花物語(物語シリーズ)のネタバレ解説・考察まとめ

『花物語』とは『続・終物語』のその後を描いた物語であり、「するがモンキー」に登場したヒロイン、神原駿河が遭遇した新たな事件が語られている。時系列としては『化物語』の主人公である阿良々木暦やヒロインの戦場ヶ原ひたぎは直江津高校を卒業しており、駿河の同級生、日傘 星雨をはじめ新たな登場人物が中心となり物語が描かれている。本作は神原駿河の視点で描かれており、彼女の内面が深く掘り下げられている。2014年8月16日に全5話にてアニメで放送された。

『花物語』の概要

『花物語』とは2011年3月30日に刊行された西尾維新による青春怪異小説。出版社は講談社であり、全1巻である。アニメは2014年8月16日に放送され全5話での構想となっている。総監督の新房昭之の元、アニプレックス、講談社、シャフトの3社により製作された。アニメの放送順で言えば前作は『恋物語』であるが、時系列としては『続・終物語』後のストーリーとなっており『物語シリーズ』の主人公である阿良々木 暦(あららぎ こよみ)他レギュラーで登場していた先輩は既に卒業している。3年生に進級した神原 駿河(かんばる するが)の視点で描かれており、舞台は直江津高校と周囲の町がメイン。コメディパートは少なめで全体を通してシリアスなストーリーとなっており同級生の日傘 星雨(ひがさ せいう)をはじめ新たなキャラクターを中心に物語が進む。また、テーマとしては人間関係とされており、駿河の内面が深く掘り下げられた内容となっている。他作品では卑猥なイメージの強い駿河だが、『花物語』ではシリアス寄りという事もあり、彼女の真っ直ぐな生き様が描かれている青春の物語となっている。

『花物語』のあらすじ・ストーリー

事の始まり

直江津高校3年生になった神原 駿河は、意識の無い間に特定の人物を襲ってしまう怪異の悪魔の手に悩まされていた。使用者の願望を叶える怪異の悪魔の手は自分より足の速い誰か、もしくは阿良々木 暦をターゲットとしていた過去がある。それ故に包帯を巻いて隠すだけだった彼女は以前、先輩である阿良々木 暦を傷つけてしまった事に責任を感じ睡眠時にはガムテープで左手を拘束する毎日を送っていたのだ。そんなある日、同じく直江津高校に通う後輩の忍野 扇(おしの おうぎ)から「悪魔様」の噂を聞くことになる。それは悩み事を悪魔様に相談すると絶対に解決してくれるというものだった。左手に悪魔を宿す駿河にとっては聞き捨てならない話である。話を聞く限り自分が噂の悪魔様なのかもしれないと思ったからだ。詳細を調べる為に同級生の日傘 星雨と後輩の阿良々木 火憐(あららぎ かれん)に知っている事は無いかと話を伺う。そして悪魔様に会うには3つの方法がある事を突き止める。1つは手紙を出す事。もう1つは電話を掛ける事。最後は直接会う事である。火憐から電話で悪魔様の居場所を聞き出すと、即座に駿河は直接会う選択肢を選び、その場所へと赴く事となる。

悪魔様との対峙

火憐から聞き出した場所には、中学時代バスケットボールにてかつてのライバルである沼地 蠟花(ぬまち ろうか)がそこには居た。彼女は相談者から悩みを聞いて解決していると話すが、それを聞いた駿河は表情を硬くする。沼地は自分より不幸な人間が居る事に安心する為に相談者から話を聞いて、心の奥では相談者をほくそ笑んでいると話したからだ。駿河は相談者からの手紙や通話記録は何よりのコレクションだと語る沼地に詰め寄り平手打ちをするも、沼地に落ち着けよと宥められる。沼地は怒りに満ちた表情の駿河の胸を掴むと相談者には話を聞いた後、引き受けた振りをして何もしないと言う。これに駿河は話の辻褄が合わない事に気付く。噂では悪魔様は絶対に悩み事を解決してくれるからだ。だがこれには理由があり、今までの悩み事は沼地が何かしなくても全て時間が解決してきたという。それを聞いた駿河は、沼地のやっている事は決して褒められた事ではないものの高校生たちの悩める心を楽にしてきた事実を確認し、大人しく帰宅する事にした。

悪魔の手から解放

翌朝、駿河は目を覚ますと包帯を外し、爪を切り始める。そこで衝撃の事実を目の当たりにする事となる。左手に宿っていた悪魔の手が人間の手に戻っていたのだ。鏡で確認するも全身、悪魔の痕跡はなく人間の体になっていた。その事実に喜び涙するも「何故、悪魔から恩赦を頂けたのか」と疑問に思うのだった。そして道を歩いていると再び扇に出会い、悪魔様が突然いなくなったと聞かされる。

今度は疑問を解決する為、沼地の所在を聞いて回るもハッキリとした答えは得られず駿河は町の外へと足を運ぶ事となった。そこへ地元で猛威を振るった詐欺師の貝木 泥舟(かいき でいしゅう)と鉢合わせる事となる。貝木は阿良々木 暦と戦場ヶ原ひたぎに町に立ち入らない様にと言われており、駿河が町の外に出るのを待っていたのだ。駿河は先輩たちから貝木が危険人物と聞いており走って逃げるも、すぐに追いつかれてしまう。逃げ切れないと悟った駿河は諦めると貝木に話があると振られ2人は焼き肉屋に入る。そこで貝木から近々悪魔のパーツを集めているコレクターが現れるから、そいつに猿の手を渡すようにと言われ駿河は承諾する。そして会話の最後に駿河が今日、町の外に現れる事を教えてくれた張本人の名は沼地 蠟花であると貝木は告げたのだった。

沼地 蠟花との再会

駿河が教室に足を運ぶと沼地が席に座って駿河の来訪を待っていた。駿河は開口一番に「お前、私の左腕を奪ったな!」と告げるも沼地は「回収してあげたんだよ…いや、収集かな」と返事をする。前回、駿河の胸を触った時に回収をしたのだと話した。駿河は、その返答を聞く限り貝木は沼地が収集家だと知らなかったんだなと聞くも実の所、貝木は沼地が収集家だと気付いており、彼はどんな相手であろうと情報を与えるのは半分までと決めていたと話す。焼き肉屋で会った際には既に悪魔の手が人間の手に戻っている事も気付いていただろうとの事だった。それを聞いた駿河は沼地に何故、悪魔のパーツを集めているのかと問いただすと彼女は放課後、体育館で話すと告げた。放課後になり駿河は体育館に訪れると沼地からバスケットボールの勝負を誘われる。応じた駿河は沼地と勝負するも怪我をしている筈の沼地に圧倒される。勝負が一段落着くとお互い過去を語る事となった。駿河は左手の悪魔を宿した経緯を、沼地は過去と悪魔のパーツを集めるきっかけをお互い語り始める。

沼地 蠟花の過去と悪魔のパーツを集めるきっかけ

沼地は小学生の頃サッカーが得意な少女だった。だが彼女の周囲では男子が得意とするサッカーを少女が圧倒しては浮いてしまう。彼女も例外ではなかった。その後、小学校を卒業した彼女はサッカーの代わりとしてバスケットボールを始める事となる。元々運動が得意な彼女にとってバスケットボールでも他の選手を圧倒する事となる。

しかし不運な事に疲労骨折により一生松葉杖の生活を余儀なくされる。これを知った周囲の人間は沼地に優しくするも、ある日彼女に話し掛ける人間の中に1人相談を持ち掛ける者が居た。沼地はその相談者の悩みを聞くと「その悩みは私が解決してあげるから、もう何にも心配しなくていいよ」と話した。結局、沼地はその後、解決するにあたって何もしなかったものの、後日相談者から満面の笑みで「ありがとう」と言われる。最初は訳が分からなかった沼地も、時間が解決したんだと理解した。不幸な相談者の悩みを同じく不幸な自分が聞く事で安心を得る。これが悪魔様を始めるきっかけだったのである。

その後、病院を出た沼地は多くの悩みを聞く為、相談者を探し始める。その過程で貝木 泥舟と出会い彼から怪異の存在を教えてもらう事になった。怪異の存在を知った沼地は悪魔のパーツを集める事にし、ある日、花鳥 楼花(はなどり ろうか)という少女に出会う。彼女は駿河と同様に悪魔の足に殺意が宿り母親を殺そうとしていた。沼地は彼女に宿った悪魔の足を回収し今の自分の足と同化させることに成功し同時に一生松葉杖を余儀なくされる筈だった足も悪魔の足に置き換える事で杖が無くとも歩ける様になった。これを聞いた駿河は彼女を引き留める理由が無くなり、その場を後にする事となる。

真実

帰宅後、疲れて布団に顔を埋めていた駿河の元に携帯の着信が鳴り響く。出てみると阿良々木 火憐からのものだった。実は沼地に関して教えてほしいと火憐に聞いていた事を調べてくれていたのだった。沼地には今日会えたと話すも驚くべき事実が明かされる。それは沼地 蠟花は3年前に亡くなっているというものだった。駿河は怪異の事を知っている為、今まで会っていた沼地は幽霊だったと気付く。この話を聞いて何処か納得のいかない気持ちを晴らす為、気晴らしにランニングへと出かける。その途中で卒業生の阿良々木 暦と偶然再会し、今自分が悩んでいる事、納得いっていない事を彼に相談する。暦は駿河に対し助言と激励をした事で駿河は沼地に対して悪魔のパーツ集めを止める様に戦う事を決意する。後日、貝木 泥舟から悪魔の頭部が郵便で届けられ、これを交渉材料に沼地と勝負する事を決めたのだった。

悪魔のパーツを賭けて対決

貝木 泥舟から駿河の居場所と悪魔の頭部を所持しているという情報を聞いた沼地は早速、駿河に会う為に体育館に赴き再会を果たす。沼地は悪魔の頭部を要求し、駿河は悪魔のパーツ集めを止める様に要求をする。どちらか片方の要求しか呑めない状況に駿河はバスケットボールのワンオンワンで勝利した方の要求を呑む提案をする。初め沼地はこれを拒否するが、従わなければ悪魔の頭部をハンマーで破壊すると宣言された為、止む無く勝負を受ける事となった。勝負の形式はシンプルな物で駿河がオフェンスで点数を獲得すれば駿河の勝利。対して沼地は駿河からボールを奪えば勝利という沼地にとって有利なルールであった。勝負の前に駿河は「成仏しないのか?」と沼地に尋ねる。しかし驚く事に沼地は自分が既に死んでいる事に気づいておらず、駿河はこの事実に膝を折ってしまう。自分のありえた姿だから、見てられないから沼地 蠟花を退治する。そう心に決めた駿河は普段使う事の無いダンクシュートを決め見事、沼地に勝利する事となった。勝負に負けた沼地は憑き物が取れたかの様な顔で目を閉じ、今まで体に取り入れた悪魔のパーツを残して成仏していったのだった。

『花物語』の登場人物・キャラクター

神原 駿河(かんばる するが)

担当声優は沢城みゆき。本作の主人公であり直江津高校の3年生。初登場は『するがモンキー』であり、猿の手ならぬ悪魔の手を宿した少女である。桐の箱に入った亡き母から託された左手のミイラを駿河は小学4年生の頃、初めて使った。「足が速くなりますように」と、当時転校したばかりの駿河はクラスに馴染めず浮いた存在になっており徒競走で1番になる事で周囲に認めてもらえるように左手のミイラにそう願った。そして左手のミイラは駿河の想いに応える。しかし叶えられた願いは駿河の足が速くなる事では無く、駿河と走る彼女より足の速い選手を襲い欠席させるというものだった。恐ろしくなった彼女は足が速くなる為に努力をし、その後自分より足の速い選手の居ないバスケットボール部に入る事となる。足が速くなる為に努力した彼女は、すぐにバスケットボール部のエースとなり噂を聞き付けた戦場ヶ原 ひたぎと出会う事になる。ひたぎと会話を重ねるうちに心を惹かれた駿河は彼女が何かに対して悩みを抱えている事を知り、左手のミイラを使おうかと何度も苦悩するが結局、ミイラを使う事は無かった。しかし、その1年後ひたぎの悩みを解決した。
阿良々木 暦が彼女と仲良く談笑している姿を目撃し、暦に対する殺意を左手のミイラに願ってしまう。だが、駿河は実際に暦を本当に殺したいという殺意は無く、殺されかけた暦に真相を問い質されるも、事情を説明し、忍野メメの協力の元、暦への殺意の願いを叶えさせない事に成功する。本作の『花物語』では悪魔の手が誰かを傷つけない為に左手を柱に縛り付けた状態で睡眠している姿が描かれている。

沼地 蠟花(ぬまち ろうか)

担当声優は阿澄佳奈。神原 駿河の中学時代のバスケットボールのライバル。駿河がオフェンスを得意としているプレイヤーであるのに対し沼地はディフェンスを得意としているプレイヤーである。沼地は駿河が悪魔様の噂を聞いて再開した時には既に死んでおり、怪異として悪魔のパーツの収集を行っていた。見た目は足に怪我を負い松葉杖を使用しているが駿河と同様に足と腕に悪魔のパーツを取り込んでいる為、実際は怪我は無く、飽くまでカモフラージュの一環として包帯を巻いている。

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