ・ストーリー

三橋のトラウマ

投手をするように三橋(左)を説得する阿部(右)

埼玉県の西浦高校に進学した三橋廉が、野球部募集のチラシを手にグラウンド周辺を窺っている。三橋は中学時代、三星学園野球部で投手をしていたのだが、祖父が経営する学校ということもあって「ヒイキでエースになった」と陰口をたたかれていた。三橋は小柄で体重も軽く、まともな投球指導も受けていない。しかも捕手から極端に嫌われ、サインも出してもらえずに試合では負けてばかりだった。
このため自分に自信が持てず自虐的で、自分が野球をしたら人に迷惑がかかるからと思いながらも諦めきれずにグラウンド周辺を徘徊していたのだ。
そこを野球部監督の百枝まりあに見つかり、三橋はグラウンドの中に連れ込まれた。

西浦高校は軟式から硬式になったばかりの新設チームで、部員はまだ1年生の10人しかいない。他に投手がいないと分かっても三橋はなかなか投げられずにいた。蹲った三橋から中学時代の話を聞いた捕手の阿部は、「マウンドを譲らなかったことを投手としては長所だ」と褒め、三橋をマウンドに立たせた。
三橋の球を受けた阿部は、三橋の曲球に気づく。そして自信をつけさせるために中学時代4番を打っていたという花井梓と勝負させる。花井は監督が女性だということに不満を持ち、入部しないと口にしていたが、阿部の口車に乗せられて勝負を受けた。

花井との3打席勝負、阿部のリードを受け投げる三橋は、煽られて力む花井を打ち取っていく。
阿部は、三橋の曲球「まっすぐ」について部員に説明しながら、制球力という武器もあると話す。一方の三橋は阿部の配球の力を尊敬していた。阿部は部員に「三橋がいて球を取ってくれる野手がいて1点取ってくれる打者がいれば甲子園に行ける」と話すが、当の三橋は無理だと消極的だ。そこで監督の百枝は彼のトラウマを取り除くために、因縁の三星学園と練習試合をすると宣言した。

三星の選手たちと和解

GWに合宿を行った西浦野球部は、野球部顧問で数学教師の志賀から練習の質を上げるためのメンタルトレーニングを受け、効率よく練習をこなしていく。阿部は百枝と、三橋の育て方について対立する。一度は百枝の言葉に乗り、三橋とコミュニケーションを試みるものの、会話が続かず、業を煮やしてついには「全力投球しないで自分の言うとおりに投げろ」と命令した。

そして三星との試合当日、かつてのチームメイトに会うのが怖い三橋は制球も最悪な状態になり、恐怖から逃げ出してしまう。そこに中学時代の捕手・畠が現れ、「自分たちは三橋がマウンドを譲らず3年間負け続けたことを許していない」と脅しつける。
阿部は三橋を助け出すと、彼の手を取って励ました。その時、三橋の手のタコに気づき、彼の努力を認めずに野球部から追い出した三星に憤りを覚える。三橋の力になりたいと強く思った阿部は、これが百枝の言っていた捕手の役割なのかと思い至った。

阿部のおかげで落ち着きを取り戻した三橋。試合は西浦先攻で始まった。三星の先発は三橋がいたことでマウンドに上がれなかった叶だ。彼は三星で唯一三橋の実力を認めており、4回表、西浦に先取点が入り、それでもなお三橋をけなすチームメイトにとうとう怒りを吐き出した。叶が三橋を舐めないで真剣に試合をして自分を勝たせて欲しいと畠たちに頼むと、ようやく三星は真剣になった。
7回、ここまで三星の打者を抑えていた三橋だったが、5番の畠に癖を見切られホームランを打たれてしまう。逆転されて怯える三橋に、阿部は自分の落ち度だと謝罪した。
8回に西浦が逆転すると試合はそのまま終了。西浦の勝利となった。試合後、畠をはじめとする三星の選手たちは三橋に中学時代のことを謝罪した。戻ってこいとまで言われたが、三橋は西浦のエースとなる事を選ぶ。
疲れ切って眠る三橋を見て、阿部もまた三橋に3年間尽くすことを誓った。

スゴイ投手

春の県大会ベスト8の試合を見学に来た西浦高校。そこにはかつて阿部とバッテリーを組んでいた投手、榛名元希がいた。副主将の栄口は榛名を「すごい投手」と評するが、阿部は「最低の投手」だと言う。
榛名が中学2年の時に、当時1年の阿部が所属するシニアチームに入部してきた。榛名は故障の影響で人に対して攻撃的で、扱いにくい選手だった。阿部は榛名とバッテリーを組むことになるが、サインに従わず自分勝手に投げる彼に不満を抱える。そしてある公式試合で、榛名が怪我を嫌って全力投球をせず、また球数が80になった途端にマウンドを下りたことで阿部は幻滅。彼のことを「二度と組みたくない相手だ」と思うようになった。
試合は榛名が所属する武蔵野第一高校が勝利を収めた。榛名の全力投球はたった1球に終わった。

西浦野球部が結成されて1ヶ月が経ち、夏の大会に向けて動き始める。投手と捕手をもう1人ずつ確保しようとするチームだが、エースナンバーを他の人に渡したくない三橋は情緒不安定になり、捕手が阿部でなくなることに対しても抵抗し始めた。阿部は三橋に丁寧に控えの重要性を説き、さらに三橋の球は全て自分が受けると約束する。三橋は安心して練習に打ち込むようになった。

夏の大会とトラウマの克服

夏の大会に向けた練習試合を全勝で終え、西浦高校は試験週間に入る。選手たちは全員で三橋の家に集まり、試験勉強をすることになった。そこで手作りの投球練習場を見つけた阿部は、三橋の投球を見る。三橋のコントロールの良さを目の当たりにした部員たちは、彼のすごさを理解する。そして三橋も甲子園に行きたいと力強く言えるようになっていた。

夏の大会の組み合わせ抽選会場を訪れた西浦野球部。抽選会にて主将・花井は初戦の相手に去年の優勝校・桐青高校を引き当ててしまった。弱気になる部員たちを、チーム随一の実力者である田島や阿部が鼓舞する。
三橋と同じクラスの浜田は選手たちの頑張りに触発されて応援団を発足。さらに保護者会も設立され、西浦野球部は盛り上がりを見せていく。

そしていよいよ西浦対桐青の試合が開始。三橋はデータを駆使する阿部のリードで落ち着いた立ち上がりを見せる。だが阿部は、三橋のテンションが高いことが気になっていた。2点をリードする西浦は5回、犠打により1点を失う。続く6回で同点にされ、7回では雨でマウンドの足場が滑り、3点目を与えてしまう。三橋の球数も増え、体力の限界が見え始めていた。それでも三橋には自分が投げるという強い意志だけはある。そこに三橋のいとこ・瑠里が現れ、三星学園が7回コールドで勝ち、叶も7回を3人で抑えたと知らせた。それを聞いた三橋は奮起して続投を決める。

8回、ランナーコーチに出た田島の活躍と、雨による幸運で西浦が同点に持ち込む。9回には田島がシンカーに対してうまくあわせ、ヒットを打ち逆転に成功した。
その裏、三橋のまっすぐ対策のために球筋を見始めた桐青打線。阿部はまっすぐを決め球として使いアウトを取ろうとするのだが、中学時代に討たれ続けた三橋はまっすぐを連投できない。それを理解した阿部はシュートを要求する。しかし雨と疲れで思ったところに決まらず、先頭打者が塁に出てしまった。コントロールには絶対の自信を持っていた三橋は、思うように投げられなかったことにショックを受ける。阿部はあえて三橋を突き放すことで、自力で立ち上がれるように仕向けた。
阿部の思惑通り、マウンドを誰にも譲りたくない三橋は立ち上がり、グラブを構えた。投げられなくなることよりはましだとまっすぐ連投への恐怖を抑え、三橋は阿部の要求通りに投球する。

桐青は4番・青木に回った。まっすぐは打たれ始め、変化球も打たれている。もう自分は桐青に攻略されていると怯える三橋に、バックを守っている選手が檄を飛ばす。その声に励まされた三橋は阿部の構えたミットに向かって思い切り投げ込んだ。センターに転がった打球はキャッチしてアウト。そしてカバーに入ったライト花井がホームに矢のような返球をし、ホームでタッチアウトを取り、西浦高校は強豪桐青高校を5対4で破った。

翌日、三橋は力投の影響からか熱を出した。さらに試合中阿部に怒鳴られたことを気に病んでいて、見舞いに訪れた彼に土下座をする。阿部は「奮起させるための嘘だ」と説明するのだが、三橋は怯えたままだ。一緒に見舞いに来た田島や泉、花井から「頑張っている投手に声を掛けることは普通のことだ」と言われて褒められたことで、三橋はようやく中学時代のトラウマを克服することができた。

花井の成長

3回戦の相手を偵察するため野球場に来た西浦野球部。崎玉高校の投手が投げるスクリューに見入っている三橋に阿部が声をかける。だが三橋は手で口を隠し逃げてしまう。阿部は憤然とするが、チームメイトの沖の「阿部の大声に怯えているのだ」という注意を受けて、三橋とスムーズに意思疎通ができるようになっていく。

3回戦の相手は崎玉高校に決まった。桐青戦で右手を負傷した田島の代わりに4番は花井が入ることに。さらにミーティングの中で、阿部は三橋の負担を考えてコールド勝ちしたいと言う。花井は反対したが、10割打者の5番佐倉を敬遠する作戦でコールド勝ちを狙うことになる。

試合は崎玉先攻で始まった。作戦通り、西浦は5番を敬遠して試合を進めていく。攻撃では順調に点を重ね、4回で6点のリードを奪う。
この試合で百枝は花井の実力を引き上げることを目的としていた。花井は実力的には西浦No.2なのだが、No.1の田島の野球センスが良すぎて、田島のライバルにはとても成り得ない。これからの西浦の成長のためには、花井の実力を上げて、田島のライバルとなり2人で競いあうことで更なる成長を期待できると思っていた。
その期待通り、6回に花井が2打点を上げる。花井の活躍もあり、試合は0対8、7回コールドで西浦が勝利した。

4回戦、西浦は港南高校の対戦に勝利し、次は美丞大狭山高校との対戦になる。桐青と繋がりがある美丞大狭山高校の監督とコーチは、西浦が桐青を破った時点で西浦に注目しており、そのデータを念入りに分析していた。三橋の曲球、制球力、田島の実力、などを調べ上げ、西浦に付け込む点があるならば捕手の配球パターンにあると目星をつけていた。

足りないもの

西浦対美丞大狭山の5回戦が始まった。1回戦の桐青との試合からずっとデータをとり、阿部の配球を研究してきた狭山打線は、1回からばんばん打ってくる。阿部は打たれる理由がわからず、4番で主将の和田に2ランホームランを打たれ3点を取られてしまう。

2回に三橋が狭山用に作ったデータは役に立たないと気づき、阿部と百枝に進言する。阿部は自分の配球の癖を読まれていたことを知り、三橋にダミーで首を振らせる作戦に出た。その作戦が功を奏し、3回はクリーンナップを3人で抑えてみせる。
攻撃の面でも相手の裏をかくような戦術を採り、4回までに2点を取って点差を縮める。5回にはさらに2点を返して4対5とする。
しかし7回、ホームへの球がそれ、滑り込んできた狭山8番の倉田と阿部が交錯する。阿部は倉田を踏まないよう配慮した結果、足を負傷して立てなくなってしまう。この怪我で捕手は田島へと変わる。「三橋の球は全部自分が捕る」という約束を守れずに俯く阿部に、三橋は「…アウトあと2つ取ってくる、よ」と宣言した。

三橋・田島バッテリーは試合で組んだことがない。三橋は田島に頼られたことにより、今は自分がいろいろ考えなければいけないのだと実感し、それまで阿部に任せきりだったことを反省した。この試合に勝って阿部との関係を変えなければならないと三橋は思い始める。
一方の阿部もまた、「首を振るな」と言い、三橋に考えることをさせなかった事を反省していた。

7回の裏、田島は次の回の配球について考えてしまい、打席に集中することができない。8回の裏に花井と泉の活躍で1点返すことに成功するも、最終回に狭山の4番にスリーランを打たれる。三橋が声を出しチームの支えになったが、結局西浦は11対6で敗退した。この試合はバッテリーをはじめとして、それぞれが足りないものを自覚した転機となる。

関係の改善

夏の大会は終わったが2週間後の新人戦、さらに1ヶ月後の秋大会に向けて、西浦高校野球部は、部員全員の意識・目標を「甲子園優勝」に統一させることにした。
負傷した阿部の家を訪ねた三橋と田島は、美丞大狭山との試合を振り返る。田島は配球に気を取られて打席に集中しきれなかったことを、阿部と三橋はこれまでのバッテリーのあり方を反省した。

百枝は部員たちの希望通り、甲子園優勝を狙えるメニューを作成する一方、不測の事態に備えて、田島以外に一番適性のある花井に捕手の練習をさせる。
新人戦に向けた合宿では、三橋と阿部の関係改善のため、2人で多くの時間を一緒に過ごすように指示する。これまでは阿部が一方的に三橋に言いたいことを言うだけだったが、朝食づくりを経て少しずつお互いに言いたいことが言える関係に向かっていく。

阿部と榛名の和解

西浦高校は準決勝の武蔵野第一対ARC学園の試合を見学に来ていた。阿部は武蔵野第一の榛名に悪感情を持っているが、三橋にはそれが榛名にこだわっているように見え、それは凄い投手の榛名と本当のバッテリーとして組むことが出来なかったからだと考えていた。

先発の榛名は、強豪ARCの打線に初回から捕まり、3点を取られてしまった。しかし捕手を小さい頃から球を捕り続ける秋丸に替えるとそれ以降は無失点に抑える。だが7回に秋丸のミスで3点を失い、8回には榛名が疲れ始め連続失点。9回を戦わずしてコールドで武蔵野第一は敗れてしまった。

試合を観戦していた阿部は榛名がチームのために全力で投げている姿を見て、「自分だって全力で投げてもらえたら、いいリードができたのに」と悔しく思った。
試合後、三橋が榛名に聞きたいことがあるというので阿部もついていく。そこで阿部が中学時代のことで怒ると、榛名は謝罪した。阿部もまた、自分がけがをしたことで負傷して腐っていた榛名の気持ちが少し分かり、和解することができたのだった。

合宿と成長

榛名の肩を触らせてもらい、自分の体の貧弱さを痛感した三橋は、筋力不足を補うためにセットアップではなく振りかぶって投げることに決める。百枝と相談しながら進めた三橋の調整は力んでしまいコントロールがなかなか定まらず、実戦に使えるレベルになるには時間がかかりそうだ。だが完治しきっていない阿部が捕球することになると、これまでの力みが取れる。阿部と組むことで三橋の調整が進むと判断した百枝は、練習試合に振りかぶって投げる許可を出し、今の感じを忘れないように、阿部に向かって投げ込むようにと指示を出した。

全員の目標が甲子園優勝となったので、甲子園の雰囲気を感じるために、野球部全員で甲子園に行くことになった。
独特の雰囲気を持つ甲子園の試合を観戦し、次はスタンドではなく自分たちがグラウンドに立つのだと西浦野球部は強く誓った。

甲子園を後にした西浦高校野球部は、桃李高校・泰然高校・波里高校と合同合宿を行うことになった。初めての経験に西浦部員は戸惑いながら、強豪校の良いところを学び、自分達に活かせるように練習に励む。
練習試合の1試合目、西浦は桃李と対戦する。この練習試合は勝ち負けよりも、三橋の球がどれだけ通用するのか確かめる配球に徹する。まっすぐは、強豪校にも通用するのだが、強豪校はそれに気づくのが早く、対応も早い。田島は頭をフル回転させ配球を考える。打者としても投手の配球を考えることは必ず役に立つと考えてのことだった。
試合は8対8と引き分けだった。

第2試合は波里高校と対戦。
この試合の捕手は花井が務める。花井の素直な性格が出て単調なリードになってしまうが、三橋が自分なりの配球を述べて成長を感じさせる。試合は13対5と大敗だったが、自分たちの課題を再認識する良い機会となった。

三橋は合宿で夏の疲れが出て肘を故障し、先程の試合で肩を痛めてしまった1年生投手と出会った。彼の話から自分たちにも残された時間は後2年しかないのだと痛感した三橋は、「これ以降、絶対に怪我はしてはいけない」ことを阿部や皆に伝え、西浦部員は短い時間内で精一杯のことができるように決意を新たにした。

秋季大会

新人戦を3勝し、秋季大会のシード権を獲得した西浦高校。秋季大会の1回戦は武蔵野第一高校になった。三橋は阿部とのバッテリーで憧れの榛名と対戦できることを楽しみに思っていた。
一方の武蔵野第一では、チームに残っている2年生は榛名と秋丸の2人だけ、残りは1年生しかいない。その秋丸もレギュラーに対しての熱がなく、捕球以外は素人のようで明らかに練習不足である。榛名や周囲は秋丸の熱のなさに不安を感じていた。

武蔵野第一対西浦の試合が始まった。夏の大会を経て、三橋と阿部は対等の信頼関係を築き上げてきた。
2回に榛名のヒットから1点を奪われるものの、その裏で同点に追いつく。4回に三振した榛名がベンチに戻った際に「お前と居られるのも武蔵野第一までだぞ」と言ったことで、ようやく秋丸が1年生に正捕手の座を取られるのは嫌だと感じ始める。その裏で秋丸はサインを出す。榛名は最初、苛立ちを覚えたが、5回にはその変化に喜びを感じていた。

6回、花井がホームランを放ち、小柄な自分ではホームランを打てないと田島がライバルとして認識する。
7回、榛名はストレートは捨てるように指示を出したが、秋丸が三橋のストレートの球筋を見切り皆なら打てると提案する。その結果三橋のストレートが捕まり始め、これまでリードしていた西浦は逆転を許す。
8回に西浦が同点に追いついて9回。榛名の投げた球が暴投となり、三橋に向かってまっすぐ向かっていった。球を避けた三橋のバットに球があたり、ワンバウンドでサードのグラブに収まった。ホームを狙って飛び出していた3塁走者・阿部はサードと捕手に挟まれてしまった。だが秋丸の送球が阿部のヘルメットに当たり球が外野までいき、その隙に阿部はホームに生還。逆転サヨナラで西浦の勝利となった。

試合後、三橋は榛名に「バックスピンの練習をしろ」とアドバイスを受ける。阿部はフォームが崩れてコントロールが乱れることを恐れていたが、三橋の意思は固く、少年野球の監督を務めていた百枝の父のもとバックスピンの練習を始めた。しかし本格的な改造は秋季県大会の後ということになった。

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@taz046

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