故・国友やすゆき御大の「100億の男」といえば
主人公の富沢琢矢と関わる、様々な女性が華を添えていた。
久我山沙貴
「初めてあなた出会った時から私にはわかっていたわ。いつか必ず、あなたは私のものになると……誰にも渡さないわ、琢矢………あなたは私のものよ」
登場は和美の後だが、先に紹介する重要人物。もう一人の主役と言っても過言ではない。時の首相も頼りにする経済界の大物、久我山天善の娘で、その国土創成社で琢矢の上司にあたる。高飛車がスーツ姿で歩いているような人物で、琢矢に冷酷な仕打ちをする(琢矢曰く「お前は天善と同じ位俺の人生を目茶苦茶にした」)。見合う才覚はあり、アメリカ屈指の世界中の優秀な生徒が集うというビジネススクールで美娟が入るまでで空前の成績を収めて「東洋の奇跡」と言われた。美娟を追い落とすのに成功して大きな契約をすると、誌面で「経済界の若きプリンセス」と絶賛される(琢矢は賛同しなかったが)。
琢矢が追い込まれる中で気に留める美貌を湛え、才色兼備。
琢矢との呉越同舟の後、彼に人生初の辛酸を舐めされられることもあった。
幼少の砌(生まれてすぐ母は死去、天善は兄の善彦とも別の懇意の実力者に預け、成人するまで家族は正月の一日しか会わなかった)が描かれ、ビジネススクールの恩師に指摘されていても愛も信じる心も不要と吐き捨てるように言う人間性の欠如の過程は分かっていく。
天善に厳しさを教えてもらえて寧ろ感謝していると言って一線を越え、絶縁される。
最終回では最低と吐き捨てるように言いつつ先述のように複雑な思いのある琢矢に「……あなたとの思い出が……あんなものだけだなんて……イヤよ……絶対にイヤよ!」と言ってからセックスをした。
楊美娟(ヤン・メイチュワン)
「私は待っているわ………あなたが今生きているこのこの人生が、決して間違った選択ではなかったと確信を持って帰ってくる日を……」
こちらも登場は和美の後でも先に紹介するキーパーソン。深圳栄華股份公司(株式会社)の総経理(社長)。天安門事件(第一か第二かあるいは両方かは不明)などの地獄を見てきた一族の出身で、負けを恐れないと言う。10才にして大学院で経済を学んで首席で卒業した、中国人の若き指導者。琢矢と相思相愛となり、幾度も濡れ場を見せる。ビジネススクールでは沙貴の成績を凌駕し、「新・東洋の奇跡」と言われた(同じ3月15日生まれなのも関係している)。その時はわずかにしか会わなかった沙貴の別人のように振る舞っての奸計で立場を失った。
教えの的確さなどもさることながら大勢の中国人が誕生日を祝い、先述の沙貴の策の一環で一緒にいる写真を取られた琢矢に恨み言は言わなかった。先述の「立場を失った」というのはライバル達が攻勢をかけてのことだが、小さなトラブル(実際には決して小さくない)に負けないと琢矢に言い、人格も申し分ない。「本物の超スーパーレディ」と評される。
自分に好意を寄せて琢矢との握手を拒む中国民主化運動の推進者、張坤厚(チョウ・ハンホウ)の(それがための)最期に涙し、地獄のような世界を変えると誓った。
世界的穀物メジャーのアルバート・カーチス相手に琢矢と自分の商談を成立させるため、ハッキングの腕は天才的な肖全軍(シャオ・クオチュン)に体も売った。
料理人は好きなだけ雇える立場にありながら琢矢に自分で作った中華粥を出し、家庭的な一面も見せる。
琢矢は自分は和美を失って以来様々な女性と合ってきても真に心を通わせたのは君だけと言う。琢矢と愛を誓い合うセックスをして、琢矢が和美のことを精算して、戻ってくるのを待った。
広瀬和美
「ひょっとしたら、これが琢矢の本当の姿なのかもしれないわね…… だって、今の琢矢は断然光ってるもの……! 負けないでね、琢矢!誰にも……!」
平凡なサラリーマンであった頃の琢矢のフィアンセ。本作では飽くまで市井の女性というのが特徴となっている。
琢矢とまぐわう様子が回想でも描かれなかったのは意外。本作のトリビアと言えそう。
沙貴が琢矢の借金をなかったことにするよう父に頼むという条件で課した、琢矢への“本当の愛”を測る試練(見知らぬ男とのセックス)に耐えられず、下着を切られそうになった段階で泣いて「あなたは人間じゃないわ鬼よ!悪魔よっ!!」と批難して逃げ出した時に事故死したと思われていたが、一命を取り止めていた。ちなみに乗り越えたとしても沙貴に履行の意志は最初からなく、彼女が言うことは正しかった。下記のマリエとのセックスを共に生まれたままの姿になって完遂し、人間性を踏み躙るゲームにも誇りを失わない魂を見せた琢矢とはどのみち一緒になれなかったと思われる。
美娟と一緒になると誓い合っていた琢矢に結婚が決まったと話す。琢矢はその相手に「和美を幸せにしてやってください!お願いします!!」と託した。
勤め先に責任を擦り付けられる危機を漢っぷりを見せる琢矢に救われ、感謝して「あなたもきっと幸せになってね」と願った。
琢矢は親子程歳の離れた飯塚頭取から大手銀行、住和を引き継ぐこととなる(ちなみにこの時諸行無常の達観ぶりも見せている)。最早住む次元の異なる彼(ドラマでは復縁を持ちかけられて断ったという。演じたのは朱門みず穂女史)をテレビで見て、思わず応援した。
りさ子
「私のカンによれば、どんなに遠く離れていても、私達は必ず再会するはず……私達はそういう運命なのよ」
銀座の高級クラブでママをしている情報通。中年の愛人、横山正彦(後ろ盾ではない)など、見切った相手に冷淡。琢矢の才能を保証し、100億どころか1000億稼げると言った。ショーケンこと根本健治とも知己。終盤で琢矢に成新党の野沢悦郎のことを教えた。
前島マリエ
「だってあたし、20億のへこみがあるのよ、ちんたらやってらんないわ! それに、みんなと同じに賭けて勝ったってつまんないもの!」
大会社マエジマの社長令嬢の女子大生。好きでもない男性と見合いをさせようとする母(マエジマ以上の一流企業の跡取りとの政略結婚のため?)のために屈折しており、琢矢にも指摘される。
賭け好きで、真鍋政一が胴元の金持ちの若者間のゲームで彼からの貸しは20億に上る。1億8千万円を賭けた、狂気を帯びたゲームに臨み、琢矢との目合いを見せた(それまでのゲームはカード類、それで借金がそこまで膨らむのは本作らしくない)。終えると金のかかった青姦がどうこう言われて笑い者にされ、愚かさを悔いた。その時は殊勝にも琢矢に詫びたが、都合の悪いことがあれば彼が悪いことにして涙ながらの演技をする狡猾さも有する。
政一との仕手戦では図らずもショーケンにヒントを与えた。
事情を知らずに琢矢が自分は30過ぎの人妻より魅力がないと見做したと思って、やけ酒を煽る愛嬌もある。
最終回前に政一やベンチャー企業の社長達と共に琢矢の戦力となることを誓うが、ギャンブラー気分が抜けていないと思える物言いをした。
閑話休題。共にエイベックスの美女に挙げられる前島亜美と飯豊まりえを合わせたような名前だが、無関係(2人は97年、98年生まれ。本作は96年に終了)。