リメイク版『ドラえもんのび太の大魔境』サベール隊長について

今更感満載ですが、敢えて。『おそ松さん』人気もありますし、トキワ荘出身の巨匠作品のリメイクという意味合いで選びました。原作準拠ということで、旧作アニメのように「犬種違うんじゃね?」と思うようなゴツイ犬ではなく、といって完全なコピーと言うわけでもない。しかもキャラが掘り下げられています。これも、制作側の方針だったようです。(ネタバレあり)

サベール隊長とは

『ドラえもん のび太の大魔境』に登場した悪役です。外界と隔絶されて犬が進化を遂げ、文明を築くバウワンコ王国の悪大臣、ダブランダーに仕える親衛隊長という肩書き。恐らく犬種はドーベルマン。
剣の達人であり、原作、旧作今作いずれもその達人ぶりを発揮。原作では右目が真っ白に見えますが、これは眼帯。

こうして見ると老けてます。隊長ですし、それなりの年なのかもしれません。

ダブランダーの野望は5000年前に封印された古代兵器たる火を吐く車、空飛ぶ船の復活及び、世界征服。これら兵器の研究、開発を危険とした初代国王により封印されてたんですが、科学者を味方につけたり王や王子を暗殺したりのやりたい放題でした。

『ドラえもん のび太の大魔境』とは

アフリカを舞台に、前半は秘境の冒険、後半は悪者からの政権奪還という、まるで違ったドキドキ感やワクワク感があります。
のび太がたまたま空き地で見つけ、ソーセージをあげた野良犬ペコが、実は犬の国の王子だったことや、便利な道具を置いてきたことによるピンチ、国に伝わる予言のからくりなどの伏線の回収も物語を盛り上げている要素です。
のび太、ジャイアン共々それぞれの友情をペコとの間に築く演出も胸熱と評判の作品。リメイク映画版ではそれがさらに強調、キャラクターの深掘りもされていました。先取り約束機という、何の戦力にもなり得そうにない道具がキーとなるなど、道具の使い方が実に巧妙な作品でもあります。

【先取り約束機】「明日必ず食事をとるから、今すぐ満腹にして」など、この機械に約束すると、結果を先取りできるというもの。この場合は食事をしたのと同じ結果である匂いや味を感じ、満腹感も得られます。しかし約束は必ず守らねばならないので、翌日は二日分食べなくてはなりません。

バウワンコ王国

アフリカはコンゴ地方にある国。外界と隔絶されており、流れの激しい水路が唯一の出入り口です。
常に霧が経ち込めている「ヘビースモーカーズフォレスト」という地帯にあり、現地付近の原住民族(人間)からは霧に閉ざされた神の国と認識されています。ドラえもんの科学力をもってやっとたどり着けるといった場所。
外界とは違った生態系が発達し、猿ではなく犬が知的生物として進化しました。旧作によると、知能はバウワンコ国民の方が高いそうです。
5000年前は高度な科学技術を持っていたようですが、兵器開発の封印と共に文明は衰退。古代ローマレベルにまで落ち込んでいると指摘するサイトも存在。兵隊はいますが、剣や槍による白兵戦が主な戦力となっています。

巨神像

国の守り神。王国創始者バウワンコ一世がモデルです。石で出来たと思われる巨大な像で、内部は空洞。王家の者に代々伝えられるペンダントの光を特定の場所に当てると、足元から中に入れる仕組み。
「国が乱れる時10人の外国人来たりて、巨神の心を動かさん」という予言があり、ダブランダー側はこの予言を頼りに王子一行が来ることを予期して待ち構えていまいました。
予言による残りの5人は、少し先の未来から来たもう一組のドラえもん一行のことです(しずかちゃんが先取り約束機で「後で道具を持って自分たちを助けるから、未来の自分たちを助っ人に寄越して」と約束)。
彼らがひみつ道具を使って表の兵隊を食い止めている間、現在時刻ののび太たちは未来ドラえもんの案内で巨神像の奥へと進み、巨神の心の正体とその動かし方を教えられます。
巨神像は一種の巨大ロボットで、心を動かすというのは、ハート型の彫刻を回すことを意味し、それが元で起動するというからくり。内部には宝の部屋も存在。

【旧作】至る所に歯車があります。入る時は入り口がシャッターのごとく上に移動。宝の部屋を巨神の心の部屋と勘違いして開けたのはドラえもんとジャイアン。巨神像は魔力のようなもので操縦します。通常時は座像。冠の部分が洞窟のごとく口を開けており、乗り出して外を眺められます。

【今作】歯車はなく、階段やツタの張った壁、水晶(?)でできた像など古代遺跡としてのイメージが強いです。入り口が崩れることで中に入れます。宝の部屋を勘違いして開けたのはジャイアンとスネ夫。この件に関し、「何で未来のドラえもんが『宝の部屋』だと知ってるんだ」というツッコミアリ。
巨神の心が動き出すと同時に、台座部分ごと上昇、像の頭部にある針との接触で起動。
完全自動操縦のようでゴム人形のように過不足なく動き、火を吐く車や空飛ぶ船を破壊しました。通常から立像です。像の目や頭部の宝石部分が窓になっています。
10人の外国人に関する予言は壁画として残っていますが、そこに描かれた外国人がどう見てもドラえもん一行。しかも各人の装備が実際と同じ(未来組がタケコプターを着けていることなど)、との指摘がありました。

映画でのサベール隊長新旧比較

【旧作】ドーベルマン風、とされますがごつくて大柄。少々言葉遣いに粗暴なものが見られます。
王子(というかドラえもん)一行に対して「一歩も入れんぞ!」と言い放つなど、豪快です。悪そうな笑顔を浮かべ戦うなど、好戦的な悪漢といった印象。
それでも騎士道精神を持ち、同じく剣の名手たる王子、ペコが戦いを挑んだ際は丸腰の相手に問答無用で斬りかからず、「王子様と戦えるとは光栄」と称し、部下に命じて剣を渡し勝負。
既に兵士を二名追い払った腕前を持つペコの剣を受け止めるさまなどに、余裕が見受けられます。事実剣の払いのけに成功し、巨神像が起動しなければ隊長の勝ちでした。剣のデザインは部下たちと大差ないように見受けられます。
剣術スタイルは、技重視と思われるもの。

旧作隊長。

【今作】ドーベルマンの純血というより、シェパードやオオカミとの混血と思しき特徴があります。
隻眼、剣の達人という特徴は受け継いでいますが、単に命令を下すだけでなく自ら王子抹殺に乗り出しました。
あまり感情らしい感情は見せませんが、王子が生きていたと知るや狂気を帯びた笑みを浮かべ石像を斬るなど、旧作とは違った意味合いでの好戦的な性格が追加。
それ即ち弱者をいたぶるのではなく、強者との戦いを何よりの生き甲斐とすること。剣の名手である王子の腕を認め、戦いを待ち望んでいたセリフが見られます。

リメイク版隊長。比較的原作に忠実ですが、若そう。

戦いにおいては相手が子供であろうと「敵」と見るや向かっていきます。といって単なる戦闘狂ではなく、一般人を剣で制しながらも自分が間違いであった際は非礼を詫びる一面が存在。
互角以上の腕を持った相手に敬意を表するなど、武人、騎士道精神ぶりもまた強調されていました。
剣のデザインも大まかに変更。他の兵士が割り合い普通の剣を持っているのに対し、特注のごとく立派にして流麗な曲線を持ったデザインになっています。鍔の部分も恐らく刃で、達人クラスでないと扱えなさそうな代物。全体のデザインも含め、このキャラクターを体現したような剣でした。
剣術は我流なのか分かりませんが、力押しの印象。
声を担当した小栗旬氏曰く「正義や悪には興味がなく、剣の道を究めていたのではないか」とのこと。

ペコとの因縁

今作のゲストキャラ、ペコことクンタック王子は、平和な国の王子ながら訓練された兵士を参らせるほどの剣の名手。人間の世界に来ることになった経緯がサベールとの戦い(の最中、湖に落下)だった上、旧作ではペコとサベールが戦いました。
今作ではペコが剣の稽古をするシーンがあるなど再戦フラグが立ちまくっていたんですが、それは叶わず。これに関しては賛否両論分かれています。

正確な年齢は不明ですが、子供と呼べる年で剣の達人からライバル認定される、ある意味末恐ろしい子です。

ダブランダーとの関係

【旧作】忠実。ペコたちが巨神像に入った際「お任せください」と少々焦っていました。

【今作】命令こそ聞くものの、ダブランダーに対して心酔はしていないようです。単にビジネスライクなのか、外界の敵と戦いたい程度の気持ちでダブランダーの味方をしているのか詳細は不明。巨神像内部の面々を追う際も怒りのようなものこそ見せましたが、焦りは感じられませんでした。

このセリフは旧作にもあったのですが、共にダブランダーにさえぎられています。それが今作ではふんぞり返り、敵を褒めるようなセリフまで。

「仕事だから言うこと聞きますけど」といった感じ。上画像と同じシーンです。旧映画版じゃ遮られて「あー…」なんて言ってたのに、リメイク版じゃ超余裕。

リメイク版隊長のキャラがよく分かる追加シーン

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