伝説巨神イデオン(THE IDEON)のネタバレ解説・考察まとめ

『伝説巨神イデオン』は日本サンライズ制作・富野喜幸監督(当時)による日本のアニメ。
地球植民星ソロで発掘された、第6文明人の遺跡かつ変形合体する巨大ロボット「イデオン」と、その力の源「無限力イデ」を巡り、地球人と異星人バッフ・クラン両文明の衝突が発生。
銀河全体を巻き込む果て無き抗争へ発展していき、それを見つめ続けたイデの裁きによる全文明の終焉と全人類の輪廻転生までを描いた「解り合えぬ人々」を主役とした群像劇。
『新世紀エヴァンゲリオン』に強い影響(元ネタ)を与えた作品としても有名である。

『THE IDEON 発動篇』にて、カララ死後、カーシャの心の糸がぷつりと切れての独白。

アーシュラ「ねえ、カララはちゃんとメシアのことわかるのかなぁ?」(イデの力で、カララの赤ちゃんだけはお腹の中で生きていたため)
カーシャ「どうして?」
アーシュラ「だって、まだメシアは生まれていないのに、生まれたらわかるのかなあ?」
カーシャ「わかるわよ、カララはお空のお星様になって見ているもの、絶対にわかるわよ」
アーシュラ「そっかぁ! お星様になって見てんのね、なら、メシアが生まれてきてもカララにはわかるから、メシアはお母さんのところには行かれるんだね!」
カーシャ「難しいことわかっちゃうのね、アーシュラ」

と、アーシュラとのやりとりの後、ふと背を向けて言った。
ここに来るまでずっと気丈に振る舞ってきたカーシャが、ついに絶望を見せるシーンでもある。

ユウキ・コスモ「幸せになろうな!」

イデの発動後、すべての人間の魂が己の業から解き放たれ、新惑星へメシアと共に向かっていく最中の一幕。
コスモはキッチンの魂とも再会するが、キッチンは傍らでコスモを見つめ続けたカーシャに、彼のパートナーという立場を譲る。
そして、コスモは先に飛び去っていくキッチンに向けて「キッチン、幸せになろうな!」と言った。

なお、画像のコスモとカーシャが透けているのは、彼らが肉体を失って魂だけの存在になっているという描写。

『伝説巨神イデオン』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

玩具販促企画から「作品」への変遷

本作の主役ロボット・イデオンは富野喜幸(当時表記。後の富野由悠季)の発注によってデザインされたものではない。
玩具会社のトミー(後のタカラトミー)と、アニメ制作会社の日本サンライズの経営陣が玩具となるロボットを先にデザインして、それを富野に手渡し「このロボットが大活躍するアニメを作ってください」という企画だったのだ。

しかし、リアリティを信奉する富野はそのデザインを嫌悪し、見た瞬間「これは第6文明人の遺跡です」と言い放った。そして、作品を硬派なSFとする事に決めた。
(富野曰く「で、なければ、こんな酷いデザイン誰が使います?」である)

驚くべきは、本作はその玩具ありきの企画として5番目に当たり、シリーズものでもあった事である。
つまり成功していた企画であり、その制作を振られた側は(この場合は富野)絶対に成功継続を約束せねばならない。

事実、本作の前番組にあたる『科学冒険隊タンサー5』という作品は、上記の企画4番目の存在であったが(監督は富野ではない)こちらは、いわゆる『スーパー戦隊』シリーズに似た、単純明快な冒険活劇ものだった。
当時のアニメは「せいぜい小学生ぐらいまでの子どもが見るもの」という認識であり、経営陣が大人を顧客と想定して企画を立てる事は、ほとんどなかった。よって制作を振られる側も、子ども受け(酷い場合は子どもだまし)を考えて作る事が成功に向かう確実な方法だった。

しかるに、登場人物が争いに争った挙げ句、最後に全員死に、魂として浄化される結末を迎える本作は、上記のシリーズとしてはあり得ない変化球だった。
解りやすく例えるならば、仮に恋愛コメディー映画が過去に4作あったとして、そのシリーズものというふれこみで本格戦争映画を作り「登場人物は恋愛してますよ。ちょっと毛色は違いますが恋愛映画で間違っていません」と、言い張るような暴挙なのだ。
富野の反発が、いかほどのものだったかが伺える話である。

事実、富野は子どもだましの作品を作る事をなによりも嫌っており(厳密には、子どもに見てもらいたいと思っているが「どうせガキには精緻な演出や世界観を与えても理解できないだろう」と、たかをくくる制作者の姿勢を憎悪した)当時から後年に至るまで一度たりとも、その主張を曲げた事はない。
それと同時に、本作は自身の『機動戦士ガンダム』に続いて手がける作品であり、絶対に『ガンダム』を乗り越えるのだという強い決意があって、中途半端な玩具販促アニメでお茶を濁す選択肢こそ、富野にとって絶対にあり得なかったのだ。

ただし、それでも富野はイデオンの玩具に盛り込むアイデアを自身のメモにいくつも書き残しており、スポンサーに食ってかかりつつも、きちんと商売はさせるというプロの仕事を見せている。
(だが、その意味では本作関連の玩具は販売不振で、失敗に終わった)

テーマとしての「輪廻」と後進による「転生」

本作の重要なテーマのひとつに「輪廻転生」があるが、作品自体も輪廻転生している。

富野喜幸(当時表記。後の富野由悠季)は本作についてのインタビューで、フレッド・マクラウド・ウィルコックスの『禁断の惑星』やスタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』(「意識」や「自我」そして「生命の進化」といったテーマを取り扱う、1950、60年代アメリカSF映画の金字塔)といった作品に触れた時、その足りないと感じた部分をどう補完するか考えながら、1980年代に『伝説巨神イデオン』を作ったと発言している。

そして本作もまた、1990年代を代表するアニメ、庵野秀明監督作『新世紀エヴァンゲリオン』の原型となったのは周知の事実である(庵野本人が本作のファンである事を公言しており、また『新世紀エヴァンゲリオン』が本作を換骨奪胎したものであると、視聴者から創作業界者に至るまで、方々より指摘されている)。

すなわち、作品そのものの輪廻転生である。
これは人間の活動すべてにいえるものではあるが、その中でも、特に本作と本作の前後にある作品の関係性は「意識」や「自我」そして「生命の進化」といったテーマを扱ったがゆえに「個々の意志や意図が次代へ伝承されていく」という、生命の営みにおける一種の奇跡を非常に解りやすく、そして見事に体現したものとなっている。

板野サーカス前夜祭

本作には湖川友謙を筆頭に多くのアニメーターが参加しているが、その中には、後に名を馳せる事になる若き日の板野一郎が参加しており、その作画がはじめて高い評価を受けた作品でもある。

本作における板野担当パート中、代表となるのはイデオンの身体中からミサイルが光線のように飛んでいくシーンと、もうもうと煙を吐いて帯を引くミサイルが宇宙空間を縦横無尽に飛び回る演出。
これが後に『超時空要塞マクロス』で本領発揮となり、戦闘機がぐるぐると画面中を飛び回ってはミサイルの嵐が吹き荒れるハイテンションな戦闘シーンを見せつけ、これに感銘を受けた視聴者が、その作画を「板野サーカス」と褒め称える事になる。

すなわち、本作は板野サーカス前夜祭なのである。

『伝説巨神イデオン』の主題歌・挿入歌

『伝説巨神イデオン』

オープニング:たいらいさお『復活のイデオン』

エンディング:戸田恵子『コスモスに君と』

『THE IDEON 接触篇』

主題歌:水原明子『セーリング・フライ』

この『セーリング・フライ』は主題歌という触れ込みだが、劇中ではエンディングテーマとして使用されている。

『THE IDEON 発動篇』

主題歌:水原明子『海に陽に』

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