クルエラ（ディズニー映画）のネタバレ解説・考察まとめ

『クルエラ』の概要

『クルエラ』とは、2021年に公開された、アメリカ合衆国の映画である。第94回アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞し、続編の制作が決定している。監督はオーストラリア出身のクレイグ・ギレスビー、脚本はデイナ・フォックスとトニー・マクナマラ、ストーリー原案は、アライン・ブロッシュ・マッケンナ、ケリー・マーセル、スティーヴ・ジシスが務めた。クルエラ役は、『ラ・ラ・ランド』で主人公を演じたエマ・ストーンである。
ファッションに興味を持つ少女エステラ・ミラーは、数多くの問題行動のため学校を退学させられてしまう。エステラの母親であるキャサリン・ミラーは、ロンドンへの引越しを計画し、資金援助を求めるため、道中でフォン・ヘルマン男爵夫人主催のパーティーに立ち寄る。そこでエステラは、母のキャサリンが男爵夫人のダルメシアンたちに、崖から突き落とされるのを目撃してしまう。やっとの思いで会場から逃げ出したエステラはロンドンにたどり着き、泥棒をしながら生活をしている少年たち、ジャスパーとホーレスに出会うのであった。時は流れ10年後、ジャスパー、ホーレスとともに泥棒をしながら、エステラは変装時の衣装を作ることでファッションセンスを磨いていた。ジャスパーの計らいで百貨店で働くことになったエステラは、偶然にもトップデザイナーであるバロネスにスカウトされる。バロネスの下で働きながらようやくデザイナーとして才能を認められるようになるが、母キャサリンの死について残酷な真実を知ることとなる。こうしてエステラはクルエラとなり、母の復讐を誓うのであった。
本作はディズニー映画『101匹わんちゃん』で有名な悪女クルエラの、誕生秘話が描かれている。また、アニータやロジャーといったおなじみのキャラクターが登場するなど、『101匹わんちゃん』をよく知る人はより楽しめる作品ともいえるだろう。主人公のエステラ（クルエラ）やバロネスがファッションデザイナーということもあり、モダンかつ斬新なファッションも見どころの1つである。

『クルエラ』のあらすじ・ストーリー

主人公エステラの幼少期と母キャサリンの死

生まれつきの白と黒のツートーンヘアが特徴のエステラ・ミラーは、優しい母キャサリン・ミラーとともに暮らす、ファッションが大好きな少女である。幼少期から自己主張が強く、母から「クルエラ（悪い子）は出さないで」と度々たしなめられていた。学校に入学する際、娘が周りとなじめるか心配するキャサリンだったが、案の定エステラは、いじめっ子に殴りかかるなどの度重なる問題行動のため、校長より退学を言い渡されてしまう。その後母娘はロンドンへ引っ越すことを決意し、道中で知人の家へと立ち寄る。この知人女性は金持ちの男爵夫人で、キャサリンは彼女に資金援助を申し出るつもりであった。夫人のお屋敷ではきらびやかなパーティーが催されており、「車で待っているように」という母の言いつけを破って、エステラは愛犬バディと共に会場へ紛れ込んでしまう。そこではファッションショーが行われており、自分が憧れていた世界を間近で見た彼女は目を輝かせる。飛び出してしまったバディを連れ戻そうとした際、エステラはお屋敷の執事に見つかってしまった。とっさに逃げ出し、会場にいた大型のダルメシアン3頭に追われて庭に出たエステラは、夫人と話をしているキャサリンの姿を見つける。母に助けを求めようとするエステラであったが、後ろから追ってきたダルメシアンたちはなぜかキャサリンに飛び掛かり、なんと彼女を崖から突き落としてしまう。エステラは茫然とするが、偶然通りがかったゴミ収集車に乗り込むことで、バディとともに会場から逃げ出すことに成功する。その後、エステラはロンドンのリージェンツパークに降り立つ。ここは、母キャサリンが「ロンドンに引っ越したら行きたい」と話していた場所であった。母の死を噴水の前で悲しんでいると、2人組の浮浪児の少年と出会う。この2人は身寄りがないために泥棒で生計を立てていた。警察に追われる2人をエステラは追いかけ、少年たちのアジトにたどり着く。互いに似た境遇ということもあり、エステラは少年たちと打ち解け、母が死んで1人ぼっちであることを話した。少年たちはジャスパーとホーレスという名前で、仲間にならないかと、エステラを誘う。エステラは承諾し、目立たぬように髪を赤く染めて、泥棒生活をスタートさせる。

バロネスとの因縁

10年後、エステラはジャスパー、ホーレスとともに泥棒稼業で生計を立てていた。その際に変装で使用する衣装を作り、裁縫の腕とファッションセンスも磨くこととなる。3人での生活は楽しかったが、エステラはファッションデザイナーとして働く夢を諦めきれない。そんな彼女を見たジャスパーは、百貨店の採用履歴書を偽造して、エステラがそこの従業員になれるように計らう。エステラは大喜びするが、実際にあてがわれた仕事は清掃員であった。それでも諦めきれず、エステラは百貨店の上司に自身のデザイナーとしての才能をアピールし続けるが、上司は無視をし続ける。嫌気がさしたエステラは、酔った勢いで勝手に百貨店のディスプレイを大幅に改造してしまう。翌朝、上司にそのことがばれてしまうが、偶然訪問していたトップデザイナーのバロネス・フォン・ヘルマンにディスプレイが評価され、エステラはスカウトされた。翌日、バロネスの会社へ向かったエステラは、早速洋服のデザインを要求され、まずまずの評価を受ける。バロネスの秘書のような仕事もしつつ、デザイナーとしての才能をみるみる開花させていく中である日、エステラはバロネスが亡き母と同じネックレスをつけていることに気がつく。ネックレスについてバロネスに尋ねたところ、彼女は「以前、従業員が盗んだもの」と答えた。バロネスが母の死に関わっているのではと考えたエステラは、ジャスパーとホーレスの協力のもと、ネックレスを取り返す計画を練る。バロネス主催のパーティーが開かれ、そこに白黒の2トーンヘアーの女性が派手に登場する。それは変装したエステラだが、バロネスも気がついていない。エステラがバロネスの気を引いているすきにジャスパーとホーレスが金庫からネックレスを盗み出すという作戦であったが、金庫は空で、肝心のネックレスはバロネスが身に着けていた。ジャスパーとホーレスが警備に発見され、バロネスがダルメシアンをけしかけるために犬笛を吹いた。その犬笛の音で、エステラは母キャサリンの死に際を思い出す。あのときの男爵夫人はバロネスで、犬笛を使用することで故意に母を崖から突き落としたのだ。激しく動揺するものの、エステラは我に返り、ネックレスを再び手に入れようとするが、ダルメシアンのうちの1匹が誤ってネックレスを飲み込んでしまう。計画は失敗に終わるが、エステラはジャスパー、ホーレスとともに会場からなんとか逃げ出すことに成功する。

バロネスへの復讐とクルエラの死

母が殺された事実を知ったエステラは、クルエラとしてバロネスへの復讐を胸に誓う。彼女の様子は自分たちの知っているエステラではなく、ジャスパーとホーレスは戸惑いを隠せない。だが、家族同然であるエステラを放っておけず、2人は復讐の手伝いをすることを決める。まず、クルエラは幼馴染である記者のアニータとコンタクトをとる。アニータは小学校時代の同級生であり、エステラとは真反対な性格であったが仲の良い友達であった。クルエラはゴシップ記者のアニータに自分の記事を書かせることで、世間の注目をバロネスから奪う作戦に出る。また、ネックレスを取り戻すために、ネックレスを飲み込んでしまったバロネスのダルメシアンを誘拐するよう、ジャスパーとホーレスに指示した。バロネスがマスコミに囲われたタイミングでわざと派手に登場して目立つなど、度々バロネスの妨害をし、世間の注目を浴びながら、クルエラはファッションデザイナーとしての実力も世間に示すことに成功する。クルエラとして復讐を実行する一方で、エステラは未だに正体がばれることなく、バロネスの下で仕事を続けていた。バロネスの春のコレクションを邪魔するために、エステラはとっておきのドレスを作成する。バロネスの春のコレクション発表当日、エステラは会場に姿を現さない。おまけに、発表するドレスを保管していた金庫が開かないというトラブルも発生。焦ったバロネスは金庫を壊して無理やり開けるが、中からは無数の蛾が飛び立ち、会場はパニックになる。なんと、エステラが新作ドレスに縫い付けていたビーズは、羽化前の蛾の卵だったのだ。蛾の大群から逃げ出して外に飛び出た人々を、ロックな音楽とカラフルなライトに包まれた、クルエラによる野外ファッションショーが出迎える。クルエラも自らステージへと上がるが、ダルメシアンの毛皮で作られたワンピースを身にまとっており、それを見たバロネスは驚愕する。またもや世間の話題を奪い、バロネスの春のコレクション発表をぶち壊したエステラは、上機嫌で帰宅した。すると、ジャスパーとホーレスが椅子に縛り付けられており、クルエラもバロネスの部下たちに取り押さえられてしまう。バロネスは部下たちに火を放つよう命じ、その罪をジャスパーとホーレスに着せるために2人を警察に引き渡し、アジトを後にする。クルエラは必死に逃げ出そうとするが、燃え盛る炎の中、意識を失う。

バロネスの更なる秘密

炎の中で意識を失ったクルエラだったが、目を覚ますとバロネスの側近のジョンがいた。なぜ自分を助けたのか疑問に思っているクルエラに、ジョンはバロネスが身に着けていたネックレスを渡す。そして、そのネックレスはエステラの出生証明書が入った箱のカギであると彼女に告げ、バロネスが本当の母親であることを打ち明けた。その昔、バロネスは男爵との間に子を授かったが、自分のキャリアに集中するために赤子を殺すようにジョンに命じた。しかし、ジョンは子供を救うために、メイドのキャサリンに子供を託し、秘密裏に自分の子供として育てるよう命じたというのが、エステラ出生の秘密であった。動揺するエステラは1人、リージェンツパークへと向かう。母であると思っていたキャサリンに、嘘をつかれていたことに対して憤慨するが、すべての真実を知ったエステラはクルエラとしてもう1度、バロネスに復讐することを胸に誓った。その頃、クルエラ殺害の罪でジャスパーとホーレスは刑務所に入れられていたが、突如刑務所にトラックが突っ込み、脱獄に成功する。それは2人を助けに来たクルエラの仕業であったが、利用されることに疲れていた2人は取り合わない。だが、過去の真実を受け入れたクルエラは2人に謝罪し和解する。仲間を集めたクルエラは、最後の復讐のために準備を進める。一方、バロネスは最大のライバルが消えたことで、安堵しながらチャリティパーティーを主催していた。乾杯の音頭をとろうと広間に向かうと、招待客が全員クルエラと同じく、白と黒のツートーンヘアで出席しているという異様な光景を目にし、息をのむ。

エステラの死とクルエラの行く末

招待客にクルエラと同じ格好をさせるのは、復讐のための作戦の1つであった。このことでクルエラが生きていることを知ったバロネスは、部下たちにクルエラを探させる。仲間たちの協力でバロネスを庭に誘いこむことに成功し、エステラの姿で2人は対峙する。そして、クルエラは出生の秘密を知ったことを、バロネスに話した。すると、バロネスは今までの苦労をねぎらい、エステラの姿をしたクルエラを抱きしめようとするが、そのまま彼女を崖から突き落としてしまう。これでようやく邪魔者がいなくなったと安堵するバロネスだったが、殺害の瞬間をいつの間にか庭に出ていた招待客たちに見られていた。焦るバロネスであるが、もはや言い逃れはできない。そのまま警察へと連行されるが、エステラの名前と姿を捨て堂々と登場したクルエラがその様子を見届ける。崖から転落した彼女は、スカートに仕込んだパラシュートで危機を脱していたのであった。こうして、復讐はようやく終わる。
それから数日後、エステラの葬儀がささやかに行われた。ごくわずかな参列者の中には、クルエラの姿もあった。バロネスの館を相続したクルエラは、館の名前「Hellman Hall」を「Hell Hall（地獄の館）」へと改め、物語は幕を閉じる。

『クルエラ』の登場人物・キャラクター

主人公

エステラ・ヴォン・ヘルマン／クルエラ・ド・ヴィル（演：エマ・ストーン、ティッパー・ザイフェルト＝クリーブランド）

日本語吹き替え：柴咲コウ、佐野仁香（子供時代）
本作の主人公。周りが何を言おうと自分の考えや価値観を貫き通す、強い意志を持っている。幼少期より、奇抜なファッションや自己主張の強い性格で度々周りと衝突するが、類まれなるファッションデザイナーの才能を発揮していた。本名はエステラだが、いたずらをするたびに母のキャサリンに、「クルエラ（悪い子）は出さないで」と言われていた。バロネスへの本格的な復讐の際、地毛である白黒のツートンヘアで登場するときは、エステラではなく「クルエラ」と名乗る。母キャサリンの死後、ジャスパーとホーレスと出会い、泥棒稼業で使用する変装用の衣装を作成することで、ファッションの才能を磨き続けた。頭も良く、周りをほとんど評価しないバロネスに、「やっと有能な人物があらわれた」と言われる。バロネスがキャサリンを殺したということを知り、バロネスへの復讐を決意する。

クルエラの仲間

ジャスパー（演：ジョエル・フライ、ジギー・ガードナー）

日本語吹き替え：野島裕史、室伏佑哉（子供時代）
相棒のホーレス、エステラとともに、身寄りのない幼少期より泥棒稼業をして生計を立てている。ユーモアのセンスもあるが、冷静で思慮深い面も持ち合わせており、優しい性格である。エステラのデザイナーになりたいという夢のために百貨店従業員の履歴書を偽装したり、復讐の手伝いをしたりなど、仲間のためであれば危ない橋も平気で渡る。