二ッ星の料理人(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『二ッ星の料理人』は2015年にアメリカで公開されたヒューマンドラマ映画である。料理の世界を舞台に、孤高の天才料理人・アダムの挫折と成長の軌跡をたどる美食エンターテイメント作品だ。酒とドラッグに溺れ転落したアダムは、再起を目指してロンドンでレストランをオープンさせる。完璧な料理を追い求めようとするアダムは周囲とぶつかり合いながら、完璧なだけでは人の心を動かせないことに気付いていく。天才だが横暴なシェフが、出会った仲間との絆や恋を経験し、人として成長していく姿を描いた心温まるヒューマンドラマだ。

権威があって有名な食のガイド。1つから3つの星の数で店を評価する。身分を伏せた調査員が2人組で店を訪れ、コースとアラカルトを注文するという流れだ。スーツを着こなした礼儀正しい人物だが、床にそっとフォークを置いて従業員の反応を確かめたりする。このミシュランの星の獲得についてデヴィットは「(星を)1つ獲得でもルーク・スカイウォーカーだ、2つ獲得ならそれはアレック・ギネス、もし3つ獲得できたらヨーダだよ」と語っている。ルーク・スカイウォーカーは名作『スター・ウォーズ』シリーズに登場する主人公だ。ルークは宇宙戦士で強力な戦闘力を持っている。アレック・ギネスはルークの師オビ=ワン・ケノービを演じた役者である。オビ=ワン・ケノービはそのルークを育て上げた偉大な指導者なのだ。そしてヨーダはその戦士達のトップであり、もはや生きる伝説と呼ばれている存在だ。デヴィットのセリフから、星の数が上がっていくごとに権威が増し、三ツ星ともなるともはや伝説の域に達するということがよくわかる。

アダム・ジョーンズ・ランガム

アダムがパリ時代の失敗を経て、三ツ星獲得のために再び開店したレストラン。資金は自分に惚れているトニーに出資させ、自分のお眼鏡にかなったエレーヌ、ミシェル、マックスなどの料理人を引き抜いてくる。内装は2007年のパリ風で、落ち着いた雰囲気の高級フランス料理店だ。アダムは自分の再起をかけて、このレストランを完璧なものにしようと鬼のように周囲に厳しくする。しかしトニーやエレーヌの愛情に触れて、料理にとって何が一番大事なことかをここで学んでいく。

スーヴィード

真空調理器のこと。食材を低温で調理し、旨味を引き出す調理器具だ。もはやフライパンなどは過去の遺物と言われており、料理界ではこのような新しい調理法がどんどんと取り入れられ、新たな食の扉が開かれている。アダムは最初パリ時代の古い調理法を引きずっており、このような新しい調理法などは頑なに受け入れなかった。しかしエレーヌの提案でこの調理器を採用し、アダムの中で新しい料理観が芽生えていく。天才と新しい調理法が融合した「ランガム」は人気繁盛店となっていった。

『二ッ星の料理人』の名‌言・‌名‌セ‌リ‌フ‌/‌名‌シー‌ン・‌名‌場‌面

登場する絶品料理の数々

「料理のオーガズムを追及する」と言い放つアダムの料理は、どれも美しく洗礼されている。「食う料理じゃなく、味わう料理を作る」と語るアダムの料理は、まるで芸術品と言っても過言ではない。残念ながら映画なので直接味を確かめることはできないが、今作を見ただけで高級なディナーを堪能したような満足感を味わえる。

エレーヌ「人間関係や愛情を繋ぐものよ」

厨房で料理について語り合うエレーヌ(左)とアダム(右)

アダムに「料理とはなんだ?」と聞かれ、エレーヌは「人間関係や愛情を繋ぐものよ」と答える。バカバカしいと一蹴するアダムは「客が待ち焦がれる料理を作りたい」と熱く語り、「それには君が必要だ」と告白する。ただ単に上司が部下に方針を伝えているだけのシーンなのだが、妙にエロティックでまるで愛の告白をしているような雰囲気を醸し出している。この情熱にほだされたのか、エレーヌは顔に笑みを浮かべた。天才アダムの熱い情熱を受け、2人の間に初めて絆が生まれる心温まるシーンだ。

ロッシルド医師「強いから人に頼れるの。弱いからじゃない」

血液検査をしながらアダム(右)に教え諭すロッシルド医師(左)

人間関係も料理もすべてに完璧を求めるアダムに、「強いから人に頼れるの。弱いからじゃない」とロッシルド医師はアドバイスを贈る。アダムは最初その言葉を素直に受け取らなかった。自身が優秀であるため世界は完璧であらねばならないと信じ込み、アダムは不完全なものを受け入れられない人間なのだとロッシルド医師は分析した。だからこそアダムは人間関係に軋轢が生まれ、追い詰められて酒やドラッグに溺れる人生を歩んできた。豊かな人生を送るためには完璧が大事なのではないというロッシルド医師のこの言葉は、アダムだけでなく頑張っているすべての人に届けたい真意を含んだメッセージである。

リリーと誕生日ケーキ

アダムがリリーに贈ったケーキ

アダムは1人娘の誕生日にさえエレーヌに休みを許さなかった。アダムはそんな自分の冷酷さに気付き、リリーのために誕生日ケーキを作る。自信満々でリリーに味の感想を聞くと、彼女は「2番目かな」と答えた。リリーにとってはどんな高級料理よりも母の手料理が1番なのだ。完璧に仕上げた料理は感動を与えるが、心の繋がりや愛情がこもった料理の方が人の心に残るのだということをアダムは悟る。天才と呼ばれた男が、まだ年端もいかない小さな女の子に人生で一番大事なことに気付かされる。なんとも言えないジワリとした感動が胸をよぎるシーンだ。

『二ッ星の料理人』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

世界一セクシーな男が演じたシェフ

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