リメイク版『ドラえもんのび太の大魔境』サベール隊長について

今更感満載ですが、敢えて。『おそ松さん』人気もありますし、トキワ荘出身の巨匠作品のリメイクという意味合いで選びました。原作準拠ということで、旧作アニメのように「犬種違うんじゃね?」と思うようなゴツイ犬ではなく、といって完全なコピーと言うわけでもない。しかもキャラが掘り下げられています。これも、制作側の方針だったようです。(ネタバレあり)

原作、旧作にもなかった、ドラえもんたちが隠れている馬車を止めて、荷を改めるシーン。積んでいる藁の下に何があるのかを聞き、「調べても構わんな?」と、部下に命じて藁をどかせました。ペコたちが隠れていると踏んでのことでしたが、イモに化けていたため、馬車を走らせていた少年チッポに対し、謝っていました。
「妙な匂いがした」というのが理由ですが、この数分で嗅覚、感覚の鋭さと騎士道精神、剣の腕の一端が描かれています。
同時に子供だろうと、疑わしい奴には容赦しない様も。
何たって、ノールック(右側はサベール隊長にとって死角。タイミングを間違えれば頭を斬っていた可能性もあります)で剣を振り下ろして止めるんですから。
疑っている時と謝った時とで若干声のトーンが違っていましたが、気まずさを隠すというより、「怖がらせてごめんよ」という気持ちがあったのかもしれません。

部下が荷物を調べている間、ずっと剣を目の前に突き付けたままの用心深さ。原作でも旧作でも馬車がすれ違うシーンはありましたが、共に素通りしています。

対戦相手はのび太(旧作ではペコ)

旧作ののび太は、雑魚兵士相手に電光丸を振り回すだけという体たらくでした…。

対戦相手はのび太。「ペコじゃないのかよ!」「何のための再戦フラグだよ!」とのご意見もありますが、原作でも食い止め役としてのび太が対戦。
単なる原作準拠、というわけではなく仲間のためにというのび太の決意や覚悟が追加されていました。手に持っているのは名刀電光丸というレーダー内蔵の剣。
相手の動きを感知して自動的に動き、寝てても勝てるという反則級の剣です。電光丸の力で自分の攻撃をしのいだのび太を、サベール隊長は剣豪と思い込み、ノリノリで勝負を仕掛けてきます。
22世紀の科学力が生んだ剣でも受け止めるのが精いっぱいの猛攻の果て、電光丸はバッテリー切れと相成りました。
「ドラえもん、充電しとけ」と思う所ですが、サベールの攻撃に対処するためフル稼働したことでの電池切れのようです。つまり、サベール隊長の剣技はそれだけの腕前の主というわけ。ただ、電池切れして回避能力を失った電光丸を持つのび太に、攻撃を避けられまくっていたことにも苦言を呈されています。

原作でも旧作でも眼帯が外れた顔は拝めませんでした。兜の破壊も含め、キャラの深掘りを感じさせるシーン。

結果は、巨神像の起動に伴う振動でタイミング、狙いがずれたことによりのび太渾身の一撃が決まっての敗北。
文字通り兜が割れるほどの衝撃を受けたサベール隊長は倒れ込みました。振り返り、「見事だ」の一言を述べて。
これが単なる気絶なのか、それともそのまま死亡なのかは不明ですが、もしこの段階で息があったとしても部下が逃げた後通路が崩壊したためどのみち助からなかった可能性は大。武人の面も強調されたリメイク版隊長にとっては戦死はむしろ望むところかもしれません。

【原作】やはりのび太の兜割りで階段から転落。生死不明。

【旧作】巨神像起動時、歯車にマントを巻き込まれた上、それが破れたことでバランスを崩し転落。歯車に頭をぶつける描写があり、はっきり死亡シーンが描かれています。

サベール隊長以外の変更点・登場人物・キャラクター

ペコ

「ご苦労」とのセリフや道具の催促など、王族ゆえの無意識の上から目線的な言動が消滅。
自国民と文字通り目線を合わせ励ましの言葉を贈る、のび太たちが協力を買って出た際は泣いて感謝するといった気高く謙虚な一面が追加。
半面国を取り戻し王になるという立場と、責任感の強さや無力さからくる自信のなさをのび太だけに吐露するなど、強さと弱さの描写が成されていました。
それだけにソーセージを分け合って食べるシーン、別れのシーンでののび太との友情が際立っていたとの意見があります。ただの犬の振りをしていた時から首をかしげる癖がありましたが、王に即位してからも変わらずで、「のび太にとっては、大事な友達のペコ」であることが強調されていました。
旧作では予言のことを知りませんでしたが、今作では自らのび太たちに説明。原作では若干態度が淡々としています。人間の世界に来ることになった経緯が今作では大幅に変更されました。

【原作・旧作】王共々病死(王の暗殺方法は不明)扱い。ペコ自身は生きたまま棺に追い込まれるシーンが描かれて、その棺が水中に落下。

【今作】父王バウワンコ108世を殺した反逆者として追われる身になります。水車の動きを利用しての逃亡、兵士たちの追撃をどうにか交わすなど、まずまずの逃走劇を見せますが、崖の上で待ち構えていたサベールと対決。そのまま崖っぷちで剣の決闘を開始します。
足場が崩れて落下、人間の世界に流されました。国王殺しの罪を着せられているのに何故かニセ王子扱いで指名手配されていましたが、国民の祝福を見るに、誰もペコが殺したとは思っていなかった模様。

出典: doraeiga.com

スピアナ姫

出典: d.hatena.ne.jp

旧スピアナ姫。お淑やかでか弱い、まさに囚われの姫。

ペコの婚約者。原作、旧作共に白いスピッツと思われる犬種。ダブランダーに連れ去られそうになるなどか弱い囚われの姫と言った印象でしたが、今作では褐色の美少女犬風に変更。
衣装もどこか異国情緒のあるものとなっていました。言い寄るダブランダーの手をはねのけて物申すなど、精神面でも芯の強さが垣間見え、王になったペコとのび太との友情を察知する聡明さまで描かれました。

出典: www.tv-asahi.co.jp

何拍子もそろった新スピアナ姫。ビジュアル面での痕跡ゼロです。

ブルスス

旧ブルスス。片手で兵士を張り倒せる怪力。

先王に仕えていた親衛隊長。ペコ曰く「この国で最も頼りになる」忠臣で、それ故にダブランダーからは邪魔者扱いされて投獄。
茶色の毛に人のよさそうな顔つきからクリーム色の毛、ややコワモテの風貌に変わりました。コワモテと言ってもそれは警戒時や敵陣にある時で、普段は温厚です。
王子との再会時やのび太たちが予言の外国人かもしれないと知った時に大声で泣いて喜ぶなどコミカルな一面も。
一人で武装した複数兵士相手に大立ち回りを演じる、木を引っこ抜いて武器代わりにするなど、戦闘力は折り紙付き。ラストで親衛隊長に復帰し、甲冑姿で登場。

出典: www.tv-asahi.co.jp

新ブルスス。通り抜けフープに引っかかりました。

チッポ

ダブランダーによる被害者的少年。両親を兵器製造員として連行される経緯や、家畜であるツチブタ(馬のようなものです)との絆も少し描かれました。
性格が大幅に変更されており、大人しめだった原作や旧作と違い兵士に盾つく、木の剣を作って両親を助けに行くと息巻くやんちゃ坊主になっていました。
原作や旧作では王子一行をこっそり運ぶ、ブルススの幽閉場所を知らせる以外目立った活躍がありませんでしたが、今作では連行された大人たちに王子の生存、命がけの戦闘を知らせ、ダブランダーを追い詰めるのに一役買いました。

出典: www.tv-asahi.co.jp

ダブランダー

『ドラえもん』映画初の、世界征服を企てた人物です。元の地位はバウワンコ王国の大臣。ペコの父、バウワンコ108世を毒殺、その罪を王子であるペコに押し付けることで王位を簒奪。
ペコ曰く「悪知恵が働く」とのこと。恐怖政治を敷いているため人望はまるでなく、兵士から「人気がない」とぼやかれるほど。
旧作ではキビキビと指示を出していましたが、今作では未来から来たのび太たちの活躍ぶりを影から見て「さっさと片付けろ!」と余裕のない檄を飛ばすなど小物ぶりが目立っていました。
戦っている部下を見捨てて王宮へスピアナ姫を連れ去りに向かいますが、決起した国民を見てやけ気味に心中を決行。
捕らえたものの、巨神像により天井が削れて、瓦礫が頭に直撃して昏倒。
旧作では「国は子せがれにくれてやる」と言い捨てスピアナ姫を連れ去ろうとしたところに皆が到着。ペコの剣で王冠を断ち切られての退場でした。

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